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IFRS Developments

IASB が基本財務諸表の大幅な変更を提案

2019.12.27
重要ポイント
  • 業績報告に関する比較可能性及び透明性に対する投資家の懸念に対応するために、IASBは、基本財務諸表プロジェクトにおける公開草案を公表した。
  • 公開草案では3つの主要なトピックが提案されている。
    • 損益計算書における新たな小計表示
    • 「非GAAP」指標の透明性確保
    • 財務情報の分解表示の改善
  • 利息及び配当についてキャッシュ・フロー計算書における新たな分類方法が提案されている。

はじめに

国際会計基準審議会(以下、IASB)は2019年12月17日、損益計算書において表示される経営成績に焦点をあて、財務諸表における情報伝達方法に関する改善を図るべく、公開草案「全般的な表示及び開示」(以下、公開草案)を公表した。公開草案では、投資家の要望に応えるべく、損益計算書においてより比較可能性が高い情報を提供し、また、経営者業績指標(「非GAAP」指標:収益及び費用の小計のうちIFRS基準で定められていないもの)を財務情報として提供する場合に、より規律性と透明性を高めたアプローチを求めている。

IASBは、この公開草案を基本財務諸表プロジェクト及びより広範な「財務報告におけるコミュニケーションの改善」に関する作業の一環として開発した。IASBはIAS第1号「財務諸表の表示」に置き換わる新しいIFRS基準としての公表を提案しており、いくつかの主要な変更提案が含まれている。以下では提案されている3つの主要なトピックとキャッシュ・フロー計算書の分類について解説する。

【3つの主要なトピック】

  • 損益計算書における新たな小計表示
  • 「非GAAP」指標の透明性確保
  • 財務情報の分解表示の改善

損益計算書における新たな小計表示

IASBは法人所得税控除前利益の前に「営業利益」を含む3つの利益を示す小計を表示することを提案している。多くの企業が損益計算書において営業利益を表示しているが、現在はIFRS基準で営業利益が明確に定義されておらず、企業間での意味のある比較が困難になっている。
新たな小計を設けることにより、企業はより適切な損益構造を財務情報として表示でき、また投資家による企業間比較が可能となる。

【損益計算書の表示例】

損益計算書の表示例

IASBは収益及び費用を4つのカテゴリーに分類することを提案している。

  • 営業カテゴリー
    営業カテゴリーには、企業の主要な事業の損益が含まれる。下記の3つのカテゴリーに含まれない項目から構成される。
  • 不可分な持分法投資カテゴリー
    公開草案では、関連会社及びジョイント・ベンチャーから生じる持分法損益を、企業の主要な事業と「不可分」かどうかを判断し、区分することを求めている。不可分な関連会社及びジョイント・ベンチャーから生じる持分法損益は、営業カテゴリーの下、投資カテゴリーの上に表示される。これには、関連会社及びジョイント・ベンチャー投資の減損損失、減損戻入益、及び処分損益も含まれる。
    なお、不可分でない関連会社及びジョイント・ベンチャーから生じる損益は、投資カテゴリーに表示される。
  • 投資カテゴリー
    投資カテゴリーには、「不可分でない」関連会社及びジョイント・ベンチャーから生じる持分法損益を含め、企業が保有するその他の経済的資源から概ね独立した別個のリターンを生じさせる資産に関する損益が表示される。
  • 財務カテゴリー
    財務カテゴリーには、現金及び現金同等物や借入、リース負債等の財務活動から生じる損益が含まれるが、資産除去債務の割引の振戻しに伴う費用等、財務活動以外から生じる損益も含まれる。

なお、銀行や投資会社等の金融機関については、主要な事業からの金融収益・金融費用、投資損益(ただし、持分法を適用している投資損益は除く)を営業カテゴリーに分類する。

弊社のコメント

提案されている損益計算書の様式は、営業、投資、財務のカテゴリーに区分される。また、企業の主要な事業と不可分な関連会社及びジョイント・ベンチャーから生じる損益は、この3つのカテゴリーの外にあり、事実上別のカテゴリーである。

ただし、キャッシュ・フロー計算書においては、「不可分」かどうかに関わらず、持分法投資先からのキャッシュ・フローは、投資活動に関する区分に含まれ、別個に表示される。IASBは公開草案の中で、基本財務諸表間での分類の統一を試みてはいないことを明らかにしている。

「非 GAAP」指標の透明性確保

IASBは経営者業績指標を財務諸表で注記することを提案している。この注記では、当該指標が有用な情報を提供する理由と当該指標の計算方法を説明し、IFRS基準で定めている最も比較可能な利益小計との調整表を示すことが提案されている。
なお、公開草案では、経営者業績指標を損益計算書の本表で表示することを禁止していないものの、これは、そのような表示が、提案されているカテゴリーの構造に合致し、かつ営業カテゴリーに含まれる費用の分析に関する表示を妨げないことが条件とされている。
IASBは、以上により、非GAAP指標の使用に必要とされていた透明性と規律が確保され、投資家が財務諸表分析を行うために必要な情報が提供されると述べている。

【経営者業績指標の定義】

経営者業績指針は以下を満たす収益及び費用の小計である
投資家との公のコミュニケーションにおいて財務諸表以外で使用されている IFRS基準に定められた小計項目や合計項目を補完する 企業の財務諸表の側面について経営者の見解を示したもの

財務情報の分解表示の改善

現在は投資家が、財務情報を的確に分解して分析に役立てることが困難と感じることが ある。これは、表示項目が不十分な名称や説明により合算されている場合が存在するた めである。
そこで、IASBは、財務情報を投資家にとって最も有用な方法で分解することに役立つ新 たなガイダンスを提案した。企業は営業費用のより良い分析を提供すること、及び、「通例 でない(unusual)」の定義を用いて通例でない収益又は費用を識別し、注記において説 明することを求めることとした。また、基本財務諸表及び注記の役割や、集約及び分解の 判断原則等も提案されている。
これらの要求事項を設けることにより、投資家が企業の利益を分析し将来のキャッシュ・フローを予測する助けになるとされている。

  • 営業費用の分析の表示
    IAS第1号は、信頼性があり最も適合する方法で、損益計算書の費用の性質又は機能に基づいた分析の表示を企業に求めている。実際には、両方法を組み合わせて使用している企業もある。IASBは、最も有用な情報を提供する単一の方法の使用を企業に求めることで、情報提供を強化することを提案している。性質又は機能のどちらで費用を表示するかを決定する要素としては、収益性との対応関係、経営管理者が企業内部でどのように報告しているか、業種の実務慣行があげられている。
  • 通例でない収益及び費用
    公開草案では、通例でない収益及び費用を以下のとおり定義している。
    • 通例でない収益及び費用とは、その予測価値が限定的であるもの
    • 金額的及び性質的に類似した項目が将来数年間に発生しないことが合理的に予想される。
    通例でない収益及び費用について以下の注記を行うことが提案されている。
    • 通例でない収益及び費用の金額
    • 通例でない収益及び費用がどのように発生したのか、また、なぜそれらが通例でない項目なのか
    • 通例でない収益及び費用が損益計算書のどの科目に含まれているか
    • 営業費用について機能別分類で表示している場合には、性質別分類における表示
  • その他
    公開草案には、ディスカッション・ペーパー「開示に関する取組み - 開示原則(2017年3月)」」と整合した形で、基本財務諸表及び注記の役割に基づいて、両者のどこに表示あるいは開示するかを決定する判断原則が含まれている。
    また、公開草案では、集約及び分解は類似性と非類似性を考慮して行うことが提案されている。過度に集約された情報は利用者の理解を妨げる可能性がある一方、過度に詳細な情報は重要情報を覆い隠す可能性があり、また、類似した性質の項目は集約されるべきで、他の項目と類似していない項目は別個に表示すべきであるとされている。

キャッシュ・フロー計算書

公開草案では、キャッシュ・フロー計算書の作成方法について間接法を採用する場合には、営業キャッシュ・フローへの調整を行う出発点を営業利益とすることが提案されている。

また下記の通り、利息及び配当金をどのキャッシュ・フロー区分に表示するかが定められ、現行基準で適用可能な分類の選択肢が削除されている。

  • 金融機関以外の企業
    • 支払利息及び支払配当金は、財務活動に関する区分に分類する。
    • 受取利息及び受取配当金は、投資活動に関する区分に分類する。
  • 金融機関
    • 支払利息、受取利息及び受取配当金(関連会社及びジョイント・ベンチャーの取得及び処分からのキャッシュ・フローは除く)は、原則として損益計算書の収益及び費用のカテゴリーに対応するように分類する。
    • 支払配当金は、財務活動に関する区分に分類する。

次のステップ

コメント募集期限は2020年6月30日である。

弊社のコメント

我々は、IASBが次のフェーズで要求事項の最終的な改訂を検討する際に、十分な根拠に基づく強固な議論を行うことに貢献するため、利害関係者が意見書の形でIASBにフィードバックを提供することを奨励する。

このトピックの影響を考えると、本公開草案は作成者、利用者、監査人、規制当局を含むすべての関係者にとって非常に重要である。




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