アシュアランス
IFRS Developments

IBOR改革:IASBの提案 パート3

2019.05.23
重要ポイント
  • IASBは2019年5月3日に、IBORからRFRへの移行に伴う不確実性にかかわらずヘッジ会計を継続適用するための救済措置を定めるため、IFRS第9号及びIAS第39号の改訂案に関する公開草案を公表した。
  • 本公開草案のコメント募集期間は45日であり、コメント期限は2019年6月17日である。コメント募集期間は、本論点の緊急性を考慮して、通常より短く設定されている。
  • IASBは、IBORがRFRに移行した時に財務報告に影響を与える可能性のある論点及びその救済措置に関する議論はまだ開始していない。

はじめに

国際会計基準審議会(以下、IASB又は審議会)は2019年5月3日、公開草案「金利指標改革-IFRS第9号及びIAS第39号の改訂案」(本公開草案)を公表した。本公開草案のコメント期間は 45日であり、コメント期限は2019年6月17日である。コメント募集期間は、本論点の緊急性を考慮して、通常より短く設定されている。

本公開草案は、銀行間調達金利指標(IBOR)が財務報告に及ぼす影響に対応するプロジェクトの一環として、IASBの決定を説明し、それに対するコメントを募集している。IASBは本プロジェクトを2段階に分けている。

  • 第1段階では、既存の金利指標を実質的に無リスクの代替的金利(RFR)に置き換える前の期間における財務報告に影響を与える論点を取り扱う。
  • 第2段階では、既存の金利指標をRFRに置き換える時に財務報告に影響を与える可能性のある論点に焦点をあてる。

IASBは2019年2月と3月の会合で一定の暫定的決定に至っており、今回の公開草案は本プロジェクトの第1段階における次の重要なステップとして、IFRS第9号「金融商品」及びIAS第39号「金融商品:認識及び測定」の改訂を提案している。

我々は、IFRS Developments 第144号と第145号で、これらの会合で行われた暫定的決定の要点を解説し、IBOR改革の背景を説明している。 IASBは、本プロジェクトの第2段階で生じる論点の検討はまだ開始していない。本稿では本公開草案の概要を解説し、我々の予備的見解も説明する。

IFRS第9号の改訂案

本公開草案では、特定のヘッジ会計の適用に関する一時的な例外規定が提案されている。

改訂案には、IFRS第9号に関するいくつかの救済措置が定められている。当該救済措置は、IBOR改革によって影響を受ける金利リスクに関するすべてのヘッジ関係に適用される。IBOR改革によってヘッジ対象又はヘッジ手段の金利指標に基づくキャッシュ・フローの発生時期及び(又は)金額に不確実性が生じる場合、ヘッジ関係に影響が生じると考えられる。

救済措置の適用は強制される。最初の3つの救済措置は、以下に関するものである。

  1. 予定取引(又はその構成要素)の可能性が非常に高い かどうかの判定
  2. キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金の金額の純損益への振替時点の判定
  3. ヘッジ対象とヘッジ手段との間の経済的関係の評価

各救済措置では、ヘッジされているキャッシュ・フロー(契約上定められているかどうかに関係なく)の基礎となる金利指標が、IBOR改革の結果として変更されないものと仮定され、3つ目の救済措置では、さらにヘッジ手段から生じるキャッシュ・フローの基礎となる金利指標がIBOR改革の結果として変更されないものと仮定されている。

4つ目の救済措置では、IBOR改革に影響を受ける金利リスクの指標要素のヘッジについて、リスク要素が独立して識別可能であるとする規定を、ヘッジ関係の開始時にのみ適用しなければならないと定められている。

なお、救済措置の適用は限定することを意図している。結論の根拠には、救済措置を適用できない場合が例示されている。例えば、IBOR改革から生じる不確実性により負債が期限前償還される場合には、金利指標に基づくキャッシュ・フローの発生可能性が依然として非常に高いと仮定することができないとしている。また、ヘッジ手段のキャッシュ・フローをRFRに基づくように修正するが、ヘッジ対象が依然としてIBORに基づく場合(またはその逆の場合)、公正価値の変動の違いにより生じる非有効性の測定及び認識に関する救済措置は定められていない。

救済措置の終了

救済措置1と2に関しては、金利指標に基づくヘッジ対象のキャッシュ・フローの時期及び金額に関し、IBOR改革から生じる不確実性がもはや存在しなくなった時、もしくは

  • 救済措置1については、ヘッジ対象がその一部となっているヘッジ関係が終了した時
  • 救済措置2については、当該ヘッジに関してキャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金に累積された金額の全体が純損益に振り替えられた時

のいずれか早い方の時点でその適用を終了しなければならない。

救済措置3は、次の時点でその適用を終了しなければならない。

  • ヘッジ対象については、IBOR改革から生じる不確実性が、金利指標に基づくヘッジ対象のキャッシュ・フローの時期及び金額に関してもはや存在しなくなった時
  • ヘッジ手段については、、IBOR改革から生じる不確実性が、金利指標に基づくヘッジ手段のキャッシュ・フローの時期及び金額に関してもはや存在しなくなった時
  • ヘッジ関係が上記の2つの時点よりも早く終了する場合には、ヘッジ関係の終了日に救済措置の適用を終了しなければならない。

上述の事象が発生しない限り、救済措置は継続して適用される。本改訂案の結論の根拠において、IBOR改革を予期して契約が修正されるいくつかのシナリオが検討されており、IBOR改革により生じる不確実性が解消される時点が例示されている。ここでの重要なメッセージは、新しい金利指標及び置き換わる時点の双方を明確に定めるよう契約が修正されない限り、大半のケースで救済措置の適用は終了しない、ということである。

開示に関する留意点

救済措置のいずれかを適用しているヘッジ関係について、IFRS第7号「金融商品:開示」で要求されている情報を区分して開示しなければならない。具体的には、ヘッジ手段とヘッジ対象の帳簿価額、公正価値の変動、名目金額、公正価値ヘッジについてはヘッジ対象の帳簿価額、公正価値ヘッジ調整の累計額、及び、キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金残高に関する定量的情報が含まれる。

発効日及び経過措置

本改訂は、2020年1月1日以後開始する事業年度から適用され、早期適用も認められる。本改訂は遡及適用しなければならない。

しかし、本公開草案の結論の根拠では、本改訂の遡及適用は、すでに中止されているヘッジ会計の復活を認めるものではないことや事後的判断での指定は認められないことが明確にされている。

IAS第39号の改訂案

IAS第39号についてもIFRS第9号と同様に改訂が提案されているが、以下の点で異なる。

  • ヘッジの有効性に関する将来に向かっての評価については、ヘッジ対象のキャッシュ・フロー(契約上定められているかどうかに関係なく)の基礎となっている金利指標、及び(又は)ヘッジ手段のキャッシュ・フローの基礎となっている金利指標が、IBOR改革の結果として変更されないものと仮定しなければならない。
  • IBOR改革の影響を受ける金利リスクの指標部分(IFRS第9号のリスク要素ではなく)のヘッジについて、指定される部分が独立して識別可能であるとする規定は、ヘッジ関係の開始時にのみ適用しなければならない。
弊社のコメント

本公開草案の公表は、IASBがIBOR改革により生じる財務報告上の課題に対応する上で重要な節目となる。IASBが当該論点を優先課題として取り上げ、この段階まで作業を進めてきたことは称賛に値する。

契約が新しい金利指標に修正されるまでに生じると認識されていた多くのヘッジ会計上の問題点は、本公開草案によって解消されるものと考えられる。本改訂案を改善するため、いくつかの点で明確化を図ることも考えられるが、これらは比較的マイナーな点であり、IASBが改訂に係る目的の達成に向けて着実に進んでいると我々は考える。

一方、今後はプロジェクトの第2段階に舵を切り、RFRへの移行段階で生じる財務報告上の論点を検討することがIASBにとって重要となる。IBORからRFRへの移行時期は、国や地域によって異なり、金融商品によっても異なると考えられる。このため、第2段階の完了前に契約の修正が始まることが懸念される。例えば、第2段階で定められることが望まれる救済措置が適用されない場合、IBORに基づくキャッシュ・フロー・ヘッジに関するキャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金の累積額は、IBORに関する不確実性が解消する時点で即座に純損益に振り替えなければならない。また、IASBが、IBOR改革の第2段階における論点に十分に対応することができれば、企業は財務報告上生じうる影響(起こりうる結果)に確信を持つことができ、IBORからRFRへの移行がスムーズになると考えられる。




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