アシュアランス
保険IFRSアラート

両審議会は、リスク調整と複合マージンについて討議

2011.10.21
重要ポイント
  • IASBは、リスク調整に関して討議し、その目的の明確化、利用可能な測定技法に関する制限の撤廃、相当する信頼水準の開示の維持などについて決定を行った。
  • 両審議会は、開示に関して決定した点があるものの、すでに提案されている測定の不確実性分析を廃止するかどうかについては意見の一致に至らなかった。
  • 開示に関する討議の一環として、両審議会は、同一の通貨において複数のイールド・カーブが適用される可能性があることに同意した。

概要

9月19日に国際会計基準審議会(以下、IASB)と米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、IASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)に関する暫定的決定について再審議を継続した。この会議では、両審議会はリスク調整と開示に関して問題となっている要素について討議を行った。

リスク調整

IASBはリスク調整の目的に関して討議し、リスク調整は、保険契約を履行する際のキャッシュ・フローに内在する不確実性を負担することに対して保険者が求める対価であると暫定的に決定した。リスク調整の金額は市場参加者の視点からではなく、保険者の視点に基づいて決定されることになるだろう。したがって、IASBは、その対価の金額は、確定した負債の履行と起こりうる結果に不確実性のある負債の履行が保険者にとって中立となる水準に決定されることを認めている。

リスク調整を見積る際には、保険者は有利な結果と不利な結果の双方を考慮すべきである。IASBは、すべての保険者が両方の結果を等しく考慮するわけではないことを理解しており、リスク回避的な保険者は、そのリスク回避のレベルを反映するために、不利な結果に重きを置くであろうとしている。

IASBは、リスク調整の利用可能な測定技法の限定を撤廃することを決定した。これは、測定技法を限定することは、基準書の原則主義という性格と相容れないためである。その代わりにIASBは、財務諸表の比較のための情報を財務諸表利用者に提供する開示を行うことがより適切な方法であると考えている。IASBは、リスク調整が有すべき一連の特徴を含め、リスク調整に関するEDの適用指針を最終基準書でも維持する必要があるだろうと指摘した。また、IASBは、技法に関する限定を置かないとしても、EDの中で挙げられている3種類の技法(信頼水準、条件付きテール期待値、資本コスト)は、適用指針でも例として維持されるべきであると決定した。

IASBのスタッフは、リスク調整の信頼水準の開示に代えて、市場参加者の視点からみたリスク調整のインプットの範囲を開示することを提案した。だがIASBは、市場参加者のインプットを開示することは履行概念と矛盾しかねず、実施も困難であるとみられることから、相当する信頼水準に関する開示を維持することを決定した。

FASBは、リスク調整に関する討議に参加したものの、単一の複合マージン・アプローチを提案しているため、具体的な決定を行うことはなかった。

EYの見解
IASBは、リスク調整の目的を明確にした一方で、EDに寄せられたコメント・レターにおける一部の回答者の反対にもかかわらず、信頼水準に関する開示は維持した。保険者は、リスク調整を対価と関連付けるにあたり、リスク調整がプライシングや実際の保険料との間にしかるべき関係があるかどうかを検討する必要があるだろう。
IASBが引き続き、財務諸表の利用者が企業間のリスク調整を比較できるようにするという強い意向を表明していることを踏まえ、保険者は、両審議会に対し代替案に関する意見を伝えることを検討してもよいだろう。保険者は、比較可能性を確保するために必要な追加情報が何であるかを検討する必要があるだろう。

複合マージンに関するFASBの決定

FASBは、ビルディング・ブロック・アプローチにおける単一の複合マージンの償却方法と、特定の種類の保険契約について検討されている保険料配分アプローチを採用した場合の支払備金の会計処理について、前回の会議からの議論のアップデートを行った。FASBは、ビルディング・ブロック・アプローチの下で測定される保険契約については、リスクからの解放に応じて、マージンを解放すべきであると決定した。この場合のリスクからの解放は、残存将来キャッシュ・フローの不確実性の減少により決定されることとされている。

さらにFASBは、保険料配分アプローチにおいて保険期間にわたって収益が認識される場合には、関連する既発生の支払備金にマージンを含めるべきではないことも決定した。これは、保険金処理期間中の負債が支払保険金の期待現在価値のみで計算されることを意味している。

EYの見解
IASBとFASBのいずれのアプローチでも、最終的に認識される損益の累計額は同じになるが、マージンに対する両審議会のアプローチの違いによって、損益が生ずるタイミングが大幅に異なる可能性がある。

開示

両審議会の討議では、開示情報の細分化の水準、インプットや採用する方法の変更に関する開示、及び負債の満期分析に焦点が当てられた。両審議会は、今後の会議で包括的な開示に関する提案について協議することになるだろう。

両審議会は、開示に関する規定の目的は、保険者が情報を集約又は細分化するにあたり、膨大な重要でない情報を記載したり、異なる特徴を有する項目を集約したりすることにより、有用な情報が不明瞭にならないようにすることにある点を確認した。また、両審議会は、報告セグメントごとに開示を細分化するという規定をED/DPから削除するというスタッフの提案に同意した。ただし、報告セグメントが適切な集約レベルのひとつとなりうる点を基準書において言及することを決定した。

両審議会は、キャッシュ・フローが特定の資産の運用結果に依存しない場合には(すなわち、無配当契約の場合)、イールド・カーブもしくはその範囲を開示することを決定した。この討議の中で、両審議会は、通貨ごとに複数のイールド・カーブが適用される場合がある点を確認した。スタッフは、割引率の流動性調整の見積り方法によっては、複数のイールド・カーブが必要となりうるとしている。

両審議会は、過年度からのインプットや適用した手法の変更については、その具体的な理由を含め、変更の影響を受ける保険契約の種類ごとに開示しなければならないというスタッフの提案に同意した。ただし、ED/DPで提案されている測定の不確実性分析については、両審議会の見解は異なっている。IASBは、この開示を削除し、適宜、IFRS第13号「公正価値測定」による開示要求との整合を検討することを暫定的に決定した。一方で、FASBは、測定の不確実性分析の開示を維持すると決定した。

両審議会は、保険負債の満期分析の開示についても討議を行った。スタッフは、残存契約期間による開示という選択肢を廃止して、その代わりに期待正味キャッシュ・フローの開示を求めるよう、EDの開示部分の変更を提案した。この開示は、最初の5年間は1年ごとで、5年を超える期間については合計するというものであり、IASBはこのスタッフの提案に同意した。FASBは、この開示に関して、保険者にも適用が見込まれる金融機関のリスク開示に関する暫定的な決定に左右されるだろうと指摘した。

EYの見解
報告セグメントごとに開示を細分化するという要件の削除の決定は、過大な負担となりうる開示から解放されるという点で、保険者からは歓迎されるだろう。これは、どのレベルの集約が開示に相応しいかを決定するという課題が保険者側に求められることにもなる。この決定には判断が求められるほか、開示の種類によって結論が異なるかもしれない。ただし、保険者は、両審議会の開示原則に合致するよう、場合によっては報告セグメントごとに情報を開示することが必要になるかもしれない。
インプットや手法の変更について適切なレベルでの開示は、保険者の業務や業績についての有益な情報を提供することになるだろう。また、この開示は、負債の変動を理解する上での重要な手掛かりとなるほか、純損益への影響の透明性を高めることを可能とするだろう。

次のステップ

今夏において、IASBは、最終基準に向けたスケジュールを先延ばしたため、公開草案を再公表するかもしくは基準書のレビュー・ドラフト段階へ移行するかについて、2011年末まで又は2012年中に決定する予定である1。また、最終基準書の発行日も、その過程で決定されるであろう。FASBは、目下2012年の上半期に公開草案を公表することを目指している。

このスケジュールの一環として、両審議会は、保険に関する次回の討議を10月の審議会で行う予定である。この会議での議題は、まだ公表されていない。さらに、IASB は、10月24日に次回の保険ワーキング・グループの会議を開催する予定である。

2011年9月30日付IASBワーク・プランによれば、2012年上半期に、レビュー・ドラフト又は改訂公開草案が公表される予定である。




情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?