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IFRS Developments

リース期間及び賃借設備改良資産の耐用年数

2019.01.22
重要ポイント
  • IFRS解釈指針委員会は、解約可能なリース又は更新可能なリースのリース期間と、移設不能な賃借設備改良資産の耐用年数の決定方法について議論した。
  • 借手と貸手のそれぞれが、他方の承諾なしに多額ではないペナルティでリースを解約する権利を有している場合、当該リース契約にはもはや強制力がない。
  • 「ペナルティ」という用語は幅広く解釈され、契約上の解約時の支払いのみでなく、より幅広い経済実態によるものが含まれる。
  • 移設不能な賃貸設備改良資産の耐用年数を算定する際には、IAS第16号を適用する。

概要

IFRS解釈指針委員会(以下、解釈指針委員会)は2019年に、解約可能なリース又は更新可能なリースのリース期間をどのように決定すべきかについて議論した。契約期間が特定の期間として定められておらず、いずれかの当事者が解約通知をするまで、無期限に継続する解約可能なリース又は更新可能なリース契約が締結されることがある。また、当初の2年間は解約不能であるが、いずれかの当事者が解約を通知するまで月単位で継続する契約が締結される場合もある。要望書では、こういった場合にリース期間をどのように決定するのかという点と、リースに関連する移設不能な賃貸設備改良資産(例えば、リース資産に関連して借手が建設した付属設備など)の耐用年数は、IFRS第16号「リース」を適用して決定されるリース期間が上限とされるのかという点を照会していた。

リース期間の決定に際しては、契約上の解約ペナルティのみでなく、契約の幅広い経済実態(例えば、賃借設備改良資産の放棄又は解体コストなど)を考慮する。

移設不能な賃貸設備改良資産の耐用年数を決定する際には、IAS第16号「有形固定資産」を適用する。多くの場合、リースの原資産を使用している限り、その期間中は関連する賃貸設備改良資産も使用して、その便益を得るとの結論に至ると考えられる。

背景

リースの解約不能期間とは、借手と貸手の双方が、多額ではないペナルティで契約を解約することができない期間をいう。したがって、当該期間が最低限のリース期間になる。

また、IFRS第16号「リース」は、リース期間を以下のように定義している。

借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、次の両方を加えた期間

  • a)リースを延長するオプションの対象期間(借手が当該オプションを行使することが合理的に確実である場合)
  • b)リースを解約するオプションの対象期間(借手が当該オプションを行使しないことが合理的に確実である場合)

リースに強制力がある期間とは、借手と貸手の間に強制力がある権利及び義務が存在する期間であり、IFRS第16号B34項に従って判断される。借手と貸手のそれぞれが、相手方の承諾なしに多額ではないペナルティでリースを解約する権利を有している場合、当該リ ース契約にはもはや強制力がない1。したがって、強制力がある期間が最大限のリース期間になる。契約に終了日が定められ、延長又は早期解約のオプションが存在しない場合、契約の終了日までの期間がリース期間になる。

リース期間を決定するにあたっては、まず解約不能期間と強制力がある期間を決定する。次に、合理的に確実という基準値を用いて、延長オプションの行使と解約オプションの不行使の影響を加味してリース期間を決定する。以下は、委員会のアジェンダ・ペーパー2から抜粋したリース期間に関する図表である。

委員会のアジェンダ・ペーパーから抜粋したリース期間に関する図表
  • 1IFRS第16号B34項
  • 2IFRS解釈指針委員会アジェンダ・ペーパーNo.4 2019年11月26日付

IFRS解釈指針委員会の見解及び結論

リース期間

解釈指針委員会は、解約可能なリース又は更新可能なリースのリース期間をどのように決定すべきかという内容の要望書を受け取った。解釈指針委員会は、特にペナルティに関するIFRS第16号B34項のガイダンスを適用する際に、契約上の解約ペナルティのみでなく、契約の幅広い経済実態を検討すべきかどうかを検討した。そうした契約の幅広い経済実態の検討には、賃貸設備改良資産の廃棄又は解体に関する予想コストが含まれる場合がある。

解釈指針委員会は、B34項を適用してリースの強制力がある期間を決定するにあたり、以下を考慮する必要があると考えた。

  • 契約上の解約時の支払いのみでなく、より幅広い経済実態。例えば、いずれかの当事者がリースを解約しない経済的インセンティブを有していて、解約時に僅少とはいえないペナルティが発生する場合には、当該契約は解約できる日の後も強制力がある。
  • 当事者のそれぞれが、相手方の承諾なしに多額ではないペナルティでリースを解約する権利を有しているかどうか。B34項を適用すると、リースに強制力がなくなるのは、両方の当事者がそうした権利を有している場合のみである。したがって、一方の当事者のみが、相手方の承諾なしに多額ではないペナルティでリースを解約する権利を有している場合には、当該契約はその当事者が契約を解約できる日の後も強制力がある。

解約可能リースの通知期間の後も契約に強制力があると結論付ける場合、IFRS第16号第19項及びB37項からB40項を適用して、借手がリースの解約オプションを行使しないことが合理的に確実である否かを評価する。

移設不能な賃貸設備改良資産の耐用年数

移設不能な賃貸設備改良資産の耐用年数を決定する際には、IAS第16号を適用する。関連するリースのリース期間が当該賃貸設備改良資産の経済的耐用年数よりも短い場合には、当該賃貸設備改良資産をリース期間よりも長い期間にわたって使用することを見込んでいるかどうかを考慮する。そのような見込みがない場合には、IAS第16号を適用して、移設不能な賃貸設備改良資産の耐用年数はリース期間と同じになると結論付ける。

移設不能な賃貸設備改良資産の耐用年数がリース期間に及ぼす影響

借手がリースを延長することが合理的に確実であるかどうかを評価する際には、IFRS第16号B37項を適用して、借手にとっての経済的インセンティブを生じさせるすべての関連する事実及び状況を考慮する。さらに、リースの強制力がある期間を決定する際には、契約の経済実態を考慮する。その際には、移設不能な賃貸設備改良資産の廃棄又は解体費用も含まれる。つまり、契約が解約できる日の後もこのような移設不能な賃貸設備改良資産を使用する見込みがある場合には、当該移設不能な賃貸設備改良資産の存在は、企業にとってリース解約時に僅少とはいえないペナルティを発生させる可能性があることを示している。したがって、IFRS第16号B34項を適用する際には、少なくとも賃貸設備改良資産の期待効用期間について契約の強制力があるかどうかを考慮する必要がある。

結論

解釈指針委員会は、IFRS第16号の原則及び要求事項が、企業が解約可能リース及び更新可能なリースのリース期間を決定するための適切な基礎を提供していると判断した。また、IAS第16号とIFRS第16号の原則及び要求事項が、企業がそうしたリースに関連する移設不能な賃貸設備改良資産の耐用年数を決定するための適切な基礎を提供していると判断した。したがって、解釈指針委員会は、これらの項目を基準設定アジェンダに追加しないことを決定した。

デュー・プロセス監視委員会

解釈委員会は2019年11月に開催されたが、それを受け、解釈指針委員会の当該アジェンダ決定に関して懸念をもつ関係者から、デュー・プロセス監視委員会(以下、DPOC)に2通のコメントレターが提出された。DPOCは2019年12月16日に、この問題について議論した。DPOCは、当該アジェンダ決定に関してデュー・プロセスは遵守されていたと結論を下した。また、DPOCは今後、解釈指針委員会のアジェンダ決定の公表にIASBメンバーが反対しないことをIASBが確認するように求めるデュー・プロセス・ハンドブックの改訂を検討する。

リース期間に関する例

当初の解約不能期間が2年間に設定されたリース契約がある。借手と貸手のいずれもが、2年目が終了するまで契約を解約することができない。2年目の終了時点で、借手と貸手のいずれかが契約を解約する一方的な権利を行使しないかぎり、契約は自動的に延長され、3年を限度に月単位で自動的に延長される。すなわち、2年が経過した時点で、借手と貸手のいずれもが、他方の承諾なしにリースを解約する権利を有していることになる。

さらに、リースの開始日時点で以下を仮定する。

  • 3年目から5年目の毎月のリースの契約条件(例:リース料)が当初の契約に含まれている。
  • 仮に貸手が当初の2年間が経過した後に契約を解約したとしても、貸手には経済的な不利益をはじめ、多額となるペナルティが発生することはない。
  • 原資産の仕様や場所の特殊性、あるいは借手にとっての賃貸設備改良資産の重要性により、3年を経過する前に解約権を行使した場合、借手には僅少とはいえない経済的な不利益が発生する。そのため、借手は、3年目を経過するまでリースを解約しないことが合理的に確実であると結論付ける。

分析

当初2年間の解約不可期間は、契約の定義を満たす。3年目の最初の12ヵ月間についても、3年を経過する前に借手がリースを解約すると僅少とはいえない経済的不利益が発生するため、契約に強制力がある期間に含まれる。さらに、3年経過後は、借手と貸手のいずれもが、相手方の承諾なしに多額ではないペナルティで契約を解約する権利を有しているため、3年を超えて強制力がある権利及び義務は生じていない。したがって、3年経過時点では、契約の定義がもはや満たされていない。このシナリオにおいて、借手は、3年目を経過するまで契約を解約しないことが合理的で確実であると結論付けることから、リース期間は3年となる。

借手が契約を解約しないことが合理的に確実であるかどうかの評価では、借手に各解約日時点で発生する多額のペナルティをはじめ、すべての事実及び状況を検討する必要がある。借手に発生するペナルティが大きいほど、借手が契約を解約しないことが合理的に確実であると判断する可能性は高くなる。

次のステップ

特定の契約期間は定められていないが、いずれかの当事者が解約通知を行うまで無期限に継続する解約可能なリース又は更新可能なリースを締結している企業は、現在の会計方針を見直し、会計方針の変更が求められるかどうかを判断する必要がある。本アジェンダ決定の適用には、相当の判断が求められる。

解釈指針委員会が公表したアジェンダ決定には、発効日は定められていない。先日、企業がアジェンダ決定を適用するために必要とされる適切な時間はどの程度なのかついて、議論が行われた。2019年3月の「IFRIC Update」では、「アジェンダ決定の公表プロセスでは、多くの場合、当該プロセス以外では利用可能ではなく、入手することが合理的に予想できなかった新しい情報を提供する説明資料がもたらされることがある」と述べられている。そのため、アジェンダ決定の結果により、企業が会計方針を変更する必要があると判断する場合がある。IASBは、企業が会計方針を変更すると判断し、実際に変更する際には十分な時間が与えられるべきであると考えている(例えば、企業は会計方針を変更するために新しい情報を入手したり、会計方針の変更に必要なシステムを整備することがある)。会計方針を変更するための十分な時間は企業ごとに異なり、事実と状況に左右されるが、できる限り迅速にアジェンダ決定を企業が適用することが望まれる。IASBは、それは数年の単位ではなく、数ヵ月の単位であると考えている。

企業は自身の適用プロセスを説明する必要があり、重要性がある場合には、規制上の要求に照らして、会計方針の変更に関する開示が求められるかどうかを検討する必要がある。




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