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保険IFRSアラート

IASBとFASB、保険契約の再審議を開始

2011.03.03
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概要

国際会計基準審議会(以下、IASB)は先日、保険契約に関する会計処理の提案についての再審議を開始した。米国の財務会計基準審議会(以下、FASB)もIASBに加わり、FASBは保険契約に関する単一の、高品質かつコンバージェンスを達成した会計基準を目指してIASBと協働していく姿勢を改めて表明している。この再審議において、IASB及びFASB(以下、両審議会)はIASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)に寄せられたコメントを勘案し、保険契約の会計処理に関して行ってきた決定を改めて検討することになる。

両審議会は、2月初旬に新契約獲得費用に関する議論を中心に再審議に着手した。この会議で両審議会は、ED/DPで提案された「契約ごと」ではなく、「保険契約ポートフォリオ」に関係する新契約獲得費用を契約キャッシュ・フローに含めることを暫定的に決定した。両審議会は将来の会議で、どの新契約獲得費用がキャッシュ・フローに含める要件を満たすかなど、新契約獲得費用に関するいくつかの点についてさらに議論を深めていく。

2月16日(水)から18日(金)の会議で保険契約はそのアジェンダとして取り上げられることになっており、その項目は以下のとおりである:

  • ED/DPで提案された会計モデルのいくつかの論点について、両審議会が考え方を確定するか、もしくはモデルを修正することにつながる討議。トピックとして次のような事柄が含まれる:
    • 基準を開発する上での基礎となる原則と前提
    • 契約開始時の利得及び損失
    • 割引率のロック・イン
    • 無配当契約の割引率
    • 損害保険負債の割引
    • キャッシュ・フロー
    • 明示的なリスク調整
  • 以下の3つのトピックに関する教育セッション:
    • アンバンドリング
    • 表示
    • マージン

ディスカッション・トピック

プロジェクトの前提

IASBとFASBのスタッフ(以下、スタッフ)は、保険に関する提案の開発の基礎となる原則と前提を明確にするペーパーを作成した。スタッフは、原則については自明であり、プロジェクトの前提についてもED/DPの結論の根拠でそれを裏付ける議論が十分に行われていると結論付けた。両審議会はプロジェクトの前提を確定するよう要請されるであろうが、将来の議論の中で修正される可能性はある。

スタッフが取り上げた原則は以下のとおりである:

  • 理想的な測定モデルであれば、存在しているすべての経済的なミスマッチ(デュレーションのミスマッチを含む)が報告され、会計上のミスマッチが生じることはない。
  • 理想的な会計モデルであれば、保険契約に組み込まれるオプションの本源的価値と時間的価値及び保証の両方が反映される。
  • 貨幣は時間的価値を有しており、負債が貨幣の時間的価値を含む方法で測定されるとき、企業はその財政状態をより忠実に表すことができる。

前提は以下のとおりである:

  1. (a)両審議会は、保険契約に関し、他の(将来の)基準書(例:金融商品又は収益認識)に見られるより一般的な会計規定の適用を求めるのではなく、独立した保険契約に関する基準書を開発する。
  2. (b)両審議会は、基準書の中で、保険契約に関する会計処理を定めるが、保険者が保有する金融商品に関する会計処理又は特定の種類の企業の会計処理を定めることはしない。
  3. (c)両審議会は、保険契約を、キャッシュ・インフロー及びアウトフローを生み出す権利と義務の組合せとして取り扱う会計モデルをベースとした基準書を開発する。
  4. (d)全体として最終基準は保険契約をポートフォリオ・レベルで測定する。
  5. (e)会計モデルは以下を基礎にする:
    1. (i)契約開始時点の見積りをその後も使用するのではなく、現在の見積り
    2. (ii)観察可能な市場データに整合するインプット
  6. (f)保険負債の測定に含められるキャッシュ・フローは、保険者がその保険契約を履行するに伴って生ずるキャッシュ・フローとする。
  7. (g)モデルでは、単一の最も起こりうる結果ではなく、将来キャッシュ・フローの期待値を用いる。
  8. (h)負債の測定では、保険者の自己の信用状態の変化を反映しない。

契約開始時の利得及び損失

ED/DPは、保険者に対し、保険契約の開始時点の利得が発生しないようにするための残余マージン又は複合マージンを負債の要素として認識することを求めている。さらにED/DPは、残余又は複合マージンがマイナスになることはないとしている。すなわち、そのような場合、契約開始時点で損失を認識しなければならない。コメント・レターの大半がこの点についてのED/DPの提案を支持していた。スタッフは次のように考えている:

  • 契約開始時の利得及び損失に関し提案されたガイダンスは、収益認識に関し検討が進められている基準書のガイダンスに整合する。
  • マージンは、保険負債の測定に含まれるキャッシュ・フロー以外の費用(将来の一般管理費など)を回収することが黙示的には意図されていると考えられるため、マージン全体を契約開始時(又は開始直後)の利得として認識することは適切ではない。

これらの理由などによりスタッフは、両審議会がED/DPの契約開始時点に関する提案を維持すべきことを提言している。

割引率のロック・イン

ED/DPは報告期間ごとに割引率を再測定することを提案している。いくつかのコメント・レターに応じて、スタッフは、契約開始時点で設定されロック・インされた割引率を基に割引計算することが可能かについて検討した。その場合、その後の評価でも市場レートの変動に関係なく、契約開始時に決定された割引率が利用されることとなる。この見解の支持者には保険者も含まれており、そうした保険者は保険負債を担保する投資を償却原価で測定することを想定している。こうしたコメント提供者は、投資を償却原価で測定し、割引率をロック・インすることで、そのビジネス・モデルが適切に反映されると考えている。さらに、このアプローチにより、金利の変動により負債の測定額が変動する一方で、その裏付けである投資が変動しない場合に生ずる会計上のミスマッチも回避できると考えられている。

スタッフは、ロック・イン割引率を提案する主張の内容を検討したが、保険契約のキャッシュ・フロー特性は金融商品のキャッシュ・フロー特性とは異なることに注目している。最も重要な点は、保険契約のキャッシュ・フローにはより大きな不確実性が存在すること及び保険契約にはしばしばオプションと保証が主契約からは分離されずに含まれていることである。金融商品の取扱いとの比較可能性の観点からは、オプションと保証は、分離の上、公正価値で測定すべきであるが、スタッフは、多くの場合、この分離は複雑で現実的ではないと考えている。スタッフはまた、必ずしもすべての保険者が継続保有目的で投資を購入するわけではないことから、ロック・イン割引率の使用は任意としなければならないことにも留意している。つまり、中には、測定日現在の市場レートで負債を割り引き、純損益を通じて公正価値で投資を測定したいと考える保険者も想定されている。こうした考えなどを背景に、スタッフは、すべての保険契約を測定するのに用いられる割引率は、報告期間ごとに更新される最新の割引率とすべきであることを提言している。

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