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保険IFRSアラート

IASB、残余マージンのアンロックへ;両審議会、新契約獲得費用を定義

2011.07.26
重要ポイント
  • IASBは、特定の見積りの変更について、残余マージンを調整すべきであると暫定的に決定した。
  • 両審議会は、新契約獲得費用には直接費用のみを含めるべきという点について合意し、その対象から除外される間接費用の例を挙げている。ただし、IASBが契約獲得の成功に関連した費用と不成功費用の双方を新契約獲得費用に含めるとしたのに対し、FASBは、契約獲得の成功に関連した費用のみに限定すべきであるという考えを再確認した。
  • 包括利益計算書の表示モデルに関しては、両審議会は最終決定には至らなかった。しかし、包括利益計算書上にマージン情報と活動量に関する情報の双方を表示する方向で検討することを決定した。

概要

6月13日から15日にかけて行われた合同会議で、国際会計基準審議会(以下、IASB)と米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、残余マージン、新契約獲得費用及び包括利益計算書における表示に関する討議を行った。保険契約に関する公開草案(以下、ED)では、残余マージンは契約開始時にロックし、包括利益計算書では要約マージン・アプローチに基づく表示とし、活動量に関する情報を注記により開示することが求められていた。これに対し、EDに寄せられたコメントは、残余マージンを見積りの変更に応じて調整し(すなわち、残余マージンのアンロック)、活動量に関する情報を包括利益計算書において表示することを求めるものとなっていた(表示に関しては、同様のコメントがFASBのディスカッション・ペーパー(以下、DP)に対しても寄せられた)。そのようなコメントに基づいて、両審議会はこの会議で以下の点について討議を行った:

  • 残余マージンはアンロックすべきか?その場合、キャッシュ・フローと割引率における有利な変更と不利な変更の双方についてアンロックすべきか?
  • 包括利益計算書において活動量に関する情報も表示するべきか?

さらに両審議会は、測定モデルにおける新契約獲得費用について、両者のコンバージェンスを図るべく、新契約獲得費用として含めるべき費用を特定するための討議も継続して行った。

残余マージンのロック(アンロック)

スタッフは、特定の見積りの変更について、残余マージンをアンロックすることを提案した。両審議会のメンバーの一部は、残余マージンのアンロックは、すでに複雑化している測定モデルに対し、さらに運用上の問題が生ずる可能性があるという懸念を表明した。さらに一部のメンバーは、残余マージンをアンロックするかどうかについては、金融商品の会計処理と結び付けて討議すべきであると指摘した。

IASBは、わずかの票差で見積りの変更に対して残余マージンをアンロックすべきであると暫定的に決定した。一方でFASBは、提案中の保険契約に関する会計基準に残余マージンを導入するのであれば、マージンは契約開始時にロックすべきであると暫定的に決定した。

EYの見解
当期中の変更が必ずしもすべて損益に反映されるわけではない本モデルを採用することについて、合意しなかった審議会メンバーもおり、EDの内容と異なるIASBのこの決定は全会一致のものではなかった。

残余マージンのアンロックの特徴

IASBは、残余マージンの調整は、見積りに関する有利な変更と不利な変更の双方を反映すべきであると決定した。さらに提案されたアンロック・モデルは、残余マージンがマイナスにならない限り、残余マージンの変動に制限を設けないものとなっている。残余マージンがマイナスとなる場合には、残余マージンはゼロまで引き下げられることになる。たとえば、残余マージンがマイナスとなるような不利な変更がある期間に生じた場合、残余マージンがマイナスとなった部分はその期の損益として認識しなければならない。その後の期間に有利な変更が生じた場合、保険者は過年度の損失の範囲で、その有利な変更を損益として認識することとなる。また過年度の損失を超える有利な変更については、再度、残余マージンとして取り扱うことになる。

スタッフは、すべてのキャッシュ・フローの見積りの変更から生ずる影響に対して、残余マージンを調整すべきであると提案した。それに加えスタッフは、割引率の変更についても残余マージンの調整とすることが会計上のミスマッチを引き起こす場合には、割引率の変更による影響を損益として認識することを、要求はしないが容認することを提案した。IASBは、キャッシュ・フローの見積りの変更に対して残余マージンを調整すべきであるという点についてはスタッフの提案に同意した。一方、割引率の変更に関する提案については決定を行わず、この変更は保険者の金融資産の会計処理と関連付けて検討すべきであるとした。したがって、IASBは、業績のボラティリティに関する討議を継続する際に、割引率の変更をどう反映させるべきかについて、さらに討議を進めることになるだろう。

IASBは、リスク調整の変更は損益として認識すべきであり、残余マージンの調整とすべきではないことを確認した。

EYの見解
過年度の損失の範囲で利益を認識するというIASBのアプローチは、モデルを一層複雑にする可能性があり、特に、過年度の損失の戻入れが複数年にわたる場合などはなおさらのことである。その場合、保険者は、各年度の利益と損失が保険負債の測定にどのような影響を及ぼすかについて、時間を追って追跡管理することが求められるだろう。業績のボラティリティを軽減するという目的はあるものの、各社では、情報を追跡管理する追加的な対応とコストが発生することになるだろう。
IASBは、割引率に関するスタッフの提案に関して決定を行っていないものの、金融商品に関する会計処理が、保険負債との会計上のミスマッチをもたらす可能性がある点については認識していることがその討議から見てとることができる。IASBが望んでいるのは、残余マージンによらない方法でこの会計上のミスマッチに対応することであるように思われる。ただし、今後の明確な方向性については、IASBにおいてまだ示されてはいない。

スタッフは、残余マージンの調整を遡及して行うことは現実的に不可能であると結論し、調整は将来に向けて行うべきであると提案した。IASBは、遡及適用が望ましいと考えているものの、この適用には多大な労力が必要になることも理解しており、結果として、アンロックされた残余マージンの調整を将来に向けてのみ行うという暫定的な決定を行った。

EDでは、残余マージンは時間の経過に基づくか、見込まれる保険金や給付金と整合させて償却することになっていた。EDに対するコメント回答者は、残余マージンは保険期間を通じて償却すべきであるものの、保険者が販売した保険契約に対して最適な償却期間を決定できるような原則が提供されるべきという点に同意した。複数の審議会メンバーは、償却方法は原則主義により決定されるべきであるという点に同意したが、他のメンバーからは、保険者が保険金処理期間において重要なサービスを提供するような場合には、保険期間を超えて残余マージンを償却すべきとの見解も示された。

最終的にIASBは、提供するサービスの移転パターンと呼応するように、保険期間を通じて、残余マージンを配分すべきであると決定した。

新契約獲得費用

両審議会は、ED/DPの公表後も継続して、新契約獲得費用に関する討議を行ってきた。これらの討議の結果、IASBとFASBは、成功しなかった努力(すなわち、獲得できなかった契約)に係る新契約獲得費用の取扱いについて異なる見解に至っている。FASBは、最近公表された会計基準更新書(ASU)2010-26「保険契約の獲得もしくは更新に関する費用の会計処理」と同様に、成功した努力(すなわち、獲得した契約)に係るもののみを新契約獲得費用の対象とし、一方、IASBは、計算単位(ユニット・オブ・アカウント)を個々の契約ではなくポートフォリオと定義しているため、成功した努力と成功しなかった努力の双方を対象とすることを検討している。したがって、FASBのアプローチと比較して、IASBの新契約獲得費用には相当程度多くの費用がその対象に含められることになるだろう。

この会議において、両審議会は、会計処理の対象とすべき新契約獲得費用の種類について結論に達した。両審議会は、保険契約ポートフォリオの獲得に際して保険者が負担した直接費用のみを新契約獲得費用として認めることを暫定的に決定した。両審議会は、間接費用を期間費用として認識すべきことを明確に示し、間接費用の例として光熱費や管理費などを示した。しかし、両審議会は、成功した努力に係る直接費用と成功しなかった努力に係る直接費用の双方を保険負債の当初認識に含めるべきかどうかという点で、見解が分かれたままである。結論として、FASBは、成功した努力に係る直接費用のみを含めるという決定を再確認し、IASBは成功した努力と成功しなかった努力を区別しないこととした。

EYの見解
ED/DPで提案されたアプローチに比べ、新契約獲得費用に係る両審議会のアプローチは、契約獲得活動を保険者自身が行うか、あるいはブローカーに外部委託するかに係らず、保険者の財務諸表の比較可能性をより高めるものとなっていると言える。しかし、この決定は他のプロジェクト(たとえば、収益認識やリース)での新契約獲得費用に係る結論とは整合しないものとなっている。それに加え、両審議会は、契約ポートフォリオに関連する新契約獲得費用の討議を継続中である。両審議会は、保険契約ポートフォリオの定義をまだ最終決定していない。さらに、新契約獲得費用に関する討議も終わってはいない。その意味では、両審議会がこのトピックについて完全にコンバージェンスさせるチャンスは残っていると言えるだろう。

表示

IASBとFASBは、保険契約に係る包括利益計算書の表示に関する討議を継続した。スタッフは、3種類の活動量を表示するアプローチを提示し、これらのアプローチを要約マージン・アプローチや以前に議論した他のアプローチに関して寄せられたコメントに基づいて開発した経緯について簡単に討議を行った。

両審議会は、包括利益計算書の表示は純粋な要約マージン・アプローチに基づくものではなく、活動量の指標(たとえば、保険料)も含むべきであると、暫定的に決定した。審議会メンバーは活動量を表示するアプローチを利用するという方向性には合意したが、スタッフが示した活動量アプローチの例示のうち何を選択すべきかについての見解は異なっていた。マージンと活動量の指標を組み合わせた損益報告書の採用を検討するという決定の背景には、複雑でない包括利益計算書を開発したいという意図がある。これは一般的な利用者が理解可能であると同時に、より高度な知識を有する投資家に向けても十分な情報を提供するものである必要がある。したがって、両審議会は、すべての財務諸表利用者がその内容を理解できるよう、各表示項目が何を表すか明確に定義付ける必要性を強く認識している。しかし、一方で、保険契約を発行するコングロマリットの財務諸表を過度に複雑にするような規範的な表示を求めることは回避する必要があることも認識している。両審議会は、特定の表示アプローチを選択する前に、スタッフが各表示項目の表現について見直しを行うとともに、いわゆる「預り金要素」の表示方法を最終決定する必要があるという点について合意した。特に、両審議会は、「保険料(premium due)」が包括利益計算書に表示される場合に、それが保険料収入(premium revenue) として誤解される可能性に関して懸念を抱いているようであった。

EYの見解
包括利益計算書の中に活動量の指標を表示することになる可能性は高いだろう。しかし、これに不可欠なことは、長期契約に関する保険料収入の定義を明確化すること、及び、何を包括利益計算書本体に表示し、何を注記で表示するかについて最終決定を下すことであると考えられる。したがって、アンバンドリングに関する結論が出されるまでは、表示モデルに関する最終決定を下すことは難しいだろう。



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