アシュアランス
保険IFRSアラート

両審議会は、不利な契約テストとオプション及び保証の測定について協議

2012.01.11
重要ポイント
  • 両審議会は、不利な契約テストに係る定義について合意した
  • 両審議会は、特定の有配当契約に含まれるオプション及び保証は、最新の市場と整合的な期待価値アプローチを用いて測定すべきであると決定した
  • さらに、両審議会は、割引による影響が大きい場合には支払備金の割引を求めるという決定を再確認した上で、保険者が一部の発生保険金を割り引かないことを認める簡便法を導入することを決定した
  • IASBは、リスク調整に係る会計単位について、追加的なガイダンスは定めないと決定した
  • また、IASBは、IFRS第9号の限定的な見直し対象の1つとして、公正価値で測定される一部の負債性証券について、OCI の利用を検討することに合意した

概要

2011年12月15日及び16日に、国際会計基準審議会(以下、IASB)及び米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、合同会議を開催し、IASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)における暫定的な決定事項について再審議を継続した。会議では、残余又は単一マージン及びリスク調整(IASBのみ)を決定する際の、キャッシュ・フローを集約するポートフォリオの定義について、多くの議論が行われた。それ以外に取り上げられた議題は以下のとおりである:

  • 不利な契約テスト
  • 有配当契約に含まれるオプション及び保証の測定
  • 将来の保険契約者に対して支払う可能性がある配当
  • 支払備金の割引

会計単位(ポートフォリオ)

両審議会の主な目的は、基準書に一貫して適用できるような、ポートフォリオに係る定義を作成することであった。当該定義は、ビルディング・ブロック・アプローチを適用する場合に、キャッシュ・フローを決定するための集約の際に大変重要となるだろう。ポートフォリオの利用は、多くの個別の保険契約をグループ化したプールに基づいてリスクの引受け及び価格設定を行うという考え方と整合すると考えられる。

両審議会は、ポートフォリオの定義を、類似したリスクにさらされ、類似した収益性が期待され、単一の契約プールとして一括して管理される保険契約のグループであるとするスタッフの提案について協議した。このような定義について、利点を認めた審議会メンバーは多数いたものの、両審議会は、スタッフの提案を受け入れることに同意はしなかった。収益性の要素を定義に含めることについては、異なる見解をもつ審議会メンバーもいた。また、マージンの決定にあたって、収益が見込めない契約を収益性のある契約と組み合わせることで、収益が見込めない契約を隠すことになるような契約のグルーピングは認めるべきでないと指摘する審議会メンバーがいる一方で、保険契約とは多くのリスクのプールに基づくものであり、全体では高い利益が計上されているにもかかわらず一部で損失が報告されるような処理は、ポートフォリオの経済実態を反映しないだろうと指摘する審議会メンバーもいた。さらに、収益性について、マージン(残余マージン又は単一マージン)の取崩しのパターンとの関連性について言及するメンバーもいた。これらを踏まえ両審議会は、スタッフに対して、類似した契約期間及びマージンがリリースされる期待パターンをもつ契約という概念に基づいて、ポートフォリオの定義に係る修正した提案を作成するよう依頼した。

両審議会は、特定の理由により契約の会計単位をポートフォリオ・レベル以外とすることが必要になる場合があることを踏まえ、基準書において会計単位に係るガイダンスを示すべきであると認めた。両審議会は、たとえば、当初の残余又は単一マージンの決定においては、類似した発行日をもつ契約を対象とする必要があり、その集計単位はポートフォリオの一部(すなわち、サブ・ポートフォリオ)となるだろうと指摘した。また、両審議会は、マージンの会計期間への配分は、契約開始日、予定終了日及び残余又は単一マージンのリリースに関する期待パターンを反映したサブ・ポートフォリオに基づいて行われるべきであることに合意した。審議会の見解によれば、会計単位としてポートフォリオを利用しても契約ごとの条件を適切に反映できず、結果としてマージンの配分が不適切なものとなる可能性があるため、コホート(群団)の利用が実務上は必要になるとされている。

IASBは、リスク調整の決定のための会計単位は定めないと暫定的に決定したが、その代わりに、全体的な目的(すなわち、最終的な履行キャッシュ・フローがその期待値を超過するリスクを負担することに対して保険者が要求する対価)と整合する方法でリスク調整を決定すべきであると、改めて表明した。IASBメンバーの大半は、リスクの分散効果を測定に反映する時期及び方法については、リスク調整の目的の記述に暗に示されていると考えている。IASBのスタッフは、リスク調整に係る原則がどう規定されるかにかかわらず、当該原則に係る適用ガイダンスは必要であると指摘した。

EYの見解
リスク調整を決定するための会計単位を規定しないというIASBの決定は、リスク調整の既定の目的に基づいて、保険者がポーフォリオ間の影響や価格設定の実務を、リスク調整を検討する際のインプットとして考慮できることを示唆していると考えられる。保険者が、リスクを負担することに対して要求する対価とは異なる見地から分散効果を考慮するのであれば、比較可能性の確保のため、方針の開示が必要になるだろう。

不利な契約

両審議会は、保険料配分アプローチに基づいて会計処理される契約について、不利な契約テストを適用すべきであると決定した。両審議会は、将来キャッシュ・アウトフロー(IASBはリスク調整も含める)の期待現在価値が残存保険期間に対応する負債の簿価を上回る場合に、当該契約は不利な契約になる点に合意した。また、両審議会は、当該契約が不利になるであろうことが事実や状況によって示唆される場合には、保険者は不利な契約テストを実施すべきであると決定し、そのような事実や状況に係るガイダンスを作成することに合意した。

保険期間の開始時に契約を認識するという従前の決定の結果として、両審議会は、保険期間の開始以前(すなわち、契約で規定された保険期間の開始までの期間)に不利な契約から生ずる損失を識別し、認識するために不利な契約テストが必要になるだろうと結論付けた。また、両審議会は、保険期間の開始以前に識別された不利な契約は、将来キャッシュ・アウトフロー(IASBはリスク調整も含める)の期待現在価値に基づいて測定されるべきであるということに同意した。

両審議会は、不利な契約の測定はアップデートされるべきかどうかなど、不利な契約に係るさまざまなトピックについて討議を行ったが、決定については今後の会議へ先送りした。

EYの見解
両審議会が、不利な契約テスト実施にあたっての集約レベルを決定していないため、当該テストの適用による正確な影響は不明である。不利な契約の測定にリスク調整を含めることは(IASBのみ)、当該測定を発生保険金の測定と整合させるものであるが、キャッシュ・ニュートラル(すなわち、期待キャッシュ・インフローの現在価値が期待キャッシュ・アウトフローの現在価値を上回る)であっても、会計上一部の契約が不利になる可能性を生じさせることになる。

有配当契約

FASBは、負債が特定の資産と連動する有配当契約に関する最近の決定について、IASBに報告を行った。IASBによる従前の決定とFASBの最近の決定は、タイミングのズレによって生ずる会計上のミスマッチを解消するという目的は同じであるものの、その決定についての表現はそれぞれ異なっている。そこで両審議会は、スタッフに対し、有配当契約に対するアプローチについて統一された表現を検討するよう依頼した。

有配当契約に含まれるオプション及び保証に関する討議において、組込デリバティブに関するガイダンスによれば区分処理が必要とされていないオプション及び保証(金融商品の基準でも区分処理が求められない)についても検討が行われた。オプション及び保証に関して提案された要求は、オプション及び保証が保険負債に適切に反映されるように意図されたものである。有配当契約の測定では配当の源泉となる資産の測定を反映させなければならないことから、両審議会は、組込デリバティブとして区分処理されていないオプション及び保証は、現在の、市場と整合性のある期待価値アプローチを用いて測定すべきであることを明確にした。

両審議会は、また、有配当契約のキャッシュ・フローから生ずる、将来の保険契約者に対する保険者の義務は、負債として認識すべきであることを決定した。両審議会の見解によれば、この取扱いは、当該金額が最終的には保険契約者に支払われなければならないという事実を反映している。

EYの見解
両審議会は、保険負債の評価額がリンクする項目の正味価額と同額とされることにより、一部の有配当契約について、オプション及び保証が適切に認識、測定されない可能性があることを懸念している。オプション及び保証が含まれる有配当契約についての提案された測定方法は、ビルディング・ブロック・アプローチの目的である履行価値の概念の中で、オプション及び保証に対し、市場と整合性のとれたアプローチをどのように適用するのか、という疑問を市場に引き起こす可能性があるだろう。たとえば、市場と整合性のある測定ということになれば、アクチュアリーが期待値を導き出すシナリオの範囲は、現実的な前提ではなくリスク中立な前提に基づくべきであるという結論に至る可能性がある。また、その場合に、履行価値の概念とは異なるものと捉えられてしまう可能性もある。

発生保険金の割引

両審議会は、(保険料配分アプローチを用いた契約について)割引による影響が大きくない場合は、発生保険金の割引は必要ないと暫定的に確認した。また、割引の影響の重要性を判断する方法についてのガイダンスを提供する意向はないとみられる。さらに、両審議会は、12カ月以内にもはや支払いが発生することはないと示唆する事実や状況がなく、保険事故から12カ月以内に保険金の支払いが見込まれるような場合に、保険者が発生保険金のポートフォリオを割り引かないことを容認する簡便法を導入すると決定した。

EYの見解
他のプロジェクトであったように、両審議会は重要性を一般的な概念として捉えており、特定の状況における重要性のガイダンスを設けることは避けてきた。発生保険金の割引の免除を適用するかどうかについて、両審議会は保険契約に含まれる補償の種類ごとに判断するのではなく、契約全体に対して適用することを意図していることに留意すべきである。したがって、ショートテールとロングテール両方のエクスポージャーを含んだ契約(たとえば、自動車保険)は、必ずしも割引の免除の対象とはならないだろう。これらの契約について割引を行うか否かについての結論は、重要性の考慮結果に依存することとなる。

IFRS第9号への限定的な変更

2011年11月の会議でIASBは、IFRS第9号の分類と測定の要件の一部修正を念頭に置き、IFRS第9号「金融商品」に関する討議に着手することを全会一致で決定した。IASBによれば、IFRS第9号の分類と測定を見直しする主な理由は、保険プロジェクトの進展、特にOCIの論点における進展との関連を考慮する必要があったためとしている。

2011年12月の会議で審議会は、IFRS第9号への修正の検討対象として以下を挙げている:

  • 公正価値で計上される一部の負債性商品についてのOCIの利用
  • 金融資産の特徴テスト
  • 金融資産に含まれる組込デリバティブの区分処理

上記の論点に関する討議の中で、IASBは、IFRS第9号のモデルとFASBにより提案された金融商品のモデルとの整合も検討するとしている。

EYの見解
IFRS第9号が適用される資産についてOCIの利用を検討するというIASBの計画は、IASBが、保険契約プロジェクトの中でOCI による解決策を検討するよりも前に、資産に対するOCIの適用を拡大するかどうかをまず決めるという意向であることを示唆しているといえるかもしれない。また、これは、保険業独自のアプローチというよりは、もっと広くIFRS第9号の観点から資産についてのOCI を検討したいという意向の表れかもしれない。

次のステップ

IASBは、2012年前半に改訂公開草案又は最終基準書のレビュー・ドラフトを公表する予定である。また、IASBは、いずれ最終基準書の発行日を決めることになるだろう。FASBは目下、同時期に公開草案を公表する予定である。

両審議会は、2012年1月の審議会の中で保険に関する次回の討議を行うものとみられるが、その議題はまだ公表されていない。




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