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IFRS Developments

リース会計-貸手のリース処理のさらなる変更:投資不動産リースへのオペレーティング・リース処理の適用

2011.10.28
重要ポイント
  • IFRSでは、貸手が投資不動産をリースする場合には、原価モデルを適用していても、現行のオペレーティング・リースの会計処理が適用される。
  • 投資不動産のリースと短期リースを除き、リースの貸手は、原資産の帳簿価額を、借手に付与する使用権部分と貸手に残存する部分に配分する。
  • リースの開始日に利益を認識する際に必要とされていた「利益が合理的に確実視されている」という要件が削除される。

概要

国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、両審議会)は、2011年10月の審議会で、2011年7月に暫定決定していた貸手の会計処理案1を大きく変更した。この変更は、両審議会でのさらなる検討及び関係者からのコメントによるものである。

7月の審議会では、貸手は、短期リース及び公正価値で測定される投資不動産のリースを除くすべてのリースについて、「債権及び残余アプローチ」という単一の方法を適用することが暫定的に決定されていた。その後の10月の審議会で、両審議会は原価モデルが適用される投資不動産のリースの貸手についても例外規定を設け、貸手はそのようなリースに現行のオペレーティング・リースの会計処理を適用することを暫定的に決定した。

また、両審議会は、債権及び残余アプローチを適用するリースについて、リース期間にわたり残余資産を増加させることにより認識される収益の計算方法を変更した。さらに、本アプローチでは、リースの開始日に、原資産の帳簿価額のうち借手に付与される使用権部分について、合理的に確実視されていれば利益を認識することになっていたが、この「利益が合理的に確実視されている」という要件を削除することも暫定的に決定された。

両審議会は2012年上半期にリース基準に関する草案を再度公開する予定である。

リースの貸手の会計処理である債権及び残余アプローチは、投資不動産のリースには適用されない

債権及び残余アプローチの下では、貸手はリースの開始日に、原資産の帳簿価額のうち借手に付与される使用権部分の認識を中止し、(もしあれば)利益を認識する

貸手の会計処理

両審議会は、すべてのリースの貸手の会計処理に、債権及び残余アプローチを適用することに合意した。ただし、以下のリースは除外されている。

  • 投資不動産のリース:IAS第40号「投資不動産」に規定されている投資不動産の定義を満たせば、原価モデルを適用している場合でも、現行のオペレーティング・リースの会計処理が適用される。
  • 短期リース:貸手は、短期リースにつき、現行のオペレーティング・リースの会計処理を適用するという会計方針を選択できる。短期リースとは、更新オプションを含め継続する期間が最長で12ヵ月以内であるリースをいう。

弊社のコメント
貸手が投資不動産をリースしている場合に債権及び残余アプローチを適用しないことになれば、不動産の貸手の多くは現行のオペレーティング・リースの会計処理を継続して適用することになると思われる。投資不動産のリースの貸手にオペレーティング・リースの会計処理を適用させることが暫定的に決定されたことにより、借手に関しても、不動産リースを含むすべてのリースについて単一の損益認識方法を適用するという従前の決定内容について、再検討が求められる可能性がある。
さらに、機器リースの貸手から、除外対象がなぜ投資不動産だけなのか、という疑問が数多く寄せられるかもしれない。

債権及び残余アプローチ

債権及び残余アプローチの下で、貸手はリースの開始日に以下の処理を行うことになる。

  • リース料を受け取る貸手の権利について、リース料受取債権を認識する
  • リースされる原資産の帳簿価額を、借手に付与する使用権部分(リース部分)と貸手に残存する部分(すなわち残余資産)に配分する
  • 原資産に係わる利益(たとえば、原資産の公正価値と帳簿価額の差額)があればその総額を測定し、リース部分に関連する利益を認識する

リース料受取債権は、リース期間にわたり支払われるリース料を、貸手が借手に課す利子率を用いて割り引いた現在価値で当初認識される。このとき貸手は、残価保証の受取金額がリース期間の終了時まで認識されない点を除き、借手に適用されるものと同じ規定を用いてリース期間及びリース料を決定することになる。

原資産の帳簿価額は、リース部分と残余資産に配分される。配分方法は、リース料の現在価値と原資産の公正価値の比率に基づくものとされている(ただし、この配分方法は今後の審議会で見直される可能性がある)。

貸手の貸借対照表に計上される残余資産は、原資産の帳簿価額から認識を中止する金額を控除することにより当初測定される。たとえば、前述の配分方法を前提に考えると、リース料受取債権が原資産の公正価値の70%で評価されている場合には、原資産の帳簿価額の70%は認識を中止し、残りの30%は残余資産として計上される。

認識されたリース料受取債権と認識を中止した原資産の帳簿価額の差額は、リースの開始日に利益として認識される。この利益は、資産のリース部分に関連する利益である。

たとえば、利益の総額(原資産の公正価値と帳簿価額の差額)が100で、原資産の帳簿価額の70%について認識を中止する場合、利益のうち70がリースの開始日に認識されることになる。

現行のファイナンス・リースの会計処理では、当初に認識される利益は、資産全体の売却益を反映したものとなっており、リースされる部分だけを反映したものではない。

今回の提案に基づけば、前述の配分方法で測定される残余資産は、「残余総額(繰延利益を含めた残余資産、リース終了時における残余資産の公正価値の現在価値)」と「繰延利益」という2つの要素から算出されると考えられる。各要素は、リース期間にわたり認識される増加利益を計算するのに必要となる。

残余総額は、リース期間終了時における原資産の公正価値の予想金額を、貸手が借手に課す利子率を用いて割り引いた現在価値に相当する。また、繰延利益(利益総額のうち当初に認識されなかった部分)は、残余総額から控除する。つまり、認識される残余資産の金額は、残余総額から繰延利益を控除した金額となる。

リース期間にわたり、貸手は、リース料受取債権に係る利息収益及び残余資産の増加による利益を認識することとなる。利息収益及び増加利益は、貸手が借手に課す利子率を用いて計算される。また繰延利益は、リース期間にわたり一定額となる。したがって、リース期間の終了時点で、残余資産は、(当初に見積られた)原資産の公正価値の予想金額から繰延利益を控除した金額に等しくなる。

弊社のコメント
リース基準に関する草案の再公開までに、両審議会が他の重要な論点を再検討するか否かは、現時点で定かではない。

設例1:債権及び残余アプローチ

貸手がCU7,500の機械を製造し、その機械について3年間のリース契約を借手と締結した。リースの開始日の機械の公正価値はCU10,000であり、毎期末にCU2,400の年間リース料が支払われる。貸手は、リース期間終了時における機械の公正価値をCU4,770と見積っている。また、リース料受取債権及びリース期間終了時における原資産の公正価値を割り引いた現在価値は、それぞれCU6,200、CU3,800である。割引率は7.9%(貸手の計算利子率)を用いている。

以下の表は、債権及び残余アプローチの下で認識される金額を示している。

期間 リース料
受取債権
残余総額 繰延利益 残余資産 認識される利益 現金
受領額
開始日 CU6,200 CU3,800 (CU950)A CU2,850B CU1,550C
第1年度 4,288 4,099 (950) 3,149 787D CU2,400
第2年度 2,225 4,422 (950) 3,472 660 2,400
第3年度 4,770 (950) 3,820 523 2,400
合計         CU3,520 CU7,200
  1. 残余部分の総額と残余資産の差額(3,800-2,850)、あるいは認識されない利益([10,000-7,500]-1,550)として計算される。
  2. 以下のとおり当初測定される。
    [7,500-(7,500×(6,200/10,000))]
  3. リースの開始日に、リース料受取債権(6,200)と認識を中止する原資産の帳簿価額の部分(原資産7,500-残余資産2,850)の差額が利益として認識される。これは、利益総額の62%(6,200 / 10,000)となる。
  4. リース期間にわたり認識される利益は、割引率7.9%(貸手の計算利子率)を用いて計算される。



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