アシュアランス
保険IFRSアラート

IASBとFASBが保険契約に関する審議を継続

2011.03.31

討議の概要

2011年3月1日と2日に、国際会計基準審議会(以下IASB) と米国財務会計基準審議会(以下FASB) (以下、両審議会) は、IASBの公開草案「保険契約」(以下ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下DP) に関する再討議を継続して行った。両審議会が保険契約に関する基準書の内容を左右する重要な論点に関するものであったことから、今回の会議では徹底的な意見交換が行われ、時に激しい議論がなされた。この会議ではED/DPの提案事項を支持した決定事項は少なかったが、このプロジェクトを先へ進めるために両審議会が歩み寄る姿勢が強調された。

割引率

以前の会議において、両審議会は無配当契約の割引率を算定する特定の方法を規定しないことを決定した。今回の一連の会議では、割引率のロック・イン及び損害保険に対する割引が必要かどうかについて議論した。

割引率のロック・イン

両審議会は、割引率を報告期間ごとに最新のものに更新すべきであるというED/DPの暫定的な決定を支持した。両審議会は、最新の割引率が保険契約に関する有用な情報を提供するための重要な要素であるという結論に至った。したがって、両審議会は、ロック・イン割引率が保険者のビジネスモデルの一環としての保険契約の管理方法と一致している場合は割引率をロック・インすべきであるとする一部のコメント・レターの主張を受け入れなかった。

損害保険負債の割引

ED/DPにおいて、両審議会はすべての保険負債に対して割引計算を適用すべきであると提案した。特に米国の損害保険会社からのコメント・レターでは、ビジネスの管理方法との整合性がとれず、費用対効果も得られないため、短期契約を割引計算の対象外とすべきであるという意見もあった。両審議会は、短期契約の中でも保険事故発生から保険金支払完了までの期間が異なるケース(すなわち、ショートテールとロングテール) について、割引計算を適用すべきかどうかについて協議を行った。

その結果、両審議会は、ロングテールの損害保険の支払備金 については割引計算が適用されるべきであると暫定的に決定した。また、両審議会は、割引による影響が僅少である場合には保険負債の割引を要求すべきではないと暫定的に決定した。これに関連して両審議会は、簡易アプローチに関するペーパーの一部として、ショートテールの保険金の割引の影響が僅少であることを判定するための追加的なガイダンスを策定するよう、スタッフに指示した。

適用範囲

ED/DPは、サービスの提供をその主目的とする固定料金サービス契約を保険契約に関する基準書の適用対象外とすることを提案している。両審議会は固定料金サービス契約が保険契約の定義に合致していることを認識しているものの、固定料金サービス契約を収益契約として会計処理する現行の会計実務が財務諸表の利用者に有用な情報を提供しているという理由から、これを適用対象外とすることを決定した。

また、一部のコメント・レターの回答者から、この問題に対する提案内容が明確さに欠けるとの指摘があったため、両審議会はどの固定料金サービス契約を適用対象外とすべきかについて協議した。どの時点で固定料金サービス契約を保険契約とみなすべきかという論点に比べ、どのような契約が固定料金サービス契約であるかについて多様な見解が存在した。審議会メンバーの一人は、このように多様な見解が生じるのは、保険契約に関する定義が広範すぎるためであると示唆した。そのため、この問題を解決するために、両審議会で保険契約の定義そのものを再検討する必要があるだろうとの提案がなされた。最終的に両審議会は、サービスの提供を主目的とする固定料金サービス契約のみを適用対象外とするというED/DPの暫定的な決定を支持した。今後行われる会議において、両審議会は適用対象外とすべき固定料金サービス契約の識別に関するガイダンスを整備することになるだろう。

両審議会はまた、それ以外にもED/DPが提案している以下の適用除外を支持した:

  • 製造業者、販売業者、又は小売業者が発行する製品保証
  • 従業員給付制度による事業主の資産及び負債、及び確定給付退職制度により報告される退職給付債務
  • 契約上の権利又は契約上の義務のうち、非金融項目の将来の使用又は使用権を条件とするもの
  • 製造業者、販売業者又は小売業者が提供する残価保証、及びファイナンス・リースに組み込まれた借手の残価保証
  • 企業結合において支払うか又は受け取る条件付対価
  • 企業が保有する元受保険契約(すなわち、企業が保険契約者となる元受保険契約)

EYの見解
両審議会の暫定的な決定は、どのような固定料金サービス契約を適用対象外とすべきかについて明確にしていないという点で、多くの回答者の懸念を払拭するものとはならなかった。企業が対象契約の基本的な側面をどう考えるかに基づいて両審議会が適用ガイダンスの整備を進めるとしたら、保険者は固定料金サービス契約を保険契約として会計処理し、保険者以外は同種の契約をサービス契約として会計処理するようなシナリオが想定されるだろう。両審議会はサービス契約を適用対象外とすることが望ましいと合意しているが、開発中の適用ガイダンスが両審議会の望む方向が現実的なものとなるために欠かせないものとなるだろう。

金融保証契約

IASBは、保険契約に関する基準書の適用範囲にすべての金融保証契約を含めることを提案した。一方FASBは、保険契約者が金融保証契約でカバーされる原資産(アンダーライング・アセット)を保有している場合の金融保証契約のみを対象とすることを提案している。銀行をはじめとしてコメント・レターを寄せた回答者の中には、金融保証契約は金融商品に関する基準で対応すべきであるとするものもあった。そのような回答者が懸念しているのは、銀行や資金の貸付けを行っている類似の企業では、その金融保証契約に保険契約に関する基準を適用するのは業務上煩雑になるのではないかという点である。具体的には、これらの事業体は、IFRS第9号「金融商品」導入の結果として、貸出金の減損を測定する複雑なプロセスを新たに導入する必要が生じることになるが、保険モデルの適用により同種のリスクに対して異なったプロセスが求められることが挙げられる。さらに、同種のリスクが異なる基準で測定された場合、当該財務諸表の利用者に混乱をもたらす恐れも考えられるだろう。

保険契約に関する基準書の公表に向けて歩みを進めるために、IASBはIFRS第4号「保険契約」にある金融保証契約に関する現行の適用除外規定を維持することを暫定的に決定した。この適用除外によって保険者は、保険者が従前に当該契約を保険契約とみなしていたことを言明していれば、金融保証契約を保険契約として会計処理することができる。それ以外の場合は、当該契約はすべて金融商品として会計処理することが求められる。さらにIASBは、グループ企業間の保証につき、金融保証契約として会計処理しないという例外を設けないことを決定した。

FASBはIASBの決定の根拠に理解を示したものの、特定の米国会計基準のガイダンスにおいてこの問題を先送りにし、今後の会議で協議の対象とすることを求めている。

新契約獲得費用

ED/DPでは、両審議会は、当初認識の時点において、保険者が増分の新契約獲得費用を契約レベルで保険負債の測定に含めることを提案した。その後、両審議会は、その計算単位(ユニット・オブ・アカウント)を契約レベルからポートフォリオ・レベルへと変更することを決定した。この会議で両審議会は、保険負債にどのような新契約獲得費用を含めるべきか協議した。

IASBは、当該ポートフォリオ獲得に直結した費用を含む、保険契約ポートフォリオ獲得に際して保険者が負担したすべての費用を、当初の測定に含める新契約獲得費用とすべきことを暫定的に決定した。IASBは、保険者の契約獲得の仕方からすると、保険契約の獲得が不成功に終わった場合の費用(不成功費用) についても保険契約ポートフォリオの獲得に関連していると考えられることから、不成功費用を含める会計上のルールの策定は可能と考えた。したがって、契約獲得の成功に関連した費用と不成功費用の双方がポートフォリオの新契約獲得費用に含められ、履行キャッシュ・フローにも含める必要がある。

一方、FASBは、新契約獲得費用に含まれるものとしては、(a)新契約獲得の成功に関連した費用と(b)契約ポートフォリオ獲得に関連した直接費用に限るべきであることを、全会一致で決定した。両審議会は、どのような費用がこの場合の「直接」に該当するかを簡単に協議した上で、この論点に関するアジェンダ・ペーパーに挙げられている個々の費用について詳細に議論するよりは、まずは「直接」という概念の定義について、スタッフが立ち戻って検討する方が建設的であるとの認識に至った。

また、両審議会は、保険契約ポートフォリオにどのような費用を含めるべきか決定するにあたり、ガイダンスが必要であるという点で一致した。

EYの見解
履行キャッシュ・フローに不成功費用を含めるかどうかについて、両審議会が異なる見解をもつに至ったことは、統一的な基準の開発という目標達成を目指す両審議会に、新たな課題が突きつけられたことを意味している。

フィールド・テストの予備的報告

両審議会はEDでの提案に関するフィールド・テストの大まかな結果報告について議論し、今後の会議において詳細な報告について議論する。両審議会は、本件に関して特に決定は行わなかった。

保険負債の測定における不確実性

両審議会は、リスクの二重計上(ダブルカウント)の可能性や測定モデルがもつ不確実性に関して、一部の審議会メンバーがもつ懸念を取り上げたスタッフ・ペーパーについて検討した。この件に関し両審議会は特に決定は行わなかったが、当該ペーパーが、履行価値のさまざまな要素の見積りに関する課題をよりよく把握するに資するものであったとの認識を見せている。

次のステップ

両審議会は保険契約プロジェクトについて協議するため、2011年3月を通して会議を行うことになるだろう。IASBは、2011年6月までに保険契約に関する最終基準を公表するという積極的なスケジュールの達成を引き続き目標としている。




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