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IFRS Developments

IBOR改革:IASBによる第2段階の論点の議論(ヘッジ会計)

2019.01.14
重要ポイント
  • IASBは、12月の会議にてIBOR改革で生じる財務報告上の課題に対処するためのIFRS改訂プロジェクトの第2段階の議論を進めた。
  • RFRsへの移行する際のヘッジ会計に関連して生じる第2段階の論点への対応策について合意した。
  • IASBは1月に、第1段階の救済措置の終了時期、その他のIFRS基準及び開示について議論する予定である。

はじめに

国際会計基準審議会(以下、IASB又は審議会)は2019年12月11日の会議で、IBOR改革に関連して生じる財務報告上の論点を取り扱うプロジェクトを進展させた。本稿では、暫定的な決定について要約したうえで、我々の見解を説明する。

世界の規制当局が銀行間調達金利(IBORs)を代替指標金利又は無リスク金利(RFRs)に置き換える決定をしたことを受けて、IASBは2018年にIBOR改革が財務報告に及ぼす影響に対応するための作業を開始した。IASBは、本プロジェクトを2段階に分けている。

  • 第1段階では、既存の金利指標を実質的に無リスクの代替的金利に置き換える前の期間における財務報告に影響を与える論点を取り扱う。
  • 第2段階では、既存の金利指標をRFRに置き換える時に財務報告に影響を与える可能性のある論点に焦点をあてる。

2019年9月、IASBは、「金利指標改革:IFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の改訂」の公表をもって第1段階の作業を完了した。2019年10月、IASBは第2段階の分類及び測定の論点について暫定的な結論に達した。IASBは2019年12月の会議で、第2段階の論点であるRFRsへの移行時のヘッジ会計についても暫定的な決定に至った。

我々は、IASBのプロジェクトの背景をIFRS Developments 第144号第145号で説明し、第1段階の改訂をIFRS Developments 第152号で解説している。IFRS Developments第154号で第2段階の分類と測定に関する暫定的な決定について要約している。

条件変更が行われた場合にヘッジ関係を中止すべきかどうかの判断

IASBは、12月の会議にて、金融商品の条件変更が行われた場合に、ヘッジ会計を中止すべきかどうかに関し暫定的な決定をした。IASBは、次の場合にはヘッジ関係を中止するかどうかに関する既存の規定を変更する必要はないとした。

  • ヘッジ対象及び(又は)ヘッジ手段の認識の中止を生じさせる大幅な条件変更

又は

  • 認識の中止を生じさせず、IBOR改革の直接の結果として要求されるものではない条件変更

当該決定は、IBOR改革に直接起因することのない条件変更で認識の中止が生じるかどうかを判断する既存のIFRS規定を変更する必要はないとする10月の会議の決定と整合する。

IBOR改革の直接の結果として要求される条件変更を反映させるためのヘッジ文書及びヘッジの有効性テストの変更

IASBは、ヘッジ関係において、IBOR改革の直接の結果として要求される条件変更が生じる場合は、既存のヘッジ関係を継続すべきということで暫定合意した。したがって、企業はIBOR改革によってヘッジ会計の中止を生じさせることを回避でき、キャッシュ・フロー・ヘッジにおける純損益の変動性の増加を、既存のIFRS第9号「金融商品」及びIAS第39号「金融商品:分類及び測定」に基づき、将来認識する必要はなくなる。

IASBは、IBOR改革の直接の結果として要求される条件変更について、ヘッジ文書の次のような変更がヘッジ会計の中止を生じさせないように、IFRS第9号とIAS第39号を改訂することで合意した。

  • ヘッジされるリスクを、RFRを参照するように再定義する
  • ヘッジ手段及び(又は)ヘッジ対象の記述を、RFRを参照するように再定義する

IASBは、当該決定と同様に、IBOR改革の直接の結果として要求される条件変更によりヘッジの有効性の評価に用いる方法を変更しても、ヘッジ会計の中止は生じないことを明確化するためにIAS第39号を改訂すべきであるとことに暫定合意した。

IBOR改革の直接の結果として要求される条件変更により生じる評価調整の取扱い

IASBは、IBOR改革の直接の結果として要求される条件変更により生じる評価調整は、発生した時点で即座に純損益に認識すべきであり、繰り延べることや、改訂の適用開始時点の利益剰余金の期首残高として調整すべきではないことを暫定的に決定した。したがって、企業は次のことを測定し認識しなければならないとするIFRS第9号及びIAS第39号の現行の規定に関して例外規定が定められることはない。

  • 公正価値ヘッジにおいて、RFRへの移行を新たなヘッジ対象リスクとして反映するため、ヘッジ文書を更新する場合に生じる評価調整
  • キャッシュ・フロー・ヘッジにおける仮想デリバティブに関して、IBOR改革の直接の結果として要求されるヘッジ対象の条件変更から生じるヘッジの非有効性
  • ヘッジ手段に指定されたデリバティブに関して、IBORをRFRに置き換える際に生じる評価調整

RFRsへの移行時に評価調整額を即座に純損益に認識することは、ヘッジの非有効性を全額純損益に認識することを要求する第1段階の救済措置の内容と整合する。IASBの暫定決定は、IBOR改革の結果生じるヘッジ関係への改訂の経済的影響をできる限り透明性をもって報告することを意図している。

項目のグループのヘッジ

IASBは、IBOR改革の直接の結果として要求される条件変更を受けて変更される指定されたグループの中の項目(マクロ・キャッシュ・フロー・ヘッジ戦略の一部を成す項目等)について、IFRS第9号及びIAS第39号を改訂することを暫定的に決定した。当該改訂により、ヘッジ対象グループの中の項目がIBORsからRFRsに移行しても、ヘッジ戦略を維持し、ヘッジ会計の中止を回避できる。IFRS第9号及びIAS第39号は、次のことが規定されるように改訂される。

  • ヘッジ対象を、指定された項目グループの中の2つのサブグループ(一方は当初のIBORを参照 し、他方はRFRを参照する)によって定義するようにヘッジ文書を修正する。
  • ヘッジの有効性は、ヘッジ関係に指定されている項目の各サブグループについて別個に判定する。IBOR項目とRFR項目は、各サブグループ内で類似する項目と比較してヘッジの有効性を評価することになる。したがって、グループ内の項目がIBORsからRFRsに移行しても、ヘッジの有効性が満たされない状況を回避することができる。
  • IBOR項目とRFR項目は異なるサブグループに区分されるが、依然として当初の単一のヘッジ関係の一部を成すと考えられる。したがって、ヘッジ関係は引き続き継続し、RFRsに移行してもヘッジ会計を中止する必要はない。
  • IAS第39号に基づいてヘッジに指定された項目のグループについて、IBORとRFRsを参照する項目は類似したリスク特性を共有しているかのように取り扱う。IAS第39号は、ヘッジに指定されたグループの中の項目は類似したリスク特性を共有しなければならないと定めているため、当該改訂が必要となる。

実務上、例えば1つのIBORを複数のRFRに移行する必要がある場合には、2つ以上のサブグループを設定することが必要になる。この場合の取り扱いは、IASBの1月の会議で詳しく検討される。

また、各サブグループの仮想デリバティブは、IBORsからRFRsへの移行が生じる都度見直す必要がある。

IAS第39号における金利リスクのポートフォリオに関する公正価値ヘッジ会計

IASBは、企業がヘッジ文書においてヘッジ対象リスクをRFRに変更する場合、金融資産又は金融負債のポートフォリオに属するすべての項目がヘッジ対象リスクを共有していると仮定できるように、IAS第39号を改訂することで暫定合意した。当該救済措置により、この種のヘッジ関係に属する金融商品がIBORからRFRsに移行する場合にヘッジ対象リスクを共有すべきというIAS第39号の条件を引き続き満たすことになる。

次のステップ

IASBは、上述のヘッジ関係に関する論点の暫定的な決定に続いて、第1段階の救済措置の終了後にヘッジ会計に生じる影響を検討することになる。当該議論は2020年1月に実施される予定である。

また、1月の会議では、他のIFRS基準に与える影響や第2段階の改訂の結果新たに識別される論点及び追加の開示についても検討される予定である。

弊社のコメント

12月の会議での暫定決定により、金融商品がRFRに移行する際に生じるヘッジ会計における問題点が実質的に解決される。IASBの決定は暫定的なものでありIASBのプロジェクトの第2段階が完了した時点で最終化されると我々は理解している。

救済措置が定められ、IBOR改革の直接の結果として要求される条件変更に関してヘッジ文書の変更が可能になることを歓迎する。当該救済措置により、ヘッジ関係がRFRsに移行しても、ヘッジ会計の中止を回避することができる。

項目のグループのヘッジについては、IBORからRFRsに移行する際にサブグループを見直し、対応する仮想デリバティブを修正できるよう、各企業は運用プロセスを整備する必要がある。

12月の会議における進展を考慮すると、IASBは、予定どおり2020年3月末までに公開草案を公表することができるであろう。第1段階同様、第2段階の公開草案の募集期間を45日に限定するのであれば、2020年9月末までに第2段階の最終改訂を公表することも可能になると考えられる。

各企業は、2020年(特に上半期)にIBORsからRFRsへの移行を完了することを念頭に計画を加速させる可能性が高いため、第2段階の改訂の最終基準化のタイミングは重要である。各企業の移行が進む前に、第2段階の救済措置が最終基準化(可能であれば承認)される必要がある。




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