アシュアランス
IFRS Developments

IBOR改革:第2段階(続き)

2020.02.17
重要ポイント
  • IASB は、1月の会議にてIBOR改革で生じる財務報告上の課題に対処するために、IFRS改訂プロジェクトの第2段階の更なる議論を進めた。
  • IASBは、第2段階の関連する開示と合わせて、RFRs移行により生じるヘッジ会計の、残っている第2段階の論点の大部分の対応策について合意した。
  • リース、保険契約、公正価値測定など他の IFRSに関してもIBOR改革の影響が検討され、対応策が合意された。
  • IASBは2020年4月に第2段階の改訂に関する公開草案を公表する予定である。

はじめに

国際会計基準審議会(以下、IASB又は審議会)は2020年1月30日の会議で、IBOR改革に関連して生じる財務報告上の論点を取り扱うプロジェクトをさら進めた。本稿では、暫定的決定について要約したうえで、EYの見解を説明する。

世界の規制当局が銀行間調達金利(IBORs)を代替指標金利又は無リスク金利(RFRs)に置き換える決定をしたことを受けて、IASBは2018年にIBOR改革が財務報告に及ぼす影響に対応するための作業を開始した。IASBは、本プロジェクトを2段階に分けている。

  • 第1段階では、既存の金利指標を実質的に無リスクの代替的金利に置き換える前の期間における財務報告に影響を与える論点を取り扱う。
  • 第2段階では、既存の金利指標をRFRに置き換える時に財務報告に影響を与える可能性のある論点に焦点をあてる。

2019年9月、IASBは、「金利指標改革:IFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の改訂」の公表をもって第1段階の作業を完了した。2019年10月、IASBは第2段階の分類及び測定という2つの論点について暫定的な結論に達した。IASBは12月の会議で、第2段階の論点であるRFRsへの移行時のヘッジ会計についても暫定的な決定に至った。

2020年1月の会議でIASBは、第1段階の救済措置が終了すること受け、関連する開示及びIFRS第13号「公正価値測定」、IFRS第16号「リース」及びIFRS第17号「保険契約」に関して講じるべきアプローチと合わせて、第2段階のヘッジ会計の論点について結論を出した。 IASBのプロジェクトの背景についてはIFRS Developments 第144号と第145号、第1段階の改訂についてはIFRS Developments 第152号において解説している。IFRS Developments第154号及び第156号では、当初の第2段階の暫定的な決定について要約している。これらの刊行物はwww.ey.com/ifrsで閲覧可能である。

第1段階の救済措置終了時点におけるヘッジ会計への影響

第1段階の改訂は、IBOR改革から生じる不確実性が、ヘッジ関係に対して、ヘッジの中止が必要となるような影響はないと企業が仮定することを容認する救済措置を定めている。この救済措置は以下のいずれか早い時点で終了となる。

  • 金利指標改革により生じる不確実性が、ヘッジされるリスク又は、ヘッジ対象又はヘッジ手段の金利指標に基づくキャッシュ・フローの時期及び金額に関してもはや存在しなくなる。
  • ヘッジ対象又はヘッジ手段がその一部となるヘッジ関係が中止になる。

多くのケースにおいて、これは、ヘッジ関係の一部を構成する金融商品が参照する指標がIBORからRFRに置き換わる時点で、不確実性は存在しなくなり、したがって第1段階の救済措置が終了することを意味する。

1月の会議でIASBは、第1段階の救済措置が終了する時点で、ヘッジ関係における3つの異なる局面に適用される会計処理について暫定的な結論に至った。

1. キャッシュ・フロー・ヘッジに関する「可能性が高い」の規定

第1段階の救済措置により、企業はキャッシュ・フロー・ヘッジについて、指定したIBORsに基づくキャッシュ・フローがなお発生すると仮定することができる。この救済措置が終了する時点において、キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金に繰り延べられていた金額をどのように処理すべきかを判断する必要がある。

2019年10月に、IBOR改革によって要求され、経済的に同等な基準で行われる契約上のキャッシュ・フローの条件変更は単純に指標金利の変更として会計処理するということが合意されたことから、ヘッジされるリスクは、IBORからRFRへの移行があったとしても継続しているとみなされる。さらに、移行時の評価調整は純損益に即座に認識されることになるが、キャッシュ・フロー・ヘッジにおける仮想デリバティブについては移行時点で更新されることが2019年12月に決定された。これにより、キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金に累積している金額は、RFRに基づきヘッジされるキャッシュ・フローが純損益に影響を及ぼす期間に純損益として処理される。したがって、IASBは2020年1月の会議で、キャッシュ・フロー・ヘッジに関する、第1段階の救済措置規定の終了に対する変更は必要ないと暫定的に決定した。

2. ヘッジの将来に向かっての有効性評価

第1段階の救済措置は、IFRS第9号及びIAS第39号に定められる、ヘッジの将来に向かっての有効性評価について、ヘッジ対象及びヘッジ手段のキャッシュ・フローは引き続きIBORを基に算定することを容認している。この救済措置は、ヘッジ対象とヘッジ手段に関しそれぞれの不確実性がなくなる時点で、それぞれ個別に終了する。したがって、ヘッジ手段がヘッジ対象より前にRFRsに移行する場合、ヘッジ手段のキャッシュ・フローはRFRに基づくことに対し、ヘッジ対象のキャッシュ・フローはIBORに基づくことから企業にはミスマッチが生じる。

しかし、1月のスタッフ・ペーパーは、例えばヘッジをRFRリスクのヘッジとなるように再指定することによってミスマッチによる非有効性を最小限に留めることも可能であると述べている。金融商品がIBORからRFRに移行するにあたり必要になるヘッジ関係及びヘッジ文書に対する変更によりヘッジ会計が中止になることはないとする12月の暫定的決定がその根拠となる。結果、IASBは1月の会議で、将来に向かっての評価に関する規定の終了に対する追加のガイダンス又は改訂は必要ないことを暫定的に決定した。

3. IAS第39号のヘッジの有効性の遡及判定

第1段階の救済措置は、ヘッジ対象又はヘッジ手段のキャッシュ・フローに関する不確実性が存在しなくなる時点で終了となるが、1月の会議のスタッフ・ペーパーからは、ヘッジ対象とヘッジ手段の両方に関し不確実性がなくなる場合にのみ救済措置は終了すると読み取れる。そのため、ヘッジ有効性に関するIAS第39号の遡及判定の適用に関する例外措置は、ヘッジ手段とヘッジ対象の両方がIBORからRFRに移行した時点で終了する。しかし、実際に生じるヘッジの非有効性を引き続き測定して全額を純損益に認識することになる。

1月の会議でIASBは、移行が完了し遡及判定に関する救済措置が終了する時点でヘッジ関係に生じるシナリオを検討した。ヘッジ手段とヘッジ対象の公正価値の累計額の変動を比較することによってヘッジ有効性を評価する企業について、移行時点で累計額の変動が80%から125%の範囲を外れる場合には、ヘッジが有効でなくなり、即座に中止しなければならない。

IASBは、この結果は、IBOR改革から生じる不確実性に起因して、ヘッジ関係が中止になることを防ぐという目的に整合しないことで暫定的に合意した。したがって、ヘッジの有効性の遡及評価に向けて、公正価値変動の累計額が、遡及評価の例外措置が終了する時点で改めてゼロに設定されるようにIAS第39号を改訂する。

第2段階の追加的な開示

財務諸表の利用者は、企業がIBORからRFRsへの移行をどのように進めているか、それにより新しいリスク又は変化したリスクが生じるかどうかについての開示から便益を受ける。IASBは1月の会議で、以下の開示を追加するためにIFRS第7号「金融商品:開示」を改訂することで暫定合意した。

  • 企業がIBORの移行及びその進捗をどのように管理しているか
  • 重要なIBOR指標ごとの、IBORを引き続き参照する金融資産と負債の帳簿価額、デリバティブの名目上の元本
  • それぞれのRFRについて、認識の中止が求められるかどうかの判断のために、条件変更が経済的に同等な基準で行われているかどうかを評価するため、基準金利及び関連する基準金利の修正を企業がどのように決定したかに関する説明
  • IBOR改革により新しいリスクが生じることになるかどうか、生じる場合には、企業はそれらのリスクをどのように管理するのか

IBOR改革がその他の会計基準に及ぼす影響

IASBは1月の会議で、IBOR改革を受けて他のIFRS基準も改訂すべきかに関し暫定的な決定に至った。

  • IFRS第16号「リース」は、借手において、IBORからRFRを参照するリースへの移行は、変動金利リースへの変更として取り扱うとする実務上の便法を含める予定である。この改訂が存在しないと、借手は移行時に、リース負債を当初の割引率で割り引いて再測定しなければならなくなる。
  • IFRS第17号「保険契約」は改訂されない。保険契約は、IBORに基づくキャッシュ・フローがRFRsに移行される時点で条件が変更される可能性がある。IBOR改革の直接の結果として、条件変更が経済的に同等な基準で生じる場合、保険契約が消滅することはないので、IFRS第17号に従って、保険契約の認識が中止されることはない。
  • IFRS第13号「公正価値測定」は改訂されない。評価におけるIBORインプットの観察可能性の減少につながる、IBORを参照する金融商品の流動性に減少がみられる場合には、そうした金融商品は公正価値ヒエラルキーのレベル1又はレベル2からレベル3に移される。
  • 公正価値を計算する場合、企業はIBORを参照する割引率を使用する場合がある。IBORを置き換えることにより、企業の割引率の計算がRFRs参照に変わる可能性がある。IASBスタッフは、公正価値の変動は会計上の見積りの変更として取り扱うべきであると考えている。
  • IASBは、ヘッジ会計を除きIAS第39号を「今のまま維持」したいとは考えていない。しかしIASBは、2019年10月に暫定的に合意したIFRS第9号の分類及び測定規定に対する第2段階の改訂の便益を享受するために、保険会社がIAS第39号を全面的に引き続き適用できるようIFRS第4号「保険契約」を改訂することで合意した。

次のステップ

IASBはこれらの第2段階のヘッジ会計のさらなる論点について暫定的な結論に至ったところで、2月の会議で第2段階の残りの論点を議論することにしている。そこには、どのように「別個に識別可能」に関する規定が満たされるのか、第2段階の改訂の完了、任意適用と強制適用の検討、発効日及び移行措置などの論点が含まれる予定である。

弊社のコメント

上述の将来に向かっての評価に関する暫定的な決定は、ヘッジの目的上、金融商品のRFRリスクにIBORに基づくキャッシュ・フローを指定することも可能で興味深い。

1月の会議での暫定決定により、金融商品がRFRsに移行する際に生じるヘッジ会計における問題点は実質的に解決するであろう。IASBの決定は暫定的なものでありIASBのプロジェクトの第2段階が完了した時点で最終化されると我々は理解している。

1月の会議における進展を考慮すると、IASBは、2020年3月末までに公開草案を公表すると我々は見込んでいる。第1段階同様、第2段階の公開草案のコメント募集期間を45日に限定するのであれば、2020年9月末までに第2段階の最終改訂を公表することも可能になると考えられる。

各企業は、特に2020年(特に上半期)にIBORsからRFRsへの移行を完了することを念頭にその計画を加速させる可能性が高いため、第2段階の改訂の最終基準化のタイミングは重要となる。各企業は、移行が進む前に、第2段階の救済措置が最終基準化(可能なら承認)されることを必要とするであろう。




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