アシュアランス
IFRS Developments

リースとは何か:IASBとFASBは、リースの定義に関する決定を先送り 
リース・プロジェクトにおけるそれ以外の論点は進展

2014.06.12
重要ポイント
  • IASBとFASBは2014年5月の会議で、2013年のリースの共同提案を明瞭かつ簡略化するための方法を引き続き審議した。
  • 両審議会は、リース要素と非リース要素をどのように区分するか、契約対価を各要素にどのように配分するか、及び初期直接コストの会計処理について同一の結論に至った。
  • 両審議会は、リースの定義については決定を先送りした。その代わりスタッフに対して、定義に関する文案を作成し、提案されている定義がどのように適用されるかについて説明する例示をさらに作成するよう指示した。

概要

国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、両審議会)は、借手に大半のリースのオンバランス化を求める2013年の提案1を引き続き再審議した。両審議会は5月の会議では、リースの定義、リース要素と非リース要素の区分、及び初期直接コストの会計処理に重点を置いた。

両審議会は、リースの定義がリースの最終基準を実務に適用する際の基礎となることを当然に認識している。そのため、スタッフに対してリースの定義を一層明確にするための推奨されるアプローチをさらにとりまとめるよう指示した。ただしリースの定義以外の論点については、両審議会は同一の決定に至っている。これにより、コメント提供者等の関係者から2013年の提案に対して受けた「複雑すぎる」及び「適用のコストが高い」という懸念に対処しつつ、国際会計基準(IFRS)と米国会計基準(US GAAP)の相違を最小限に抑えるための方法を引き続き審議する意思を示したといえる。借手と貸手の会計モデル案2に関しては、前回の審議においてIASBとFASBで基本的な違いが生じている。これを両審議会がいつ再検討するか、それ以前に再度検討をするのかどうかさえ、依然として不透明である。両審議会の今回の決定も、これまでの決定と同様に暫定的なものである。

リースの定義

両審議会は5月の会議において、リースの定義を決定するには至らなかった。その代わり両審議会は、2013年の提案の明確化を目指すスタッフの提言を引き続き検討していくこととした。同提案の定義によると、以下を検討することにより、契約にリースが含まれるかどうかを決定することになる。

  • 契約の履行が、識別された資産の使用に左右されるか。
  • 契約は対価と交換により、一定期間にわたり識別された資産の使用を支配する権利を移転するか。

スタッフは、両審議会はこの原則を維持すべきであるが、契約が識別された資産に左右されるかどうか、そして識別された資産の使用を支配する権利を企業が有しているかどうかをどのように評価すべきかに関して、その方法を明確に示すべきであるとの提言を行った。

識別された資産

2013年の提案では、供給者が取替えに関する実質的な権利(すなわち、顧客の承諾を得ることなく供給者は資産を取り替えることができ、そこには何の制約も存在しない)を有している場合には、資産は識別された資産にはならないとするものであった。スタッフは5月の会議で、以下の要件のいずれかが満たされる場合には、契約の履行は識別された資産の使用に左右されるであろうことを両審議会が明確にすべきであると提言した。

  • 供給者は代替資産に取り替える実際の能力を有していない(例:顧客が取り替えることを拒否できる、又は供給者は代替資産を合理的な期間内に提供することができない)。
  • 供給者が代替資産に取り替えることで便益を享受することはない。

どちらかの要件が満たされるかを評価することが実務上不可能な場合には、顧客にとって契約の履行は、識別された資産に左右されていると推定されることになる。一方の供給者は、このような判断のための十分な情報を通常は保持しており、同様の推定は必要ないと考えられた。

両審議会による決定には至らなかったが、供給者と顧客は当該要件を定性的に適用するであろうことを示唆した。

識別された資産の使用を支配する権利

2013年の提案では、資産の使用を指図し、かつ資産の使用から生じる潜在的な経済的便益のすべてを実質的に享受する能力を有している場合には、識別された資産の使用を支配する権利を有することになるであろうとされていた。これに対しては、重要なサービスを伴う取決めなど、より複雑な取決め(例:電力供給契約や石油掘削装置)においては、識別された資産の使用を指図できる能力を顧客が有しているかどうかを判断するためには、さらなるガイダンスが必要であるという指摘があった。

このような指摘に対処するため、顧客が識別された資産の使用を指図する能力をどのような場合に有することになるかについて、企業の判断方法に関するガイダンスを追加で提供すべきであるとスタッフが提言した。たとえば、資産の使用により得られる経済的便益に最も重要な影響を及ぼすことになる決定の特定方法や、供給者と顧客の双方が意思決定する権利を保持している場合に、どちらの当事者が経済的便益に最も重要な影響を及ぼすことになるかの特定方法がある。

この提言は「支配する権利」という概念を、現行の連結原則や両審議会が2014年5月28日に公表した新たな収益認識基準3にさらに密接に一致させるものであるように思われる。またスタッフは、供給者のサービスの提供に資産が伴うかどうかを判断するための2013年の提案における一定のガイダンスについては、リースの最終基準からは削除すべきであるとの提言を行った。

弊社のコメント

両審議会は、スタッフの提言を全般的に支持しているようである。ただし、リースの定義に関する決定がされるまでは、2013年の提案に対する懸念がどのように払拭されていくかは不明である。

重要な決定

リース要素と非リース要素の区分

両審議会は以下に関して、2013年に提案されたガイダンスを維持することで一致した。

  • 借手が使用権から便益を得ることができ(それ単独、又は他の容易に利用可能な資源と共に)、原資産が契約における他の原資産に依存していない、又は強く相互関連していない場合には、個別のリース要素(すなわち複数の使用権を含む契約となる)を識別する。
  • 契約のリース要素と非リース要素を区分し、契約対価を各要素に配分する。

ただし2013年の提案からは変更となるが、両審議会は借手が、原資産の種類ごとにリースと非リース要素を単一のリース要素として会計処理する会計方針の選択を認める簡便法を設けることで合意した。

契約の構成要素の識別

両審議会は、契約に定められる活動(又は貸手のコスト)で、借手に追加で財やサービスを提供することのないものは、リース要素や非リース要素とは考えられず、借手と貸手は契約対価をそのような活動(又は貸手のコスト)に配分してはならないことを決定した。これにはたとえば、特定の管理費が考えられる。

両審議会は議論において、サービスの提供(例:共有部分の保守)や、原資産の操作(例:貨物船の傭船、航空機リースなど)、さらに借手が消費したユーティリティの代金の支払い等の活動やコストは、非リース要素となるであろうことに合意した。

契約対価の配分

両審議会は上述の簡便法を考慮のうえで、借手に関しては、契約対価を各要素の単独の価格に比例してリース要素と非リース要素に配分することで一致した。借手は利用可能な場合には、観察可能な単独の価格を用いることになる。しかし両審議会は、観察可能な単独の価格が利用できない場合には、借手については、単独の見積価格を使用できることを明確にした。単独の価格を見積るに際しては、借手は、観察可能な情報を最大限用いた上で、首尾一貫した見積方法を採用する必要がある。これは、IFRIC第4号「契約にリースが含まれているか否かの判断」やASC第840号「リース」に定められる借手が契約対価を配分する方法に類似すると考えられる。

両審議会は、貸手に関しては、契約対価を契約のリース要素と非リース要素とに配分するために、新たな収益認識基準を適用すべきことを確認した。

両審議会はまた、契約の対価の再配分に関しても決定に至った。借手は、別個の新たな契約として会計処理されることのない契約の条件変更、リース期間や借手の購入オプションの再評価の時点で、対価を再配分することになる。したがってこれは、借手がオプションを行使することが合理的に確実であるかには左右されないことになる。貸手は、別個の新たな契約として会計処理されることのない条件変更の時点で、契約の対価を再配分することが求められる4。貸手に関して、別個の新たな契約につながる条件変更では、新たなリースと同様に、対価を必要に応じてリース要素と非リース要素に配分することが求められる。

初期直接コスト

両審議会は、初期直接コストとしての要件を満たすのは、増分コストのみであるとすることで一致した。手数料などのコストは、リースが取得されていなければ(すなわち契約が締結されていなければ)、発生していなかったであろうと考えられる場合に、増分コストに該当することになると考えられる。借手の観点からは、初期直接コストは、新たな収益認識基準の増分コストの概念と整合することになる。両審議会はまた、借手と貸手は初期直接コストについては同じ定義を用いることも明確にした。

2013年の提案と同様に貸手は、タイプAリース(通常は現行基準でいうファイナンス・リース)に関しては、初期直接コストをリース債権の当初測定に含めることになる。ただし両審議会は、リースの開始時に売却利益を認識するタイプAリースに関係する初期直接コストは、リースの開始時点で費用化しなければならないことを明確にした。貸手は、タイプBリース(通常は現行基準でいうオペレーティング・リース)に関連して生じる初期直接コストは、2013年の提案と同様に、リース収益と同じ基準でリース期間にわたって認識することになる。

両審議会は、借手の使用権資産の当初測定には、初期直接コストを含めることで一致した。リースの条件変更により、初期直接コストの定義を満たす借手のコストは、新たな使用権資産の測定(別個の新たなリースとなる条件変更)又は使用権資産の調整(別個の新たなリースとならない条件変更)に含まれる4

弊社のコメント

増分コストのみが初期直接コストとしての要件を満たすことを明確にする両審議会の決定は、IFRSについては、IAS第17号「リース」の増分コストに関するIFRS解釈指針委員会の最近の議論と整合するものである。一方で、両審議会の決定は、US GAAPについては、現行実務への2つの重要な変更につながることになろう。すなわち、貸手の初期直接コストからは、配賦された内部コスト(例:給与)や、リースが締結される前に生じたコスト(例:弁護士費用、税務に関する助言費用)が除かれることになる。

次のステップ

両審議会は2014年6月に、残価保証、サブリース及びセール・アンド・リースバックの会計処理について再審議する予定である。

リースの最終基準が2014年内に公表されることはないと予想される。

  1. ASBのウェブサイトに掲載されている公開草案「リース」を参照
  2. EYのIFRS Development第75号「IASBとFASBがリース新基準開発における主要論点で一部乖離」を参照
  3. IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」
  4. EYのIFRS Development第76号「IASBとFASBのリース・プロジェクトが進展」を参照


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