アシュアランス
IFRS Developments

投資会社が保有する投資の公正価値測定に関する提案

2011.09.06
重要ポイント
  • IASB及びFASBは、投資会社の会計処理を概ね統一することを提案している。
  • コメントの提出期限は2012年1月5日である。
  • 投資会社に該当するためには、いくつかの要件を満たさなければならない。
  • 投資会社は、支配する企業に対する投資を連結することが禁じられる。
  • 投資会社は、支配するすべての投資を、純損益を通じて公正価値で測定することが求められる(すなわち、持分法は容認されない)。
  • IASBの提案では、投資会社の親会社自体が投資会社の要件を満たさない場合、当該親会社はその子会社である投資会社が支配する投資先をすべて連結しなければならない(すなわち、親会社レベルでは公正価値での測定は認められない)。
  • 一方FASBの提案では、親会社が投資会社の要件を満たさない場合であっても、投資会社が行った公正価値会計を引き継ぐことが容認される見込みである。
  • 現在は、ジョイント・ベンチャー又は関連会社に対する投資を、IAS第28号「関連会社に対する投資」に基づき純損益を通じて公正価値で測定することが認められているが、今後は投資会社の定義を満たさない企業は、当該投資を純損益を通じて公正価値で測定することができなくなる。
  • 一定の条件を満たせば、早期適用が容認される。

2011年8月25日、国際会計基準審議会(以下、IASB)は公開草案「投資会社」を公表した。この公開草案では、支配を有するすべての企業を連結するというIFRSの原則に対する例外処理が提案されており、投資会社(別途、定義する)については、支配するすべての投資を公正価値で測定し、その変動を純損益に認識することが要求されている。このような例外処理を提案することにより、多くのアセット・マネジメント及びプライベート・エクイティ業界、ならびにこれらの財務諸表利用者が現行のIFRSの連結規定につき抱えている重要な問題点に対処している。

IFRS第10号「連結財務諸表」の公表に至るまでの審議の過程において、「投資会社」の場合、支配している投資を連結すると、意思決定に有用な情報が提供されるというよりは、逆にそうした情報がわかりにくくなるとのコメント・レターが数多く寄せられた。このフィードバックは説得力のあるものであったため、IASBと米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、総称して両審議会)は、両基準に共通する投資会社(investment entity)の定義に関する提案を策定した。この定義案は、現行の米国会計基準及びその他IFRS以外のガイダンスにおける定義を基にしている。この公開草案が最終基準化されれば、IFRS第10号の規定は改訂され、投資会社については、支配するすべての投資を公正価値で測定することが求められるようになる。この提案は、FASBが提案した米国会計基準における投資会社(米国会計基準ではinvestment company)の定義の変更と合わせて、投資会社に関し、IFRSと現行の米国会計基準を一致させるうえで大きな一歩となる。

主な原則

公開草案では、投資会社は、支配を有する企業に対するすべての投資を、純損益を通じて公正価値で測定しなければならないと提案されている。

弊社のコメント
投資会社の財務諸表の作成者及び利用者は以前から、投資会社が支配する投資先は、公正価値で測定した方が意思決定により有用な財務報告につながるとして、当該投資を連結免除規定の対象とすることは有益であるとの考えを表明していた。したがって、当該提案は幅広い支持を集めるものと思われる。しかし、すべての利用者がこのような考えを共有しているわけではなく、連結規定を保持するほうが好ましいとする者もいることに留意されたい。
したがって、投資会社の要件を満たすものの、事実及び状況に基づき、連結したほうが意思決定においてより有用な情報につながると判断した企業については、支配する企業を連結するという会計方針の選択を認めることを検討すべきかもしれない。

一方、投資会社を保有する親会社は、投資会社に該当する子会社を通じて支配する企業を含む、支配を有するすべての企業を連結しなければならない。ただし、親会社自体が投資会社に該当する場合を除く(図を参照)。FASBの提案では、親会社が投資会社に該当しない場合であっても、投資会社の公正価値会計を引き継ぐことが容認される見込みであるため、これは、FASBの提案とIASBの提案の主要な相違点の1つになるものと予想される。FASBの提案では、親会社が投資会社に該当しない場合であっても、投資会社の公正価値会計を引き継ぐことが容認される見込みである。どちらの提案に基づいた場合も、投資会社(例:ファンド)は、自身の財務諸表において、支配する投資を公正価値で会計処理することになる。IASBは、特にこの論点についてのコメントを求めている。

公開草案の結論の根拠において、IASBは投資会社の要件を満たさない親会社が、支配を有する投資対象がグループの事業全体に欠かせない場合であっても、当該免除規定を使うのではないかと懸念していた。この理由から、当該規定の濫用を防止するために、IASBは、上記会計処理を提案したのである。

弊社のコメント
投資会社に該当するための要件が適切に定義されているのであれば、投資会社の親会社が投資会社に該当しない場合であっても、親会社の連結財務諸表において、投資会社の要件を満たす子会社が適用した公正価値会計を引き継ぐことが適切であると考える者もいる(これはFASBの提案と整合している)。この見解の支持者は、一般的に、公正価値が投資会社の財務諸表において最も有用な情報を提供するのであれば、グループの財務諸表でも最も有用な情報を提供すると考えている。
また、FASBの提案の支持者は、コングロマリットとその子会社が投資会社に該当する可能性は低いと一般的に考えている。さらに、FASBのアプローチの支持者は、FASBとIASBがこの点についてコンバージェンスを達成すべきだと考えている。

図

投資会社の定義

下記の表は、投資会社とみなされるために満たさなければならない要件の一覧である。公開草案に対してコメントを提出し、(公開草案が最終基準化された際の)適用に向けた計画を策定するにあたり、コメント提供者は自身を取り巻く事実及び状況に基づき、当該要件を実際にはどのように適用できるかを考慮しなければならない。

要件 公開草案での記述
投資活動の性質 企業の唯一の実質的活動は、資本増価、(配当や利息などの)配分、又はその両方のために複数の投資を行うことである。
事業目的 企業の目的が、資本増価、(配当や利息などの)配分、又はその両方からのリターンを提供するために投資を行うことであることにつき、企業は投資家グループに対して明確なコミットメントを行っている。この要件を満たすには、(資本増価からの利益を実現するための)出口戦略を有していなければならない。
単位所有持分
(Unit ownership)
企業に対する所有持分が、普通株式やパートナーシップ持分など、純資産に対する比例的な持分が帰属する投資単位で表象されていなければならない。
資金のプール 企業の投資家の資金が、投資家が専門家による投資管理を利用できるようにプールされている。企業には、(親会社がある場合には)投資企業の親会社とは関連がなく、合算すると当該企業に対する重要な所有持分を有する投資家が存在する。
公正価値での管理 企業の実質的にすべての投資が、公正価値ベースで管理及び業績評価されている。
IFRS第13号「公正価値測定」には、「公正価値」の定義と測定方法が規定されている。
財務情報の提供 企業が投資活動についての財務情報を投資家に提供している。企業は、法人(a legal entity)の場合もあるが、法人である必要はない。

ジョイント・ベンチャー及び関連会社への影響

上述の改訂に伴い、IASBはジョイント・ベンチャー及び関連会社の会計処理の変更を提案している。

現行のIFRSは、ベンチャー・キャピタル企業、ミューチュアル・ファンド、ユニット・トラスト、運用型保険ファンド及び類似企業に対し、投資を純損益を通じて公正価値で測定するか、持分法を適用するかの選択肢を認めている。IASBは、この選択肢を削除し、投資会社(上記の定義を参照)に対し、関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資を純損益を通じて公正価値で測定することを要求することを提案している。これは、投資会社に該当するための要件の1つに、「企業の実質的にすべての投資が、公正価値ベースで管理及び業績評価されている」という要件が存在するからである。この規定は、投資会社が支配持分を有する企業に対してだけでなく、ジョイント・ベンチャー及び関連会社に対する投資にも適用される。

上述のようにIASBは、子会社に対する投資については、(自身が投資会社に該当しない)親会社がこれを公正価値で測定することを認めていないが、一方、ジョイント・ベンチャー及び関連会社に対する投資会社の投資の測定については、このような投資会社の親会社の財務諸表上も公正価値の使用が要求される。

投資会社の定義を満たしていないが、現行基準において、ジョイント・ベンチャー又は関連会社に対する投資を、IAS第28号「関連会社に対する投資」に基づき純損益を通じて公正価値で測定することを認められている企業は、今後は当該投資を純損益を通じて公正価値で測定することができなくなる。そのような企業は、関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資を測定するにあたり、持分法を使用しなければならない。一部のベンチャー・キャピタル企業、ミューチュアル・ファンド、ユニット・トラスト、運用型保険ファンド及び類似企業が投資会社の要件を満たさない場合、これは重要な変更となる可能性がある。

弊社のコメント
持分法について現在提起されている問題点に鑑み、より多くの企業に対して持分法の使用を求めることが、意思決定に有用な情報を提供することになるのかどうかを検討すべきとも考えられる。現在、公正価値を使用している企業に関しては、その使用を禁止せず、持分法がIASBのアジェンダとして採用されるまではIAS第28号の表現や選択肢を変更しないほうがよい可能性もある。
投資会社に該当する親会社と、投資会社に該当しない親会社の両方に対し、連結時に公正価値会計を引き継ぐことを認めると仮にIASBが決定する場合には、ジョイント・ベンチャー及び関連会社に対する投資会社の投資について、公正価値の使用を(両方の)親会社に要求することは合理的である。
しかし、IASBが公開草案の提案(すなわち、投資会社に該当しない親会社は連結時に公正価値会計を引き継ぐことができない)をそのまま採用する場合には、ジョイント・ベンチャー又は関連会社に対する投資を公正価値で測定するかどうかに関し、親会社に選択肢を認めるべきかもしれない。

実務上の簡便法

当該公開草案には含まれていないものの、定義を満たす投資会社が実務上の簡便法として、純資産価値(NAV)(当該情報を投資ファンドが提供していることを条件とする)を使って、自身の投資の公正価値を測定できるようにすべきという考えが存在する。

米国会計基準は現在、投資会社に対し自身の投資を各報告期間の末日に公正価値で認識することを求めており、投資会社に対する投資を有する企業に対しては、特定の状況において、投資先のNAVを調整せずにそのまま公正価値として使用することを認める実務上の簡便法を定めている。IFRS第13号「公正価値測定」を公表するにあたり、同じような実務上の簡便法を含めるべきかどうかを審議した際、IASBは、NAVの計算実務が各国・地域等によって異なっていることから、そのような簡便法をどのような場合に適用できるかを特定することは困難と判断した。IASBは、投資会社は財務諸表(及びNAV)をIFRS以外の会計基準に従って作成する場合があり、その場合にはIFRSに従って計算された場合の金額と異なる可能性があることに留意した。したがって、現時点ではIFRSにおいて当該実務上の簡便法を認めないこととしており、この点について、米国会計基準とIFRSで差異が生じている。

弊社のコメント
利害関係者は、投資会社の定義が決定したら、IASBがこの実務上の簡便法をIFRSに追加すべきかどうかを考慮し、この点についてIASBにコメントすることを検討すべきである。

開示

公開草案は、以下を含む重要な開示を要求することを提案している。

  • 企業の投資活動の性質及び財務上の影響を利用者が評価できるような情報
  • 投資会社としての地位に変更があった場合はその影響
  • 支配する投資先に対して提供された財務又はその他の支援
  • 支配する投資先が投資会社に資金を移転する能力に対して課せられた重要な制限の内容及び範囲

投資会社は、引き続き他のIFRSの開示規定にも従うことが求められる。たとえば投資会社は、IFRS第13号に従い、公正価値ヒエラルキーを使用して、個別に重要性のある投資について公正価値を開示することが求められる(公正価値を測定する際に使用した手法及びインプットを含む)。

公開草案は、投資会社に対し、IFRS第12号により求められる以下に関する要約財務情報の開示を免除することは提案していない

  • 重要な非支配持分が存在する、支配を有する投資先
  • 個別に重要性のあるジョイント・ベンチャー及び関連会社(それぞれ別個に開示)
  • 個別に重要性のない複数のジョイント・ベンチャーを集約したもの。これは、個別に重要性のない関連会社の集約情報とは区別して開示する
弊社のコメント
投資の公正価値及びそれらの公正価値測定に使用したインプットの開示が求められていることを踏まえると、IFRS第12号により求められる要約財務情報のすべてが本当に必要であるかどうかを検討すべきである。投資会社の会計方針と整合したIFRS財務諸表を提供するには過度なコストが生じる場合、支配する投資先の財務諸表(異なる期末日、異なる会計方針、及びIFRS以外の会計基準が適用されている可能性もある)に基づく財務諸表を開示することも容認されるべきではないだろうか。これはIFRS第12号において現在、ベンチャー・キャピタル企業、ミューチュアル・ファンド、ユニット・トラスト、運用型保険ファンド及び類似企業が公正価値オプションを使用している場合に、ジョイント・ベンチャー及び関連会社に認められている免除措置と整合している。
IASBが支配する投資に関して投資会社に会計方針の選択を認めるのであれば、IASBはそうした投資の公正価値の開示を要求するかどうかについて検討する可能性もある。

経過措置

公開草案では、企業が投資会社の定義を満たす場合、提案されたIFRSを最初に適用する期間の期首時点において、測定に関する当該例外規定を適用した影響を利益剰余金期首残高の調整として認識することが提案されている。この際の利益剰余金の調整額は、以下(1)と(2)の差額となる(投資先における公正価値の変動のうち、その他の包括利益の累積額に残存している金額があれば、それについても利益剰余金に調整する)。

  1. (1)投資先の純資産の従前の帳簿価額
  2. (2)提案されたIFRSを最初に適用した日時点の投資先の公正価値

発効日

公開草案に、発効日は含められていない。しかし、IASBは以前の審議において、2013年1月1日から適用することを提案していた。これは、IFRS第10号の発効日と同じである。これにより、IFRS第10号への移行が1回で済むことになる。

弊社のコメント
以前連結していた企業を連結除外し、新しい開示規定に準拠するためにシステム及びプロセスを修正するにあたり、作成者にどの程度の時間が必要になるかが考慮されなければならない。



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