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保険IFRSアラート

両審議会、修正アプローチを支持するも詳細の決定には至らず

2011.05.13

重要ポイント

  • IASBは、2011年後半に保険契約に関する最終基準を公表予定である。
  • FASBは、2011年後半に保険契約に関する公開草案を公表する見込みである。
  • 両審議会は、ガイダンスには一定の適用要件を満たした保険契約に対する修正アプローチを盛り込むべきという決定を行ったものの、その要件に関する結論には至らなかった。
    ただし、修正アプローチにより会計処理される保険契約に影響が及ぶと見込まれるいくつかの決定がなされた。

概要

4月27日に、国際会計基準審議会(以下、IASB) と米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、保険契約に関する会計基準の世界的な統一化に向けた討議を継続して行った。今回の会議では、すべての保険契約をビルディング・ブロック・アプローチを用いて測定すべきか、特定の要件を満たす保険契約に対しては修正アプローチを取り入れるべきかを中心に討議が行われた。

また今回の会議では、両審議会は短期契約に対する修正アプローチについても討議を行った。

背景

保険契約に関するIASBの公開草案(以下ED)は、一部の短期契約に関して、現状の会計モデルの多くで使用されている未経過保険料アプローチに類似する修正アプローチの採用を提案している。修正アプローチでは、保険事故発生前の期間の保険負債(将来の保険事故に対する保険金の支払いについての潜在的義務) の測定の基礎として、営業保険料を使用し、保険期間にわたり収益を認識する。修正アプローチが採用されれば、保険者はより複雑なビルディング・ブロック・アプローチによって保険事故発生前の期間の保険負債を算定する必要がなくなるだろう。

修正アプローチは、測定だけでなく損益計算書における表示とも関連している。EDの提案によれば、ビルディング・ブロック・アプローチではマージンに関する情報のみが表示されるが、修正アプローチでは、損益計算書において取引量の情報(保険料及び保険金など) が表示されることになる。財務諸表の利用者、特に損害保険に関心をもつ利用者はこの表示方法に慣れており、その方が有用と考えている(両審議会に寄せられたコメントにあるとおり)。

保険契約に関するFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下DP) では、修正アプローチに関するEDの提案の概要が示されている。ただしFASBは、修正測定アプローチを一部の保険契約に適用すべきかどうかについての予備的見解は出しておらず、DPでは、仮に一部の保険契約に修正アプローチが容認された場合に、その認識、測定及び表示に関して適用すべき規定につき、関係者からの意見を求めるに留まっていた。

審議会による討議

今回の討議で検討された修正アプローチに関する論点は、以下のとおりである:

  • どのような保険契約が修正アプローチの適用対象となるのか。
  • 将来の保険料は割り引くべきか。
  • 新契約獲得費用はどのように処理すべきか。
  • 保険料をどのようなパターンで収益として認識すべきか。
  • 不利な契約のテストに関してはどのようなガイダンスを提供すべきか。
  • 修正アプローチによる会計処理は強制か、あるいは任意か。

会議の中で、審議会の一部のメンバーから、修正アプローチの目的について質問がなされたが、これは、修正アプローチが、ビルディング・ブロック・アプローチの概算値を算定する手法として提案されているのか、あるいは収益認識プロジェクトで提案されているモデルから派生した、ビルディング・ブロック・アプローチとは独立のモデルであるのかについて確認したいという考えに基づいてなされたものであった。総じてFASBのメンバーは修正アプローチを独立のモデルとみているのに対し、IASBメンバーの多くは保険負債の測定手法の一つと考えている。したがってIASBメンバーは、このアプローチがビルディング・ブロック・アプローチの概算値を算定する手法であるという見解に立っている。ただし、両審議会はアプローチの目的に関する結論は出さず、これについては今後の会議でさらに討議することとなろう。

適用要件と割引

両審議会は、修正アプローチが適用される契約の適用要件について討議を行った。EDの提案によれば、修正アプローチは、契約期間がおおむね1年以内で重要な組込デリバティブを含まない保険契約に適用されることになる。これに対して、今回の会議での討議内容からは、両審議会は適用要件を決定するにあたり、契約期間が1年といった明確な線引きを行わないよう腐心している姿勢がうかがわれた。今回の討議では、結局、両審議会はスタッフの提案を支持することはできず、スタッフに対して適用要件についてさらなる検討を求めることとなった。

割引に関しては、多くの審議会メンバーが割引と修正アプローチの対象範囲との関係について注意を払っている。たとえば、一部の長期契約が修正アプローチの対象に含まれるよう適用要件が定められる場合には、審議会メンバーは修正アプローチの対象契約に一律に割引を免除することには難色を示すだろう。両審議会は、保険事故発生前の期間の保険負債の割引について、収益認識プロジェクトで提案された割引に関するガイダンスの援用を検討することで暫定的に合意した。収益認識プロジェクトにおける、割引に関する暫定的決定は以下のとおりである:

  • 契約が重要な金融的要素を含む場合には、企業はその貨幣の時間的価値を反映するべく、確定している対価の額を割引調整すべきである。ただし、契約が重要な金融的要素を含むかどうか判断するにあたっては、企業は以下を含むさまざまな要素を考慮する必要がある:
    • 商品やサービスの引渡し時点で顧客が支払いを行った場合に、対価の金額が著しく相異するかどうか
    • 企業が契約で定められた商品やサービスを顧客に引き渡す時点と、顧客がそれらの商品やサービスに対する支払いを行う時点との間に、著しい時間差があるかどうか
    • 契約に内在する明示的又は黙示的な利子率が重要であるかどうか。これには、契約の期間が1年以下である場合に割引は行わないという実務上の簡便法も含まれる
  • 実務上の簡便法として、定められた商品やサービスを顧客に引き渡してから顧客による支払いの時点までの期間が1年以 下の場合には、企業に対し契約に重要な金融的要素があるかどうかの判断を求めるべきではない。

ただし両審議会は、修正アプローチの目的やこのアプローチの対象となる保険契約について引き続き討議を行う際に、この割引の除外規定について再検討が必要であることを指摘した。多くの審議会メンバーは、保険事故発生前の期間の保険負債に割引を求めれば過度に複雑になると考えており、修正アプローチが採用された場合、割引の免除が修正アプローチの簡素化の重要な柱になると考えている。

新契約獲得費用

両審議会は、修正アプローチを適用した場合の、新契約獲得費用の会計処理と表示に関して討議を行った。両審議会は、保険契約プロジェクトにおける新契約獲得費用に関する現在の決定は、収益認識プロジェクトにおける決定とは異なるものであること(すなわち、新契約獲得費用が保険負債の控除項目か、別建ての資産か)を指摘した。

上述のとおり、IASBは修正アプローチをビルディング・ブロック・アプローチに基づく保険負債の概算値を算定する手法と考えている。そのため、IASBは、修正アプローチにおける新契約獲得費用は、ビルディング・ブロック・アプローチにおける新契約獲得費用の会計処理と同様に扱われるべきであると暫定的に決定した。しかし、一部のFASBのメンバーは、修正アプローチが収益アプローチの一つと考えられる場合には、修正アプローチを収益認識プロジェクトと整合させるべきであると考えている。そこでFASBは、修正アプローチの目的に関する結論がまとまるまで、修正アプローチにおける新契約獲得費用に関する結論を先送りすることを決定した。

収益認識のパターン

両審議会は、EDでの提案内容に沿う形で、収益は、時間の経過に応じて認識するか、収益の発生パターンが時間の経過と著しく異なる場合には、保険金や給付金の発生が見込まれるタイミングに応じて収益認識すべきであるという点で合意した。

不利な契約

両審議会は、不利な契約テストの実施時期について、定性的なガイダンスを設けるべきであるという点で合意した。EDのアプローチにはこのようなガイダンスがないため、この決定は財務諸表利用者から好意的に受けとめられるだろう。この定性的なガイダンスは、ある契約が不利であるかどうか(その場合、対象契約から生ずる潜在的な損失の計算が求められる)を判断するための指標を基礎とするものになるであろう。両審議会は、ビルディング・ブロック・アプローチにリスク調整を含めるべきかどうかを決定するまでは、不利な契約の測定方法に関する討議を先送りすることとした。

強制か任意か

修正アプローチの適用を強制とするか任意とするかについて、両審議会は簡単に討議したが、最終的な合意には至らなかった。この問題は今後の会議で討議されることになるだろう。

EYの見解
両審議会は、現在、未経過保険料アプローチが適用されているほとんどの保険契約について、その保険事故発生前の期間の保険負債に対して修正アプローチを適用する方向で検討しているようにみえる。さらに、両審議会は保険事故発生前の期間のこれらの保険契約の多くに対し割引を求めることは考えていないようにもみえる。その場合に残る課題は、修正アプローチの目的の明確化と実行可能な適用要件の設定である。
修正アプローチの目的に関する二つの異なった見解は、収益認識モデルの特徴と保険負債の測定モデルの特徴を比較することにより、両者の差異を擦り合わせることができるであろう。収益認識プロジェクトで提案されたモデルは、保険負債の測定モデルとは異なる概念に基づいてはいるものの、契約上の(履行)義務を測定するためのモデルとして規定されている。この二つの測定モデルの類似点を探ることにより、両審議会は修正アプローチを独立したモデルと考える立場の人々と、それをビルディング・ブロック・アプローチに基づく保険負債の概算値を算定する手法と考える立場の人々との間の溝を埋めてゆくことができるだろう。

次のステップ

両審議会は、2011年後半に基準など(IASBは最終基準、FASBは公開草案)を公表することを目標としている。当初の予定からは延期されたが、両審議会はあらゆる機会に保険関連のトピックを議題として取り上げるであろう。次回の審議会は5月4日の開催が予定されており、保険関連のトピックは再びそのアジェンダに含まれている。




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