アシュアランス
IFRS Developments

IBOR改革:IASB による第2段階の論点の議論(分類と測定)

2019.11.08
重要ポイント
  • IASBは、10月の会議にてIBOR改革で生じる財務報告上の課題に対処するためのIFRS改訂プロジェクトを進めた。
  • 金融商品の分類及び測定に関連して生じる、第2段階の論点への対応策について合意した。
  • 合意した対応策には、既存のIFRSの適用方法の明確化、設例の追加、および必要に応じたIFRSの改訂が含まれる。
  • IASBは、11月の会議にてヘッジ会計に関連する論点を議論する予定である。また、2020年3月末までに第2段階の議論を完了する予定である。

はじめに

国際会計基準審議会(以下、IASB又は審議会)は2019年10月23日の会議で、IBOR改革に関連して生じる財務報告上の論点を取り扱うプロジェクトをさらに進めた。本稿では、暫定的決定について要約したうえで、EYの見解を説明する。

世界の規制当局が銀行間調達金利(IBOR)を代替指標金利又は無リスク金利(RFRs)に置き換える決定をしたことを受けて、IASBは2018年にIBOR改革が財務報告に及ぼす影響に対応するための作業を開始した。IASBは、本プロジェクトを2段階に分けている。

  • 第1段階では、既存の金利指標を実質的に無リスクの代替的金利に置き換える前の期間における財務報告に影響を与える論点を取り扱う。
  • 第2段階では、既存の金利指標をRFRに置き換える時に財務報告に影響を与える可能性のある論点に焦点をあてる。

2019年9月26日、IASBは、「金利指標改革:IFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の改訂」の公表をもって第1段階の作業を完了した。

2019年10月23日、IASBは第2段階の分類及び測定に関する論点についての暫定的結論に達した。IASBは11月および12月にヘッジ会計に関連する第2段階の論点を議論する予定である。

我々は、IASBによる当該プロジェクトの背景をIFRS Developments144号と145号で説明し、第1段階における改訂をIFRS Developments第152号で解説している。

条件変更が生じているかどうかの判断

IFRSは、現在何が金融商品の条件変更に該当するのかを定義していない。例えば、既存の指標金利を設定するために用いられる方法が新たな規制要件を満たすように修正されるが、金融商品の契約条件は何も修正されない場合、金融商品の条件変更に該当するかは明確ではない。

IASBは当該論点を議論し、金融商品の契約条件が変更されない場合でも、契約上のキャッシュ・フローが設定される基礎が、金融商品の契約が最初に締結された時点で当初見込まれていた基礎から変更になる場合、契約の条件変更になるということを明確化するためにIFRSを改訂すべきであるということで合意した。

条件変更が実質的であるかどうかの判断

IFRSは、条件変更が金融負債に及ぼす影響を評価するためのガイダンスを定めており、当初の条件と実質的に異なる条件に変更される場合は、認識の中止として取り扱われる。当該ガイダンスは資産にも類推適用される。

IASBは、IBOR改革を背景に生じる一定の条件変更が実質的なものかどうかを判断するにあたって、定性的に評価できる場合があることに留意した。IASBは10月の会議で、そのような条件変更の例を示すべきかどうかを検討したが、IBOR改革プロジェクトの範囲を拡大する危険性や、第2段階の改訂の最終化を遅らせる可能性があるため、条件変更の例を示さないこととした。

なお、第2段階の改訂の結論の根拠に、条件変更が実質的かどうかの判断に関する既存のガイダンスを作成者が見落とすことのないよう、一定の説明が盛り込まれる可能性もある。

IBOR 改革に関連する条件変更の会計処理

IBOR改革の結果生じる条件変更が実質的とはみなされず、金融商品の認識が中止されない場合、IASBは当該影響をどのように反映すべきか検討した。IASBは、IBOR改革から生じる契約上の変更又はキャッシュ・フローの変更を、変動金利の変動、つまり市場金利の動きに相当する変動として扱うことができるよう実務上の便法をIFRS第9号「金融商品」に設けることで合意した。これは、IBOR指標金利からRFRへの移行によって、価値の移転は生じず、経済的に同等の基礎であると考えられるためである。

実務上の便法を適用する際、企業はまず、IBOR改革に直接関係する金融商品の条件変更を識別し、帳簿価額は修正せず実効金利(EIR)を更新することで会計処理することが求められる。信用スプレッドや満期日など、同時に行われるその他の金融商品の条件変更についても評価し、それらが実質的ではない場合、金融商品の帳簿価額の再計算には更新後のEIRを使用し、条件変更の結果生じる利得又は損失は純損益に認識する。

IBOR改革に関連するとみなされる可能性が高い種類の条件変更の例及び関連するとみなされることのない種類の条件変更の例をIFRS第9号に追加することが合意された。また、異なる種類の条件変更をどのような順序で反映すべきかなど、当該アプローチの適用方法を示す設例も提供されることになる。

条件変更した金融商品の認識の中止が会計処理に与える影響

IASBは、条件変更が実質的であり、金融商品の認識を中止すべきであると判断される場合、既存のIFRSはIBOR改革を考慮した有用な情報を提供しているかどうかを検討した。

  • 金融資産の認識を中止した場合、認識が中止される金融資産の帳簿価額と受領した対価の差額を純損益に認識することが求められる。同様に、金融負債が消滅した場合、金融負債の帳簿価額と支払った対価の差額を純損益に認識する。IASBは、既存のIFRSは、IBOR改革から生じる実質的な条件変更による認識の中止の結果生じる利得又は損失を会計処理するための適切な基準を提供しており、明確化又は追加のガイダンスは必要ないということで合意した。
  • 実質的な条件変更の結果、金融資産の認識を中止し、新たな金融資産を認識した場合、企業のビジネス・モデルは引き続き適切といえるか(変更が必要か)との疑問が生じる可能性がある。IASBは、このような変更自体が、企業のビジネス・モデルの変更に必ずしもつながるものではないと結論付けた。これは、企業は、ビジネス・モデルを、キャッシュ・フローが契約上のキャッシュ・フローの回収から生じるものなのか、金融資産の売却によるものなのか、それともその両方によるものなのかにより、決定するからである。企業の資産管理方法に変更がないことを前提とすると、認識の中止という事象のみによって、ビジネス・モデルを変更することはない。
  • IASBは、「元本及び元本残高に対する利息」(SPPI)の評価に関して、IBORが、例えばバックワード・ルッキング・タームレート(例:過去6ヵ月の平均オーバーナイト・レートを基に決定される今後6ヵ月物レートなど)に置き換わる場合、新たな金融商品の認識時点でSPPI要件を満たさないため、償却原価で計上する要件を満たさないと判断されるかどうかを検討した。IASBは、金利は引き続き貨幣の時間価値を反映し、その他のリスク及び特徴を反映しない場合、新たな金融商品はSPPI要件を満たすと結論付けた。既存のIFRSの原則は十分に明確で追加のガイダンスは必要ないが、ガイダンスを例示する設例を追加することで合意された。
  • IASBは、金融資産の認識を中止し、新たな金融資産を認識した時点で、予想信用損失(ECL)をどのように反映すべきかを検討した。特に認識を中止する以前の金融商品が信用減損している場合、新たな金融商品のECLは12カ月と全期間のどちらを基に算定されるべきかが検討された。条件変更の結果、金融商品の信用力が改善するような場合には12カ月ECLが適切である。しかし、金融商品が組成時にすでに信用減損しているとみなされる場合、信用減損資産の購入に関するガイダンスが適用される。IASBは、既存のIFRSのガイダンスは十分であり、改訂や明確化は必要ないと判断した。
  • IASBは、新しい金融商品が、フォールバック条項(例えば、移行時に、1カ月物LIBORプラス100ベーシス・ポイント(bp)の金利を代替指標金利プラス110bpに修正することを定める)を設けている場合、組込デリバティブとして区分計上する必要があるかを検討した。IASBは、IFRS第9号の現在の適用指針は、作成者がフォールバックの特徴により区分計上が必要かどうか判断するのに十分に明確であると結論付けた。

次のステップ

分類と測定の論点に関し暫定的な結論に達したところで、IASBは次にヘッジ会計に生じる影響を検討する。この議論は11月と12月の会議にて実施される予定である。他のIFRS基準については、新たに識別された論点と開示の議論と合わせて2019年12月から2020年1月にかけて検討されることになる。

予定どおりにスケジュールが進めば、IASBは2020年3月末までには公開草案を公表することができるであろう。仮に第1段階同様、公開草案のコメント募集期間が45日に短縮されるのであれば、第2段階の最終改訂を2020年9月末までに、又はそれ以前に公表することも可能になると考えられる。

企業は2020年、特に上半期にIBORからRFRへの移行計画を加速させる可能性があるため、この公表の時期は重要になる。企業が移行計画を推し進めるためには、第2段階で規定される救済措置が最終基準化され適用可能となることが必要である。


弊社のコメント

IASBは、10月の会議にて、第2段階の論点に関する議論を大幅に進展させた。
我々は、ここでの結論がRFRへの移行時点で生じる分類及び測定に関する問題を実質的に解決することになると考えている。なお、IASBの決定はまだ暫定的なものであり、IASBプロジェクトの第2段階が完了した時点で最終化される点には留意すべきである。

他の要因がなければ、変動IBORから変動RFRへの移行を、変動金利の変更として取り扱うとする実務上の便法が導入されたことを歓迎する。これにより、IFRSの改訂が必要になるが、第2段階完了前に改訂される金融商品の数が限られる場合、条件変更による影響は重要にはならないとも考えられる。

また、IBOR改革から直接生じる変更以外に契約条件の変更がない場合には、実務上の便法を適用することで、条件変更が実質的であるかどうかを評価するために数多くの金融商品を詳細に見直す必要がなくなるとも考えられる。

我々は、IASBの決定により既存のIFRSを改訂する範囲を最小限に留めることを推奨する。また、拡大解釈による問題やIASBが取り組もうとしている以上の意図しない結果が生じるのを防ぐため、IASBがプロジェクトの範囲を合理的に限定していることを好ましいと我々は考える。IASBのこのような対応により、最終改訂の公表は通常よりは早めることができるであろう。




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