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IFRS Developments

IASBとFASBがリース新基準開発における主要論点で一部乖離

2014.03.31
重要ポイント
  • 借手の会計処理に関して、IASBは単一アプローチを支持したのに対し、FASBは2タイプ・アプローチを支持した。両審議会は、このような根本的な相違があるにもかかわらず、基準をコンバージェンスするための解決策を探る決意を再表明した。
  • 貸手の会計処理に関して、両審議会は、現行の会計基準から大幅に変更する意図はなく、2タイプ・アプローチを維持することとした。
  • 2013年5月の公開草案の内容を簡素化するために、リース期間や短期リースに関する例外措置などの論点で、暫定的な決定がなされた。

概要

国際会計基準審議会(IASB)と、米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、両審議会)は、2013年5月の公開草案に対して、「会計処理があまりに複雑である。また、適用にあたりコストがかかりすぎる。」という、コメント提供者からの問題提起を受け、その内容を簡素化する方法を検討している。

両審議会は、借手にほとんどのリースをオンバランスさせ、基準をコンバージェンスするための解決策を探る決意を再表明した。一方で、借手の会計処理の簡素化を検討した2014年3月のディスカッションにおいて、両審議会の間には解消し難い見解の相違が存在することが浮き彫りとなった。

2014年3月の審議会では、公開草案の提案内容1を簡素化するために、リース期間や短期リースに関する例外措置などの論点で、暫定的な決定がなされた。

借手側の会計処理

両審議会は、借手のリース資産及びリース債務の事後測定に関し、以下の2つのアプローチを検討した。

  • 単一アプローチ:借手が、すべてのリースをタイプA『すなわち、リースをファイナンス(資金調達)と捉える』として会計処理することを求める(基準の適用対象外のリースを除く)。したがって借手は、使用権資産及びリース料支払債務を貸借対照表に認識し、負債にかかる利息費用及び使用権資産の償却費は、別個に損益計算書に表示する。
  • 2タイプ・アプローチ:IAS第17号「リース」における分類の原則を用いて、リースをタイプA『すなわち、リースをファイナンス(資金調達)と捉える』又はタイプB『すなわち、通常は定額法により費用を認識するリース』のいずれかに分類する。いずれのタイプも使用権資産及びリース料支払債務を認識することになるが、タイプにより費用認識方法及び表示が異なる。

IASBは単一アプローチを圧倒的に支持しているが、FASBは2タイプ・アプローチを圧倒的に支持している。

IASBメンバーは単一アプローチを支持しており、すべてのリースにファイナンスの要素が含まれていることを理由として、当該アプローチが概念的に最も整合したアプローチであると考えている。また、ほとんどのリースについて、利息費用及び償却費を別個に表示することになるため、財務諸表の利用者にとっても有益であると考えている。

FASBメンバーは2タイプ・アプローチを支持しており、本プロジェクトの第一の目的が、財務諸表作成者及び利用者を大きく混乱させることなく、借手がリースをオンバランスすることにあると考えている。したがって、2タイプ・アプローチによれば、現行基準のリースの分類原則を用いることになり、移行時や移行後の基準適用などの点で、作成者にとって適用コストがそれほどかからないと考えられている。さらに利用者にとっても慣れ親しんだ分類原則に基づくことにより、リースに関してより有用な情報が提供されると考えられている。

弊社のコメント

両審議会がそれぞれ異なるアプローチを支持したことにより、最終基準において借手の会計処理に相違が生じる可能性が生じている。両審議会は、相違することになるリスクは認識しているようであり、今後も協力して相違の解消に努めると述べている。

貸手側の会計処理

両審議会は貸手の会計処理に関して、以下の2つのアプローチを検討した。

コメント・レターや他のフィードバックによると、財務諸表利用者を含むコメント提供者の大多数が、貸手の会計処理に関して、現行の2タイプ・アプローチの維持を支持していた。当該コメントを受けて、両審議会は、現行のIAS第17号の分類原則(これは、米国の会計基準(ASC)第840号「リース」と類似しているが同一ではない)を用いる2つのアプローチを検討した。いずれのアプローチにおいても、所有に伴うリスクと経済価値のほとんどすべてを移転するリースは、タイプA(現行のファイナンス・リースに類似)に分類される。それ以外のリースは、すべてタイプB(現行のオペレーティング・リースに類似)に分類される。

IASBとFASBによるアプローチの違いは、一定のタイプAリースに生じる売却益(原資産の公正価値がその帳簿価額より大きい場合)の認識に関するものである。IASBは、貸手の視点からリスクと経済価値のほとんどすべてが移転しているか否かを評価することが、適切であると考えている。すなわち、貸手は「ほとんどすべて移転しているか」を評価する際に、他の当事者に移転されたすべてのリスクと経済価値を検討する。これには、借手以外の当事者に移転されたリスクと経済価値(たとえば、貸手以外の第三者が、貸手に提供する残価保証など)も含まれる。

一方でFASBは、リスクと経済価値のほとんどすべてが移転しているか否かの評価は、借手の視点のみから評価することが適切であると考えている。すなわち、借手以外の第三者に移転されたリスクと経済価値については検討されないこととなる。

弊社のコメント

いずれのアプローチであっても、貸手の会計処理は、公開草案による提案ほどには、大幅に変更されないと考えられる。

その他の暫定決定事項

両審議会は、リース期間(当初リース期間及び再評価)、ポートフォリオ・アプローチの使用、借手の少額リース、及び短期リースによる例外措置に関して、暫定決定を行った。このような変更は、公開草案の提案内容に対して、「便益を上回るコストが生じる」というコメント提供者からの問題提起を受けて見直されたものである。

リース期間-延長及び解約オプション

両審議会は、延長又は解約可能オプション(さらにはリース資産を購入するオプション)を有するリースに関して、リース期間の決定の際には「確度の高い閾値」を設けるべきであることを確認した。両審議会は、この「確度の高い閾値」を説明するための用語を、IAS第17号で用いられている「合理的に確実視」という用語に変更した。両審議会はまた、「合理的に確実視される」という用語は、ASC第840号の「合理的に保証される」という用語と同義であるとした。したがって、新基準への移行にあたり、実務を変更しなければならないと受け止められることがないよう、それまで提案していた「重要な経済的インセンティブ」という用語は使用されないこととなった。

また借手は、自身の支配の及ぶ重要な事象の発生又は状況変化が生じた場合に限り(市場に起因する要因は除く)、リース期間を再評価しなければならないことが暫定決定された。両審議会は、そうした事象が発生するのは稀であると考えている。一方で貸手は、借手と同じ方法で開始日にリース期間を決定するが、借手と異なり、リース期間の再評価は行わないとした。

ポートフォリオ・アプローチ

コメント提供者の多くが、複数の同種車両のリースのように、個々には少額であるが件数が多く、総じて類似する特徴を有するリースに関して、2013年の公開草案の提案では「便益を上回るコストが生じる」と問題提起した。そこで両審議会は、借手及び貸手が個々のリースごとではなく、ポートフォリオによるアプローチを用いて、基準を適用できることを暫定決定した。企業は、個々にリース基準を適用する場合とポートフォリオ・アプローチを適用する場合とで、「重大な」相違が生じないと「合理的に予想」される場合にポートフォリオ・アプローチを用いることができる。ただし、両審議会が、「重大な」や「合理的に予想」をどのように定義するかは、明確にされていない。ポートフォリオ・アプローチは公開草案で取り上げられておらず、多くの関係者がポートフォリオ・アプローチは認められないと予想していた。しかし、IASBはポートフォリオ・アプローチに関するガイダンスを最終基準の適用指針に含めることを決め、FASBは結論の根拠に含めることにしている。

少額リースに関するその他の例外規定(借手のみ)

両審議会は、少額リースの借手に対して、一定の重要性基準値に基づいた免除規定の導入を検討したが、最終的には棄却した。また両審議会は、一部の少額資産のリース(オフィス備品のリースなど)を適用対象外とする措置についても検討した。しかし、FASBメンバーは総じてこの措置に反対であった。両審議会は、どのような種類の資産が少額リースの要件を満たすのか、またさまざまな業界において、この例外措置が企業の財務データにどう影響するかをIASBスタッフが調査した後、改めて将来の会議で本論点を検討する予定である。

弊社のコメント

少額リースに関する例外措置は、単一アプローチの支持者にとって、より重要な論点になると考えられる。

短期リース

公開草案では、借手は、すべてのオプション期間を含む契約上最長となるリース期間が12カ月以内となるリースについて、その資産の種類ごとに公開草案の認識及び測定の適用対象外とする会計方針を選択できることが提案されていた。これに関して両審議会は、「短期リース」の期間は、12カ月以内であることを確認した。

一方で、両審議会は、「短期リース」の定義と「リース期間」の定義を統一することを暫定的に決定した。したがって、リース期間に、借手がリース期間延長又は解約オプションを行使することが合理的に確実視される期間を加味した期間が12カ月以内であれば、借手において当該リースが短期リースとなる。この変更により、例外措置の適用要件を満たすリースの数は増加すると考えられる。なお、短期リースにつき企業が例外措置を適用するという会計方針を選択した場合には、短期リースに関する一定の定性的及び定量的情報の開示が求められる。

次のステップ

両審議会は今後の会議で、借手の会計処理、貸手の会計処理、少額資産のリース、及びその他の論点(リースの範囲、定義など)について引き続き検討していく予定である。再審議は、2014年を通じて継続することが予想される。

  1. IASBに掲載されている公開草案「リース」及び弊法人刊行物「公開草案「リース」(2013年5月)の解説」を参照されたい。


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