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保険IFRSアラート

マージン・アプローチ - 両審議会の見解は依然として平行線をたどる

2011.06.03
重要ポイント
  • IASBは、2011年後半に保険契約の会計基準を公表するという目標に向けて作業を進めており、 FASBもほぼ同時期に公開草案を公表することを予定している。
  • IASBは、保険契約の測定に明示的なリスク調整を含めるべきであると決定した。この調整は保険料とは関係なく決定され、報告期間ごとに再測定されることになる。
  • FASBは、保険契約の測定に単一の複合マージンを採用すべきであると決定し、複合マージン・アプローチでは、リスクからの解放に伴い利益を認識し、この場合のリスクからの解放は、キャッシュ・アウトフローの変動性の減少により裏付けられる。また、複合マージンは、過去に認識したマージンを遡及的に修正するための再測定又は再較正をすべきではないとした。
  • 両審議会のスタッフは、2つのマージン・アプローチ間の調整表の開示について検討するよう指示を受けた。

5月17日と18日に開催された合同会議で、米国財務会計基準審議会(以下、FASB)と国際会計基準審議会(以下、IASB)(以下、両審議会)はマージン・アプローチに関する討議を行った。IASBとFASBそれぞれが提案した異なるアプローチの理解に討議の中心が置かれるとともに、収斂された1つのアプローチとするのか、又は2つの異なるアプローチが混在するものとするのかについて議論がなされた。

公開草案「保険契約」(以下、ED)では、IASBは保険負債の測定という面に焦点を当て、2つの異なるマージンの適用(「2つのマージン・アプローチ」)を提案している。この2つのマージンのうちの1つは、一定の目的1に従い、各報告期間において測定された明示的なリスク調整であり、実際の将来キャッシュ・アウトフローが予想キャッシュ・アウトフローを上回る場合に備えるためのものである。さらにEDで提案されているモデルには、保険契約開始時点の利益の計上を避けるための残余マージンが組み入れられている。残余マージンとは、保険料の構成要素のうち、保険負債を測定する際のキャッシュ・フローに含まれず、その内訳が特定されない部分の集合である。その代表的なものとして、過去の販売経費の回収分や一部の新契約費、利益マージンが含まれる。EDでは、保険期間にわたって残余マージンを取崩し(run-off)することが提案されている。

一方、FASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)は、保険料の現在価値と給付金及び関連する諸費用の現在価値との差額としての単一の複合マージンを提案している。複合マージンの場合、リスクに対する明示的な調整は存在せず、リスクに対する備えは暗黙のうちに複合マージンに含められることから、特定のリスク測定技法の必要もない。また、DPでは、複合マージンの取崩し(run-off)は、保険料及び保険金のパターンを反映した要素に基づいて行われるとされており、その結果、複合マージンの取崩し(run-off)は、保険期間及び保険金支払期間の双方に及ぶことになるだろう。

これらの2つのアプローチの差異は、5月の会議で提示された例示により明らかにされている。残余マージン取崩しは、その全額が保険期間における利益に含まれる一方、複合マージンの取崩しは保険金支払期間にまで及ぶ。また、リスク調整は報告期間ごとに再測定されるが、複合マージンの再測定は行われない(つまり、時の経過とともに配分される)。複合マージン・アプローチには、リスクに対する最低限の引当が保険負債に含まれているかどうかを検証するテストはない。「2つのマージン・アプローチ」の提唱者が、リスク調整額を決定するための厳格な手法を設定すれば、恣意性の介入を排除できると考えているにもかかわらず、複合マージンは、恣意性の介入の余地がより少ないと考えられている(会議では、「CEO効果」として言及されている)。

  1. 前回までの討議において両審議会は、リスク調整の測定目的は、保険契約から生ずる正味の債務の履行に伴う不確実性を引き受ける際に保険者が要求する金額の算定にあると暫定的に決定した。

今回の討議では、共通の見解に至るためのアイデアが提案された。その主なものは以下のとおりである:

  • IASBのアプローチは、収益認識の原則は崩さずに、複合マージンをリスク関連部分と履行関連部分という2つの要素に分けて取り崩す方法であると考えることもできる
  • 保険金の査定が保険契約に基づく履行の一部をなすことを合理的に説明できれば、残余マージンの取崩し(run-off)を保険金支払期間まで延長できるかもしれない
  • リスクからの解放のパターンの変化が、特定の指標によって明らかになった場合に、定期的に複合マージンを再較正する
  • 複合マージン・アプローチに、不利な契約テストを追加する。これによって、複合マージンにリスクに対する十分な引当が含まれることが確かめられる

両審議会は、2種類のアプローチのうち、報告数値を算定するために採用したアプローチと他のアプローチによって算出した数値との調整表の開示を条件に、保険者にこれら2種類のアプローチの選択適用を認める可能性について検討した。この提案については一部の審議会メンバーから根強い反対があったものの、全面的に却下されたわけではなかった。

討議は非常に長時間に及んだものの、意見の一致には至らなかった。投票結果によれば、IASBメンバーの大半は「2つのマージン・アプローチ」を支持した。このアプローチでは、リスク調整は保険料とは別に決定され、各報告期間に再測定されることになるだろう。なお、今回の議論の中心が、単一のマージン・アプローチか、2つのマージン・アプローチかという選択に関するものであったため、IASBは、今後、リスク調整の見積りに利用可能な測定技法や必要となる開示について議論する必要がある。

一方、FASBメンバーの大半は、過去に認識されたマージンが遡って影響を受けることがないような方法で再測定又は再較正する(すなわち、複合マージンのリリース・パターンの変更が将来に向かってのみ適用される)ことを前提とした複合マージンを支持した。この場合のエクスポージャーは、履行義務の充足に伴って減少し、それはキャッシュ・アウトフローの変動性が減少することによって裏付けられることになるだろう。さらにFASBは、エクスポージャーが変動した場合に、過年度に認識されたマージンの再測定につながるような複合マージンの再測定や再較正を行うべきではないと決定した(すなわち、複合マージンへの調整は将来に向かってのみ行われる)。また審議会は、今後の会議でリスク調整を考慮した不利な契約テストの実施を求めるべきかどうかについても検討することになるだろう。

両審議会の投票結果にみられるように、マージンに関する討議が物別れに終わったことを受けて、両審議会は開示に求められる調整表の検討をスタッフに指示した。この調整表は、最終基準における両審議会のマージンの取扱いがそれぞれ異なるものとなる場合や、両審議会による収斂された会計基準の中で「2つのマージン・アプローチ」が任意適用となった場合に必要となる可能性があるだろう。

次のステップ

両審議会は引き続き、主な論点に関する討議をまとめる方向で作業を進め、5月31日に次回の討議を行う予定である。6月にもかなり多くの時間が保険に関する討議に割かれる見込みであるが、その議題はまだ公表されていない。

EYの見解
両審議会は、広範な討議にもかかわらず、マージンに関する両者の見解の溝を埋めるには至らなかった。とはいえ、両審議会は共通のアプローチを模索するという目論見を諦めたわけではない。その一方で、2つのアプローチ間の調整表を注記で開示するという考え方を持ち出すことで、両審議会は、今後、測定に関してこれ以上の合意には至らないという見通しを認めつつあるようにもみえる。複合マージンの償却期間は、リスク調整の再測定と残余マージンの償却が行われる期間とは異なるため、両モデル間で利得の発生のタイミングが異なることになるだろう。逆に、調整表の開示という解決策を通じた両者の差異の分析によって、その差異を最終的に解決するために必要な見識が得られる可能性もあると考えられる。
単一のマージンと複数のマージンのどちらを取るかという問題は、モデルの設計上重要な要素であり、したがって、両審議会は、この問題への討議に相当な時間を費やした。しかし、両審議会に残された時間とリソースには限りがあり、マージンに関しても未着手の問題が残っている。特に、両審議会は、将来キャッシュ・フローの見積りの変動(おそらく、割引率の変動も)による影響と相殺するために、残余マージンや複合マージンを有利・不利の両方向に「アンロック」することを容認するかどうかについても判断が求められるであろう。それに加え、両審議会が修正アプローチ(未経過保険料アプローチ)について合意した場合、FASBは、複合マージンが修正アプローチとどのように関連するかについて決定する必要があると考えられる。修正アプローチでは、保険契約の開始時に複合マージンが計算されることはないため、その取扱いの決定は容易ではないだろう。ただ、おそらく、その場合のマージンの測定は、保険事故発生後に保険金支払債務(支払備金)の測定が必要となる時点以降に行われることになるだろう。



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