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米国の動向

SECスタッフが国際的な会計基準に関するワークプランについての最終報告書を公表

2012.07.17

米国証券取引委員会(SEC)の主任会計官局は、2012年7月13日に、国際的な会計基準に関するワークプランについての最終スタッフ報告書「米国の発行企業の財務報告制度への国際財務報告基準(IFRS)の組込みに関する検討のためのワークプラン - 最終スタッフ報告書」を公表しました。
このワークプランは、SECが、米国の財務報告制度に国際財務報告基準(IFRS)を組み込むべきか、仮に組み込む場合には、いつどのようにIFRSを組み込んだ制度に移行するべきかを決定する際に、考慮すべき特定の領域及び要因を検討することを目的としています。最終スタッフ報告書は、米国の財務報告制度にIFRSを組み込んだ場合に、ワークプランで検討した領域においてどのような影響が生じうるかを、SECスタッフがまとめたものです。
なお、この最終スタッフ報告書では、米国の財務報告制度にIFRSを組み込むべきか、及び仮に組み込む場合の方法について一切提言されていません。そうした提言は今後行われる予定です。

当該ワークプランを実行するにあたり、SECスタッフは、米国の財務報告制度にIFRSを組み込むべきか、仮に組み込む場合にはどのように行うべきかに関して、さまざまなオプションを検討しました。しかし、スタッフによる調査の初期段階において、米国の資本市場における非常に多くの参加者が、国際会計基準審議会(IASB)により公表されたIFRSをそのまま米国会計基準(US GAAP)として指定することを支持していないことが明らかになりました。このため、SECスタッフは、当該ワークプランを実行するにあたり、米国財務報告制度へのIFRSの組込みに関して、他の方法(たとえば、米国財務報告制度にIFRSを組み込むためのエンドースメント(承認)・メカニズムの導入や、US GAAPとIFRSのコンバージェンスの継続など)に焦点を当てています。

最終スタッフ報告書では、SECスタッフの作業結果及びその分析に関して記載されており、これらの分析により明らかになった重要な項目の一部について、以下でその概要を説明します。

1. IFRSの開発

IASBにより公表されている基準書は一般的に高品質なものであると受け止められていますが、依然として十分な指針が開発されていない分野(たとえば、採掘産業、保険、料金規制事業に関する会計処理など)も存在します。これに対し、US GAAPにもさらなる指針の開発が必要な分野は存在するものの、米国の関係者の間では、こうした十分な指針が欠如している分野はIFRSの方に多いと考えられています。

2. 解釈指針の策定プロセス

IFRS解釈指針委員会(解釈指針委員会)は、IFRSの解釈を担う機関として存在していますが、スタッフによる国内および海外における調査によれば、解釈指針委員会は、現行のIFRSに関して広く一般的に生じている会計上の論点に対して、より適時かつ適切に取り組むべきであります。IFRS財団はこの懸念に対処すべく組織の在り方について変更を行いましたが、まだ変更されて間もないため、そうした変更が有効であるかどうかは現時点では明らかではありません。

3. IASBと各国の会計基準設定機関との協働

多くの国や地域で適用可能な会計基準を開発するために、IASBは、基準の開発にあたって各国の会計基準設定機関と情報や意見交換を行う手続きを有しており、また、多くの会計基準設定機関が会計上の論点や現在進行中のIASBのプロジェクトについてIASBメンバーと定期的に協議を行っています。しかし、IASBは、各国の会計基準設定機関により多くを依拠することを検討するべきと考えられます。各国の会計基準設定機関は、進行中の各プロジェクトに関して専門性を有していることもあれば、自国の投資家へのアウトリーチ活動を行うこともできます。さらに、実務におけるばらつきを減らすために解釈指針を提供することが必要な分野を特定したり、また適用後レビューにおいてIASBを支援することもできます。

4. IFRSの国際的な適用とその強制

単一の高品質な国際的に認められた会計基準が適用されることにより、財務諸表の比較可能性が高まると考えられます。しかし、これを達成するためには、IFRSが首尾一貫して適用され、そうした適用が強制されることが極めて重要となります。IFRSの均質適用に関するスタッフの調査によれば、IFRSに基づき作成された財務諸表はおおむねIFRSに準拠していたものの、実務における多様性を減らすべくIFRSの国際的な均質適用について改善する余地があります。したがって、各国の規制当局がIFRSの適用及びその強制に関する見解を共有し、結果としてIFRSの国際的な均質適用が促進されるように、各国の規制当局間のより一層の協力体制が重要となります。

5. IASBのガバナンス体制

IFRS財団のガバナンス体制は、IASBの監督とその独立性の担保の二つをうまく両立させていると評価できます。しかし、IASBは、国際的な機関であることから、米国を含む特定の資本市場に焦点をあてた基準の開発を行う権限はありません。そのため、米国の資本市場における必要性を考慮し、これを保護するために、IFRSのエンドースメント(承認)にFASBを関与させるなどのメカニズムを設けることが必要と考えられます。

6. 資金調達の状況

IFRS財団は、資金調達メカニズムを有しているものの、民間の非営利組織であることから、財源の拠出を要求又は強制する能力を有していません。また、IFRSは現在、100カ国以上で何らかの形で使用されていますが、財源を拠出しているのは30カ国以下です。米国からの資源の拠出に関しては、米国財務会計財団(FAF)がIFRS財団と議論することを約束しています。さらに、SECスタッフは、IFRS財団の資金調達が大手会計事務所からの拠出に引き続き依存していることに、最も懸念を有しています。

7. 投資家の理解

SECスタッフは、投資家が会計基準の設定にどのように関わっているのかについてアウトリーチ活動を行いました。当該活動を通じて、スタッフは、投資家が会計基準への最新の改訂動向を理解するにあたり、一般的に基準設定機関、大手会計事務所及び各種文献等に依拠する傾向があることが分かりました。米国財務報告制度にIFRSを組み込むか否かに関するSECの決定にかかわらず、スタッフは、会計基準の開発及び利用に係る投資家の関与及び教育をどのように改善するかについて、今後検討する予定です。

最終スタッフ報告書原文は、SECサイトに掲載されています。


IFRS Developments 第36号にて概要を解説しています。




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