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業種別IFRS解説

国際評価基準(IVS)のIFRSへの利用に係る論点

2011.12
不動産業研究会 公認会計士・不動産鑑定士 玉腰泰昌

国際評価基準(IVS)のIFRSへの利用に係る論点(PDF:468KB)

I IVS第9版の公表

2011年7月19日、国際評価基準審議会から国際評価基準(IVS)第9版が公表されました。

また、これに先立ち、11年5月12日に国際会計基準委員会から、新たな国際会計基準(IFRS)として、IFRS第13号「公正価値測定」が公表されています。IVSに基づく評価をIFRSでの財務報告上、公正価値として利用する場合には、これらの基準を比較し、IFRSとIVS両者の相違を踏まえ、必要な検討を行わなければなりません。

IVS第9版は、主に「フレームワーク」「一般基準」「資産別基準」「評価適用」の章から構成されています。IVSは、評価業務の信頼性向上のため、グローバルに受け入れられる基準作りを目指しており、資産・負債の種類に応じて広く利用される評価手法を探求することも目的の一つです。IVSでは、資産別基準の章で、不動産以外にも、事業、無形資産、機械設備、金融商品などの区分別に評価基準が設けられています。また、評価適用の章では、特に財務報告目的の評価の区分が設けられ、IFRSとの比較についても説明されています。

II IFRSとIVSにおける公正価値(市場価値)概念の比較

IVSでは「価値の種類」は三つのカテゴリーに分けられます。第一は、自由で開かれた市場での交換により、最も見込みのある見積価格で、「市場価値」が該当します。第二は、一般市場とは無関係に、特定の者が資産の保有により得られる見積価格で、「投資価値」と「特別価値」が該当します。第三は、資産の取引当事者にとって合理性を有し、両者が合意するとみられる見積価格で、「公正価値」が該当します。

IVSでは、IFRSの公正価値に相当するのは、当該「市場価値」であるとされ、評価時点において、知識ある対等な関係にある売買当事者が慎重かつ強制されず、適切な市場で取引を行うことによって形成されるべき価格と定義されます。なお、IVSの公正価値は、取引当事者固有の有利不利も含んだ価値概念であり、IFRSの公正価値とは差異があります。

III 最有効使用

IVSでは「最有効使用」とは、資産の生産性を最大化し、実行可能で、法的に許容され、資金的に実現可能な使用と定義されています。最有効使用が、現行の使用方法の継続か代替的使用方法なのかは、市場参加者が取引の際に意図する使用方法によって決定され、「市場価値」は最有効使用を反映したものと説明されています。

また、IFRS第13号では、非金融資産の最有効使用について、物理的に可能で、法的に許容され、資金的に実現可能な使用を考慮するとあります。測定日現在の使用方法が最有効使用に該当するかどうかは、市場参加者の観点から判断しなければならず、「公正価値」は最有効使用を前提とした市場参加者の便益能力を考慮することなど、IVSと共通点が認められます。

さらに、IFRS第13号では、最有効使用が資産単独か、資産・負債グループかについて、一般の市場参加者の観点から判断しますが、IVSでは、資産が単独の場合とグループの一部の場合とで最有効使用が異なる可能性が言及されており、IFRS上、資産・負債グループが最有効使用と判断されたときに単独資産の評価を行う場合は留意が必要です。

IV 評価方式、評価方法

IVSでは、求める価値の種類に応じて、一つまたは複数の「評価方式」が用いられます。主要な評価方式として「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」「コストアプローチ」が定義され、各評価方式には詳細な評価方法が含まれます。どの評価方式、評価方法が適切か判断するには、評価目的に従って採用された価値の種類、評価インプットやデータの有効性、市場参加者が使用する方式、方法などが考慮されます。

IFRS第13号においても、典型的な評価技法は「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」「コストアプローチ」とされ、公正価値の評価には、状況に適合し、十分なデータが入手できる、一つまたは複数の評価技法を選択します。その際、観察可能なインプットを最大限活用し、観察不能なインプットは最小限の利用にとどめるべきとされています。

V IVSの「市場価値」をIFRS上で利用する際の留意点

このように、実際にIVSの「市場価値」をIFRSの「公正価値」として利用するには、評価の前提、特に最有効使用、評価単位に係る判断や、適切な評価方式等の選択と、最終的な評価額決定のプロセスの検証など、ケースに応じて検討が必要となります。さらに、IVSでは、IFRS第13号の公正価値ヒエラルキーの開示は行わず、情報提供にとどめる立場を取っているため、財務報告主体の判断事項として留意が必要です。

VI 日本の不動産鑑定評価基準との関係(参考)

わが国の不動産鑑定評価基準(国土交通省)における「正常価格」は、IVSの市場価値との整合性を有すると考えられています。当該解釈に立てば、不動産鑑定評価基準に基づく鑑定評価をIFRSの公正価値に利用するには、正常価格による鑑定評価を取得し、さらにIFRSと鑑定評価基準の相違点を理解し、最有効使用の判定や、評価手法の選択、および鑑定評価額決定のプロセスの検証などを行うことが求められると考えられます。 (<表1>参照)

表1 各基準による公正価値評価の比較
基準等の名称 IFRS第13号 IVS第9版 (参考)不動産鑑定評価基準
価値の名称 公正価値 市場価値 正常価格
評価対象 資産・負債(他のIFRS基準に拠ることが明記されているものを除く) 資産・負債(不動産、事業、無形資産、機械設備、金融商品などの別に基準が存在) 不動産(価格、賃料)
最有効使用
  • 市場参加者の観点から最有効使用を判定
  • 資産・負債グループの場合の説明あり
  • 市場参加者の観点から最有効使用を判定
  • 資産・負債グループの場合の説明あり
  • 市場参加者の観点などを考慮して最有効使用を判定
  • 複合不動産に係る説明あり
評価技法、手法等
  • マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチが主たる三方式
  • さらに詳細な評価技法の定めがある
  • マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチが主たる三方式
  • さらに詳細な評価手法の定めがある
  • 比較方式、収益方式、原価方式の三方式に加え、取引事例比較法、収益還元法、原価法の三手法が定められる
  • さらに詳細な評価方法の定めがある
評価額の決定プロセス 適切な評価技法(または組み合わせ)により査定し、判断の後、測定額を決定 適切な評価技法(または組み合わせ)により査定し、判断の後、評価額を決定 原則、三方式、手法を採用し、試算価格の吟味の後、鑑定評価額を決定
公正価値ヒエラルキー レベル判定が求められる レベル判定に有用な情報を提供 特に言及なし

※国土交通省「不動産鑑定評価基準の国際化に関する検討業務に係る調査報告書」(平成23年3月)。ただし、当該報告書時点ではIVS第9版公表前の公開草案(およびスタッフドラフト)の段階






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