アシュアランス
保険IFRSアラート

IASBとFASBによる保険契約の継続審議

2011.04.06

※本号は前号(2011年3月号)の追補版です。

2011年3月14日から15日にかけて、国際会計基準審議会(以下IASB) と米国財務会計基準審議会(以下FASB) (以下、両審議会) は、保険契約の会計処理に関して提案されたガイダンスについて、再討議を継続して行った。両審議会は、代替的な表示方法、保険契約の定義、割引率、当初認識のタイミング、複合マージンの償却について議論した。また、両審議会は、リスク調整の決定方法や、資産ベースの割引率の提案に係る教育セッションを実施した。

代替的な表示方法

IASBの公開草案「保険契約」(以下ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下DP) に寄せられたコメント・レターでは、マージン関連情報を表示することの有用性についてはおおむね好意的に受けとめられていた一方、コメント・レター回答者が、とりわけ保険料や費用といった活動量を表す情報の充実を求めていることが明らかとなった。また、回答者の中には、さらに進んで、生命保険契約については支払期限が到来した保険料を収益として表示し、損害保険契約については既経過保険料を収益として表示する伝統的な表示アプローチを提案する回答者もみられた。

このようなコメント・レターへの対応として、スタッフは、要約マージン・アプローチの利点を反映させつつ、活動量を表す情報を同時に提供する代替案をいくつか例示した。それらの例示には以下が含まれる:

  • 損益計算書上で活動量を表す情報を注記する要約マージン・アプローチ
  • 単一の損益計算書モデルの一部として、活動量及びマージンに係る情報を組み合わせた、拡張マージン・アプローチ
  • 収益源泉(利源) 分析と伝統的アプローチの双方を組み合わせて表示する二元的表示アプローチ
  • 期中に引き受けた新契約について契約開始時に見込まれる期待キャッシュ・インフローとキャッシュ・アウトフローの総額を表示した、引受期待キャッシュ・フロー・アプローチ

審議会のメンバーは、表示される情報が、保険の専門家ではない利用者にとって理解可能なものであることが望ましいとの考えを示した。審議会のメンバーの多くは、提示された代替的アプローチの受入れに前向きであるものの、代替的な非会計基準ベースの測定値に焦点を当てた補足情報に関する懸念も示された。しかし、表示に係る議論は今回の決議事項ではなく、この問題に関する議論は今後も継続される予定である。

EYの見解
両審議会が、有益で理解し易い表示形式を模索していることは明らかである。最も有益な情報とは、財務諸表上の業績と、負債の測定、収益の源泉、営業成績の指標となる活動量に関する情報の関係を理解可能とする表示であるといえよう。財務諸表の注記の追加情報に大きく依存することなく、有益な情報を提供するという目的を達することができるかどうかが、依然として検討すべき重要課題であるといえるだろう。

保険契約の定義

コメント・レターの中には、IFRS第4号における保険契約の定義は十分機能していたという回答もあったが、両審議会は、ED/DPの中で提案された以下の追加要件を支持することを決定した:

  • 保険者が重要な追加的給付を支払うかどうかを決定するにあたってのシナリオの分析において、保険者は貨幣の時間価値を考慮する
  • 保険者が支払う正味キャッシュ・フローの現在価値が、保険料の現在価値を上回る商業実態を伴うシナリオが存在しない場合には、契約は保険リスクを移転しない

両審議会は、契約群団全体を対象とする再保険契約については、損失が発生する可能性を明示することが難しい場合があることを懸念している。したがって、両審議会は、そのような状況にも対処できる再保険契約のためのガイダンスを作成するようスタッフに指示した。

EYの見解
既存の保険契約の分類を継続可能とする経過措置が設けられなければ、保険者は、保険契約の定義に要件が追加されることに伴い、現行の契約分類を変更する可能性があるかどうか、既存の保険契約を見直す必要が生じるだろう。

割引率

両審議会は、有配当契約の割引率に関するガイダンスを明確化することを決定したが、簡便的な手法による割引率については却下した。ここでの「有配当契約」は、キャッシュ・フローの金額やタイミング、不確実性が、全面的又は部分的に特定の資産のパフォーマンスによって決まる契約を指す。

両審議会は、有配当保険契約の測定に用いられる割引率の目的は、無配当保険契約の測定に用いる割引率と整合的であるべき点を明確にすることを決定した。また、両審議会は、キャッシュ・フローの金額やタイミング、不確実性が、全面的又は部分的に特定の資産のパフォーマンスによって決まる場合、保険者はその関連性を反映した割引率を用いて当該キャッシュ・フローを調整するべきであるというガイダンスを示すことを決定した。

両審議会は、そのような割引率の代替として簡便法による割引率を用いることに利点があるとは考えなかった。基準の対象範囲と保険契約の定義に関する決定によって、非金融機関が発行する契約が基準の対象範囲となる場合には、この問題を再び見直すことになるだろうとFASBは指摘した。両審議会は、世界各地で優良社債の利回りを使うなどの簡便法が採用されれば、混乱を来たす可能性があると考えていたのである。両審議会はさらに、保険者が規制当局やアクチュアリー関連機関などと協調すれば、負債の特性を反映した割引率をより信頼性をもって見積ることが可能になるほか、その見積りは代替的なものを用いた場合よりも精度が高いものとなるという確信を表明した。

EYの見解
今回の決定により、有配当契約や無配当契約に対する割引計算の原則を首尾一貫させるという意図が明確になった。「キャッシュ・フローの金額やタイミング、不確実性が、全面的又は部分的に特定の資産のパフォーマンスによって決まる場合」という言い回しは、割引計算の原則を適用するにあたり、特定の資産のパフォーマンスへの依存が、有配当契約の割引率の決定の際に考慮されるべき負債の特性の一つであることを示唆するものと思われる。

当初認識のタイミング

両審議会は、保険契約の当初認識日は通常、保険による保障(補償) 開始日であるという点を明らかにした。不利な契約であれば、開始日より前に契約を認識することとなる。このガイダンスは、保険者が保険契約に基づくリスクにさらされた時点(この時点は、通常、保険者が当該保険契約による義務を負う時点より遅れることはない。) での当初認識が必要になるという、ED/DPで提案されたガイダンスとは異なっている。また、両審議会は、保険契約をより早く認識することから得られる追加の情報は限定的なものであろうという点でも一致した。

EYの見解
現在の業界慣行では、保険による保障(補償) が開始した時点で保険契約を認識している。多くの関係者が、ED/DPによる認識日に従うためには情報システムへの変更が必要となることを懸念していたため、保険者はこの変更を歓迎するだろう。

複合マージン

両審議会は、複合マージンのリリースに関する考え得るアプローチについて協議した。スタッフは、リリースに関するいくつかの計算式を提示し、審議会の委員の多くは、リリース方法を決定するための明瞭な原則を示すことへの支持を表明した。

また、リリース計算の原則は対象となる保険契約の内容に応じて、リスクからの解放(release-from-risk concept)によるべきか、サービス(service concept) によるべきか、あるいはその混合であるかについて議論が交わされた。また、両審議会は、リスクや不確実性が保険期間後も存在する場合や保険期間後もサービスが提供される場合に、保険期間を超えてリリースを行うべきかどうかについても協議した。さらに、リスクからの解放(release-from-risk)アプローチとリスク・マージンの概念との関連について協議するとともに、リスク・マージン及び残余マージンを区分して把握するアプローチと複合マージンの考え方とを統合することができるかどうかについても協議を行った。

EYの見解
このプロジェクトを通じて、両審議会は、各保険者の財務諸表の比較可能性を高めるために、一定レベルの一貫性の確保を目指していることを示してきた。しかし、この協議において、両審議会が、複合マージンや残余マージンのリリースのための過度に定式化されたアプローチの策定には後ろ向きであることが示された。各社が同種の商品に対して異なったアプローチを採用した場合、比較可能性が損なわれる可能性があるだろう。

教育的なプレゼンテーション

両審議会は、割引計算に関するガイダンスの適用案について、業界の専門家によるプレゼンテーションを受けた。提案されたアプローチは資産負債レート(Asset Liability Rate)と呼ばれるものであり、負債のキャッシュ・フローの割引率はさまざまな要素に細分化できることを示唆するものであった。両審議会はさらに、全社的なリスク管理の観点からリスク・マージンを設定する際に主要な保険会社が用いているアプローチの概要について、保険リスク管理の専門家によるプレゼンテーションを受けた。このプレゼンテーションは、リスク・マージンを、信頼性をもって決定できるかについて、両審議会の判断に資することを意図したものであった。

おわりに

両審議会は引き続き保険契約に関する審議を進めており、IASBは依然として6月までに基準書の最終版を公表することを目指している1。そのため、今後も早いペースでの再審議の継続が見込まれており、保険契約に関するIASBの協議は3月21日の週に予定されているほか、IASB保険ワーキング・グループの開催が3月24日に予定されている。

  1. 2011年3月14日、15日に行われた再討議時点の情報であり、2011年3月28日付けで更新されたIASBのワークプランによれば、最終基準化は2011年下半期に変更されている。



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