アシュアランス
保険IFRSアラート

両審議会が割引率を中心に討議を継続

2011.04.29

※本号は前号(2011年4月号)の追補版です。

重要ポイント

  • IASBは、最終基準を2011年下半期1に公表するという目標を掲げ、保険契約プロジェクトに係る再審議を継続して行っている。
  • 両審議会の間に残る一部の差異を解決する必要があるものの、FASBはIASBとともに会計基準のコンバージェンスに向けて作業を進めている。FASBは、2011年下半期の公開草案の公表を目指している。
  • 4月12日の会議で両審議会は、割引率に保険負債の特性を反映させる必要があるとしたが、割引率の算定にあたっての具体的な方法については規定していない。両審議会は、資産の収益率をベースに保険負債の特性を反映するように調整を加え、割引率を算定するというアプローチ(トップダウン・アプローチ)に関するガイダンスについて合意した。ただし、それに関するガイダンスを承認したことは、他のアプローチの利用の禁止を意味するものではない。
  • 両審議会のスタッフは、ボラティリティは多くの関係者が抱く懸念の最たるものであり、多数のトピックにも関連していると指摘している。潜在的な利益のボラティリティは、今後の両審議会の討議でも継続して重要課題になるものと見込まれる。
  1. 2011 年4月21日付けで更新されたIASBのワークプランによれば、最終基準発行の予定(ターゲット) が2011年4Qに変更されている。次頁以降の関連する記載についても同様。

4月12日に国際会計基準審議会(以下、IASB)と米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、保険契約に関する会計基準の世界的な統一化に向けた討議を継続して行った。今回の会議では、資産の収益率をベースにしたトップダウン・アプローチによる保険負債の割引率の算定方法に重点が置かれた。それに加えスタッフは、両審議会によるこれまでの決定事項を取りまとめた文書を発行し、検討中のトピックやその討議の時期もあわせて明らかにした。

トップダウン・アプローチによる割引率の算定

2月に行われた会議で両審議会は、割引率の算定について特定の方法を規定しないことを決定した。また、保険負債の特性を反映した割引率の算定に照準を合わせた「原則主義アプローチ」に拠ることを決定している。したがって保険者は、リスクフリー・レートをベースに調整分を上積みするボトムアップ・アプローチか、資産の収益率をベースに調整分を差し引くトップダウン・アプローチのいずれかを選択し、割引率を算定することになる。この「原則主義アプローチ」に従えば、目的に合う最良の方法の決定は保険者に委ねられることになる。

割引率に関する決定が2月に行われた後、スタッフに対し、トップダウン・アプローチがどのように適用されるかについてさまざまな関係者から問合せがあった。それに応えてスタッフは、トップダウン・アプローチに関するガイダンスを作成し、今回の討議で以下のガイダンスを両審議会に提示した:

  • 割引率はイールドカーブで表され、測定日現在の市場金利に基づくべきである。保険者は、イールドカーブ算定の出発点として、自身が保有する実際の資産ポートフォリオを利用できる他、参照ポートフォリオを利用することも可能である。ただし、割引率を当該保険負債の特性と整合させるため、この出発点に調整を加える必要がある。スタッフは、この調整を、以下のとおり二種類に分類している:
  • 資産ポートフォリオのタイミングの差による調整 - これは、資産ポートフォリオのキャッシュ・フローのタイミングを負債に近づけるための調整である。
  • 保険負債にはない資産に関連する要素の調整 - これは、投資リスクであり、保険負債には内在しないが資産に含まれる投資リスクの負担に対応するプレミアムに、期待信用損失を加えたものが該当する。

スタッフはさらに、3つ目の潜在的な調整項目を示した。これは資産と負債の間の流動性の特性の差に関連した調整であるが、実務上の対応としては、保険者がトップダウン・アプローチにおいて、流動性について調整を加える必要はないとされた。

トップダウン・アプローチは、保険者自身が熟知している出発点から割引率の算定をスタートさせ、適切な割引率に至るように意図されたものである。上記の調整をいずれから行うかについて決められているわけではなく、仮に保険負債の特性が直接的に反映された割引率を保険者自身が算定できる場合には、これらの調整は省略可能であろう。選択したポートフォリオと当該負債が似通った特性を持つ場合、その資産の収益性をベースにしたイールドカーブに対する調整は、比較的少ないものになるだろう。ただし一部の審議会のメンバーが指摘したように、ポートフォリオに株式や不動産が含まれている場合、リスクや流動性の特性が一致せず、また、その差異を定量化することは困難な場合も考えられる。このような指摘があったにもかかわらず、両審議会は、算定の出発点として利用される資産の構成要素は負債性商品に限定されないというスタッフの見解を受け入れた。

両審議会は、スタッフの分析に基づいて、トップダウン・アプローチに関するガイダンスを提供することに同意した。ただし、トップダウン・アプローチに関するガイダンスを承認したことは、他のアプローチの利用の禁止を意味するものではない。また両審議会は、割引率算定のための手法を規定する詳細なガイダンスを公表することには消極的である。

一方で、両審議会は、割引率算定のプロセスに一定の規律を持たせるため、割引率の算定に関する開示が重要であると考えている。

EYの見解
両審議会の決定を見る限り、保険負債の特性を反映した割引率を正確に算定することが実務上難しいことを、両審議会は認識していると考えられる。割引率の決定には判断が求められることとなり、それにより企業間で割引率に相違が生じることもありうるだろう。この相違については、開示が財務諸表利用者の理解の一助になると考えられるが、その影響の度合いを財務諸表利用者が把握することは容易ではないだろう。保険者がトップダウン・アプローチを利用する場合に、流動性の特性の差異を反映するための調整を無視してもよいとしたことからすると、両審議会は、その調整の正確な算定に関して懸念があることを認識していると考えられる。

トップダウン・アプローチに関する上述の討議は、キャッシュ・フローが特定の資産の運用成績に依存していない保険契約の場合のものである。両審議会は、従前の会議において、保険契約が特定の資産の運用成績の影響を受ける場合には、その依存関係が保険負債の測定の中で考慮される必要がある点を確認済みである。

ボラティリティ

潜在的なボラティリティも、依然として両審議会の検討課題の中の重要な問題である。割引率の変動による影響はボラティリティの重要な要因であるが、それがすべてではない。今回の会議の資料の中でスタッフは、アンバンドリングやマージンの問題など、相互に関連する問題を多数洗い出しているが、これらの問題について両審議会はまだ最終決定を下していない。

EYの見解
ボラティリティそのものは討議の具体的なトピックではないものの、他のトピックの討議に関連して取り上げられている。ボラティリティの問題は多くの分野と関係しているが、モデルの中でのボラティリティの対応方法については、両審議会が「表示」に関する討議を再開してからの方が、理解が容易になると思われる。

次のステップ

IASBは引き続き、2011年下半期に最終基準を公表するという目標に向けて歩みを進めている。またFASBは、2011年下半期に公開草案の公表を目指している。これらの目標の達成に向かって、保険に関する諸問題は当面の両審議会の議題の中心になるだろう。




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