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保険IFRSアラート

一部の有配当契約の測定方法 - 両審議会の見解分かれる

2011.05.30

重要ポイント

  • IASBは、2011年後半に保険契約の会計基準を公表するという目標に向けて作業を進めており、FASBもほぼ同時期に公開草案を公表することを予定している。
  • IASBとFASBは5月11日に会合を開き、特定された資産の運用成績と契約上の関連性を持つ有配当契約について討議を行った。IASBは、有配当契約の保険契約負債は、保険契約に対応する資産と同じ測定原則が適用されるべきであると決定した。ただしFASBはIASBが公開草案(以下、ED)/ディスカッション・ペーパー(以下、DP)で提案したモデルを変更することに同意しなかったため、この問題については今後の会議で討議することになるだろう。
  • 5月12日にIASBは、純損益のボラティリティに対応する方策として、保険負債に対する割引率の変動による影響をその他の包括利益(以下、OCI)の中に表示することにつき、初めて会議の議題とした。
  • 5月12日の会議でIASBは、保険負債対応資産の損益の表示に関する規定を変更しないことを決定した。ただし、保険負債の変動にOCI を利用して表示すると決定した場合には、この問題を再検討することになる可能性があるとしている。

5月11日に米国財務会計基準審議会(以下、FASB)と国際会計基準審議会(以下、IASB)(以下、両審議会)は保険契約に関する会計基準の世界的な統一化に向けた討議を継続して行った。両審議会は、特定された資産の運用成績と契約上の関連性を持つ有配当契約について、生ずる可能性のある会計上のミスマッチに関して討議を行った。有配当契約とは、保険契約者に支払う給付の一部又は全部が、保険者が保有する保険契約に対応する資産の運用成績と契約上の関連性を持つ契約である。このミスマッチは、保険契約に対応する資産のポートフォリオに含まれる資産と保険負債に対する、以下のような会計処理の不整合に関連して生じている:

  • 保険者の自己株式や保険者が発行した負債性商品など、保険契約に対応する投資プールに含まれる一部の資産は認識されない
  • 自己使用不動産など、一部の資産については、公正価値による測定が認められておらず、公正価値で測定されない
  • 繰延税金資産は割り引かずに測定される

IASBは、特定された資産の運用成績と契約上の関連性を持つ有配当契約について、さまざまな会計上のミスマッチを、当該保険負債の測定を調整することによって取り除くというスタッフの提案を支持することを決めた。そのためには、当該負債の測定に含まれる有配当契約のキャッシュ・フローの金額は、当該資産の帳簿価額に基づいて決定されることになるだろう。IASBの見解によれば、保険負債の測定方法を変更することで、すべてのミスマッチを特定し、それぞれのミスマッチに対し資産側で特別な救済策を設ける必要がなくなる。

FASBはIASBの意見に同意せず、保険契約に関するIASBのEDやFASBのDPで提案されているビルディング・ブロック・アプローチを適用すべきとの姿勢を引き続き維持している。FASBは投資の会計処理を通じて会計上のミスマッチに対処することになると想定している(たとえば、自己使用不動産の公正価値による測定を容認するなど)。またFASBは、金融資産に対する公正価値オプションを、当該資産に償却原価を適用することにより生ずるミスマッチへ対応するための、実行可能な解決策と考えている。FASBメンバーの一部は、経済上のミスマッチに関する情報が失われることに対し、明確に懸念を表明した。彼らは、この問題がこれらの契約特有の問題であるという点には納得しておらず、広範囲に適用されることのない規則を提案することに難色を示している。

EYの見解
今回の両審議会の意見の相違は、共通の会計基準を整備する前に解決されなければならない重要な相違点の1つに追加されるものである。これは、ビルディング・ブロック・モデルの根本に潜む会計上のミスマッチに対するアプローチについて、見解が一致しなかったことを表している。そのため、負債の測定を修正するか、資産の認識と測定を修正するかいずれの進路であったとしても、今後、論点の明確化や指針が必要になるだろう。

IASBは割引率の変動によって生ずるボラティリティに関して討議

5月12日の会議で、IASBは割引率の変動によって生ずる保険負債の変動をOCIで認識する可能性について検討した。IASBメンバーの中でも、保険負債の測定に関してOCI を利用することについて異なる見解がみられた。IASBメンバーの中には、経済的なミスマッチが曖昧になるという点から、保険負債に関してOCIの利用を考慮することは望ましくないと表明する者もいた。また彼らは、特に割引率の変動による影響が損益計算書上別建て表示される場合は、保険者はIFRS第9号の公正価値オプションを使って会計上のミスマッチを緩和できるだろうと考えている。しかし、他のIASBメンバーの中には、保険負債にOCI を利用することについて同情的な意見もみられた。彼らは、提案されている負債モデルによった場合、IFRS第9号の下での資産分類のオプションを全面的に(特に償却原価で測定する資産への分類を)利用することが難しくなるだろうという一部の保険者の懸念に対し、OCI を利用すればそれが解決できるだろうと考えている。審議会メンバーは、資産を償却原価で測定する場合に負債測定に関してOCI を利用すれば、資本における会計上のミスマッチは依然として生じるが、損益における会計上のミスマッチの可能性を大幅に減らすことができるだろうと考えている。IASBは、この会合でOCI の利用に関する決定を求められなかったが、今後の会議で保険負債にOCI を利用することについて討議を継続することになるだろう。

一部のIASBメンバーは、保険負債の一部の変動をOCI で認識することになれば、当然のこととして、同様に資産の変動の一部をOCI で認識して良いかどうか(すなわちOCIの「両面アプローチ」)という問題が提起されるだろうと指摘している。これについてIASBは、資産の会計処理に対処するため、IFRS第9号についての討議を再開することは現段階では考えていないと明確に表明している。しかし、保険契約対応資産に関する損益をIFRS第9号の表示規定の適用対象外とすることによって、OCI の両面アプローチの導入が容易になる可能性もあるだろう。そのかわり、将来公表される保険に関する会計基準の中で、保険負債対応資産といった別個の資産カテゴリーが規定されることになるだろう。IASBはそのような資産カテゴリーを検討する意向はないと表明している一方で、保険負債に関してOCIでの処理の適用が決定された場合には再検討が必要になるかもしれないと指摘している。

EYの見解
IASBは、保険契約に対応する投資資産に関する個別の規定を設けることが、ボラティリティに対応するための手段の一つではないことを正式な投票によって明らかにした。しかし、金利の変動から生ずる保険負債対応資産の変動をOCIで報告する可能性が、完全に排除されたわけではない。これは、保険負債に関するOCI の利用へのIASBの意向しだいであり、IASBの最終結論は、一定のバランスがとれたもの、つまり資産に対する影響と負債に対する影響との整合性のある表示を実現することとなるかもしれない。いずれにしても、今後数週間の動向が、保険者によるボラティリティの財務諸表上の表示方法に関して重要になるであろう。

次のステップ

両審議会は引き続き、2011年6月までに主な論点に関する討議をまとめる方向で作業を進めるものと考えられる。次回の会議での議題として見込まれるものは以下のとおりである:

  • 明示的なリスク調整及び残余マージンを用いるアプローチの相対的なメリットと複合マージンを用いるアプローチの相対的なメリット
  • 再保険に関する事項
  • 開示に適用される横断的な論点



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