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保険IFRSアラート

再保険契約に関する協議の進展

2011.06.24
重要ポイント
再保険に関する論点を討議した5月31日の共同会議で、両審議会は以下の点について同意した:
  • 再保険者に対する損失発生が見込まれない場合でも、一部の再保険契約は保険契約の定義を満たす
  • 元受保険契約がまだ有効でない段階では、それに関連する再保険資産を認識しない
  • リスク調整のうちの出再された部分は、再保険に付されたリスクに相当する
  • 再保険資産を測定する際は、元受保険契約の残余マージン(又は複合マージン)は無視する
  • 損失が既発生の保険金のポートフォリオの移転から生ずるものでない場合には、再保険契約の契約開始時に、利得も損失も認識すべきではない
  • 減損に関する一般的なガイダンスに基づいて信用リスクに起因する減損を認識し、事実と状況に基づいて紛争に起因する減損を認識する

5月31日に開催された共同会議で、米国財務会計基準審議会(以下、FASB)と国際会計基準審議会(以下、IASB)(以下、両審議会)は、再保険に関する論点を討議した。両審議会は、再保険契約の測定と表示に関して、元受保険契約に関する決定と広く整合性がとれたアプローチを採用するという姿勢をとっている。ただし、再保険契約に適用するガイダンスを設定することは容易ではないことが明らかになりつつある。公開草案(以下、ED)及びディスカッション・ペーパー(以下、DP)には、再保険契約の会計処理に関してごく限られたガイダンスしか盛り込まれていないため、ガイダンスの拡充への要望が多く寄せられたほか、新たな論点も浮上してきた。これらの懸念や、アウトリーチ活動を通して寄せられた意見を背景として、両審議会は今回の会議で以下の点について協議を行った:

  • 再保険者に損失が見込まれない場合、再保険契約はリスクを移転するか?
  • 再保険資産が認識されるのはどの時点か?
  • 出再したリスク調整は、元受と再保険をそれぞれ分けたグロスで測定すべきか、もし くは再保険控除後のネットで測定すべきか? (IASBにのみ関係する事項)
  • 出再された元受保険契約の残余マージン又は複合マージンは、再保険資産の測定に関連するか?
  • 再保険契約を締結する時点で、出再者に利得又は損失が生じ得るか?
  • 再保険資産に係る減損が認識されるのはどの時点か?

リスクの移転

両審議会は、損失が発生する見込みがないため保険契約の定義を満たさない再保険契約について、保険契約とみなすことができるか討議した。具体的には、個別の元受契約レベルではすべてについて損失が発生する可能性があるが、グループ化されたポートフォリオのレベルでは損失発生のシナリオが存在しない場合にもリスクが移転するのかという点である。この場合、保険者(又は再保険者)は、保険会計適用の要件の1つである、重要な保険リスクが移転されているという状況を立証することは困難である。両審議会は、もし再保険者が元受保険者の「肩代わりをするなら」、期待損失の存在を立証できるかどうかに関わりなく、当該契約を保険契約とみなすべきであるという点に同意した。ただし両審議会は、契約が実質的には資金調達であり、かつ損失が発生する見込みがない場合には、保険契約基準を適用して会計処理すべきではないことを明言している。

両審議会は、期待損失が存在しない再保険契約の問題に対応するためには保険契約の定義を修正する必要があるというスタッフの意見に同意したほか、スタッフによる提案にも原則として同意した。ただし両審議会は、再保険者が出再されたリスクに関して元受保険者と実質的に同じ便益を得る立場にある場合のみ、保険会計の適用を認めるという意図が明らかとなるよう、さらに適切な表現の検討をスタッフに指示した。

さらに両審議会は、保険者や再保険者が重要な保険リスクを引き受けているかどうかを判定する際に、同一のリスクについて単一の相手先(グループ内の企業も含む)と同時に締結している契約をまとめ、単一の契約として評価する必要があることにも同意した。

再保険資産の認識

両審議会は、元受保険契約を認識した際に再保険資産も認識するというスタッフの提案に同意した。元受保険契約が発効していない場合、当該元受保険契約をカバーする再保険契約の認識日は契約が有効となる日よりも後になる可能性がある。たとえば、再保険契約が、向こう12カ月間にわたって引き受けられる個々の保険契約をカバーするものである場合などがこれに該当する。

再保険資産におけるマージンの測定

また両審議会は、マージンに関するスタッフの提案に同意した。
具体的には:

  • リスク調整のうち出再された部分は、再保険の利用により移転されたリスクに相当するものでなければならない。測定の際にこの定義を利用することで、「グロス-ネット=出再」という純額アプローチの利用を含め、企業がより柔軟な対応を行えるようになるだろうと両審議会は考えている。
  • 元受保険契約の負債測定に係る残余マージン又は複合マージンは、関連する再保険資産の測定には影響を及ぼさない。

出再手数料

出再手数料が、元受保険者側で発生した元受契約に係る手数料やその他の費用の実質的な回収に該当し、元受契約に係るこれらの費用が関連する保険負債のビルディング・ブロック要素に含まれている場合に、再保険契約のキャッシュ・フローにこれらの手数料などを反映させるべきかどうかについて両審議会は協議した。また今回の協議で両審議会は、この問題が単に表示の問題にとどまるのか、再保険資産の測定に影響を及ぼすのかについて決定を下すことはできなかった。したがって、本件に関する決定は行われず、今後の協議に持ち越された。

再保険契約の当初認識

両審議会は、履行キャッシュ・フローの現在価値がゼロではない場合に、即時にこれを認識すべきかどうかについても協議した。その金額がゼロより大きい場合には利得となり、ゼロよりも少ない場合には損失とされる。一部の保険者は、元受保険契約に関する損失を認識する必要がある場合には、それに関連した再保険契約に関する利得も認識できると主張した。両審議会は、履行キャッシュ・フローの現在価値がゼロより大きい場合、その金額を残余マージン又は複合マージンの一部として繰り延べるべきであるというスタッフの提案を受け入れた。また両審議会は、再保険契約が将来の事象を対象範囲としている場合には、再保険契約に関する履行キャッシュ・フローの現在価値がゼロより小さい場合、前払費用と同様に扱うべきであると考えている。IASBはその金額がゼロより小さい場合、当該金額を損失として認識しないことに賛成したが、IASBのメンバーのうちの7人は、即座に認識しないという案に反対した。過去の事象に対する再保険である場合(保険金がすでに発生している場合など)には、両審議会は、その金額を即座に認識すべきであるとしており、異なる決定を下すに至っている。

再保険資産の減損

両審議会は再保険資産の減損に関し、金融商品の減損と同じモデルを利用することに同意した。両審議会は、新しい保険会計基準の導入が保険者に求められる前に、金融商品の減損に関する全般的なガイダンスが固まることに期待を寄せている。減損金額を決定するにあたり、再保険契約により受け入れた担保を考慮することに両審議会は同意した。

また両審議会は、再保険資産に関する係争を、信用減損と区別して検討すべきであるというスタッフの提案についても同意した。したがって、出再者が契約による金額の全額を回収できない兆候がある場合に、係争に起因する損失が認識されることになるだろう。

次のステップ

両審議会は引き続き、第3四半期の末までに主な論点に関する討議を終わらせることを目指しているものの、次回の討議の日程や議題についてはまだ発表されていない。

EYの見解
再保険契約に関する概念上の論点について、両審議会の間でいくつかの同意があったものの、暫定的な決定は、スタッフが両審議会の意向を踏まえた表現を整備できるかにかかっており、我々はその道のりは険しいものであると考える。特に、非比例再保険の場合の実質的に同じ便益を得る立場の意味を定義することは、口で言うことは簡単だが、証拠をもって立証することは困難であるとみられる。また、これは、実務上の多様性に結びつく可能性もある。
また、一部の構造的に複雑な契約の場合、重要なリスクが引き受けられているかどうかを評価するために、保険会社は複数の契約を組み合わせて評価しなければならない可能性があると考えられる。たとえば、保険会社が、ある企業グループ内の会社間でリスクを移転するための仲介人のような役割を果たす場合(すなわち、保険が付されていないある企業からリスクを引き受けると同時に、当該企業の関連企業に対し、全リスクを出再するなど)には、そのような契約は組み合わせて評価される必要があるだろう。そのほとんどの場合に、これらの契約に対して保険会計は適用されないであろう。



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