アシュアランス
IFRS Developments

再公開草案「収益認識」
不動産業及び建設業への影響

2012.02.21
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重要ポイント
  • IASBとFASBは2011年11月14日に統一した収益認識モデルの再公開草案(以下、再EDという。)を公表した
  • 新たな基準は不動産業及び建設業にとって重要なIAS18「収益」、IAS11「工事契約」、IFRIC12「サービス委譲契約」、IFRIC15「不動産の建設に関する契約」、IAS40「投資不動産」、IAS16「有形固定資産」の基準及び解釈に重要な置換えあるいは修正を加えるものである
  • 新基準の発効は2015年1月1日より前になることはないと想定されている。再EDにおいて、遡及適用が提案されており、若干の移行措置が設けられている
  • 両審議会は2012年3月13日まで再EDに対するコメントを募集している

概 要

国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、両審議会という。)は2011年11月に「顧客との契約から生じる収益」の会計処理について再EDを共同で公表した。概念レベルでは、再EDで提案されている5つのステップから構成される収益認識モデルは2010年に公表された旧公開草案(以下、旧EDという。)におけるモデルと同様である。また、「支配」(IAS18の「リスク・経済価値アプローチ」と対照的に)が顧客に移転した時点で収益を認識するという基本原則も旧EDと同様である。しかし、両審議会は旧EDの内容を変更しており、これらは不動産業及び建設業に影響を与えることになる。

再EDでは:

  • 企業は特定の要件を満たす場合に2つ以上の契約を結合することができる
  • 企業は特定の要件を満たす場合に複数の財又はサービスを単一の履行義務とすることができる
  • 複数の財又はサービスを単一の履行義務としてひとまとめにできる場合、契約当初に損失が認識されるケースが減る
  • 契約前のコストに関する会計処理が変更される
  • 独立した履行義務として取り扱われる保証は限られている

両審議会は財又はサービスに対する支配の移転する時期、あるいは一定期間にわたって充足される履行義務の充足する時期の判定基準を設けている。
本稿では不動産業及び建設業(不動産投資信託(REIT)、ファンド及びハウスメーカーを含む)に与える重要な影響について検討している。再EDについてより詳しく知りたい場合には、IFRS Developments 第18号:公開草案「顧客との契約から生じる収益」を再公表(2011年11月)を参照のこと。

弊社のコメント
再EDでは多くの検討課題が残されているものの、旧EDにおいて不動産業及び建設業から提起された多くの課題について対応している。

工事・開発契約-履行義務の充足

不動産の工事契約の条項は事業の種類の違いによって多種多様である。またそれは国によっても異なっている。再EDが提案する契約に対する会計処理は契約に含まれる特定の条項に影響を受けるので、個々の契約に対してそれぞれ異なる会計処理が適用される可能性がある。

開発契約

再EDでは「支配」を重視したアプローチを採用している。収益は契約上の財又はサービスに対する支配が顧客に移転されることにより、識別された履行義務が充足された時点でのみ認識される。履行義務は一時点で又は一定期間にわたり充足される。再EDは顧客が一時点で支配を得たかどうかを判定する際に役立つ指標を提供している。

これらの指標には物理的な占有権、資産に対する支払いを受ける現在の権利、所有権の移転、リスクと経済価値の移転、契約の解除権、そして顧客による検収を示す証拠が含まれる。
履行義務は以下の条件を満たす場合、一定期間にわたって充足される。

  1. a.資産が創出されるか又は増価するに従い、顧客が支配する資産が創出されるか又は増価する
    又は
  2. b.代替的用途のある資産が創出されず、かつ、
    1. (i)企業がその義務を履行するのに応じて、顧客も便益を受け取り消費する
      又は
    2. (ii)他の企業が現時点までに実施された作業をやり直す必要がない
      又は
    3. (iii)企業が現時点までに完了した履行についての支払いを受ける権利を有し、かつ、約束どおり契約を履行すると見込まれている

再EDにおいて、契約資産は企業が「契約上も実務上も容易に資産を他の顧客に振り向けることができない」ときには、代替的な用途はないとされている。これは、不動産会社が特定の住宅を特定の顧客に売却する契約を結ぶのであれば、その企業にとってその住宅には代替的な用途がないことを意味する。企業は当初の顧客との契約を解除しない限り、他の顧客との契約を履行し、その住宅を売却することができないからである。
以下、ハウスメーカー業界で一般的な3種類の契約形態において、再EDの要件をどのように考慮すべきか検討する。

タイプA:業者は分譲するユニット(例えば、マンションの一室等)の大半について販売契約が成立し、開発資金が確保されるまで業務を開始しない。買手は通常、特定のユニットに対して返金不可能な手付金を支払い、業者が事業に失敗しない限りは契約の解除権を持たない。買手は将来の分割払いを建設の進捗に応じて業者から請求される。
買手が契約しているのは、業者により仕様の変更又は他のユニットとの交換が不可能であるような特定のユニットなので、当該ユニットは代替的な用途を持たない。当該業者が履行した業務に対して支払いを受ける権利を持っているため、この契約はb(iii)の要件に該当する可能性がある。しかし、b(iii)を適用するには、支払いを受ける権利と現在までに履行した業務との相関が必要である。
再EDは進行に応じて受ける支払いがファイナンスを意味するのか、あるいは資産の支配が顧客に移転したと判断するのかについての決定方法について取り扱っていない。さらに、再EDは業者が貸借対照表から棚卸資産を払い出す方法や顧客が工事の進捗に伴って不動産を計上する方法といった仕掛品(WIP)の会計処理についても触れていない。これらの点については再EDで触れられていないため、企業は他のIFRSを参照する必要がある

タイプB:業者は自己資金を使用して不動産を建設し、開発期間中にユニットの販売を行う。買手は特定のユニットに対して手付金を支払い、当該ユニットが完成し、所有権が移転した際に未払残高を支払う。契約条件上、買手は当初支払った手付金を放棄する以外のペナルティーを負担することなく契約を解除することができる。
この場合も特定のユニットに対する顧客との契約は固有のものであり、業者にとってユニットの代替的な用途はないと結論付けることができる。この契約は他の業者に進行中の工事の再施工を求める必要がなければb(ii)の要件に該当する可能性がある。b(ii)は、当該契約の当事者である業者によって支配されている資産(例えば、仕掛品等)に対して、他の業者はいかなる便益も保有していないという前提を有している。完成品を販売する契約における仕掛品の支配の移転は契約条件及び適用地域の法的フレームワークに大きく依存することになる。したがって、この契約は完成時点など一時点で支配が移転するものに含まれる可能性もある

タイプC:契約当初に土地の所有権が業者から買手に移転する。当該土地上に建物が建設されるにつれ、建物の所有権は買手に移転する。買手は工事の進捗に応じて支払いを行う。この契約は不動産の建設期間中に業者が買手の支配下にある資産を創出又は増価させるので上記のa.の要件に該当する可能性がある

弊社のコメント
一見すると、再EDでは異なる法的なフレームワーク下では異なる会計処理を行う結果となるように思われる。企業はケースごとに支配の移転が一時点か一定期間で行われるのか、評価する必要がある。
再EDにおける一定期間にわたる移転(継続的な移転)の適用要件はIFRIC15で現在求められている要件とは異なる。この相違により履行義務が一定期間にわたって充足されるかどうかを決定する場合には、現在の会計処理とは異なる結果になる可能性がある。
再EDは進行に応じて受ける支払いがファイナンスを意味するのか、企業の履行義務の充足の測定指標となるのかについて言及していない。したがって、現行実務との整合性や判断が求められるようになると思われるが、一定期間にわたり収益を認識するかどうかの判断基準は、非常に重要なので、慎重に評価しなければならない。

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