アシュアランス
IFRS Developments

資産の意図した使用が可能になる前に稼得される収益

2019.01.14
重要ポイント
  • IASBは2019年6月の会議で、2017年6月に公表した公開草案(ED)に一部修正を行ったうえで、IAS第16号の改訂を最終基準化することで合意した。
  • IAS第16号の当改訂により、資産が利用可能になる前に生産された項目を販売することで得られる収入を、有形固定資産の原価から控除することが禁止され、販売した項目に関する生産コストはIAS第2号に従って識別及び測定されることになる。
  • IASBはまた、2019年10月の会議で、販売した項目が企業の通常の事業活動の過程で生産される項目ではない場合の開示に関する規定についても改訂することで合意した。
  • 当改訂は2022年1月1日から適用され、早期適用も認められる。
  • 当改訂を適用するまでは、企業は引き続き既存の方針を適用する。

概要

国際会計基準審議会(以下、IASB又は審議会)は2019年6月、IAS第16号「有形固定資産」に対する改訂を最終基準化することを決定した。当改訂は、2017年6月に公表された公開草案「有形固定資産-意図した使用前の収入」(当ED)に一部修正を加えたものである。当改訂は、経営者が意図した方法で資産を稼働可能にするために必要な場所及び状態に置くまでの間に生産された項目の売却から稼得される販売収入を、有形固定資産項目の取得原価から控除することを禁止し、それらの販売収入を純損益に認識することを要求している。

本EDに対するフィードバックを受けて、当改訂は以下についても規定している。

  • 有形固定資産項目が利用可能になる前に生産された項目のコストは、IAS第2号「棚卸資産」の既存の測定規定を適用し、識別及び測定する。
  • 企業の通常の事業活動の過程で生産される項目の販売に関しては、特に追加の表示及び開示規定を要求しない。
  • 企業の通常の事業活動の過程で生産されない項目の売却に関しては、追加的な開示を要求する。

IASBは2019年10月に、当改訂を2022年1月1日以後開始する事業年度から適用し、早期適用も認めることで合意した。さらに、企業は当改訂の遡及適用が求められるが、それは適用初年度の財務諸表に表示される最も古い期間の期首以降に利用可能となった有形固定資産項目に限られる。

背景

経営者が意図した方法で資産を稼働可能にするために必要な場所及び状態に置く過程のなかで、収益が稼得される場合がある。そうした状況は鉱業及び石油ガス業界で一般的にみられる。

  • 鉱業:鉱山の意図した使用が可能になる前に鉱石が採掘され、売却されるケースは多い。たとえば、鉱山の評価段階で、最も利益性が高く、かつ最も効率的な開発方法を決定するために「試し堀」が行われる場合がある。また鉱山の建設中(たとえば、目的物たる鉱物を含んだ岩石がある深さまで採掘用の地下坑道を掘る場合)に、販売可能な「生産物」が採掘される場合がある。
  • 石油ガス:油ガス田の開発計画の評価及び具体化の過程の一環で、陸地に長期の生産テストのための坑井が掘削されることがよくある。この期間中、試験的に生産された産出物が販売されることがある。

有形固定資産項目の取得原価

IAS第16号は、有形固定資産項目の取得原価に、当該資産を経営者が意図した方法で稼働可能にするために必要な場所及び状態に置くことに直接起因するコストを含めると定めている。特に、IAS第16号17項(e)では当該コストとして、資産が正常に機能するかどうかの試運転コスト(資産を当該場所に設置し稼働可能な状態にする間に生産した物品(試運転時に製造した見本品等)の販売による正味の収入を控除後)が含まれると定めている。

当改訂は、有形固定資産項目の取得原価から、販売収入を控除することを禁止している。つまり、企業は、適用されるIFRSに基づき、それらの項目を生産するために発生したコスト(生産コスト)を識別するとともに、販売収入を純損益に認識する。当EDに対する数多くのコメント提供者は、有形固定資産項目がいつの時点で利用可能になるのかに関する規定の明確化が必要であると述べた。これは、経営者が意図した方法で項目が稼働可能になる時点で、コストを有形固定資産の取得原価として認識することを終了すると定めるIAS第16号の既存の規定が、技術的な観点から検討されるべきものなのか、それとも財務上の観点から検討されるべきものなのかが不明確なためである。この懸念に対処するため、当改訂は、IAS第16号17項(e)の「試運転」の意味を明確化している。すなわち、資産が正常に機能するかどうかを評価する際、企業は当該資産の財務業績ではなく、技術的及び物理的な成果を評価すると明確に定めている。

原価の配分

当改訂は、資産の意図した使用が可能になる前に販売された数量に関連する生産コストを、別個に識別しなければならないと定めている。つまり、IAS第2号「棚卸資産」の第9項から第33項の測定に関する規定を適用して生産コストを識別及び測定しなければならない。これは、コストの測定方法が明確ではないという懸念に対処すること、コストの識別時の実務上の困難を減らすこと、実務上の判断の必要性を減らすこと、及び実務のばらつきをなくすことを意図している。IASBは、他のIFRS基準に定められる原価の配分についても検討した上で、IAS第2号の適用が適切と結論付けた。なぜならば、IAS第2号は、有形固定資産項目が利用可能になる前に項目が生産される場合と類似した状況で適用される、原価の配分に関する規定を定めているからである。IAS第2号は、過度に規範的になることなく、生産コストを識別するフレームワークを規定しており、IASBは、IAS第2号の原価の配分に関する現行規定の適用が著しく困難とは想定していない。また、IASBは、当改訂ではIFRS第6号「鉱物資源の探査及び評価」及びIFRIC第20号「露天掘り鉱山の生産段階における剝土コスト」については改訂しないこととした。

表示及び開示

当EDに対するコメント提供者の中には、販売収入と生産コストを純損益に計上することが有用な情報の提供になるのか、疑問視する者もいた。というのも、そうした収入は必ずしも企業の通常の事業活動の過程で生じるものではなく、有形固定資産項目が使用可能になった後に生じる販売(及び関連する生産コスト)を表すものではないため、限られた予測価値しか提供しないと考えた。したがって、財務諸表の利用者がそのような販売収入と生産コストを識別できるようにするために、特定の表示及び開示規定が必要か否かをIASBは検討すべきであると提案した。

IASBは上記コメントを受け、既存のIFRSを検討した。その結果、IASBは、資産が使用可能になる前に生産された項目の売却が通常の事業活動のアウトプットであると評価し結論付ける場合には、それはIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」が適用される収益になり、関連する生産コストはIAS第2号に従って棚卸資産として会計処理されると判断した。

したがってIASBは、そうした状況を取り扱う追加の特定の表示又は開示規定は必要ないと結論付けた。一方で、通常の事業活動の過程で生産されるものではない(企業がIFRS第15号とIAS第2号を適用することにならない)項目の売却については、企業は以下を要求される。

  • (ⅰ)純損益に認識される売却収入と関連する生産コストを別個に開示する
  • (ⅱ)売却収入と関連する生産コストを含む純損益及びその他の包括利益計算書上の表示科目を特定する。

経過措置及び発効日

当改訂は、2022年1月1日以後開始する報告期間から適用され、早期適用も認められる。IASBは、これにより当改訂の適用に向けた十分な時間が企業に与えられると考えている。

当改訂は遡及適用が要求されるが、企業が最初に当改訂を適用した財務諸表に表示される最も古い期間の期首時点以降に使用可能になった有形固定資産項目のみに適用される。したがって、当改訂の適用開始による累積的影響は、当該時点の利益剰余金(場合によっては、資本の他の構成要素)の期首残高で調整される。経過措置を開発するにあたりIASBは、当改訂の適用に伴うコストを特に検討した。本経過措置は、企業が影響の有無を再評価しなければならない有形固定資産項目の数を限定することで企業の負担を減らす一方で、表示される期間すべてに当改訂が首尾一貫して適用されるようにすることを意図している。

弊社のコメント

当EDに寄せられたコメント提供者からのフィードバックの内容及び範囲から、IAS第16号の当改訂が如何に重要であるかが窺える。

当改訂により、収益の認識方法に一貫性がもたらされる(すなわち、収益の獲得時期に関係なくすべての収益が純損益に認識される)可能性がある。さらに、そのような収入に関連して生じるコストを算定するのにIAS第2号の原則の使用を定める規定は、企業が棚卸資産の取得原価を算定する際にすでに適用している方法に一致した整合的なフレームワークを提供する。しかし、当改訂は、異なるコストを資産が使用可能になる前に認識される収益に関連付けることになると思われる。これは、関連する資産の減価償却が開始していないため、生産コストに帰属させる減価償却費が存在しないためである。

表示及び開示に関する規定及び経過措置は、作成者の負担抑制と、財務諸表利用者に役立つ追加情報の要求並びに適用の一貫性の向上及び促進との間に、適切なバランスを提供している。




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