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保険IFRSアラート

両審議会は保険料配分アプローチについて協議;IFRS第9号の発効日を暫定的に変更

2011.08.26
重要ポイント
  • 短期契約について、保険料配分アプローチを採用する方向で検討が行われているものの、両審議会は、その根拠に関して合意に達することはできなかった。
  • 両審議会は、スタッフに対し、保険料配分アプローチの適用基準を練り直すとともに、その基準によってどのような種類の保険契約が適用対象となるか検討するよう指示した。
  • IASBは、IFRS第9号の強制適用日を2015年1月1日に変更すると暫定的に決定した。

背景

7月21日に行われた合同会議で、国際会計基準審議会(以下、IASB)と米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、特定の種類の保険契約について、未経過保険期間の負債(従来の「保険事故発生前の負債」)を測定するための保険料配分アプローチ(従来の「修正アプローチ」)について討議を行った。両審議会は、それに加え、アンバンドリングについても討議する予定であったが、今後の会議に持ち越された。

保険契約に関する公開草案(以下、ED)において、IASBは、保険期間が概ね1年以下の契約を短期契約として、これらについてはビルディング・ブロックとは異なるアプローチを提案した。これについてEDは、保険料を時間の経過か、又は、保険金及び給付金の発生タイミングが時間の経過と著しく異なる場合には保険金及び給付金の発生が見込まれるタイミングに基づいて認識することを提案した。この場合の負債の測定額は、どの時点においても、契約期間に対応する保険料総額のうちの未経過の部分から、分割払保険料の未回収分を控除した額に相当することとなる。FASBのディスカッション・ペーパー(以下、DP)では、EDで提案中のアプローチについて検討を加えているものの、それを承認するまでには至っていない。

両審議会には、保険料配分アプローチの採用に関して概ね支持するコメントが寄せられたが、一部の具体的な提案に対しては批判的であった。たとえば、ある回答者は、割引を導入しても有用でない情報が提供されるに過ぎず、過度に複雑になるだけであるとコメントしている。また、保険料配分アプローチが適用できる保険契約の範囲が、狭すぎるのではないかとも考えられている。回答者は総じて、US GAAPで採用されているような現行の未経過保険料アプローチに近いモデルが望ましいものと考えている。

保険料配分アプローチとは?

両審議会は、保険料配分アプローチを、ビルディング・ブロック・アプローチの代替として捉えてきた。この討議では、保険料配分アプローチが以下のどちらとみなされるべきかについて、重点的に検討を行った:

  • ビルディング・ブロック・アプローチの近似又は単純化、すなわち、簡便法

又は

  • 一部の契約(短期契約)は他の契約(長期契約)とは経済的に異なるという考え方に基づくビルディング・ブロック・アプローチとは別のモデル

両審議会は、保険料配分アプローチを採用する根拠として、上記2つのいずれがより適切であるかについて討議した。いずれの根拠を前提としても、測定結果は同じようなものとなると考えられるが、両審議会は、いずれの根拠をとるかにより、どの保険契約が保険料配分アプローチの対象となるかについての判断基準が異なってくる可能性があり、結果として対象となる保険契約も異なる可能性があるとしている。

したがって、討議の大半は、どちらの根拠が優れているか、またどうやってその根拠と適用基準とを整合させるかに費やされた。IASBのメンバーの大半は、引き続き保険料配分アプローチを負債の測定方法の1 つであるとみているが、FASBのメンバーは、概ね、収益認識のモデルにおける考え方に基づく、ビルディング・ブロック・アプローチとは別の測定モデルとする考え方に賛意を示した。どちらが好ましいと考えるかはともかく、審議会メンバーは、保険料配分アプローチが概ね損害保険や団体契約に適合することを確認した。ただし、一部の審議会メンバーは、これらの種類の保険契約を保険料配分アプローチの適用対象として、それに含まれるすべての契約にこのアプローチを適用することには懸念を表明した。たとえば、このアプローチは1年間の保証(surety)だけでなく、3年間の保証にも適用すべきなのかといった点である。結果として両審議会は、かなり具体的な適用要件を定義することを望んだ。両審議会は、保険料配分アプローチに関してさらなる決定を行わなかったが、その根拠がどうであれ、保険料配分アプローチの対象となる保険契約についての適切な要件の設定が非常に重要であるとしている。そこで、両審議会は、スタッフに対し、どのような種類の保険商品が対象となるのかの調査を通じて、適用要件を練り直すよう指示した。

表示については議題に含まれていなかったものの、多数の審議会メンバーは、保険料配分アプローチは、おのずと保険料や保険金、費用などの活動量に関する情報を含む損益計算書の表示モデルにつながると指摘した。また、両審議会は、保険料配分アプローチに関する討議は、既発生の保険事故に対する負債についての具体的な提案を伴うものでないことを指摘した。それにもかかわらず、両審議会には、保険料配分アプローチと既発生事故の支払備金の会計処理がどのように結びつくのかについて、判断が求められるだろう。

EYの見解
この討議によれば、両審議会が、ある種の短期契約に対し保険料配分アプローチを適用する方向に進んでいることは明らかであろう。両審議会は、保険料の配分による測定が、一部の保険契約に適合すると考えているようにみえる。したがって、討議の中心が、保険料配分アプローチの論拠付けから、保険料配分アプローチの対象となる契約の決定方法に移っている。保険料配分アプローチの適用要件に関して両審議会の共通の認識が得られれば、両審議会は最終的に保険料配分アプローチの根拠についても合意に至るであろう。

保険契約プロジェクトの今後の予定

保険料配分アプローチがビルディング・ブロック・アプローチの代替としてふさわしいという結論に至る前に、両審議会は、保険料配分アプローチについて討議をさらに深める必要がある。それに加え、両審議会は、アンバンドリングのような他の難しい論点への対応についても、以前から遅れをとっている。今後、IASBの審議のスピードはゆっくりとしたものとなり、向こう数カ月間の議論の進展は限定的なものにとどまることが予想される。

IASBは、最近になってその作業予定表を遅らせており、それによれば、保険契約プロジェクトについては、2011年末まで又は2012年中に新しい基準の再公開草案あるいはレビュー・ドラフトを公表することを予定している。現在のところ、最終基準の発行日は示されていないものの、いずれ最終基準の発行日についても決定されることになるだろう。FASBは、現在のところ、2011年末までに公開草案を公表することを予定している。

IFRS 第9号の発効日

同じ会議の中で、IASBはIFRS第9号の強制適用日を、2015年1月1日以後開始する事業年度からに延期することを暫定的に決定した。従前の発効日は2013年1月1日であった。両審議会は現在、金融商品に関するプロジェクトの全体的な進捗状況に照らし、IFRS第9号の発効日の変更を提案している。さらに、両審議会はIFRS第9号の発効日を近いうちに完了する見込みとなっている保険契約などの他のプロジェクトの発効日と一致させることも提案している。予定されているIFRS第9号の発効日の延期についての詳細は、「IFRS Developments第12号:IFRS第9号の強制適用日を2015年に変更することを暫定決定」を参照されたい。




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