アシュアランス
保険IFRSアラート

両審議会は、キャッシュ・フローの配分について決定、保険契約の経過保険料の表示について協議を継続

2012.07.23
重要ポイント
  • 両審議会は、投資要素もしくは財又はサービスが保険契約からアンバンドルされる場合の、キャッシュ・フローの帰属方法について決定に至った
  • スタッフは、ビルディング・ブロック・アプローチにおける経過保険料アプローチの利用について、さらに検討を進めることになるだろう

概要

2012年6月13日に開催された合同会議を通じて、国際会計基準審議会(以下、IASB)及び米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、IASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)における決定について再審議を行った。合同会議での議題は以下のとおりである:

  1. 構成要素を保険契約からアンバンドルする場合の、キャッシュ・フローの配分
  2. ビルディング・ブロック・アプローチ(以下、BBA)を用いて測定される保険契約に係る経過保険料の表示

IASBは、別途教育的セッションを開催し、新契約費を損益として認識する時期及び新契約費の財政状態計算書における表示方法について検討を行った。

構成要素を保険契約からアンバンドルする場合の、キャッシュ・フローの配分

両審議会は、アンバンドルされた構成要素(つまり、保険負債と分離し他の基準に基づいて別個に測定される要素)について、キャッシュ・インフロー及びキャッシュ・アウトフローを保険者がどのように配分すべきかを討議した。両審議会は、5月の会議で、投資要素及び保険に該当しない財又はサービスといった特定の構成要素をどのような場合に保険契約からアンバンドルするかを判断するための要件を決定した1。スタッフは、保険者は以下の3段階のプロセスを通じて、アンバンドルされた構成要素に対してキャッシュ・フローを配分すべきであると提案した:

  1. (1)キャッシュ・フローを、投資要素に単独ベース(別個の契約として発行したかのように扱うこと)で配分する
  2. (2)その他の対価、割引又は割増の金額は、収益認識の公開草案と整合するように、保険要素又は財及びサービスのどちらか片方、あるいはその両方に配分する
  3. (3)複数のアンバンドルされた構成要素に関連するすべてのキャッシュ・アウトフローは、合理的かつ整合的基準に従って配分し、それぞれの構成要素に係る会計基準に基づき測定する

審議会メンバーの一部は、アンバンドルする前の保険契約(つまり契約全体)の価格設定に含まれる割引の影響の配分方法に関して懸念を表明した。保険者が割引の影響を投資要素に配分する場合、投資要素に係るキャッシュ・フローが、当該投資要素を個別の契約として発行した場合のキャッシュ・フローと整合しなくなることが指摘された。また、ユニット・リンク型契約及び投資信託によく見られる運用管理手数料のすべてを保険要素に帰属させるべきかについて、疑問を呈するメンバーもいた。スタッフは、投資要素の単独ベースでの発行当初の価額と、投資要素の帳簿価額との間に差異が生ずることは適切ではないとした。しかし、結果として、契約開始時の損失が保険要素に生じてしまう可能性がある。

審議会メンバーは、たとえば、繰延新契約費について保険契約の基準を適用する場合と収益認識の基準を適用する場合が生じるなど、異なる測定基準が同種の費用に適用されてしまう可能性があることから、上述の3番目のプロセスにおいて、「合理的かつ整合的」という用語を使うことについて懸念を表明した。審議会メンバーは、スタッフに対して、単一の構成要素に帰属するキャッシュ・フローについては、複数の構成要素に配分する必要はないことを明確にするよう求めた。

スタッフは、「合理的かつ整合的」という用語の趣旨の明確化を含め、提案の修正に同意した。両審議会は、最終的に以下について同意した:

  1. 保険者は、キャッシュ・フローを投資要素及び組込デリバティブに対して単独ベースで帰属させるべきである。これは、保険者が投資要素又は組込デリバティブについて、別個の契約として発行したかのように測定することを意味している。したがって、保険者は、いかなる内部相互補助、割引又は割増の効果も投資要素に含めない。
  2. 投資要素及び組込デリバティブに関連したキャッシュ・フローを除外した後で:
    1. 対価、割引又は割増の金額は、公開草案「顧客との契約から生じる収益」の提案に従って、保険要素及びサービス要素、もしくは保険要素又はサービス要素のどちらか片方に帰属させるべきである。
    2. 単一の構成要素に直接関連する(費用及び新契約費を含む)キャッシュ・アウトフローは、当該構成要素に帰属させるべきである。複数の構成要素に関連するキャッシュ・アウトフローは、保険者が当該構成要素を別個の契約として発行した場合に生じると見込まれるコストを反映した、合理的かつ整合的な基準に基づいて、これら構成要素に配分すべきである。キャッシュ・アウトフローを各構成要素に帰属させた後は、保険者は、当該構成要素に適用される認識及び測定の要求事項に従ってそれらのコストを会計処理する。

EYの見解
投資要素を保険契約からアンバンドルする場合の費用の配分に関する両審議会の決定は、財又はサービスをアンバンドルする場合の費用の配分とは抜本的に異なる。財又はサービスをアンバンドルする際の基準は、収益認識のガイダンスに含まれる決定事項を反映したものになっている。これらの構成要素から生ずるキャッシュ・フローは、アンバンドルされる構成要素に対し、履行義務の相対価値に基づいて配分される。投資要素がアンバンドルされる場合に、内部相互補助、割引又は割増の効果をすべて保険要素に帰属させるという両審議会の決定の結果、投資要素のアンバンドリング後の保険要素の収益性は、財及びサービスの要素がアンバンドルされる場合と比較して、単独で発行された類似の保険契約の収益性から一層乖離することになるだろう。
上述のキャッシュ・フローの配分案により、保険要素の収益性が向上(運用管理手数料)したり、低下(割引)したりする傾向がより強まることが見込まれる。また、利益の発生パターンへも影響が及ぶ可能性がある。たとえば、投資要素に関連して測定される年間運用管理手数料は、契約期間にわたって定額法で認識される場合が多いと考えられるが、当該手数料が保険要素に帰属すれば、それらはマージンに合わせて認識されることになり(IASBの場合はサービスの提供パターンに基づき、FASBの場合はリスクからの解放に基づく)、定額法による償却パターンとは一致しない可能性がある。また、割引の場合には、保険者は保険要素が不利な契約となる可能性に注意する必要があるだろう。

BBAにおける経過保険料の表示

両審議会は意思決定を伴わない教育的セッションを開き、包括利益計算書におけるBBAアプローチが適用される保険契約の表示について討議した。ED/DP案では、要約マージン・アプローチが提案されたが、両審議会は2011年10月の会議で、保険契約が報告企業の事業の重要な割合を占めている場合には、取引量の情報を包括利益計算書に表示すべきであると決定した。会議で挙げられた、取引量の情報を表示する理由には、他の業界の損益計算書と保険料配分アプローチ(以下、PAA)との比較可能性の確保が含まれる。

取引量の情報を提供し、PAAとより整合させるために、要約マージン・アプローチに対し、下記のとおり3つの対案が提示された:

  1. 引受保険料アプローチ-契約期間にわたって見込まれる収益が、契約当初に認識される
  2. 未収保険料アプローチ-保険契約者への保険料の請求に基づいて収益を認識する
  3. 経過保険料アプローチ-契約期間にわたる予想損失及びマージンの認識に対応させ、義務の履行の完了に基づいて収益を認識する

公式にはいずれの提案について承認も却下もしなかったが、両審議会は経過保険料アプローチの提案に焦点を合わせていた。一部の審議会メンバーは、契約が発行され又は保険料の受領のスケジュールが決まれば収益認識の要件を満たすという点について懸念を表明した。経過保険料アプローチの提案では、保険料収益は保険期間にわたって見込まれる保険金の発生及びマージンの解放(さらに、IASBに関してはリスク調整も含まれる)に比例して認識されることになる。この提案の目的は、保険契約について受領した対価を、保険者の時間の経過に伴う義務の履行に応じて、収益として配分することにある。この配分は、BBAに基づく負債の測定要素を用いて決定されることになるだろう。

審議会メンバーの多数が、経過保険料アプローチの提案をさらに検討することを支持する一方で、一部のメンバーは、利用者が、注記としてよりも財務諸表本体上での取引量の情報の方が有用と考えるかどうかについては懐疑的であった。他のメンバーは、導入のためのコストが利用者の便益を上回るかどうかという点で疑念を示していた。ただし彼らは、かつて、他の分野の検討において、新しい表示方法の提案が、必ずしも導入当初においては、財務諸表の利用者に対して意図していた利益をもたらさなかったこともあったことを理由に、従来とは異なるアプローチを完全に排除すべきではないということを認識した。実際のところ、利用者が、新しい報告要件を理解し、適用開始時にその真価が明らかではない新たな開示から利益を享受するためには、しばしば時間を要してきたのも事実である。

両審議会は、スタッフが示した事例を検討し、引き続き経過保険料アプローチの提案を検討するために、その仕組みについて詳細を明らかにするよう求めた。また両審議会は、IASBの保険ワーキング・グループの意見も求める意向である。スタッフはその会議において、経過保険料アプローチに関する、多数の問題を検討する可能性が高いだろう2。これらの問題には、適切な会計単位、新契約費との相互作用、保険金以外のコストの取扱い、保険料を開始時点でロック・インすべきか、及び、最終的に、財務諸表の利用者への便益が、経過保険料の算定のために必要な追加情報を捕捉するための運用コストを上回って余りあるものかどうかが含まれる。

EYの見解
両審議会は、教育的セッションを通じてその提案を承認することはなかった。両審議会が経過保険料に対して関心を示していることから、最終的には、マルチラインの保険者の包括利益計算書の複雑さを低減し、包括利益計算書における一体的な表示につながる可能性がある。両審議会が未収保険料アプローチや引受保険料アプローチではなく、経過保険料アプローチが好ましいという意向を鮮明にしている主な理由は、経過保険料アプローチの方が収益認識の提案のコンセプトにより近いためである。

新契約費の認識及び表示

IASBは個別に、意思決定を伴わないセッションを開催し、新契約費及びその回収の認識のタイミングについて検討を行った。この論点は、経過保険料アプローチの提案に関する議論に関連するものであった。IASBは、新契約費を別建ての資産として表示するか、又は繰延マージンに対する負債の控除項目とするかという点、さらに包括利益計算書における新契約費の認識方法について討議を行った。

一部のIASBメンバーは、新契約費の発生により、関連する保険料収益を認識することになる提案に対して懸念を表明した。彼らは、これらの費用の発生パターンは、契約に基づく保険者の業績とは関連しておらず、なぜそこから収益が生じるのか理解できないと指摘した。そこでIASBは、残余マージンの解放パターンに基づいて、この費用をカバーする保険料の金額を収益として認識しつつ、新契約費を発生時に認識するという代替案を検討した。マージンの解放にしたがって、新契約費をカバーする保険料の一部を認識する方が、収益認識の原則をより良く反映するというのが多数のIASBメンバーの見解であった。一部の審議会メンバーは、業務上の複雑さを避けるべく、新契約費を発生時にすべて費用処理するという考えを再検討したが、この意見は多くの賛同を得るには至らなかった。

EYの見解
意思決定はなかったものの、IASBは5月の会議でFASBが行った提案と整合を図る方向に向かっているように見える。両審議会の主な懸念は、経過保険料アプローチによれば、発生した新契約費を即座に保険料収益に認識することになる点にあるように思われる。繰延新契約費を別の資産から除外すれば、この資産について特別な減損判定の導入の必要はなくなるだろう。ただし、最終的には、いかなる決定も経過保険料の表示に関する今後の討議次第で決まることになるだろう。

次のステップ

IASBは、2012年後半に、保険契約に関する改訂公開草案又は最終基準書のレビュー・ドラフトを公表する予定であり、公表日程についてもいずれ決定する予定である。また、FASBも同時期に公開草案を公表する予定である。

両審議会は、8月の休暇の直前に行われる7月の審議会で、保険に関する次回の討議を行う予定である。この会議では、マージンの表示及び新契約費の取扱いなどが取り上げられるものと見込まれる。

  1. 我々が公表した保険IFRSアラート 2012年6月「両審議会は、OCI、投資要素のアンバンドリング及び新契約費の認識について検討」及び保険IFRSアラート 2012年3月「両審議会は、保険料配分アプローチについて決定」を参照されたい。
  2. 翻訳版の公表時点において、保険ワーキング・グループの会議はすでに開催されている。




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