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IFRS Developments

IASBが新たなリース基準を公表

2016.04.05
重要ポイント
  • IASBが公表した新基準では、借手はほとんどのリースを貸借対照表に認識することが求められる。
  • 借手はすべてのリースに関して単一の会計モデルを適用することになるが、一定の免除規定が設けられている。
  • 貸手の会計処理は、基本的には変更されていない。
  • IFRS第16号は、2019年1月1日以降開始する事業年度から適用され、一定の要件を満たす場合には早期適用も認められる。

概要

国際会計基準審議会(IASB)は、IFRS第16号「リース」(以下、IFRS第16号又は新基準)を公表した。IFRS第16号では、借手はほとんどのリースに関して資産及び負債を認識することが求められる。一方で、貸手の会計処理に関しては、現行基準であるIAS第17号「リース」から基本的に変更はない。

IASBは、IFRS第16号を米国財務会計基準審議会(以下、FASB)との共同プロジェクトの一環として公表した。FASBは新たなリース基準を未だ公表していないが、IFRSと同様に、借手はほとんどのリースを貸借対照表に認識することが想定されている。ただし、IASBとFASBは審議の過程で一部の論点について異なる決定を下しており、両基準間では差異が存在することになる。(たとえば、FASBの基準では、借手にもリースの分類の判定が求められる)

IFRS第16号は、2019年1月1日以降開始する事業年度から適用される。早期適用も認められるが、その場合には、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を既に適用しているか、IFRS第16号と同日に適用する必要がある。

主な留意点

契約にリースが含まれているか否かの判断

新基準では、リースは、「資産を使用する権利を一定期間にわたり、対価と交換に移転する契約又は契約の一部」と定義されている。リースに該当するためには、契約は「識別された資産の使用を支配する権利を移転」するものでなければならず、識別された資産は、建物のフロアのように物理的に区分可能な資産の一部である場合もある。

顧客が資産の使用期間全体を通じて、以下の両方の権利を有する場合には、契約は「識別された資産の使用を支配する権利を移転」することになる。

  • (1)顧客が識別された資産の使用から生じる経済的便益のほとんどすべてを得る権利
  • (2)識別された資産の使用を指図する権利(すなわち、資産の使用方法及び使用目的を指図する権利)
弊社のコメント

顧客が識別された資産の使用を指図する権利を有しているか否かの決定には、重要な判断が必要になると考えられる。特に契約に重要なサービスが含まれている場合には留意が必要である。新基準は、契約がリースの定義に該当するか否かを判断する際の新たな要件を定めているが、我々は、通常、現行基準と同様の結論が導かれることになると考えている。

契約におけるリース構成要素と非リース構成要素の識別及び区分ならびに契約対価の配分

多くのリース契約には、リース取引のみならず、リース以外の財又はサービスを購入又は売却する合意(例:維持管理のような非リース構成要素)が含まれることがある。こうした契約では、非リース構成要素はリース構成要素と区別して識別し会計処理される。ただし、借手は実務上の簡便法として、会計方針の選択により、原資産の種類ごとにリース構成要素と非リース構成要素を一つのリース構成要素として会計処理することができる。借手がこの実務上の簡便法の適用を選択しない場合には、契約対価を、各独立販売価格の比率に基づいて、リース構成要素と非リース構成要素に配分することになる。貸手は、契約対価を配分する際には、IFRS第15号を適用することが求められる。

借手の会計処理

〈当初認識及び測定〉

借手は、リース料の支払義務であるリース負債と、リース期間にわたり原資産を使用する権利である使用権資産を当初認識する。

リース負債は、リース期間にわたり支払われるリース料総額の現在価値に基づいて測定される。使用権資産は、前払リース料、受領したリース・インセンティブ、借手の初期直接コスト(例:手数料)及び解体、撤去ならびに原状回復の見積コストを調整したリース負債の金額で当初測定される。

借手は、会計方針の選択により、原資産の種類ごとに、リース期間が12カ月未満のリース(短期リース)については、IAS第17号のオペレーティング・リースの会計処理と同様に、リース資産とリース負債を認識しないことができる。また、借手は、原資産が少額な(少額資産)リースについては、リースごとに、現行基準のオペレーティング・リースと同様の会計処理を適用することができる。

〈事後測定〉

借手は、利息の計上に伴いリース負債を増額し、リース料の支払に伴いリース負債を減額する。一方、使用権資産は、IAS第16号「有形固定資産」に従って減価償却を行う。定額法により使用権資産の減価償却を行う場合、リース負債から生じる支払利息と使用権資産に係る減価償却費の合計額は、一般的にリース期間の初期においてより大きくなる。借手は、一定の事象(例:リース期間の変更、指数又はレートに応じて決まる変動リース料の変更)が発生した時点でリース負債を再測定し、通常は使用権資産を調整する。

借手は、IAS第16号及びIAS第40号「投資不動産」に従い、事後測定として再評価モデルを使用権資産に適用することができる。

なお、使用権資産に関しては、IAS第36号「資産の減損」に従い、減損テストの実施が求められる。

〈表示〉

使用権資産は、他の資産と区分して貸借対照表に表示するか、注記において個別に開示する。リース負債も同様に他の負債と区分して貸借対照表に表示するか、注記において個別に開示する。損益計算書においては、減価償却費と支払利息を合算することは認められない。キャッシュ・フロー計算書においては、リース負債の元本の返済は財務活動に表示され、支払利息はIAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」に従い、選択された会計方針に基づいて表示される。

貸手の会計処理

〈当初認識及び測定〉

新基準における貸手の会計処理は、現行のIAS第17号の会計処理から基本的に変わらない。貸手は、IAS第17号と同じ原則を用いて、すべてのリースをオペレーティング・リース又はファイナンス・リースに分類する。

オペレーティング・リースに関しては、貸手は原資産の認識を継続する。

ファイナンス・リースに関しては、貸手は原資産の認識を中止し、現行基準と同様に、正味リース投資未回収額を認識する。また、販売損益はリースの開始時点で認識される。

〈事後測定〉

オペレーティング・リースに関しては、貸手は、定額法又は原資産の使用から生じる便益の逓減パターンをより適切に表す他の規則的な方法により、リース収益を認識する。

ファイナンス・リースに関しては、貸手は、受取利息の認識に伴い正味リース投資未回収額を増額し、受領したリース料は正味リース投資未回収額から減額する。正味リース投資未回収額は、IFRS第9号「金融商品」の認識の中止及び減損に関する規定が適用される。

セール・アンド・リースバック取引

売手(借手)及び買手(貸手)は、IFRS第15号の要求事項に基づき、セール・アンド・リースバック取引において売却が生じたか否かを判断する。IFRS第15号の要件に従い、原資産の移転が売却と判断された場合には、借手と貸手は、当該取引をセール・アンド・リースバック取引として会計処理する。IFRS第15号の売却の要件が満たされない場合、売手(借手)と買手(貸手)は、当該取引をファイナンス取引として会計処理する。

弊社のコメント

新基準では、セール・アンド・リースバック取引において売却が生じたか否かを判断することが求められ、これにより現行実務に大幅な変更が生じると考えられる。たとえば、IAS第17号では、リースバックがオペレーティング・リースに該当するか、ファイナンス・リースに該当するかに焦点が置かれており、売手(借手)に対して、セール・アンド・リースバック取引が資産の売却の要件を満たすかどうかを判断することは明示的には求められていない。我々は、新基準では通常は、セール・アンド・リースバック取引として会計処理される取引が減少すると考えている。

経過措置

新基準では、借手は、移行日に存在するリースに関して、完全遡及適用アプローチ又は修正遡及適用アプローチのいずれかを用いることができ、一定の免除規定が設けられている。

次のステップ

IFRS第16号は、特に借手の処理に関して現行のリース基準から大幅に変更されている。企業は可能な限り早急に初期評価を実施し、リース会計がもたらす影響を把握すべきと考えられる。また、新基準の適用に必要な情報の収集を確実にするため、(内部統制を含む)プロセスやシステムを整備する必要があると考えられる。

その他の資料

今後、EYのApplying IFRSシリーズの発行を予定しており、設例を交えてIFRS第16号の詳細な解説を行う。




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