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保険IFRSアラート

保険作業部会(IWG)が、国際会計基準審議会(IASB)の保険契約に関する公開草案について議論

2010.12.03
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はじめに

IASBの保険作業部会(以下「IWG」) は、2010年11月11日と12日にロンドンで会合を開き、2010年7月に公表された公開草案「保険契約」(以下「公開草案」) に関する検討を行った。

IWGは、主に保険業界で財務報告に関与している財務担当役員が構成メンバーとなっており、保険契約に関連する会計上の諸問題をIASBにおいて詳細な検討ができるよう支援している。IWGは、おおむね半年ごとに会合を開いている。IWGのメンバーの全容は、IASBのウェブサイトの「保険契約」の箇所から入手可能となっている。

IASBスタッフは、IWGの会合に先立って保険契約に関するディスカッション・ペーパーを公表した。本ディスカッション・ペーパーは米国財務会計基準審議会(以下「FASB」) と共同で作成されており、IASBスタッフがIWGの会合において検討されることを提案している課題をとりまとめたものである。ここでとりあげられている課題は、公開草案に密接に関連したものであるが、IASBが現在会計上の他の選択肢も含めて検討している箇所に重点が置かれている。なお、IWGの検討課題には、新契約獲得費用など一部の課題に対する検討は含まれていない。その理由は、これらの課題については、既に今後の方向性に関するIASBの見解がまとまっていると考えられるためである。

IASBは、検討課題の多くについてFASBと一体となって検討を進める予定である。そのため、IASBはIWGの参加者に対し、FASBの保険契約に関するディスカッション・ペーパーに対する追加的な検討を併せて求めている。

当保険IFRSアラートの以下のセクションでは、IWGの検討課題に加え、IASBが参加者からどのような意見を求めているか、その概要がまとめられている。

リスク調整

IASBの公開草案は、明示的なリスク調整と残余マージンを利用するよう求めており、このうちのリスク調整が各報告日に再測定される。一方、FASBが公表したディスカッション・ペーパーでは、当初認識時点においてロック・インした複合マージン(リスクマージンと残余マージンを組み合わせたもの) を利用することが提案されている。IWGでは両アプローチの長所と短所について議論を行う予定である。

会合の参加者には、リスク調整の測定方法として公開草案の中で取り上げられている下記の3つの手法について、議論する機会が与えられる。

  • 信頼度法(Confidence level)
  • 条件付きテール期待値法(Conditional tail expectation)
  • 資本コスト法(Cost of capital)

IWGでは、上記手法が市場参加者に十分理解されているかどうかの検討に加え、リスク調整の測定にあたって容認できる手法を限定列挙するのではなく、リスク調整の決定に関する単一の原則を示すほうが望ましいかどうかについても検討する予定となっている。

状況変化に関する報告

割引率

公開草案では、履行キャッシュ・フローの現在価値に基づく測定モデルを提案している。したがって、モデルに用いられるキャッシュ・フローには貨幣の時間価値の反映が求められる。そこでIASBは、以下を含む割引率に関するIWGの見解に関心を寄せている。

  • 保険契約に関するキャッシュ・フローが関連する資産のパフォーマンスに依拠する特徴を有していない場合でも、割引率に資産の期待リターンを反映させるべきかどうか
  • 非流動性を保険契約の特徴とすべきかどうか
  • 償却原価で測定される資産に裏付けられる保険負債に関する割引率をロック・インする手法の適用可能性をIASBが検討すべきかどうか

残余マージンと複合マージン;
ロック・インか再測定か

前セクションにあるとおり、残余マージンと複合マージンを当初認識時点でロック・インすべきか、状況の変化に応じて再測定すべきかについて、IASBとFASBは代替的な見解を提示している。IWGの会合のために作成されたディスカッション・ペーパーでは、マージンに関する多様な選択肢が提示されており、IWGの参加者に対し、残余マージンと複合マージンの取扱いについて、以下に関する意見が求められている。

  • 当初認識時点でロック・インするべきかどうか
  • 不利な変動に対してのみ再測定すべきかどうか
  • 有利な変動と不利な変動の双方に対して再測定すべきかどうか

残余マージンないしは複合マージンの再測定が望ましいと考えられる場合には、以下のような点について追加検討が必要となると考えられる。

  • 再測定に際して、見積りにおけるすべての変動を対象とすべきか、あるいは正味キャッシュ・フローの確率加重平均の見積りに影響を及ぼす変動のみを対象とすべきかどうか
  • 再測定の影響を遡及的に反映すべきか、あるいは将来にわたって反映すべきかどうか

表示を通じたミスマッチの軽減

公開草案は、保険負債に関する変動をすべて損益として表示すべきであると提案している。IWGは、その他包括利益の中でボラティリティの影響をわかりやすく表示し、会計上のミスマッチを軽減する代替案が存在するかどうかについて検討するであろう。検討対象となる選択肢の中で、特定の変数から生ずる保険負債の変動をその他包括利益として認識すべきかどうか、また、その変動を損益にリサイクリングすべきかどうかについても検討することになると考えられる。


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