アシュアランス
保険IFRSアラート

IASBとFASBによる審議の進展

2011.04.15

2011年3月21日から22日にかけて、国際会計基準審議会(以下、IASB)と米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、その共通目標である、保険契約に係る会計基準の世界的な統一化に向けてさらに歩みを進めるための討議を行った。両審議会は、リスク調整の測定目的と、保険契約の境界の定義の修正に関する決定を行った。また、両審議会は、長期契約に適用される割引率の変動による影響を「その他の包括利益(OCI)」として表示するという提案を却下した。非決定事項に関するセッションでは、アンバンドリングの目的に関する討議も行われた。さらに、両審議会は、3月29日にも討議を行い、残余マージンや複合マージンのアンロックの可能性についても検討を行った。

リスク調整

両審議会は、マージンを利用することにより、保険契約の契約開始時の利益計上はしないという姿勢を明らかにしている一方、リスク調整と残余マージン、もしくは複合マージンのどちらを採用するかに関してはまだ決定を下していない。前回までの会合で、両審議会は、リスク調整が信頼性を持って測定できるのであれば、その情報は有用であるという結論に達している。

3月21日から22日にかけての両審議会の会議では、主にリスク調整の測定目的に関して、重点的に討議が行われた。保険契約に関するIASBの公開草案(以下、ED)では、リスク調整とは、最終的な履行キャッシュ・フローが予想を超過するリスクから解放されるために、保険者が合理的に払うことになる最大金額であるとされている。コメント・レターで寄せられた意見に基づいて、両審議会は、リスクに対する調整が出口価格と関連しているという見方を避けるため、リスク調整の目的を修正すべきであるとの決定に至った。この会議では、リスク調整の目的に、リスク中立の概念(明示的なリスク調整を測定すべき水準)を組み入れるべきかどうかに関して、重要な討議がなされた。両審議会は、リスク調整が、「最終的な履行キャッシュ・フローが予想を超過する可能性があるというリスクを負うために、保険者が対価として求める金額である」との定義となるよう、その測定目的の修正を決定した。

また、両審議会は、スタッフに対して、この場合の「超過する」("exceed")という語は、リスク調整を見積る際にキャッシュ・フローの不利な方向への変動のみを検討対象とすべきことを意味するものではないことを、ガイダンスの中で明確にするよう求めた。むしろ、ここでは保険者がリスク回避的であること(すなわち、保険者が有利な結果よりも不利な結果の方に重きを置くという事実)を強調することが意図されている。スタッフはさらに、リスク中立という概念をガイダンスの中にどのように反映させるべきかを検討することになるだろう。

両審議会は、目的を改訂することに関しては合意したが、それが信頼性の高い金額として測定できるかどうかについての答えは得られていない。信頼性の高いリスク調整の計算が可能かどうかを評価するプロセスの一環として、明示的なリスク調整が実際どのように利用されているかに焦点を当てた、二つの教育セッションが行われた。

残余マージンや複合マージンのアンロック

両審議会は、残余マージンや複合マージンをアンロックすることで、キャッシュ・フローの見積りの変動による影響を相殺することを要求する可能性について協議を行った。審議会のメンバーはまた、現時点での見積りに基づいた測定モデルを利用しながら、マージンのアンロックを通じて各期の変動による影響を打ち消すことへの懸念を示した。審議会のメンバーは、このようなアプローチは収益の「スムージング(平準化)」につながるものであり、負債の変動の要因となった測定上の重要な情報を曖昧にしてしまう可能性があると指摘した。さらに、アンロックが保険負債の算定を複雑にするのではないかという懸念も示されている。

上述の懸念に加え、両審議会は、もしマージンをアンロックすると結論付けた場合には、その影響を将来に向かってのみ反映させる方法で行う必要があることも指摘した。両審議会のメンバーはさらに、負債測定に係る前提条件のうちどの部分(財務上あるいは非財務上)をアンロックすべきかについても異なった見解を示しており、保険負債のインプットすべてをアンロックすべきだというメンバーもいれば、アンロックは非財務上のインプットに限ることが望ましいという意見のメンバーもいる。

契約の境界

契約の境界に関する定義は、負債の測定に含める将来キャッシュ・フローの範囲を決定するにあたり重要であり、両審議会は、将来の契約に関連したキャッシュ・フローを含めず、既存の契約に関連したキャッシュ・フローのみを含める定義を検討中である。EDと保険契約に関するFASBのディスカッション・ペーパー(以下、DP)では、保険契約に含まれるキャッシュ・フローとは、保険者が保険による保障(補償)を求められなくなる時点、あるいは保険契約者に関する現在のリスク評価を全面的に反映させた価格を設定できるようになる時点のいずれかの時点までに発生するものであるとされている。コメント・レターで寄せられた意見に基づいて、両審議会は、保険料の前払的な要素を含まない契約に関する定義を修正した。修正された定義では、価格の見直しができるかどうかは、個別契約レベルではなく、ポートフォリオ・レベルで行えばよいことが明確になった。この変更によって、ある種の健康保険契約など一部の契約に関する契約の境界は、保険契約者との関係継続が見込まれる期間ではなく、一年で区切ることが可能になるだろう。両審議会は、この定義の変更が一部の生命保険契約に関する分類に対し、想定外の影響を及ぼすことにならないか調査するようスタッフに指示した。

EYの見解
ED/DPの提案内容と比較すると、上記の変更により、契約のポートフォリオのリスクを反映させるため年次で価格の見直しが行われる契約について、その経済的側面がまったく異なった形で測定に反映されることになる。すなわち両審議会が代替的な測定モデルの利用を求めるか容認することになれば、これらの契約はビルディング・ブロック・アプローチではなく、保険料配分アプローチに基づく短期保険契約に関する代替的な測定モデルで測定される可能性が高いということである。

長期割引率とOCIの利用

両審議会のスタッフは、保険者が長期割引率の変動による保険負債への影響をOCIの中で表示することを提案した。このOCIの利用は、短期の利率を参考に補外法によって推定した割引率のように、市場で観察可能でない長期の利率が使用される場合の適用が想定されていた。しかし、両審議会はこの提案を却下した。両審議会は、長期割引率について、保険負債を測定する際に同じく判断を要する他のインプットとは異なる取扱いを行う必要性を認めなかった。しかし両審議会は、負債の測定の変動を表示するためにOCIが利用できるかどうか、今後の会議で検討する可能性がある。これらの討議では、OCIに反映させた方がよいと考えられる保険負債の変動要素について、幅広い角度から包括的に検討が行われると考えられる。

EYの見解
両審議会は、OCIを利用するというスタッフからの提案を却下したものの、コメント・レターで挙げられていた、インプットの変動により純損益に大幅なボラティリティが生ずる可能性があるという懸念に留意し、保険負債の変動の表示に関して、たとえば、OCIの利用、もしくは金融市場関連のインプットの変動による純損益をその他の要因によるものと区分して表示することなど、短期市場金利の変動による影響に関する有用な表示方法を検討しているとみられる。

アンバンドリング

両審議会は、組込デリバティブについて、IASB、FASBそれぞれの金融商品に関する会計基準で求められている現行の要件に基づいてその主契約である保険契約から区分処理するというED/DPの提案を確認した。両審議会は、実務者がすでに組込デリバティブに関する現行のガイダンスを熟知しており、新しく別の提案を行うことは生産的ではないと判断したものと思われる。非決定事項に関するセッションで、両審議会は、アンバンドリングの定義についてより広範な見地から討議を行い、アンバンドリングを情報の有用性の向上という観点からも検討している。ただし、アンバンドリングがどのような場合に有用な情報を提供するかについて、具体的な合意には至っていない。たとえば、契約に含まれる財務的要素が、金融商品に適用される原則に基づいて測定される場合と比べ、保険契約に適用される基準で測定される場合に大幅に異なってくるかどうか、またその差が大きな問題になるかどうかについても、審議会のメンバーの間では見解が分かれている。また、測定上、預り金要素をアンバンドリングすることにより、残りの保険要素をより適切に表示することにつながるとする審議会のメンバーもいる。

EYの見解
この討議は、どのような表示が適切であるのか及び、提案されている保険モデルの下での利益の発生形態に関する審議会の認識が、アンバンドリングに関する問題の解決にとって重要な課題となることを示唆していると考えられる。

終わりに

両審議会は引き続き、保険契約の会計処理に関する最終決定の投票を2011年6月までに行い、2011年後半に最終版を公表するという目標に向けて、今後も鋭意作業を続けるものと見込まれる。そのため4月から5月にかけて行われる両審議会の合同会議では、保険に関するトピックがほぼすべて議題に取り上げられることになるだろう。




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