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保険IFRSアラート

両審議会は、保険料配分アプローチについて決定

2012.04.03
重要ポイント
  • 両審議会は、新基準の適用対象となる保険契約について、PAA又はBBAのどちらを適用すべきかを決定する際の条件について合意した。ただしPAAの本質に関しては、依然として両審議会の見解は分かれている。
  • 両審議会は、不利な契約の測定を含むPAAに係るいくつかの側面について決定した。
  • 両審議会は、保険契約に含まれる保険以外の財及びサービスを別個に表示し、測定すべきかを決定する際の基準として、公開草案「顧客との契約から生じる収益」のガイダンスを援用することに合意した。
  • IASBは、裁量権のある有配当性を有する金融商品を保険会計の範囲に含めることを暫定的に決定したものの、適用対象となる契約を保険者が発行した契約のみに限定することを検討している。一方でFASBは、裁量権のある有配当性を有する金融商品は、保険の定義に合致しない限り、保険契約の基準書の範囲に含めるべきではないと暫定的に決定した。

概要

国際会計基準審議会(以下、IASB)及び米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、 両審議会)は、2月に会議を開催し、IASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)における暫定的決定について再審議を行った。当該会議で取り上げられた議題は以下のとおりである:

  • 保険料配分アプローチ(以下、PAA)の適用基準及び当該モデルの仕組み
  • 低頻度かつ重要度が高い損害をもたらす事象に関する負債の測定
  • 不利な契約
  • 保険以外の財及びサービスの取扱い

IASB及びFASBは、裁量権のある有配当性を有する金融商品(配当の金額又はタイミングが、発行体の裁量で決められる契約)を保険会計の範囲に含めるべきか、金融商品の会計基準に従って会計処理すべきかそれぞれ討議を行った。

保険料配分アプローチ-適用基準

両審議会は、1月の教育的セッションにおいて、両審議会のスタッフが作成したPAAの適用基準に係る提案に関し、広範にわたる議論を行った。この議論を通じて、IASBメンバーの多くがPAAはビルディング・ブロック・アプローチ(以下、BBA)に代替するものと考えることが望ましいとするのに対し、FASBメンバーは、PAAを適用される契約の特徴を最もよく反映する、BBAとは別個のモデルであると考える傾向にあることが明らかとなった。スタッフは、教育的セッションを通じて得られた両審議会からのインプットに基づき、PAAをBBAの代替又はBBAと並存する別のモデルのいずれと捉えるかに依存しないような適用基準に修正することが求められた。

IASBは、2月に、ある契約に係るPAAによる測定結果がBBAによる測定結果と合理的に近似したものになるのであれば、当該契約はPAA適用の適格性を有すると暫定的に決定した。実務における簡便法として、保険契約の保険期間が1年以内であれば、それ以外の条件を検討することなく、当該保険契約は上述の要件を満たすものと考えるべきとされた。そして、IASBは、その他の契約については、PAAによる測定結果がBBAによる測定結果に合理的に近似するものにはならないだろうという点に同意した。したがって、契約開始日において以下のいずれかに該当する保険契約は、PAAの適用対象にはならない:

  1. 契約の履行に係る期待正味キャッシュ・フローについて、保険事故発生前の期間に大幅な変動が生ずる可能性が高い。
  2. 各報告期間の保険者の履行義務に対して保険料を配分するにあたり、重要な判断が求められる。たとえば、以下のいずれかについて重要な不確実性が存在するケースがこれに該当するだろう:
    1. 各報告期間における保険者のエクスポージャー及びリスクを反映する保険料
    2. 保険期間の長さ

IASBは、PAAによる測定がBBAによる測定の近似値となるのであるから、PAAの適用基準を満たす契約について、PAAの適用を容認するが、強制するべきではないと結論付けた。IASBは、BBAに関する今後の討議を踏まえ、PAAの適用基準をアップデートする必要があるかどうかを再検討するだろうと言及した。

FASBも上述の (i) 及び (ii) の条件を採用したものの、それはPAAをBBAとは別モデルとして取り扱うアプローチの一環であり、契約開始日に、(i) 又は(ii)のどちらかの条件に該当する場合には、保険者はPAAではなくBBAを適用することが求められる。FASBは、IASBと同じ簡便法(保険期間が1年以内)を選択した。FASBは、PAAをBBAとは別個のモデルと考えているため、PAAの適用基準を満たす契約に対してはPAAを適用しなければならないと決定した。

EYの見解
スタッフは、どのような場合にPAA又はBBAを適用すべきかを明確に示す包括的な適用条件を示すことができた。これは、PAAの適用対象とする保険契約の種類については、両審議会の意見が類似していることを示唆している。
ただし、PAAの本質についての見解には依然として隔たりがある。会議において審議会メンバーが言及したとおり、この隔たりは、特に測定及びマージンに対する両審議会の見解の相違から生じている可能性がある。両審議会が、この隔たりを埋め、PAAの適用アプローチ全般を統一されたものにできるかどうかは、両審議会が測定に関して統一を図れるかどうかによるかもしれない。
我々は、今回の会議を通じて両審議会が決定した適用基準に関するガイダンスによれば、PAAを適用し測定される保険契約の種類は、IFRSを適用した場合と米国会計基準を適用した場合とでおおむね一致したものになると期待している。ただし、PAAの適用を「要求」するか又は「容認」するかという両審議会の見解の相違は、PAA又はBBAのいずれが適用されるかということに大きく影響する可能性がある。たとえば、一部の生命保険契約は、PAAの適用基準を満たすことになるかもしれない。
米国会計基準では、将来的に、PAAの適用基準を満たす保険契約に対してPAAの適用が強制されることになるだろう。一方でIFRSでは、将来的に、他のすべての生命保険契約の取扱いと同様に、BBAの適用が認められるだろう。したがって、IFRSを適用する企業は、自社の保有する保険契約を検証し、PAAの適用基準を満たす場合に、BBAを選択するかどうかを決定するプロセスの構築に着手するだろう。

保険料配分アプローチ-その仕組み

1月の会議のフォローアップとして、両審議会は、貨幣の時間的価値の利用とPAAにおける新契約費の処理に関して討議を行った。

両審議会は、重要な財務要素を持つ契約の残存保険期間に対する負債の測定に関しては、貨幣の時間的価値を反映するために割引計算及び利息の計上が必要であると暫定的に決定した。重要な財務要素の構成内容の特徴は、公開草案「顧客との契約から生じる収益」と整合するものになるだろう。両審議会は、貨幣の時間的価値が保険契約の基本的要素であるとの認識である。したがって、貨幣の時間的価値が保険モデルの中で考慮されないとすることは難しいと考えられる。

ただし簡便法として、保険契約者が保険料の全額もしくは実質的に全額を払い込む時点と、それに関連して保険者が保険契約上の義務を履行する時期との乖離が1年以下であると契約開始時に見込まれる場合には、保険者は残存保険期間に対する負債の測定に割引計算及び利息の計上を行う必要はない。この決定を行う一方、両審議会は、簡便法が収益認識プロジェクトの提案の中にも設けられており、保険契約で提案された文言は、収益認識に関する公開草案の中で規定される簡便法に関する不明瞭な点を払拭するために利用できるだろうと認識している。

新契約費の測定に関して、両審議会が暫定的に決定した内容は以下のとおりである:

  • 新契約費の測定には、新契約の獲得に直接帰属する費用を含めるべきである(FASBは、成約に至った新契約費に限るとしている)
  • 保険期間が1年以内の契約については、保険者は、新契約費を全額費用計上することが認められるべきである

また両審議会は、BBAを適用する場合には、新契約費を単一マージン又は残余マージンと相殺し、PAAを用いた場合には新契約費を残存保険期間に対する負債と相殺するような表示方法を検討することで合意した。

EYの見解
新契約費と残存保険期間に対する負債を相殺するという表示方法は、IASBのEDで提案されたPAAでも使われているものであり、目新しいものではない。ただし、BBAに関してこのような表示方法を検討することは、新契約費をキャッシュ・フローの一要素として取り扱うEDを変更させ、新しい概念を検討することを意味している。新契約費を別個に扱う場合には、 両審議会は、新契約費を残余マージンの償却パターンで処理すべきか、別の償却パターンが必要となるか検討する必要があるだろ う。

低頻度かつ重要度の高い損害をもたらす事象に関する負債の測定

両審議会には、報告期間末時点で、近い将来発生する可能性が高い保険事故を測定する時期と方法について明確化してほしいというコメントが保険者から寄せられた。この懸念は特に、ハリケーンや他の大災害など、低頻度だが重要度の高い損害をもたらす事象との関連で取り上げられている。たとえば、期末直前に嵐が近づいているものの、それが上陸した又は上陸しなかったと判明するのは期末後というような場合である。両審議会は、BBAで測定する保険契約負債、PAAによる不利な契約の負債の双方について、保険者は期末時点の期待キャッシュ・フローの見積りを考慮して測定すべきであると暫定的に確認した。

両審議会は、報告期間末時点で、近い将来発生する可能性があり、結果として期末後に発生した又は発生しなかった保険事故が、報告期間末に存在した状況の証拠となるかどうかを明確化する適用ガイダンスを整備することに同意した。結果として、このような事象は、IAS第10号「後発事象」の非修正後発事象、ASC トピック855-10-25における修正を要しない後発事象に該当する。

EYの見解
両審議会は、このような事象の見積りは期末日に存在する状況に基づいて行うべきであると結論付けた。このアプローチによると、嵐による風の激しさは日々変化することが多いため、報告期間の相違によって見積りが変動する可能性がある。また、その見積りが低頻度かつ重要度の高い損害をもたらす事象に関する実際の状況を正確に反映しているのか、又はモデルから得られた人工的結果なのかという疑問を生じさせることになるだろう。
会議の中で、両審議会メンバーがコメントしたこの疑問に対する回答は次のようなものであった: このような事象に係る保険負債の見積りは、ある特定の時点における将来キャッシュ・フローの見積りを行う際の実体経済のボラティリティを反映した結果になると考えられる。いずれにしても、このような事象の影響を説明するにあたっては、開示が非常に重要になると考えられる。

不利な契約

2011年12月の会議で、両審議会は、不利な契約の定義と保険者が不利な契約テストを実施すべき時期について暫定的な決定を行った。両審議会は、保険事故から12カ月以内に保険金が支払われる見込みである場合に、保険者が支払備金を割り引かないことを容認する簡便法を導入する暫定決定を踏まえて、不利な契約の測定の方法についてもさらに検討を重ねるようスタッフに依頼した。2月の会議で、両審議会は、以下の観点から不利な契約に関する討議を引き続き行った。

不利な契約に関する負債の再測定時期

両審議会は、報告期間末ごとに不利な契約に関する負債を再測定すべきであるというスタッフの提案に、全会一致で同意した。

不利な契約の識別及び測定の際にリスク調整を考慮に入れるべきか(IASBのみ)

IASBメンバーの大半は、不利な契約を識別する際にリスク調整を検討に含めることに賛成しており、不利な契約に関する負債の測定にもリスク調整を含めるべきであるとしている。この決定はスタッフによる分析でも支持されているが、不利な契約の識別にリスク調整を含めれば不利な契約テストの実施がさらに困難になると考えられる。ただし、当該契約が不利になることが事実や状況で示唆されている場合のみ不利な契約テストを実施すればよいという従前の決定があるため、保険者によるテスト実施の困難性は、多少は緩和されることになるだろう。

不利な契約の識別及び測定に関する簡便法の適用

上記のPAAに関するセッションを通じて、両審議会は保険料配分アプローチで会計処理される保険契約に対し、簡便法を導入する意向を確認した。簡便法によれば、保険事故から12カ月以内に発生保険金が支払われることが見込まれる場合には、保険者がそのポートフォリオを割り引かないことを認めるものとなっている。

多数の審議会メンバーは、保険者がこの簡便法を適用、つまり既発生保険金に関する負債を割り引かないことを選択すれば、不利な契約の測定方法と支払備金の測定方法との間で整合性が取れなくなる可能性があるとみている。両審議会は、このような点を踏まえて、保険者が保険事故から12カ月以内に支払われる見込みの支払備金を割り引かないことを選択した場合には、保険者は、契約が不利であるかどうかの判定及び不利な契約に関する負債の測定においても、割り引かない数値を使用すべきであると暫定的に決定した。

EYの見解
不利な契約テストの決定に関しては、両審議会は、大幅な進展を見せた。ただし、このテストに関して依然として検討が必要な重要な側面の1つは、その集約レベルである。公開草案「顧客との契約から生じる収益」の中で両審議会は、不利な契約テストを個々の履行義務のレベルで実施するよう求めている(当該契約の中で複数の履行義務が洗い出された場合には、個々の契約よりも細かいレベルとなる)。
個々の契約をグループ化して、同質のリスクをプールすることが保険の基本的な特徴であるため、提案されている保険会計のモデル案では、集約レベルは主にポートフォリオ・レベルとなっている。したがって我々は、収益認識に関するモデル案を基に決定した不利な契約テストの集約レベルが、果たして保険契約にも適合するものであるかどうかを問うコメントが両審議会に寄せられると考えている。

保険以外の財及びサービスの取扱い

前回の会議で両審議会は、収益認識プロジェクトにおける別個の履行義務を識別するためのガイダンスに従って財及びサービスを保険契約からアンバンドルすべきであり、アンバンドルされた財及びサービスは、アンバンドルされた要素の特徴に照らして関連するガイダンスに従って会計処理されるべきであると暫定的に決定した。スタッフは、この討議では資産管理サービスを取り扱っておらず、それについては今後の会議で別途検討すると言及している。

この会議において両審議会は、保険契約から財及びサービスをアンバンドルするにあたり、公開草案「顧客との契約から生じる収益」における別個の履行義務を識別するための基準を利用できるようにするため、この基準をどう保険契約プロジェクトに組み入れるか、その方法を検討した。このアプローチにおいて、保険者は、保険契約に財又はサービスの提供の約束が含まれている場合に、それらが公開草案「顧客との契約から生じる収益」に定義されている履行義務に該当するかどうかを判定する必要があるだろう。このような履行義務が区別できると考えられる場合に、保険者は、その会計処理にあたって、当該履行義務が関連するIFRS又は米国会計基準のガイダンスを適用しなければならない。

両審議会は、スタッフに対し、一部の収益認識に関するガイダンスが実際に保険契約に適合するか検討するよう依頼した。また複数の審議会メンバーも、保険契約のモデルと収益認識のモデルで測定基準が異なることを考慮し、保険料及び費用の配分方法についてフォローアップする必要があるとの認識を有している。

EYの見解
資産管理サービスが単独で検討されるということは、資産管理サービスが多くの長期生命保険契約に含まれ、保険の構成要素と結合している可能性が高いために、他の財及びサービスよりも重要な問題であるとスタッフが考えていることを示している。
また、契約に含まれる保険と他の要素との間で保険料及び費用を配分することは困難を生じさせる可能性があるだろう。スタッフは、この配分を行うには、相当な裁量の余地のある方法を最終的に必要とすることになるだろうという見解を過去に示している。

裁量権のある有配当性を有する金融商品

両審議会は、上記とは別に、裁量権のある有配当性( 以下、DPF) を有する金融商品を保険契約の会計基準の範囲に含めるべきかどうかを討議した。IASBは、DPFという用語をどう定義すべきかについても討議した。

IASBのスタッフの提案は、DPFを有する金融商品を、金融商品の会計基準ではなく保険契約の会計基準の範囲に含めるというものであった。IASBのスタッフは、DPFを有する金融商品すべてに保険会計を適用することについての賛成及び反対の主張を示した上で、DPFを有する金融商品すべてに保険会計を適用する方が、DPFを有する保険契約だけを保険会計の対象とするよりもメリットが大きいと主張した。

IASBの大半のメンバーは、DPFを有する金融商品を保険契約の会計基準の対象に含めるものの、その適用は保険業界に限定するというスタッフの提案を支持した。IASBは、DPFの定義に関して、保険業界の中で引き受けられた契約にその対象を制限するような、これまでとは異なる方法を考慮すべきだという点に同意した。スタッフは、指摘のあった定義に関する問題に対応するための新たなスタッフ・ペーパーを作成するよう指示された。

2012年3月7日に行われたFASB単独の会議で、FASBのスタッフは、DPFを有する金融商品を保険契約の会計基準の範囲から除外するよう提案した。FASBはこのスタッフ提案に合意し、DPFを有する金融商品を、保険者により発行されたものかどうかに関わらず、保険契約の会計基準の範囲に含めないことを暫定的に決定した。

EYの見解
IASBの選択は、難しい選択である。それは、これらの契約は保険契約には該当しない一方、DPFを含む生命保険契約と多数の同じ特徴を共有しているためである。また依然として重要な2つの疑問が残っている。1つは、保険会社が発行するDPFを有する金融商品だけにその範囲を限定するための適切なガイダンスを、IASBが見つけ出せるかどうかという点である。もう1つは、今回の決定が、IASBによる金融商品に関するガイダンスの修正のための時間を猶予するための暫定的なものであるのか、あるいはより恒久的なものであるのかという点である。その一方で、FASBについては、DPFを有する金融商品の測定については、金融商品に関するプロジェクトという括りの中で検討を進めていくことになるであろう。
IASBは、新しい会計基準を業界固有の会計基準ではなく、保険契約に関する基準とするよう試みてきた。しかしながら、IASBは、少なくともこの点に関しては、保険の会計基準を業界固有の会計基準とするような状況に自らを置いたといえる。両審議会が、DPFを有する金融商品についてそれぞれまったく異なったアプローチをとることを考えると、両審議会が公開草案や改訂公開草案などの文書を公表する前に、少なくとも一度はこの問題が再度討議されるであろうと我々は考えている。しかし、その討議の結果がどうなるかを予測することは不可能である。

次のステップ

IASBは、保険契約に関して2012年後半に、改訂公開草案又は最終基準書のレビュー・ドラフトを公表する予定である。IASBは、いずれ最終基準書の発行日を決めることになるだろう。FASBは、目下、同時期に公開草案を公表する予定である。

両審議会は、保険に関する次回の討議を3月の審議会で行う予定である。その際に、保険契約のポートフォリオの定義及び投資要素の保険契約からの分離について取り上げることになるだろう。




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