アシュアランス
IFRS Developments

非金融商品項目の購入又は 売却契約の現物決済 (IFRS第9号)

2019.01.22
重要ポイント
  • IFRS解釈指針委員会は、コモディティなどの非金融商品項目で現物決済される購入又は売却契約を締結する企業が、その決済を総額ベースで計上し、IFRS第9号に従って、当該契約をデリバティブとして純損益を通じて公正価値で計上すべきと結論付けた場合に生じる問題点を検討した。
  • 具体的には、決済前に計上された契約の再測定により生じる利得又は損失を決済時点で戻入れ、(売却の場合には)収益もしくは(購入の場合には)棚卸資産の修正項目とすべきかが検討されたが、IFRS解釈指針委員会は、そのような処理はIFRS第9号の規定に整合しないと結論付ける暫定的アジェンダ決定を公表した。

背景

IFRS解釈指針委員会(以下「解釈指針委員会」)は、コモディティなどの非金融商品項目の購入又は売却契約に生じる問題点を議論した。要望書提出者は、その要望書において2通りのファクトパターンを説明している。1つは、企業が固定価格でコモディティを将来購入する契約であり、もう1つは、企業が固定価格でコモディティを将来売却する契約である。いずれの場合も、企業は当該契約を、純損益を通じて公正価値で測定するデリバティブとして会計処理するが、原商品の引渡し、又は受取りによって契約を現物決済している。

これらのファクトパターンでは、現金若しくは他の金融商品での純額決済又は金融商品との交換によって決済でき(よって当該契約を金融商品であるかのように取り扱う)、IFRS第9号「金融商品」の2.4項の「自己使用に関する例外措置」に該当しない(もしくはIFRS第9号2.5項に従ってFVPLに指定されている)と結論付けられていた。したがって、IFRS第9号が適用され、FVPLで測定するデリバティブとして会計処理される。なお、当該契約は会計上ヘッジ指定されていない。

要望書は、このような売買契約から生じる収益を、総額ベースで認識する会計方針であることを前提としている。コモディティ決済時の会計処理では、支払った現金(購入契約の場合)又は受け取った現金(売却契約の場合)を計上し、デリバティブの認識を中止する。その時点で、

  • 決済日時点で、棚卸資産をコモディティの市場価格で認識する(購入契約の場合)

または、

  • 決済日時点で、収益をコモディティの市場価格で認識する(売却契約の場合)

この点を以下に例示する。

購入契約

A社は20X1年12月1日に、コモディティを20X2年1月5日に、固定価格CU100で購入する契約を締結する。契約締結時点では当該契約はアット・ザ・マネーにあり、その公正価値はゼロである。A社の期末日は20X1年12月31日である。同日時点でコモディティの先渡価格が上昇し、その結果、契約の公正価値はCU10増加した。したがって、A社はCU10のデリバティブ資産とCU10の利得を認識する。

(借方) デリバティブ資産  CU10

(貸方) その他の営業収益/費用  CU10

A社は20X2年1月5日に、コモディティの引渡を受け、現金CU100を支払い、契約を決済する。20X1年12月31日から20X2年1月5日にかけ、契約の公正価値は変動しなかった。A社は、以下の仕訳により、棚卸資産の受領及びデリバティブ資産の決済を認識する。

(借方) 棚卸資産  CU110

(貸方) デリバティブ資産  CU10

(貸方) 現金  CU100

売却契約

事実関係は、コモディティを購入するのではなく売却するという点を除き、先の購入契約と同様である。A社は、20X1年12月31日にCU10のデリバティブ負債とCU10の損失を認識する。

(借方) その他の営業収益/費用  CU10

(貸方) デリバティブ負債  CU10

20X2年1月5日に以下の仕訳記帳を行う。

(借方) 現金     CU100

(借方) デリバティブ負債 CU10

(貸方) 収益  CU110

要望書では、上記契約の現物決済の会計処理において、以下の追加仕訳が許容されるのか、それとも求められるのかが照会された。

  • デリバティブについて過去に認識した利得又は損失の累計額の戻し入れ(デリバティブの公正価値は不変であるが)

及び

  • 収益(売却契約の場合)もしくは棚卸資産(購入契約の場合)

のいずれかに対し、それに対応する修正を認識する

上記の2つの例において、修正は以下のようになる。

購入契約

(借方) その他の営業収益/費用  CU10

(貸方) 棚卸資産  CU10

売却契約

(借方) 収益  CU10

(貸方) その他の営業収益/費用  CU10

結果、棚卸資産又は収益は、市場価格ではなく契約価格で計上されることになる。

解釈指針委員会によると、このような追加仕訳により、契約をデリバティブとして会計処理することを求めるIFRS第9号の規定が実質的に無効化されてしまうことになる。デリバティブを公正価値で測定することから生じる利得又は損失の累計額を何の根拠もなく戻し入れることになるからである。また、このような追加仕訳により、存在しない収益又は費用を認識する可能性がある。

また、解釈指針委員会によれば、IFRS第9号における自己使用の例外に該当しない(したがってデリバティブとして会計処理される)契約の会計処理は、当該例外に該当する(したがってデリバティブとして会計処理されない)契約の会計処理とは異なる。同様に、会計上、ヘッジ指定された契約の会計処理は、ヘッジ指定されていない契約の会計処理とは異なる。IFRS第9号は、契約が最終的には現物で決済されることのみを理由として、デリバティブ契約の会計処理を見直す、又は変更することを、容認も要求もしていない。

したがって、解釈指針委員会は、要望書における追加仕訳は、IFRS第9号の規定に整合しないと結論付けている。さらに、解釈指針委員会は、現行のIFRSにおける諸原則及び諸規定が、要望書における追加仕訳がIFRS第9号の規定に整合しているかを企業が判断するための適切な基礎を提供していると結論を下している。したがって、解釈指針委員会は、本件を基準設定アジェンダに追加しないことを決定している。

弊社のコメント

従前は、デリバティブとして計上される契約に関するIAS第39号「金融商品:認識及び測定」又はIFRS第9号の規定と、通常の事業活動におけるコモディティの売買に適用されるより一般的な会計処理との関係が明確ではなかった。例えば、売却契約が、原商品の引渡で総額決済される場合、一部の企業は、その引渡を総額で収益計上し、売上原価と相殺している。他方、決済額を純額で損益に計上する企業もある。実際、取引が行われたビジネス・モデルに応じて異なる会計処理を適用している場合もある。例えば、自社で生産するコモディティの供給及びリスクを管理するようなビジネス・モデルでは、関連取引は総額で表示されるかもしれないし、トレーディングを行うビジネス・モデルに関する取引は純額で表示されるかもしれない。さらに、そうした総額表示された収益は、以前であればIAS第18号「収益」の適用対象になるものと一般的に理解されていたが、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の適用対象となるかは幾分不透明であり、実務でも見解は統一されていない。そうした状況にもかかわらず、解釈指針委員会は、どのような状況で売却契約の現物決済を総額表示、もしくは純額表示すべきかについては検討していない。さらに、認識した総額ベースでの収益及び購入した棚卸資産の測定にのみ焦点を当て、そのような総額ベースの収益がIFRS第15号の適用対象になるかどうかについても検討していない。

暫定アジェンダ決定におけるアプローチを適用するのに必要なシステムの更新や統制の変更は、多くの企業にとって非常に重要となるであろう。

このアジェンダ決定は暫定的なものでコメント募集中であり、2019年3月以前にアジェンダ決定が最終化され公表されることはないと見込まれる。しかし、我々は、当該決定が最終アジェンダ決定公表前に今と大きく変わることはないとみている。

暫定アジェンダ決定におけるアプローチとは異なるアプローチを現在適用している企業は、暫定アジェンダ決定の最終化の前に発行する財務諸表において、その会計方針を変更することも考えられる。それにより、暦年決算の企業は、IFRS第9号適用初年度において修正を行うことができ、翌会計年度に比較数値を修正する必要性がなくなると考えられる。しかし、必要なシステムや統制の変更を考えると、最終アジェンダ決定が公表される前に発行される財務諸表に当該アプローチを適用することは、多くの企業にとって現実的ではなく、その必要もないと我々は考えている。暫定アジェンダ決定が仮に2019年の早い段階で最終化された場合、財務諸表作成者は、監査人と協力して、いつの時点で解釈指針委員会の結論を適用すべきか検討する必要があり、同時に規制当局の見解にも留意する必要がある。

暫定アジェンダ決定はIFRS第9号にのみ言及している。しかし、IAS第39号にも適用可能であるとする見解に立ったうえで、比較数値を含む、IAS第39号に従って作成した情報を修正することができると我々は考えている(ここでは比較数値を修正せずにIFRS第9号を適用していると仮定している)。すなわち、暫定アジェンダ決定の内容がIFRS第9号適用初年度の比較期間にも反映されることで、比較数値の比較可能性が増すことになると考えられる。




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