アシュアランス
保険IFRSアラート

両審議会は、OCI、投資要素のアンバンドリング及び新契約費の認識について検討

2012.06.27
重要ポイント
  • FASB及びIASBは、金利の変動から生ずる保険負債の変動を、OCIで表示することを決定した。これは、特定の負債性商品についてFVOCIアプローチを導入する金融商品プロジェクトにおける両審議会の決定と関連している。
  • 両審議会は、保険契約に含まれる、区別できる投資要素については金融商品として測定することを決定した。
  • IASBは、個別のリスク調整を保険負債測定モデルに含めるという決定を再確認し、さらに、残余マージンは、将来キャッシュ・フローの見積りの変動に合わせて調整されるものであるとした。

概要

2012年5月に行われた合同会議1を通じて、国際会計基準審議会(以下、IASB)及び米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、IASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)における決定について再審議を行った。合同会議での議題は以下のとおりである:

  1. 保険負債の変動の一部を表示するためのその他の包括利益(以下、OCI)の利用
  2. 投資要素の保険契約からのアンバンドリング
  3. 新契約費の認識及び表示

また、IASBは、個別にセッションを開催し、マージンに係る従来の決定について再検討すべきかどうか検討した。本紙で言及している決定は、すべて暫定的なものであり、両審議会は最終的な結論には至っておらず、今後変更される可能性がある。

金融商品

IASB及びFASBは、IFRS第9号「金融商品」における分類及び測定モデルと、FASBが作成中のモデルとの間の主要な差異を解消すべく引き続き協力して取り組んでいる。5月の会議において、IASBは、契約上のキャッシュ・フローの特徴テストを満たす負債性金融商品について、OCIを通じた公正価値測定(以下、FVOCI)というカテゴリーをIFRS第9号に追加することを暫定的に決定した。この決定により、IFRS第9号のガイダンスはFASBの暫定的モデルにより近づくことになるだろう。FVOCIのカテゴリーには、償却原価で測定される金融資産と同様の減損及び収益認識モデルが適用されるだろう。また、OCIで認識された公正価値の正味累積変動額は、対象となる金融資産の認識が中止された時点でOCIから純損益にリサイクルされる。

また、両審議会は、契約上のキャッシュ・フローの特徴テストを満たす金融資産をFVOCIに分類する際のビジネスモデル・テストと、測定カテゴリー間での金融資産の再分類の要件を合せることに暫定的に合意した。

金融商品

図で示されているとおり、負債性金融商品(貸付金及び負債証券など)は、その契約上の特徴及び保有者のビジネスモデルに基づいて、償却原価、FVOCI又は純損益を通じて公正価値で測定(以下、FVTPL)の3つのカテゴリーのいずれかに分類される。

両審議会は、FVOCIのビジネスモデル・テストを満たす金融資産に対し、純損益を通じた公正価値で測定するオプションを導入するかどうかについては決定していない2。両審議会は、分類及び測定に係る公開草案を、それぞれ2012年後半に公表する意向である。

金融商品会計に係る影響については、我々が公表したIFRS Developments(第31号2012年5月)「金融商品:分類及び測定-IFRSと米国基準のさらなる歩み寄り」の中でより詳細な検討を行っている。

保険負債の変動に対するOCIの利用

両審議会は、これまで何度も教育的セッションを行い、保険負債の変動の一部に関するOCIの利用の可能性について検討を重ねてきた。これらの会議で、スタッフは、両審議会に対して、割引率の変動から生ずる保険負債の変動を表示するためにOCIを利用することに係るいくつかの論点について決定を求めた。

スタッフが主張する、OCIアプローチ導入の3つの主要な目的は以下のとおりである:

  • 必ずしも長期のパフォーマンスを表しているとはいえない、短期の市場の変動から生ずるボラティリティの問題に対処すること
  • 特に保険引受及び投資収益の双方に係る有用な情報を提供することにより、保険者の本質的な業績の透明性を確保すること
  • 保険負債に対応する資産がFVOCI又は償却原価で測定される場合に、損益計算書上の会計上のミスマッチを低減すること

スタッフは、割引率の変動に伴う保険負債の変動を純損益で認識するED/DPのアプローチにも重要な利点があることは認めていたものの、OCIを利用する方がより有用な情報を提供すると考えている。したがって、スタッフは、両審議会にOCIの利用を提案した。

両審議会メンバーは、OCIの利用について、それぞれ賛成、反対の立場から議論を行った。OCIの利用を支持するメンバーは、OCIの利用によって業績の報告の透明性が高まり、金融資産の分類にFVOCIカテゴリーを導入するという両審議会の決定とも整合すると考えている。一方で反対したメンバーは、提案されているOCIアプローチではその目的を満たせない上、複雑化や比較可能性が失われる可能性があるという懸念を表明した。議論は長引いたものの、FASBのメンバー7名全員及びIASBのメンバー14名のうちの10名が、割引率の変動に伴う保険負債の変動に対してOCIを利用することを支持した。また、両審議会は、保険者が有配当契約(特定の資産のパフォーマンスに連動する契約)を除くすべての保険負債に関し、割引率の変動に伴う保険負債の変動をOCIで認識することを要求すると僅差で決定した。両審議会は、有配当契約について、今後の会議で当該OCIアプローチをどのように適用すべきか検討する予定である。

割引率の変動に加え、その他の要素による保険負債の変動についてOCIで認識すべきかどうかに係る議論が行われた。スタッフによれば、金利感応的なキャッシュ・フロー前提の変動について、割引率の変動と区別することは一貫性がなく、区別することが困難であるため、これらについてもOCIを用いて表示すべきであるとの主張が一部あったと言及した。ただし、両審議会は、その意見には同意しなかった。両審議会は、一部のキャッシュ・フロー前提が割引率と関連しているとしても、一貫した手法で会計処理することが重要であると結論付けた。

両審議会は、OCIアプローチの採用を決定した後にその詳細について検討し、報告日時点の保険契約について認識されるOCI累計額は、以下の差額であると合意した:

a)契約時の割引率で測定された保険負債
b)報告日現在の割引率で測定された保険負債

当該アプローチに基づけば、損益で認識される保険負債に付随する金利費用は、契約開始時にロックインされた割引率により決定されることになる。また、(一部の)保険負債の認識が中止された場合、当該負債についてOCIとして認識されていた金額は、OCIからリサイクルされることになる。両審議会は、複雑さを低減するために、残余マージンで吸収される(IASBの場合)又は純損益で報告される(FASBの場合)期待キャッシュ・フローの変動の再測定による影響を決定するにあたっても、当該ロックインされた割引率を利用すべきであると明確にした。

両審議会は、最終的に、損失認識テストを導入しないことを決定した。利益剰余金の表示を有用なものとするためには損失認識テストが必要であると考えるメンバーもいた。ただし、両審議会のメンバーの多くは、適切な資産レートを決定する必要性などの問題を挙げて、損失認識テストの導入に反対した。

EYの見解
割引率の変動をすべてOCIに表示するよう求める両審議会の結論は、金融資産についてFVOCIのカテゴリーを導入するという両審議会の決定と整合がとれているように見える。とはいえ、デリバティブ及び一部の資本性金融商品3のように、保険負債に対応する一部の金融商品の中には、FVOCIで測定されないものもあるだろう。さらに、この提案が導入されれば、保険者は、資産・負債両者について、現在の測定に伴う見積りの変更を純損益で処理するという方法を適用できなくなるだろう。
損失認識テストを導入しないという決定は、場合によっては、契約期間を通じて純損益に計上される業績に影響を与えることになるだろう。市場金利が時間の経過とともに低下する場合、保険者が見込む資産の投資利回りも、再投資利回りの低下などによって低下する可能性があるだろう。この場合、損失認識テストが導入されなければ、損益計算書に計上される利息費用の算定のための負債の割引率は「リセット」されず、保険負債の再測定のための割引率の低下の影響は、OCIに計上されることになる。結果として、契約開始当初にロックインされた割引率により保険負債の金利費用が計上され、資産の利回りの低下は、将来の純損益にマイナスの影響を生じさせるだろう。

投資要素の保険契約からのアンバンドリング

以前の会議において、両審議会は、保険者が保険事故の発生に関わりなく支払義務のある金額を、保険契約に含まれる投資要素として定義した。さらに、この金額は財政状態計算書において、区分して表示すべきであるとした。5月の討議では、どのような場合に投資要素を分離して、保険負債の一部としてではなく金融商品として別個に測定、つまりアンバンドルすべきか、という点を中心に議論がなされた。スタッフがその提案の拠り所としたのは、保険契約に含まれる財及びサービスのアンバンドリングに関する両審議会の以前の決定であった。両審議会は、一定の修正を加えたものの、その提案をおおむね受け入れた。

具体的には、両審議会は、保険契約に含まれる区別できる投資要素のみをアンバンドルすると決定した。投資要素及び保険要素の相互関連性が高くない場合には、投資要素は区別できる場合に該当するであろう。両者の高い相互関連性を示すものとして、以下の状況が挙げられると両審議会は同意した:

  1. ある要素が失効又は満期を迎えた場合に、他の要素も失効又は満期を迎える場合
  2. その投資要素が、同一の市場又は法域で、独立の商品として存在しない場合
  3. 保険要素の価値が投資要素の価値に依拠している、又はその逆である場合

区別できると判断された投資要素は、金融商品に適用される会計基準に従って測定されなければならない。

両審議会は、組込デリバティブ(保険要素に密接に関連していない場合(IASB)又は明確かつ密接に関連していない場合(FASB))及び保険以外の財及びサービス( 財又はサービスを提供する履行義務が区別できる場合)をアンバンドルするという従前の決定を確認した。両審議会は、また、包括利益計算書に表示される保険料から、(明確に区別できるとはいえない)投資要素に関する金額を除外する意向を改めて確認した。今後の会議において、保険料の分解表示に関する討議を継続するだろう。

保険者が、アンバンドリングを求められていない場合でも、アンバンドリングを容認すべきかどうかについても討議が継続して行われた。比較可能性を維持するために、アンバンドリングが求められない構成要素についてはアンバンドリングを認めないと両審議会は決定した。

EYの見解
ED/DPを再審議するにあたって、両審議会は、広い範囲の契約を検討するのではなく、収益認識についての提案に基づいて、投資要素のアンバンドリングに関するガイダンスを検討した。投資要素のアンバンドリングに関するガイダンスは、以前の討議における考え方に類似しているため、両審議会が引き続きアンバンドリングの範囲を狭めるアプローチをとる可能性が高い。一方で、投資要素のアンバンドリングの範囲を狭めるということは、両審議会が損益計算書の表示に関しては、より多くの投資要素に関する金額を区分して表示する意向であることを意味するといえるかもしれない。

新契約費

両審議会は、共同で教育的セッションを開催し、ビルディング・ブロック・アプローチ(以下、BBA)及び保険料配分アプローチ(以下、PAA)の下での、新契約費の回収に関連するキャッシュ・フローの会計処理方法のほか、キャッシュ・フローに関する情報を表示する方法についても検討を行った。

BBAについては、スタッフは以下の3つの代替的アプローチを提案した:

  1. 新契約費を回収する権利を資産として認識し、償却を行う方法。
  2. 新契約費をマージンの計算にあたり使用するキャッシュ・フローに含め、新契約費の発生時に残余マージン/単一マージンを減少させ、損益には影響させない方法。当該新契約費は、残余/単一マージンと合わせて純額で表示され、残余/単一マージンと同様に純損益に配分される。また、新契約費から生ずる保険負債の変動は、キャッシュ・フローの変動としてではなく、マージンの解放とともに表示されることになる。
  3. 新契約費をマージンの計算にあたり使用するキャッシュ・フローに含め、新契約費を費用処理するとともに、同額を収益として認識し、両者を相殺する方法。新契約費から生ずる保険負債の変動は、キャッシュ・フローの変動と同じ方法で表示されることになるだろう。

スタッフは、上記の代替案2及び3は、損益計算書の表示項目上は異なった数字が表示されることになるが、最終的な純損益は同じ結果になることを説明した。資産に計上される新契約費の償却パターンが代替案2及び3による残余マージンの解放パターンと同じならば、代替案1についても同じ結果となるだろう。

これらのアプローチに関する審議会メンバーの見解はそれぞれ異なっていた。IASBは、新契約費は契約上のキャッシュ・フローの一部として処理し、別個の資産として認識すべきではないと考えていた。また、審議会メンバーは、代替案2又は3のいずれかをスタッフに検討させることで合意した。一方、FASBは、収益を認識した上で、新契約費として認識された金額を相殺する代替案(代替案3)には賛成できないと表明した。

両審議会は、新契約費に関する将来の決定は、経過保険料をBBAによりどのように計上するかを含め、損益計算書の表示に関する討議とも連携させる必要があると結論付けた。また、両審議会は、その決定はPAAを選択した場合の新契約費の処理に関しても検討する必要があると指摘した。この討議では意思決定は行われず、新契約費に関する論点は、今後再検討されることになるだろう。

EYの見解
両審議会は、それぞれの見解を明らかにしている。IASBは、代替案1(別の資産として認識する)を却下し、代替案3(収益を認識し、発生した新契約費を相殺する)を望ましいとしている。FASBは、代替案3は受け入れられないとし、代替案1が望ましいと表明している。討議中に一部の審議会メンバーが示唆したとおり、代替案2(新契約費を残余マージン/単一マージンと相殺表示する)を検討し、それをPAAに対する代替案と比較することで、両審議会の歩寄りが可能になる結論を引き出せるのではないかと考えられる。

マージン(IASBのみ)

4月の会議において、IASB及びFASBは、教育的セッションを開催し、FASBが暫定的に採用した単一マージン・モデルについて協議した。また、IASBは、5月にリスク調整及び残余マージンに関する暫定的な決定を見直すべきかどうかを検討した。

IASBは、リスク調整と残余マージンを分けるアプローチ(2つのマージン・アプローチ)をあくまでも維持すべきか、単一マージン・アプローチへの変更を検討すべきかどうかを協議した。リスク調整を別個に測定すること(及びリスク調整の変動を純損益に取り込むこと)を支持しないメンバーは、保険者固有のリスクの見積り手法によりリスク調整を別個に測定することが主観的であることを反対理由とした。一方で、2つのマージン・アプローチを支持するメンバーは、単一マージンの簡明性を認めつつも、単一マージンには主観性の入り込む余地がなく、単一マージン・アプローチを採用するのであれば、IASBメンバーは依然として単一マージンの解放について検討する必要があるとした。それぞれの是非を検討した結果、IASBは2つのマージン・モデルを維持することを決定した。

IASBは、当該議論の一部として、リスク調整の再測定を残余マージンで調整することが可能か検討するかどうかを議論した。一部のメンバーは、この方法によればリスク調整が主観的であるという特徴に関する懸念を軽減する手段になり得るのではないかと考えた。しかし、IASBは、残余マージンのアンロックは将来キャッシュ・フローの見積りの変動によるもののみとして、その他の見積りの変動を残余マージンで相殺すべきかどうかは検討しないことを決定した。

EYの見解
IASBが2つのマージン・アプローチを確認し、それ以外の代替案を検討しないと決定したことを踏まえれば、保険契約プロジェクトに関する次の草案文書の公表前に、両審議会がマージンに関してコンバージェンスに到る可能性は遠ざかったといえるだろう。事実、IASB議長による評議員会(Trustees)への最近の報告では、両審議会がそれぞれ別個に草案文書の作成を進めていると言及しており、IASBのこの決定も驚くには当たらないだろう。
2つのマージン・アプローチ以外の代替的なアプローチを検討しないという決定は、IASBが保険契約プロジェクトを前進させることを望んでおり、問題が再燃することによるこれ以上のプロジェクトの遅れを望んでいないことを示唆している。

次のステップ

IASBは、2012年後半に、保険契約に関する改訂公開草案又は最終基準書のレビュー・ドラフトを公表する予定であり、最終基準書の公表日程についてもいずれ決定する予定である。また、FASBも同時期に公開草案を公表する予定である。

両審議会は、6月の審議会で保険契約に関する討議を行う予定であり、保険契約の要素の区分の手法及びBBAにおける経過保険料を決定する潜在的モデルについて議論されることになるだろう4。また、IASBは、6月25日及び26日に次回の保険ワーキング・グループの会議を開催する予定である。

  1. この討議についての審議会の資料は、IASB/FASBのアジェンダ・ペーパー2-2M及び14-14C、ならびにIASB Update及びFASB Summary of Decisionsである。
  2. IASBは、6月13日の会議において、公正価値オプションに基づき金融資産をFVTPLに指定するIFRS第9号のオプションを、通常であればFVOCIで測定される負債性金融商品にも適用することを暫定的に決定している。同会議については、我々が公表したIFRS Developments(第33号2012年6月)「金融商品:分類及び測定-さらなる進展」の中で詳細な検討を行っている。
  3. IFRS第9号ではすでに、売買目的保有ではない資本性金融商品に対して、OCIによる測定のオプションを追加している。この取消不能なオプションによれば、配当のみが純損益に計上される。利得及び損失の「リサイクリング」は認められていない。
  4. 翻訳版の公表時点において、討議はすでに行われている。


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