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保険IFRSアラート

両審議会は固定料金サービス契約について協議

2011.11.22
重要ポイント
  • IASBとFASBの両審議会は、主な便益として役務を提供する固定料金契約について、一定の特徴を備えている場合に保険基準の適用範囲から除外することを決定した。
  • 両審議会は、引受マージン総額に加え、保険料、保険金及び給付金についても包括利益計算書上に表示するべきであると決定した。
  • IASBは、次回の保険ワーキング・グループの会議を2012年3月末に開催する意向である。

概要

10月20日に、国際会計基準審議会(以下、IASB)と米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、引き続きIASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)に関する暫定的決定について再審議を継続した。この会議で両審議会は、一部の固定料金契約を保険契約の会計基準の適用範囲から除外することや、保険料配分アプローチ(以下、PAA)の適用基準、及び、財政状態計算書と包括利益計算書の表示と開示に関する論点などについて協議した。

固定料金サービス契約

ED/DPにおける保険契約の定義によれば、より多くの固定料金サービス契約が保険基準の適用範囲に含まれる結果となるだろう。しかし、両審議会も、ED/DPに対してコメントを寄せた多数の回答者も、一部の固定料金サービス契約については保険基準よりも収益認識モデルに従うべきであると考えている。彼らは、これらの契約が意図しているのは、主としてサービスの提供であり、補償の提供ではないと考えている。したがって、サービスの提供が不確実な有害事象の発生を条件とするものであったとしても、これらの契約は保険として処理すべきではないということである。これらの契約に対して全面的に保険契約の会計基準を適用することは、過度に複雑で負荷がかかると考えられる。

今週の会議でスタッフは、最終基準書のガイダンスにより以下の特徴をすべて示している固定料金サービス契約を適用範囲から除外すべきであると提案した:

  • 契約の価格が、個々の顧客に関連するリスクの評価に基づいて設定されていないこと
  • 契約は通常、現金の支払いではなくサービスの提供によって顧客に補償するものであること
  • 移転されるリスクの種類は、主として、サービスの過剰利用に関連していること

予期せぬ結果なども含め予想される影響について協議を行った後、両審議会は、最終的な表現を手直しすることを条件にスタッフの提案を承認した。

EYの見解
各社は、自社のサービス契約が最終基準書の要件を満たしているかどうかを検討する必要がある。主として自社の施設の中で医療(健康管理)サービスを行う保健機関(米国の健康維持機関(HMO)など)は、リスクを引き受けている場合、保険契約の会計基準から除外されないことがありうる。さらに、前回の討議からは、両審議会が保険契約の適用範囲に含まれると考えていたことが明らかな保証延長サービスが、今回の決定に基づくと除外されることがありうる。

PAAの適格性

前回の会議を通じて、両審議会は、PAAの適用について協議を行った。PAAは、多くの短期契約を含む特定の種類の契約について、保険期間にわたる保険料の配分に基づく簡易な測定方法を提供するものである。これは、配分モデルは特定の保険契約について適切であり低コストであるとの仮定の下、ビルディング・ブロック・アプローチ(以下、BBA)の代替的アプローチとされている。前回の会議において、両審議会は、どのような種類の保険契約にPAAを適用できるか、それを決定するための基準を見つけることに苦慮した。そこで、今回の会議用のスタッフ・ペーパーの中でスタッフは、PAAの適用基準の明確化に焦点を当てる代わりに、以下のどちらかに該当する場合、保険者はBBAを採用すべきであると提言した:

  • PAAよりもBBAの方が、当該情報の表示に係るコストに鑑みて、これらのポートフォリオに関してより目的適合性のある情報を提供する場合。
  • 信頼性があり、かつ合理的な方法による当該契約に関する保険料の配分が難しい場合。

スタッフ・ペーパーには、これらの基準が生じうる状況について記載がされている。

一部のスタッフは、期間が1年以下の契約のポートフォリオに対して、PAAが適用される根拠があると提案したものの、PAAは他のすべての場合にも適用される可能性がある。

さらに、審議会メンバーは、ED/DPの提案や以前の協議と比較すると、今回のスタッフの提言では検討の順序が逆になっていることに言及した。すなわち、PAAではなくBBAを適用するべきかどうかを検討するために、契約の分析を行わなければならないように思われる。このような焦点の変更にもかかわらず、両審議会は、提言されている方向性を支持している。ただし、その基準の使用について協議した後で、解釈や適用された区分結果が異なることを避けるための十分に明確な指針かという点で両審議会は満足しなかった。両審議会は、スタッフに対し、キャッシュ・フローの変動性や保険期間の長さの不確実性などの特定の条件に基づき、適格性をより洗練させるよう要請した。両審議会はさらに、特定の種類の契約ごとに、条件がどのように適用されるかを明示する事例の提供を求めた。

EYの見解
両審議会は、進む方向性を把握した段階にいるが、その意向を裏付ける十分な正当性を示すことが必要になるだろう。彼らの意図するところを明確に示すことは難しいことが判明しているが、これは実務上の問題であり、審議会メンバーの間でPAAに関する根本的な懸念があることを示唆しているわけではない。

財政状態計算書の表示

保険資産と保険負債の表示と開示に関するさまざまなのトピックも取り上げられた。ただし、この協議には、ユニット・リンク契約や再保険資産は含まれていない。

両審議会は、財政状態計算書(貸借対照表)の表示に関し、いくつかの決定を行った:

  • 測定方法の相違を反映して、PAAで測定された金額は、BBAで測定された金額とは分離すべきである。
  • 保険者は、ビルディング・ブロック(期待将来キャッシュ・フロー、割引及びマージン要素)を分解するべきであり、それを財政状態計算書(貸借対照表)か注記のどちらかで表示すべきである。
  • 純額で資産となる保険契約のポートフォリオは、純額で負債となるポートフォリオと合算すべきではない。
  • 保険者が無条件の権利を有している未収保険料は、保険料負債と相殺した純額ではなく、資産として別建てで開示すべきである。他の権利と義務はすべて純額で表示すべきである。

PAAの表示に関しては2点の決定がなされた:

  • 支払備金は、PAAで測定される契約の残存期間に対応する負債とは別建てで表示すべきである。
  • 保険者がそれらの保険料について無条件の権利を有しているかどうかにかかわりなく、保険料と保険金は総額で表示すべきである。両審議会は、この例外的な取扱いにより、PAAでの表示を現行の会計慣行の下での表示と整合させることができるだろうと結論付けた。

両審議会は、新契約獲得費用の表示についても協議したが、統一見解には至らなかった。FASB は、新契約獲得費用を当該契約のキャッシュ・フローに含めるのではなく、繰延新契約費として別建てで表示することを支持した。時に資産あるいは負債となるような純額表示よりも、新契約獲得費用に関する負債や資産を別建てで表示する方がより参考になるとFASBは考えている。しかし、IASBは、繰延新契約費を資産計上することは、キャッシュ・フロー志向のビルディング・ブロック・モデルの概念全般と相容れないだろうとコメントした。

EYの見解
新契約獲得費用の取扱いは、両審議会の見解が大きく異なっている箇所の1つである。前回の会議で、FASBは、成功費用のみをキャッシュ・フロー(仮に繰延新契約費のアプローチをとった場合は繰延費用)に考慮すべきであると暫定的に決定した。対照的に、IASBは、すべての直接的な新契約獲得費用をポートフォリオ・レベルで検討することを支持している。新契約獲得費用の表示に関して両審議会の見解が新たに分かれたことで、この問題に関する両者の見解の差がますます広がっている。

包括利益計算書の表示

会議において、スタッフは、包括利益計算書(損益計算書)又は注記において表示すべき収益及び費用の項目の一覧を提示した。また、スタッフは、最低限どのような項目を損益計算書に含めるべきかを決定するための2つのアプローチを提示した。

両審議会は、BBA又はPAAのどちらを採用するかにかかわりなく、保険契約が企業の事業の重要な割合を占める場合には、引受マージンだけでなく活動量に関する情報を包括利益計算書の中に含めるべきであるとした。両審議会は、損益計算書においてこの情報を、BBAとPAAで区別して表示すべきかどうかについて今後の会議で検討することになるだろう。

BBAにより会計処理される契約の保険料の活動量(ボリューム)情報を特定する際の問題点が討議において持ち上がった。両審議会は、スタッフに対し、このアプローチを採用している場合に、保険者が情報を抽出することが可能かどうかについて調査するよう依頼した。既経過保険料から保険金と費用を控除することを基礎としたBBA及びPAAで統一化された損益計算書モデルの可能性を探るという点において、これは興味深いことである。

EYの見解
活動に関する情報を提供するとともに、利益の源泉を表示するような包括利益計算書を整備することは大変な作業になることが明らかになるだろう。両審議会は、かなり前の段階で、カナダで採用されているような、利益の源泉に関する分析の注記をともなう、伝統的な表示モデル(未収保険料を収入として計上する)を却下している。その結果として、包括利益計算書に関して高い期待を抱くに至っている。この期待に沿ったものとなるかどうかは、今後の課題である。

保険ワーキング・グループ

保険が、いまだ両審議会の優先議題であることは、10月24日のIASBの保険ワーキング・グループの会議においても明らかにされている。スタッフは、ワーキング・グループのメンバーにプロジェクトの進捗状況について報告し、最近の決定や具体的な問題に対するフィードバックを求めた。

大きな注目を集めた論点は、保険負債に対するその他の包括利益(以下、OCI)の使用であり、これは、短期における利益の変動の可能性に対処する方法として多くの保険会社において優先課題となっている。業界関係者は、OCI による解決策を提示しており、両審議会がOCIの利用についてさらに掘り下げた調査を行うことは協議からも明らかである。ただし、一部の審議会メンバーは、その場合には、保険負債にOCI を利用する解決策を金融商品に関するモデルとどう整合させるのかなど、多数の重要な課題を検討する必要があるだろうと指摘している。

次のステップ

IASBは、近頃、タイムテーブルを変更し、2012年前半に改訂公開草案又は最終基準書のレビュー・ドラフトの公表を予定している。IASBは、いずれ最終基準書の発行日を決めることになるだろう。FASBは、現在、2012年前半に公開草案を公表することを目指している。

また、IASBのスタッフは、次の保険ワーキング・グループの会議を2012年3月末に行う予定であると公表した。これは、次の段階の文書、すなわち改訂公開草案又は基準書のレビュー・ドラフトが2012年第2四半期より前に公表される可能性が薄らいだことを意味している。

両審議会は、保険に関する次回の討議を11月の審議会で行うものとみられるが、その会議での議題はまだ公表されていない。*

* 11月15-16日の審議会で、保険に関する討議が行われている。



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