アシュアランス
IFRS Developments

IASBとFASBがセール・アンド・リースバック取引、及び貸手の開示を審議

2014.08.08
重要ポイント
  • 両審議会は2014年7月の共同会議においても、2013年のリースに関する共同提案を明確化・簡略化するための方法を引き続き審議し、貸手の大半の開示規定、及びセール・アンド・リースバック取引の会計処理の一部に関して、同一の決定に至った。
  • IASBは、セール・アンド・リースバック取引において、売手/借手(当初所有者)が認識する利得について、即時に認識することに制限を課すことを決定した。
  • FASBは、売手/借手(当初所有者)は、リースバック取引がタイプAに該当するのであれば、当初の売却処理は行われないが、リースバック取引がタイプBに該当するのであれば、当初の売却取引に関して、利得を即時に全額認識すべきことを決定した。

概要

国際会計基準審議会(以下IASB)と、米国財務会計基準審議会(以下FASB)(総称して両審議会)は、借手にリースの大半をオンバランスすることを求める2013年の共同提案1の審議を引き続き行った。

両審議会は2014年7月の共同審議において、貸手の大半の開示規定、及びセール・アンド・リースバック取引の会計処理の一部に関して、同一の決定に至った。 ただし、売手/借手(当初所有者)の利得の認識と、セール・アンド・リースバック取引におけるタイプAリースバックの会計処理に関しては、両審議会は異なる決定に至った。またFASBは、一部の論点の決定を先送りし、さらに調査を重ねることをスタッフに指示している。

以前のIFRS Developments 75において説明したように、FASBは、借手の会計処理に関して、2タイプ・アプローチ(すなわちタイプAとタイプBの2種類のリースに区分する)を志向しているが、IASBは、少額リースの免除規定を設けた上で、タイプAリース・モデルに一本化することを志向している。両審議会の借手のモデルでは、短期リースに関する認識及び測定の免除規定が設けられることになるであろう。今回の両審議会の決定は、これまでと同様、暫定的なものである。

重要な決定

セール・アンド・リースバック取引

両審議会は2013年の提案と同様に、売手/借手(当初所有者)は、セール・アンド・リースバック取引において、売却が成立しているかを判断するために、共同で策定した新たな収益認識基準(IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」)における売却の定義を用いるべきことを決定した。すなわち売手/借手(当初所有者)は、買手/貸手(資金提供者)が原資産の支配を獲得しているかどうかを評価することになる。この原資産の支配とは、資産の使用を指図し、資産から生じる残りの便益の実質的にすべてを獲得できることを意味している。また両審議会は、リースバック取引が存在すること自体では、売却が成立していることを否定することにはならないという従前の決定を再確認した。ただしどちらの審議会も、状況次第では売却が否定されることもありうるものとした。

FASBはリースバック取引が、売手/借手(当初所有者)の観点からタイプAリースに該当するのであれば、売却や購入は成立していないであろうとした。FASBは、タイプAリースが、実質的には資金提供を受けての原資産の購入に該当すると考えている。したがって、売手/借手(当初所有者)が、売却と同時に買い戻す原資産に関して、当初の取引を売却として会計処理することは不適切となる。一方、IASBは、単一のリース会計モデル(少額資産のリースには免除規定を適用)を志向していることから、この論点については議論していない。

新たな収益認識基準と整合させるためIASBは、売手/借手(当初所有者)が原資産を買い戻す実質的なオプションを有している場合には、買手/貸手(資金提供者)は原資産の支配を獲得していないと考えられることから、売却と購入は成立していないとすることを決定した。しかし買戻オプションが付されていても、それが実質的でなければ(例:原資産の耐用年数が終了する時点でのみ行使可能なオプション)、当初の売却の処理が否定されることはないであろう。一方のFASBは、実質的な買戻オプションにより、当初の売却が否定されるかどうかの決定を先送りすることとし、さらなる分析を進めるようスタッフに指示している。FASBは特に、行使時点の公正価値により原資産を買い戻すオプションが付与されている場合に、当初の売却が否定されることになるかを問題としていた。

IASBはスタッフによるさらなる追加分析を実施するが、当初の売却が成立していない場合には、売手/借手(当初所有者)、及び買手/貸手(資金提供者)は、取引を金融取引として会計処理すべきことを決定した。FASBは、当初の売却が成立していないとされたセール・アンド・リースバック取引における負債を、金融債務として会計処理すべきか、それとも他の債務として会計処理すべきかについては決定していない。ただしFASBはこの論点について、さらなる調査を進めるようスタッフに指示している。

売却の会計処理

両審議会は、買手/貸手(資金提供者)が、セール・アンド・リースバック取引により原資産の支配を獲得する場合(すなわちFASBの提案では、リースバック取引がタイプBに該当する場合)には、買手/貸手(資金提供者)は、他の基準に基づいて資産の購入処理を行い、リースバック取引については提案されている貸手の会計処理に従って処理することを決定した。両審議会は売手/借手(当初所有者)は、以下を行うことを決定した。

  • 原資産の認識を中止する
  • リースバック取引に関するリース負債と、使用権資産を認識する(IASBは少額資産のリースに関する免除規定を定めている。短期リースに関しては、IASBとFASBとも免除規定を定めている)
  • 損失の場合には、即時に認識する(オフマーケット条件について調整)

両審議会は、売手/借手(当初所有者)は、売却(オフマーケットの条件について調整)により利得が生じる場合に、これをどのように認識すべきかについて、異なる決定に至った。FASBは売手/借手(当初所有者)は、利得の全額を即時に認識することを決定した。一方でIASBは、売手/借手(当初所有者)が即時に認識する利得は、残余資産(すなわち買手/貸手(資金提供者)に移転した原資産の残余持分)に関係する部分に限られると判断した。残余の利得(すなわちリースバック取引部分に関係する利得)は、使用権資産の当初測定額の減額として認識され、リースバック期間にわたる使用権資産の償却額の減少として反映されることになる。このIASBのアプローチによると、取引の対象資産が同じであっても、リースバック期間が原資産の耐用年数の大部分を占める取引は、リースバック期間がより短い取引と比べると、売手/借手(当初所有者)が即時に認識する利得は小さくなるであろう。

弊社のコメント

両審議会の今回の決定により、セール・アンド・リースバック取引において即時に認識される利得に関して、IFRSと米国会計基準に新たな違いが生じることになり、同様の取引であってもその会計処理が異なることになるであろう。

両審議会は2013年に、売手/借手(当初所有者)(及び買手/貸手(資金提供者))は、セール・アンド・リースバック取引における売却価格(及び購入価格)に関するオフマーケット条件について調整すべきことを提案した。たとえば取引には、公正価値によらない売却価格や、市場金利によらない支払リース料が含まれることがある。両審議会は2014年7月の会議において、この点を再確認した上で、企業は原資産の公正価値や市場条件による支払リース料のうち、より容易に判断できる証拠を用いて、オフマーケット条件に関する調整を行うことを明確にした。企業がいずれの測定値が最も適しているかを判断する際には、観察可能な価格や情報を最大限利用することが求められる。

売却価格(又はリース料支払総額)が、原資産の公正価値(又は市場におけるリース料支払総額)を下回る場合には、売手/借手(当初所有者)は、使用権資産の当初測定値を増加させることになる。この処理は、提案されている前払リース料の会計処理に類似している。売却価格(又はリース料支払総額)が、原資産の公正価値(又は市場におけるリース料支払総額)を上回る場合には、売手/借手(当初所有者)は、リース負債とは別個に追加で金融負債(すなわち買手/貸手(資金提供者)からの追加の資金調達)を認識することになる。 このように買手/貸手(資金提供者)は、オフマーケット条件に関し原資産の購入価格を調整することになる。このような調整は、売手/借手(当初所有者)によりなされる前払リース料、又は売手/借手(当初所有者)に提供される追加の資金調達として認識されるであろう。

リースバック取引の会計処理

両審議会は、売却が成立していると認められる場合には、売手/借手(当初所有者)、及び買手/貸手(資金提供者)は、他のリースと同じ方法により、リースバック取引を会計処理すべきことを決定した。すなわち、それぞれ借手の基準、貸手の基準に従うことになり、またオフマーケット条件に関して調整することになる。

移行措置

両審議会は、以前にセール・アンド・リースバック取引として会計処理された取引に関する移行措置についても議論することを予定していた。しかし両審議会は、リースの草案全体の移行措置について再審議するまで、議論を先送りにすることにした。

貸手の開示規定

また両審議会は、2013年提案に示されていた貸手の開示規定は、その多くを維持する決定を行った。これには、例えば以下の項目が挙げられる。

  • リースの性質に関する情報(例:全般的な説明、リースを延長又は解約するオプションの有無や条件)
  • リースを会計処理するに際しての重要な仮定や判断(例:契約にリースが含まれるかどうかの判断、契約価格の配分)
  • リース資産の残余価額に関して生じる貸手のリスクの管理方法に関する情報。ただし、すべてのリースに関し提供される情報は除く(当初の提案のようにタイプAのみに限定されるわけではない)
  • 報告期間に認識されたリース収益の一覧。これには、タイプAリースからの収益(すなわち、リース開始時点における損益や、利息収益)や、タイプBリースからの受取リース料や、受取変動リース料がある。
  • タイプAリース債権により構成される割引前キャッシュ・フローの満期分析(貸借対照表日後5年間は毎年、その後は総額)と、貸借対照表(又は注記)に表示されているリース債権への調整表
  • タイプBリースに関して、受領する割引前リース料支払総額の別個の満期分析(貸借対照表日後5年間は毎年、その後は総額)

また両審議会は、提案されていた貸手側の開示規定を以下のように一層簡略化することを決定した。

  • 貸手が、タイプAリースに対する純投資から生じる受取利息を、合算して又は個別に、純投資(すなわちリース債権及び残余資産)の構成要素ごとに、リース収益一覧に表示することを認める。
  • IASB― 貸手のタイプAリースについて、リース債権と残余資産(すなわち純投資)の期首残高から期末残高への増減明細を求めることはなく、タイプAリースに対する純投資の残高の重要な推移を定量的かつ定性的に説明することを求める。
  • FASB― 貸手に関し、タイプAリースの残余価値の重要な推移を定量的かつ定性的に説明することを求める(純投資のうちリース債権部分の重要な変動の開示は、米国会計基準に従って行われる)。

また両審議会は、タイプBによりリースされる資産に関しては、貸手は有形固定資産に関し現在求められるものと同じ情報2(例:主な項目ごとの残高、減価償却累計額、減価償却を計算する方法の一般的説明)を開示すべきことを決定した。

次のステップ

両審議会がリースの最終基準を公表する前に、IASBは、少額資産のリースに関する認識及び測定の免除規定、借手の開示と経過規定をはじめとする、いくつかの残された論点を再審議する予定である。両審議会は、リースの定義について、いつ、どの程度まで議論するのか、さらには議論自体を行うかどうか明らかではない。またFASBは独自に、レバレッジド・リース、非公開企業及び非営利に関する論点を議論する予定である。


  • 1 IASB公開草案「リース」を参照されたい。
  • 2 IAS第16号「有形固定資産」及びASC360-10「有形固定資産」を参照されたい。



情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?