アシュアランス
保険IFRSアラート

IASBはIFRS第9号の限定的な見直しの検討を決定; 両審議会はアンバンドリングについて協議

2011.11.30
重要ポイント
IASBは、保険契約プロジェクトとの連携を図り、またUS GAAPとのコンバージェンスを一層進めるべく、IFRS第9号「金融商品」の限定的な見直しに係る討議の開始を決定した。また、最近になってIASBは、IFRS第9号の発効日を2013年から2015年へと変更することも決定した。
IASB及びFASBは、保険契約に含まれる各種構成要素への区分に関するいくつかの点について検討を行ったが、包括利益計算書の表示の検討と合わせて、この問題について引き続き討議することになるだろう。

概要

11月15日に、国際会計基準審議会(以下、IASB)は、公開草案「保険契約」(以下、ED)における暫定的な決定について再審議を行った。この討議は、残余マージンの取扱いに重点が置かれ、教育的なものであった。また、別の討議において、IASBは、IFRS第9号の限定的な見直しを検討するかどうかについて討議を行った。

さらにIASBは、11月16日に、米国財務会計基準審議会(以下、FASB)との会議の中で、保険契約に含まれる明示的な勘定残高の区分処理/アンバンドリング及びその表示に関する討議を行った。

IFRS第9号

IASBは、IFRS第9号の限定的な見直しの実施について検討すると決定した。この決定の背景には、IFRS第9号に基づく金融資産の会計処理と、保険契約プロジェクトにおいて提案されている保険負債に係る会計モデルとの連携を検討することの重要性がある。IFRS第9号の限定的な見直しは、金融商品に関するFASBの提案についての協議の要請の代わりになるものではないが、FASBの提案内容とのコンバージェンスに道を開く可能性はあるだろう。

EDが公表されて以降、EDにおいて提案されている保険モデルを適用することによる業績のボラティリティの増大に関しては継続的な討議が行われている。EDにコメントを寄せた回答者の多くは、会計上のミスマッチから生ずるボラティリティを低減する方法の1つとして、保険負債及び保険負債を担保する資産双方の測定額の変動の一部を、その他の包括利益(以下、OCI)として表示するアプローチをIASBは容認すべきであると提案している。今回の会議より以前に、IASB は、現行のIFRS第9号に基づく分類と測定の規定から外れるアプローチまでを検討の対象とすることは難しいという結論を下していた。

IFRS第9号の一部を見直すという決定によって、IASB は、IFRS第9号に基づく現行の規定に囚われることなく、金融商品に関する会計処理と将来の保険会計に関する提案とを合わせて検討できるようになるだろう。FASBは、金融資産に係る会計処理を改訂する提案にOCIアプローチを含めるとみられており、今回の討議にも参加することが見込まれる。

11月7日の会議で、IASBは、IFRS第9号の強制適用日を2015年1月1日に変更することに合意した。ただし、IASBは、IFRS第9号に係る残りのフェーズ及び保険契約プロジェクトの進捗次第では、この発効日を将来的に見直す可能性があることにも言及した。

EYの見解
IFRS第9号の見直しの決定は、保険契約プロジェクトにとっては大きな進展であり、IFRS第9号だけでなく、最終的には保険会計の重要な要素に関する抜本的な変更につながる可能性もあるだろう。したがって、この見直しに係る議論は、多くの保険者が会計処理の変更を議論する中で注目すべき重要な議論となるだろう。我々は、保険者がOCIに関する討議に参加し、この問題に係るさらなるインプットを両審議会に提供することが重要であると考えている。

残余マージン(教育的セッション)

ビルディング・ブロック・アプローチが適用される契約では、契約開始時の残余マージンは、保険契約発行時の利益を計上しないよう、負債として認識する金額である。この論点に関するIASBの討議で重視されているのは以下の点である:

  • 残余マージンを契約開始時にロックインすべきかどうか
  • 残余マージンを将来キャッシュ・フローの見積りの変動、割引率やリスク調整の変動による影響に対応して調整すべきかどうか
  • そのような変動に対して調整を行う場合、どの種類の変動を考慮すべきか

一部のIASBメンバーは、ロックインされた残余マージンの方が、ロックインされない場合よりも解り易く、複雑でないとしている。しかしながら、保険者により稼得されると見込まれる最新の予測に基づいたマージンをより適切に反映するという点で、IASBメンバーの大半の意見は、残余マージンのアンロックの方向に傾きつつあるようである。

リスク調整や割引率の変動を残余マージンの調整の対象とすべきかどうかについては、IASBメンバーの見解が分かれている。IASBメンバーは、残余マージンの取扱いについて、割引率など特定のインプット値の変動に関して今後導入される可能性のあるOCIの利用に関する議論と合わせて検討する必要があるとも指摘した。

IASBは、スタッフに対し、モデルの重要な要素における状況の変化の影響を明らかにする包括的な例示を準備するよう指示した。このような例示により、残余マージンのアンロックやOCIの利用、保険負債を担保する資産の測定額の変動との関係などを含め、モデルの中の広いつながりを全体的に俯瞰できるようになるだろう。また、これらの例示は、IASBが残余マージンの取扱いに関して取りうる選択肢の実務面での問題を把握し、残余マージンを決定する際に合算する単位や不利な契約の取扱いなど、他の問題を吟味する際の手掛かりにもなるだろう。

なお、このセッションの目的はあくまでも教育的なものであり、IASBは何らの決定も行わなかった。

EYの見解
IASBにとっての課題は、さまざまな検討課題を順序立てて整理するとともに、ボラティリティと関連するさまざまな要素についての決定が最終的には互いに整合するようにすることであろう。例示の作成を指示したということは、IASBが、残余マージンの取扱いを決定する際に、複雑さの程度が重要な考慮要素であると考えていることを示唆しているかもしれない。

明示的な勘定残高の区分処理

討議の最後のトピックとして、両審議会はアンバンドリングについて触れ、金融要素とサービス要素のアンバンドリングについては収益認識プロジェクトで提案されているものと同様の方法で取り扱う意向を表明した。一方で、スタッフは、保険者はすべてのキャッシュ・フローの測定にビルディング・ブロック・アプローチを利用し、保険契約の中の明示的な勘定残高を当該保険負債のそれ以外の部分と区別して表示すべきであると提案した。スタッフ提案では、明示的な勘定残高とは、保険者と保険契約者の間で交わされる金融取引の累積残高であり、その残高には明示的なリターンが付与されると定義されている。

両審議会は、保険契約の区分処理に関するさまざまな点について時間をかけて討議を行い、その中でさまざまな見解が示された。結論として、この論点については、以下の2つの見解があるとしている:

  • 保険契約に関して提案されているビルディング・ブロック・アプローチを適用する前の段階で、他の基準に基づいて測定されるべき保険契約中の要素をアンバンドリングする
  • 保険負債の一部の要素を区分し、別建てで表示する

両審議会は、この2つの見解のいずれをとるかについては決定することができなかった。これは、測定に与える影響の重要度について、より多くの情報が必要であると両審議会が考えているためである。特に上の2点目については(財務諸表の)表示に関連しているため、これに関しては、損益計算書の中の活動量に関する情報の開示について結論を下す際に解決される可能性も両審議会は指摘している。

EYの見解
生命保険契約が、貯蓄の要素も含め、複数の相互依存的な要素の組合せであることは珍しくない。相互依存性だけでなく、当該契約の貯蓄要素の特徴も反映させた会計モデルを整備することは容易ではなく、すでに複雑である会計モデルを一層複雑にする可能性がある。したがって、両審議会は、一部の契約の金融要素に関する取扱いとしては、基本的には表示や開示でよしとするのか、あるいは、これらの要素を測定上、金融負債と同様に処理すべきであることにこだわるかについて、意思決定する必要があるだろう。

次のステップ

IASBは、2012年前半に改訂公開草案又は最終基準書のレビュー・ドラフトを公表する予定である。IASBは、いずれ最終基準書の発行日を決めることになるだろう。FASBは目下、同時期に公開草案を公表する予定である。

両審議会は、12月の審議会の中で保険に関する次回の討議を行うものとみられるが、その議題はまだ公表されていない。




情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?