アシュアランス
保険IFRSアラート

両審議会は再保険の会計処理、保険契約の条件変更、契約者貸付及び特約について討議

2012.05.21
重要ポイント
  • IASBは、保険契約への条件変更により、契約が終了し、新たな契約が発生することとなる場合の判断基準について同意した。FASBは、その基準の一部については同意したものの、今後の会議においてさらに検討を続けることになるだろう。
  • 両審議会は、教育的セッションの中で、単一マージンを利用した場合の残余マージン・モデルとの主な差異を解消したいという意向を表明した。
  • 両審議会、は引き続き、保険負債の変動に対し、どのような方法でOCIを利用することが可能か、検討を重ねている。

概要

2012年4月18日に行われた合同会議1を通じて、国際会計基準審議会(以下、IASB)及び米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、IASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)の再審議を行った。会議で討議された議題は以下のとおりである:

  1. 再保険契約の会計処理に関する論点
  2. 保険契約の条件変更及び修正ならびに再保険契約のコミュテーション
  3. 契約者貸付と特約への、アンバンドリング及び分解表示に関する暫定決定の適用

両審議会はさらに、意思決定を伴わない教育的セッションを共同で開催し、FASBの単一マージン・アプローチ及び、保険負債の変動の一部をその他の包括利益(以下、OCI)を通じて認識することについての検討を行った。OCIに関する討議は、IASBが、一部の負債性商品に関してOCIを通じて公正価値で認識するカテゴリーを導入するという前提に基づいて行われた。

再保険契約の会計処理に関する論点

両審議会は、遡及型再保険(retroactive reinsurance)に関する単一マージンの償却(FASB)及び残余マージンの償却(IASB)、ロスセンシティブ特性(loss-sensitive features)、再保険契約の会計モデル(保険料配分アプローチ(以下、PAA)又はビルディング・ブロック・アプローチ(以下、BBA))の決定の基準など、一連の再保険の会計処理に関する討議を継続した。

  1. この討議についての審議会の資料はIASB/FASBのアジェンダ・ペーパー2-2Iであり、審議会での決定事項の概要はIASB Update及びFASB Summary of Decisionsにより把握可能である。

両審議会による暫定的な決定の内容は、以下のとおりである:

  1. 遡及型再保険契約(過去の事象により生じた債務について、再保険者が出再者に補償することを約する契約)に関しては、出再者の未回収再保険金及び再保険者の保険契約負債に含まれる残余マージン又は単一マージンは、通常の単一又は残余マージンの開放と同じ基準で、残りの決済期間にわたり償却されるべきである。つまり、IASBの場合は、サービスの提供パターン、FASBの場合は、リスクからの開放に合わせて償却されることになる。
  2. 保険者は、保険金又は給付金の実績に応じて再保険料及び出再手数料の額が変動するという契約上の取決め(「ロスセンシティブ特性」と呼ばれる)から生ずるキャッシュ・フローを、(保険料の一部としてではなく)保険金及び給付金のキャッシュ・フローの一部として取り扱うべきである。その場合、これらのキャッシュ・フローが投資要素と関連していないことが前提となる。保険者は、ロスセンシティブではない保険料の調整については、契約から生ずる保険料の見積りの変動と同じように取り扱うべきである。出再者に対して、保険料を支払えば再保険契約を復元させるという一方的な権利(ただし、そうする義務はない)を付与する条項は、このガイダンスを適用するという観点からいえば、ロスセンシティブであると考えるべきではない。

また、IASBは、出再者及び再保険者のいずれもが、保険者が元受保険契約について判断する場合と同じように、再保険契約の会計処理にBBA又はPAAのいずれを採用するか判断すべきであると暫定的に決定した。つまり、PAAによる測定値がBAAの合理的な近似となる場合にPAAの適用が認められるということである。

FASBによる暫定的な決定は以下のとおりである:

  1. 再保険者は、元受保険契約を分類するための基準により、当該再保険契約をBBA又はPAAのどちらで会計処理するか判断すべきである。
  2. 出再者は、再保険契約に対応する元受保険契約の会計処理と同じアプローチ(BBA又はPAA)を使用して、再保険契約を会計処理すべきである。BBAで測定される保険契約と、PAAで測定される保険契約の双方が再保険契約によってカバーされる場合には、元受契約の測定モデルごとに、その再保険契約を区分するべきである。そして、区分したそれぞれについて、対応する元受保険契約と同じアプローチを適用して会計処理するべきである。
EYの見解
遡及型再保険に関して、決済期間にわたってマージンを償却するという決定は、元受保険契約や将来型再保険契約の会計処理と一致するものではない。両審議会は、保険期間及び保険金支払期間にわたり、元受保険及び将来型再保険のマージンの開放を認識すると決定したが、遡及型再保険については、契約開始時に利得を生じさせないようにするため、残余の決済期間にわたって認識することが適切であると考えている。

契約の修正、条件変更及びコミュテーション

大幅な条件変更

両審議会は、再保険のコミュテーションの取扱いに加え、保険契約の修正や条件変更の会計処理について討議を行った。両審議会は、契約の条件変更が大幅なものに該当する場合には、保険者は既存契約の認識を中止し、新たな契約を認識すべきであると暫定的に決定した。契約の条件変更が大幅なものに該当するのは、修正された条件が契約開始当初に存在していたものと仮定した場合に、以下のいずれかについての評価結果が異なってくる場合である:

  1. 変更された契約が、保険契約の基準の範囲に含まれるかどうか
  2. 保険契約の会計処理にPAA又はBBAのどちらを利用するか

それに加えIASBは、仮に契約を修正した結果、当初認識時に含まれていたポートフォリオとは別のポートフォリオに含まれることになるような場合には、保険者は既存契約の認識を中止し、新しい契約を認識しなければならないと暫定的に決定した。ただし、FASBは、ポートフォリオの変更により契約の条件変更が大幅なものに該当することになれば、望ましいと考えられる水準よりも多くの契約が大幅な条件変更に該当してしまうと考えている。したがって、FASBは、ポートフォリオの変更以外にどのような状況であれば認識中止になるか、またこれに関する適用ガイダンスを整備すべきかどうかを検討する予定である。

保険者が保険契約に大幅な条件変更を加えた場合には、新規・変更・修正された契約は、保険者が仮にこれらの契約と同等の契約を引き受ける場合に保険契約者に課すであろう保険者固有の価格で測定される。既存の保険契約の帳簿価額との差は、包括利益に消滅に係る損益として認識される。

大幅でない条件変更

両審議会は、給付金の支払義務を減少させる大幅ではない条件変更について、保険者の債務の部分的な認識の中止として取り扱うことを決定した。部分的な認識の中止を行う結果として、保険者は、将来キャッシュ・フローの見積りの変動及び残余マージン/単一マージンの取崩しを純損益に計上すべきである。大幅でない条件変更によって支払う給付金が増加する場合には、当該修正は新たな別の契約として処理しなければならない(つまり、新たな単独の契約の場合と同じようにマージンを決定し、既存契約の測定には何の影響も及ぼさない)。

さらに両審議会は、再保険者及び出再者は、コミュテーションによる利得又は損失を、保険金又は給付金への調整として、包括利益計算書の中で純額により表示しなければならないと決定した。また、両審議会によれば、コミュテーションに関する開示については、今後の審議会で検討することになるだろう。

EYの見解
保険契約は、時間の経過に伴う保険契約者の保険ニーズの変化により、条件変更がなされることがあるほか、市場の競争を要因として、保険契約者による解約が起きないように、保険者側が契約内容の拡充を行う場合もある。変更が当初の契約条件に対して大幅なものかどうかについては、重要な判断が必要となるだろう。両審議会の暫定決定は、変更の大きさの程度を判断する基準を利用することで条件変更が大幅か否かを決定する際の判断の相違を低減することを意図してなされたものである。

両審議会の見解の相違は、ポートフォリオに関する見解の相違に端を発している。FASBが、ポートフォリオを保険種目に近いより細分化されたレベルで定義しているのに対し、IASBは、報告セグメントに近い、もっと大きなレベルで定義している。FASBは、過度に多くの一般的な条件変更がポートフォリオの変更を生じさせ、その結果、利得と損失の認識が増加すると考えている。保険契約の新契約費は保険負債に組み込まれるため、収益発生パターンが大幅に変わらないのであれば、既存契約を消滅させ新しい契約を認識しなければならないとしても、保険者が困ることはないかもしれない。ただし、この変更に対応するためのシステムの更新に係る管理コストについて、負担を感じる保険者もいるだろう。

給付金の増加をもたらす大幅でない条件変更を対象とする暫定決定は、保険者の不利な契約テストに影響を与えることになる。保険者が、追加の給付を割安な条件で提供した場合、既存の契約のキャッシュ・フローに利益が内在するとしても、条件変更により生じた追加部分は新規の単独の契約として取り扱われ、不利な契約として認識する可能性が減少することにはならないだろう。たとえば、契約の条件変更時に残存する既存契約のキャッシュ・インフローがキャッシュ・アウトフローをCU20だけ上回っており、契約の条件変更に関するキャッシュ・アウトフローの純額がCU 5であるとする。両審議会のアプローチ案によれば、保険者は、CU15を償却しCU5の不利な契約を認識しないのではなく、引き続きCU20の利得を償却する一方で、契約の条件変更時にCU5の損失を認識する必要があるだろう。

契約者貸付及び特約の取扱い

両審議会は、アンバンドリング及び分解表示に係るこれまでの決定事項について、契約開始時に存在する特約及び契約者貸付に対して適用すべきかどうか、また、適用する場合にはどのように適用すべきかを討議した。一般的に、契約者貸付は、明示的又は黙示的な勘定残高をもつ契約について存在し、その貸付金額が、将来支払が予想される保険金の前払いと考えられ、その意味では保険負債を減額する効果を有する。両審議会は、アンバンドリング及び分解表示に係る一般的な決定事項を適用するにあたって、契約者貸付については、関連する投資要素の金額の決定において考慮すべきであると暫定的に決定した。預り金要素がアンバンドリングされる場合には、保険者は、契約者貸付を投資要素の一部として検討しなければならないかもしれない。両審議会は、今後の会議で契約者貸付の金額に関する開示について検討すると言及した。

さらに、両審議会は、契約開始時に保険契約に含まれる特約について、保険者は、当該契約の契約条件の一部として会計処理すべきであるという点に同意した。したがって、アンバンドリング及び分解表示に係る一般的な決定事項を、特約にも適用すべきである。

EYの見解
契約者貸付の取扱いに係る両審議会の討議は、保険者間の一貫性及び比較可能性を高めるためのものである。FASB及びIASBは、US GAAP 及びIFRSに契約者貸付の取扱いに係る具体的なガイダンスがないため、契約者貸付に関する会計処理の明確化を図ろうとしている。一部の保険者は、貸付に係る主要なリスク(貸倒のリスク)が原保険契約に関する主要なリスク(保険リスク)とは無関係であると考え、契約者貸付を金融商品に適用されるガイダンスに基づき会計処理している。預り金要素と契約者貸付を相殺する決定によって、両審議会は、期待将来キャッシュ・フローにより測定する保険負債と償却原価により測定する契約者貸付の償却原価(公正価値オプションを選択しない場合)とで測定基準が異なることによる会計上のミスマッチの発生を回避している。

FASBの単一マージン・アプローチに関する教育的セッション

両審議会は、単一マージンの仕組みに関する、意思決定を伴わない教育的セッションを開催した。当該セッションの目的は、IASB及びFASBの決定事項における、この重要な差異についての影響を把握することであった。これまでの審議会において、BBAにおける契約開始時の利得を消去するために、IASBは残余マージンを利用すると決めたのに対し、FASBは単一マージンを採用するとしている。また、FASBは、保険期間においてPAAが適用されていれば、支払備金の測定に単一マージンを含めないと決定しているが、一方でIASBは、保険金支払期間にわたってリスク調整の認識を求めている。当該セッションでは、将来の予測の変動をどのように会計処理するのかということと、財務諸表におけるその影響に主眼が置かれた。BBAにおいて、単一マージン・アプローチ(FASB)によれば、契約の期待値が当初の評価から改善しても、保険期間において、追加の利益の認識のタイミングが早まることはなく、また、逆に将来の予測が悪化し、不利な契約となる場合には損失が認識される可能性もあるだろう。しかし、リスク調整アプローチ(IASB)によれば、アサンプションの変更によって、いずれの方向にも調整される可能性がある。

コンバージェンスに向けて解消すべきもう1つの重要な差異は、残余マージン(保険期間)及び単一マージン(支払期間)の償却期間である。見解の統一を図り、それぞれのアプローチにおけるリスク調整及びマージンの利用における差異を解消するために、両審議会は、3つの差異の解消が必要であるという点に合意した。これらの差異を収斂させるためには、FASB及びIASBの双方が、それぞれの従前の決定を変更する必要があるだろう。具体的には、FASBはマージン測定の前提をアンロックすることを容認するとともに、マージンの償却期間をIASBに揃える必要がある一方で、IASBはマージンをリスク調整及び残余マージンに分けるメリットを再検討する必要があるだろう。

EYの見解
本セッションでは何らの決定も行われなかったものの、当該プロジェクトにおけるFASB及びIASBのモデルの最も重要な差異を解消しようとする動きの前兆であるという点で、当該討議は重要なものであった。FASB及びIASBは、マージンは単一の不可分な金額であり、マージンを分割する根拠はないとするFASBの考え方について折合いをつける必要があるだろう。マージンのアンロック及び償却期間に関する見解の相違は、今もなお両審議会の暫定的決定の中で、最も重要な差異となっている。仮にFASBがマージンのアンロックを容認し、償却期間をIASBに合わせることに合意した場合、IASBにはリスク調整を重視する考えの変更を促すプレッシャーがかけられる可能性があるだろう。

保険契約負債の変動におけるOCIの影響

両審議会は、保険負債の変動の一部のOCIによる表示について、合同で教育的セッションを開催した。当該セッションの目的は、保険負債の変動の一部についてのOCIの利用の検討、OCIの利用を容認するか要求するかの決定及びその決定をいつ行うことができるのかを決めること、さらに、OCIの利用の選択又は決定の頻度及び当該処理を適用するための会計単位を再検討することにあった。当該討議は、IASBが、金融商品についてOCIを通じた公正価値測定という新カテゴリーの導入を検討するという前提に基づいて行われた。

スタッフは、ED/DPに寄せられた回答者からのコメント及びスタッフ独自の調査結果を踏まえると、保険負債の変動の一部についてOCIを用いた会計処理を検討する必要があると説明した。当該アプローチの目的は、保険負債と、保険負債を裏付ける金融商品の測定及び認識から生ずる損益における会計上のミスマッチを低減することであった。また、OCIの利用により、契約期間が長いという保険契約の性質を反映し、保険者のパフォーマンスに関する有用かつ目的適合性の高い情報を提供することになるだろう。スタッフは、両審議会に対し、割引率及び金利感応的なアサンプションの変動が保険負債に与える影響を、OCIで認識すべきかどうかを検討するよう依頼した。スタッフは、また、OCIの利用を容認するか要求するか、また、OCIの利用を決定する際にどのような会計単位を用いるべきかに関しても両審議会の見解を求めた。

OCIの利用に関する審議会メンバーの意見は異なっていた。反対する者の多くは、OCIを利用することで、保険負債の測定が現状よりも複雑化するほか、透明性が薄れ、財務諸表の利用者に有用な情報を提供することにならなくなるだろうと主張している。OCIの利用を支持するメンバーは、明確かつ透明性のある方法で、OCIに表示される構成要素を、意味のある形で分解表示することにより、有用な情報が得られるようになると説明している。

EYの見解
当該会議では何の決定も行われなかったものの、討議を通じて、OCIを利用するアプローチに対する審議会の慎重な姿勢が見られた。両審議会は、寄せられた回答者のコメントに基づいて、ED/DP の提案事項に対する変更について、引き続き広く調査する姿勢を示している。しかし、同時に、透明性が低下する程の過度な複雑化を避けることについても強い関心を抱いている。

次のステップ

両審議会は、現在公表されているスケジュールに沿って検討を進めている。IASBは、2012年後半に保険契約に関する改訂公開草案又は最終基準書のレビュー・ドラフトを公表する予定であり、FASBも同時期に公開草案を公表する予定である。両審議会は、5月にも会議を開く予定である。




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