アシュアランス
IFRS Developments

IBOR改革:第1段階の最終化

2019.09.10
重要ポイント
  • IASBは、2019年5月の公開草案「金利指標改革」で提案されたIFRS第9号及びIAS第39号の改訂を確認した。
  • IAS第39号の遡及的な有効性評価に救済措置を定めることで合意した。
  • また、複数項目グループのヘッジに関する2つの論点に対応し、もしくは明確化し、救済措置の対象範囲を一定の外国為替ヘッジにまで拡大するとともに、開示規定を単純化することで合意した。
  • 最終改訂は2019年9月中に公表される予定である。

はじめに

国際会計基準審議会(以下、IASB又は審議会)は、2019年5月3日、公開草案「金利指標改革-IFRS 第 9 号及び IAS 第 39 号の改訂案」(本公開草案)を公表した。本公開草案は、銀行間調達金利指標(IBOR)が財務報告に及ぼす影響に対応するプロジェクトの第1段階として、IASB のこれまでの決定を説明し、それに対するコメントを募集していた。IASBは、本プロジェクトを2段階に分けている。

  • 第1段階では、既存の金利指標を実質的に無リスクの代替的金利(RFR)に置き換える前の期間における財務報告に影響を与える論点を取り扱う。
  • 第2段階では、既存の金利指標をRFRに置き換える時に財務報告に影響を与える可能性のある論点に焦点をあてる。

我々は、IFRS Developments第148号で本公開草案について要約している。また、本プロジェクトの背景は、IFRS Developments 第144号及び第145号で説明している。

IASBは、本公開草案に対する関係者からのコメントに対応するため、2019年8月28日に会合を開き、提案内容を確認するとともに、いくつかの改訂を加えることで合意した。

本公開草案の提案内容の確認

IASBは、本公開草案に提案された以下に関する救済措置を確認した。なお、我々はIFRS Developments第148号にて本救済措置の内容を要約している。

  1. 予定取引(又はその構成要素)の可能性が非常に高いかどうかの判定
  2. キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金の金額の純損益への振替時点の判定
  3. IFRS第9号におけるヘッジ対象とヘッジ手段との間の経済的関係の判定、及びIAS第39号に定められる将来に向かっての評価

各救済措置で、ヘッジされているキャッシュ・フローの基礎となる金利指標(契約上特定されているかどうかに関係なく)が、IBOR改革の結果として変更されないものと仮定され、3つ目の救済措置では、さらにヘッジ手段から生じるキャッシュ・フローの基礎となる金利指標が、IBOR改革の結果として変更されないものと仮定されている。

本改訂は、2020年1月1日以降開始する年度から適用され、早期適用も認められる。本改訂は遡及適用しなければならないが、8月の会合で、適用開始日時点で存在しているヘッジ関係にも当該救済措置が適用されることが明確化された。

IASBのさらなる改訂

8月の会合で、IASBは以下の事項を追加で決定した。

  1. IAS第39号AG105項(b)の遡及的な評価に関し例外措置を設け、IBOR改革から生じる不確実性が存在する期間は、ヘッジの実際の結果が80%から125%の範囲を一時的に外れるとしても、当該要件を満たすことを認める。新たに設けられた本例外措置は、適用が義務付けられる。改訂された将来に向かっての評価に関する規定をはじめ、その他のすべてのヘッジ会計規定は満たす必要があり、非有効性が生じた場合は、実際の非有効性金額を測定し、財務諸表に認識することが必要になる。測定方法は、市場参加者のヘッジ対象及びヘッジ手段の評価方法に基づくべきである。当該市場参加者の評価には、IBOR改革により生じる不確実性に対する市場の要求に伴う割引率の増加の影響が含まれる可能性がある。
  2. 「マクロ・ヘッジ」の場合など、ヘッジ対象が指定及び再指定されるヘッジ戦略に関して、「独立に識別可能である」とする規定の救済措置を定める。本公開草案では、契約上特定されていないリスク要素は、IFRS第9号6.3.7項(a)の独立に識別可能であるとする規定を、ヘッジ関係の開始時点でのみ充足すればよいと提案していた。しかし、継続的なヘッジ戦略において、ヘッジ手段及びヘッジ対象がオープン・ポートフォリオに追加もしくは取り除かれる場合、その都度一定の間隔でヘッジ関係の指定を中止し、再指定することが必要になる。再指定は新しいヘッジ関係の開始であると考える場合、本公開草案で提案される例外措置から得られる便益は限定的となる。新たに追加された救済措置では、ヘッジ対象がヘッジ関係に当初指定された時点でのみ、独立に識別可能であるとする規定を満たせばよいと定めている。したがって、ヘッジ関係が当初指定された以降は、再指定されたヘッジ対象に関し当該規定の再評価を行う必要はない。本例外措置は、改革の影響を直接受けるすべてのヘッジに適用が義務付けられる。
  3. 複数項目のグループをヘッジ対象として指定した場合、IBORに関する救済措置の適用がいつの時点で終了するのかを明確化する。本公開草案によると、「可能性が非常に高い」及び「将来に向かっての評価」に関する例外措置は、金利指標に基づくキャッシュ・フローの時期及び金額に関する不確実性がもはや存在しなくなる時点で終了する。複数項目のグループのヘッジに関し、コメント提供者は、この評価を個々の金融商品ベースで行うべきなのか、グループ・ベースで行うべきなのか(したがって、グループ内の最後の項目が新しい金利指標に修正されるまで、グループ内のすべての項目について不確実性が存在しなくなったとはいえない)を明確にして欲しいと要望していた。新たに設けられた規定では、企業が複数項目のグループをヘッジ対象に指定した場合、適用の終了に関する規定は、ヘッジ対象に指定されたグループに属する個々の項目に適用されることが明確化された。
  4. 本救済措置は、ヘッジ関係において、金利リスクのみがヘッジ対象リスクとして指定されない場合にも適用されることを明確化する。これは、金利リスクと外国為替リスクなど別のリスクの双方がヘッジ対象リスクに指定されるような場合に適用される。本改訂により、救済措置は、ヘッジ対象又はヘッジ手段の金利指標に基づくキャッシュ・フローの時期及び金額がIBOR改革により生じる不確実性に直接影響されるすべてのヘッジ関係に適用されることが明確化される。しかし、ヘッジ対象又はヘッジ手段が、単に金利リスク以外のリスクに対して指定される場合、例外措置は、金利指標に基づくキャッシュ・フローにのみ適用されることになる。また、ヘッジ対象は、金利に基づくキャッシュ・フローを有していなければならず、例えば純投資ヘッジには救済措置は適用されないことが、審議会の会合にて明確化された。
  5. 本改訂の適用開始時点において、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」の28項(f)の開示規定の適用を免除し、本公開草案に当初定められていた開示規定を単純化する。利用者に対する非公式のアウトリーチによって、利用者は主にヘッジ関係に例外規定が適用された範囲を理解することを望んでいることが明らかになった。また、利用者は重要な仮定及び判断、不確実性が企業のリスク管理戦略にどのように影響を及ぼしているかに関する定性的開示を望んでいることも判明した。より的を絞った改訂後の開示規定は以下のとおりである。
    • a.企業のヘッジ関係が影響を受ける重要な金利指標に関する記述
    • b.企業はRFRへの移行をどのように管理しているかの説明
    • c.例外規定を適用するにあたり企業が行わなければならなかった重要な仮定又は判断の説明
    • d.IBOR改革に影響されるヘッジ手段の名目金額及びリスク・エクスポージャーの範囲

IASBは、本改訂について改めて公開草案を公表することはないということで合意し、最終的な改訂を2019年9月末までに公表することを念頭に、IFRS第9号の改訂を認めた。

弊社のコメント

プロジェクトの第1段階が完了したことは重要で、我々は、EUが2019年末までに改訂を合理的に承認できるように、IASBがこの論点を優先的に取り上げ、本改訂を公表したことを称賛する。

新しい金利指標に基づき契約が修正されるまでの間、問題になると考えられていたヘッジ会計上の論点が本改訂で解消されると考えられる。

一方、今後IASBはプロジェクトの第2段階に舵を切り、RFR移行後に生じる財務報告上の論点の検討に注力することが重要になる。IBORからRFRへの移行は、国や地域ごとに、さらに金融商品ごとに異なるタイミングで行われることになるが、契約は第2段階が完了する前に修正されると考えられる。IBORが国や地域ごとにどのように入れ替わるかにもよるが、第2段階までに適用が可能になる救済措置がなければ、その他の包括利益に計上されているIBORに基づくキャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金を、IBOR改革から生じる不確実性が解消された時点で純損益に振り替えなければならなくなる可能性が懸念される。IASBが、IBOR改革の第2段階で生じる問題に実質的に取り組むことで、IBORからRFRへの移行がスムーズになると考える。




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