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IFRS Developments

不確実な税務処理に関する資産又は負債の表示

2019.10.21
重要ポイント
  • IFRS解釈指針委員会は2019年9月、企業はIAS第1号を適用し以下の表示をしなければならないとするアジェンダ決定を公表した。
    • 不確実な税金負債を、当期税金負債又は繰延税金負債として表示する
    • 不確実な税金資産を、当期税金資産又は繰延税金資産として表示する
  • 損益計算書における、法人所得税の定義を満たす不確実な税金処理の影響については、「税金費用」として表示する。
  • アジェンダ決定は発効日を定めていないが、企業はアジェンダ決定により生じる会計方針の変更に対応する十分な時間を与えられ、それは一般的に、数年という単位ではなく数ヵ月の単位であると考えるべきである。

論点

IAS第12号「法人所得税」及びIFRIC第23号「法人所得税の税務処理に関する不確実性」(本解釈指針)のいずれも、不確実な税金負債又は不確実な税金資産を財政状態計算書にどのように表示すべきかを明確に規定していない。そのため、実務にばらつきが生じている。不確実な税金負債を当期(又は繰延)税金負債として表示する企業もあれば、引当金など他の勘定科目にそれらの残高を含める企業もみられる。この論点に関する明確化の要請を受け、IFRS解釈指針委員会(以下、解釈指針委員会又は委員会)は2019年9月、アジェンダ決定を公表した。解釈指針委員会は、不確実な税金負債を当期税金負債又は繰延税金負債として、不確実な税金資産は当期税金資産又は繰延税金資産として表示すべきと結論付けた。法人所得税の定義を満たす不確実な税務処理の影響は、従前のアジェンダ決定に従って損益計算書の「税金費用」として表示する。

背景

国際会計基準審議会(以下、IASB)は2017年6月7日にIFRIC第23号を公表し、法人所得税の税務処理に不確実性が存在する場合のIAS第12号の認識及び測定に関する規定の適用を明確化した。

本解釈指針では特に以下の論点が取り扱われている。

  • 企業は不確実な税務処理を別個に考慮すべきか
  • 税務当局による税務調査に関する仮定
  • 課税所得(税務上の欠損金)、税務基準額、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び税率に関する不確実性をどのように考慮すべきか
  • 事実と状況の変化をどのように考慮すべきか

本解釈指針は新たな開示規定を設けていないが、いくつかの既存の規定を強調している。

  • 経営者の判断や、仮定及びその他の見積りに関する情報をIAS第1号「財務諸表の表示」の第122項及び第125項から第129項に従って開示する
  • 税務当局が不確実な税務処理を認容する可能性が高い場合、IAS第12号の第88項を適用し、税金関連の偶発事象として開示すべきかを判断する

解釈指針委員会は2019年6月に、不確実な税務処理に関する負債又は資産の表示に関し提出された文書について議論した。文書の提出者は、財政状態計算書において、不確実な税金処理に関する負債を当期(又は繰延)税金負債として表示すべきかそれとも引当金として表示すべきかを照会していた。同様の質問は、不確実な税務処理に関連する資産についても生じ得ることから、解釈指針委員会は2019年9月にアジェンダ決定を公表した。

IAS第12号における当期税金負債又は資産、及び繰延税金負債又は資産の定義

解釈指針委員会は、法人所得税の税務処理に関する不確実性が存在する場合、IFRIC第23号第4項に従って、企業は、当期税金資産・負債又は繰延税金資産・負債の認識及び測定を、IFRIC第23号を適用して決定した課税所得(税務上の欠損金)、税務基準額、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び税率に基づいて、IAS第12号の要求事項を適用して行わなければならないことに着目した。IAS第12号「法人所得税」第5項は以下の定義を定めている。

  • 当期税金とは、ある期の課税所得(税務上の欠損金)について納付すべき(還付される)法人所得税の金額をいう
  • 繰延税金負債(資産)とは、将来加算(減算)一時差異(繰延税金資産に関しては、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除を含む)に関連して将来の期間に課される(回収される)法人所得税の金額をいう

よって、解釈指針委員会は、IFRIC第23号を適用して認識される不確実な税金負債又は資産は、IAS第12号に定義される当期税金負債(又は資産)あるいはIAS第12号に定義される繰延税金負債又は資産になると判断した。

不確実な税金負債(又は資産)の表示

解釈指針委員会は、IAS第12号及びIFRIC第23号は不確実な税金負債又は資産の表示に関する規定を定めておらず、従ってIAS第1号「財務諸表の表示」の一般的な開示規定が適用されることに留意した。IAS第1号第54項は、財政状態計算書には次の金額を表す項目を掲記しなければならないと定めている。

  • (n) IAS第12号に基づく当期税金に係る負債及び資産
  • (o) IAS第12号に基づく繰延税金負債及び繰延税金資産

IAS第1号第57項は、「第54項は、単に、性質又は機能の違いが十分に大きいことにより財政状態計算書の本体上で区分表示することが必要となる項目を列挙したものである」と述べている。また、IAS第1号第29項は、「企業は、重要性がない場合を除き、性質又は機能が異質な項目を区別して表示しなければならない」と定めている。

したがって、解釈指針委員会は、企業は不確実な税金負債を、IAS第1号第54項(n)の当期税金負債又は第54項(o)の繰延税金負債として、さらに不確実な税金資産を、第54項(n)の当期税金資産又は第54項(o)の繰延税金資産として表示しなければならないと結論付けた。

解釈指針委員会は、IFRSの原則及び規定は、企業が不確実な税金負債及び資産の表示を判断するのに適切となる基礎を示していると結論付け、本論点を基準設定アジェンダに付け加えないこととした。

損益計算書における表示

本アジェンダ決定は損益計算書における不確実な税務処理の表示については何も触れていない。しかし、解釈指針委員会は2012年7月に法人所得税以外の税金納付の表示に関するアジェンダ決定を既に公表しており、その中で、「委員会は、IAS第1号第82項(d)で要求している「税金費用」という科目は、IAS第12号の法人所得税の定義を満たす税金の表示を企業に要求することが意図されている点に着目した。また、委員会は、ある税金が法人所得税の定義を満たすかどうかを決めるのは、関連する税制が定める算定基礎であることにも留意した。税金負債の決済方法や税金の受取者に関する要因は、ある項目が当該定義を満たすかどうかの決定要因ではない。」と述べている。よって我々は、IAS第12号の適用範囲に含まれる不確実な税務処理が純損益に及ぼす影響は「税金費用」として表示しなければならないということを、解釈指針委員会はすでに結論付けていたと考えている。

次のステップ

不確実な税務処理を有する企業は、アジェンダ決定を考慮し、現在の会計方針を変更する必要があるかどうかを判断しなければならない。会計方針の変更は、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って会計処理する必要がある。

アジェンダ決定は発効日を定めていないが、企業はアジェンダ決定により生じる会計方針の変更に対応する十分な時間を与えられ、それは一般的に、数年という単位ではなく数ヵ月の単位であると考えるべきである。

不確実な税務処理の詳細については、弊社刊行物「Applying IFRS - 法人所得税の不確実性に関する会計処理」を参照されたい。




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