アシュアランス
保険IFRSアラート

両審議会は、保険期間開始前の新契約費の認識及び移行時の保険契約の会計処理について討議、IASBは再公開についても討議

2012.11.27
重要ポイント
  1. 1)IASB は、保険契約基準の改訂公開草案の公表に合意した
  2. 2)両審議会は、保険期間開始前に発生した新契約費は、保険契約負債に含めて認識すべきであると暫定的に合意した
  3. 3)両審議会は、遡及適用に関して暫定的な決定に至った
  4. 4)IASBは、保険者は残余マージンに係る利息を認識すべきであると暫定的に決定した

概要

2012年9月に行われた合同会議で、国際会計基準審議会(以下、IASB)及び米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、IASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)における決定事項について再審議を行った。討議された主な議題は以下のとおりである。

  1. 保険期間開始前の新契約費の会計処理
  2. 移行時における保険契約の会計処理

IASBは、個別に会議を開催し、残余マージンに係る利息の認識、開示要件及び再公開を行うかどうかについて検討した。

新契約費

両審議会は、保険期間開始前の新契約費の認識に関するスタッフの共同提案について討議した。これは、保険者が契約の当事者となった時点で保険契約を認識するというED及びDPにおける提案とは異なり、保険期間の開始時にはじめて保険負債を認識するという両審議会の決定に基づく提案である。両審議会に、新契約費処理に係る4つの案が提示された。

  1. 保険期間開始時まで認識しない1
  2. 発生時に費用として認識する
  3. 別個の前払資産として認識する
  4. 当該契約が認識される場合に帰属する、契約のポートフォリオの保険契約負債の一部として、発生時に認識する

スタッフの提案のうち、両審議会が最終的に同意したのは4つ目の案であった。

1つ目及び2つ目の案は、新契約費の測定に関する基本的な考え方と相容れないとみなされ、3つ目のアプローチは、実務の観点から過度に複雑なアプローチになると判断された。4つ目の案の選択に至った背景には、両審議会が、新契約費の要件を満たす費用のうちのごく一部のみが保険期間開始前に発生すると考えたこともある。

EYの見解

両審議会の決定は、保険契約に関連するキャッシュ・フロー項目(たとえば、保険期間前における保険契約の引受けに係る従業員への報酬)がいつ発生するにせよ、発生のタイミングが当該項目を保険負債の測定に含めるかどうかを左右すべきでないという点を明確にするものである。保険期間前の新契約費を、他の関連するキャッシュ・フローよりも先に既存のポートフォリオに含める場合、マージンの償却に関する問題が生じるだろう。保険契約そのものは、通常は保険期間が開始するまでは認識されない。また、保険契約引受プロセスに関連した一部のコストが新契約費の定義に合致する場合があるという点も検討すべき事項である。したがって、保険期間開始前の新契約費の金額は、両審議会が当初に見込んだものよりも大きくなるかもしれない。

経過措置

再審議を要する論点がわずかとなったことを踏まえ、両審議会は、移行時の保険契約の会計処理について討議した。具体的には、両審議会は、マージンの測定の時期及び方法、割引率の決定及びその他の関連する開示要件に関して見直しを行った。

また、両審議会は、財務諸表において表示される最も古い期間の期首において、以下により保険契約負債を測定するべきであると決定した。

  1. 移行日における現在の見積りによる、履行キャッシュ・フローの現在価値
  2. 新契約費は、両審議会の暫定決定に基づき測定されたものとし、暫定決定の要件を満たさない繰延新契約費の既存の残高は認識を中止

移行時における残余マージン(IASBの場合)及び単一マージン(FASBの場合)は、その性質上、計算が主観的となる可能性があるため、両審議会は、移行時におけるマージンの算定手法の整備に取り組んだ。移行日(すなわち、最も古い表示日)より前に引き受けた契約について、スタッフは以下の6つの案を提示した。

  1. マージンを認識しない
  2. 履行キャッシュ・フローの新基準による測定値と従前の帳簿価額との差額をマージンとする
  3. 現行の会計処理のガイダンスに従い、遡及適用してマージンを測定する
  4. 現行の会計処理のガイダンスを遡及適用してマージンを測定する。ただし、実務上遡及可能な最も古い期間より前に引き受けた契約ポートフォリオに対しては簡便法を設ける
  5. 契約ポートフォリオの公正価値と新基準による負債の測定値との差額をマージンとする
  6. 仮想上の価格 と、新基準による測定値すなわちポートフォリオの履行価値に基づく測定値との差額をマージンとする

両審議会は、以下の3つの目的に照らして、それぞれの案を検討した。

  • これまでの決定事項と整合した測定結果となる
  • 財務諸表作成者の利得に関して比較可能性が確保される
  • 費用対効果の面で、便益がコストを上回る

移行時の処理に関する最初の2つの案が、費用対効果の面で最も有利であるという点について広く意見の一致がみられた。しかし、両審議会は、当該2つの案は提案されている測定の基準との比較可能性を欠き、測定結果を比較できない状態が長期にわたってしまうことに懸念を表明した。たとえば、移行時に存在する生命保険契約の中には長年にわたり保有することになるものがある。また、5つ目及び6つ目の案は、提案されている測定モデルと整合せず、依然として主観の介入余地があり、将来の期間の利得の比較可能性が損なわれることから退けられた。

両審議会は3つ目の案も却下し、4つ目の案に着目した。スタッフは、遡及適用が実務上可能な期間よりも前の期間のための簡便法として、以下の選択肢のうちの1つを適用することを提案した。

  1. マージンを消去する
  2. 新たな測定モデルによる測定値と現時点の帳簿価額との差額をマージンとする
  3. マージンを見積る

これら3つの簡便法について評価した後、以下のアプローチが11名のIASBメンバー(4名は反対)及びFASBメンバー7名全員によって承認された。

保険者は、以下のとおり、表示される最も古い期間の期首において、契約ポートフォリオに係る単一又は残余マージンを決定しなければならない。

  1. 実務上不可能でない場合を除き、新たな会計原則を過去の全期間にわたって遡及適用する。
  2. 会計原則の変更を過去の全期間にわたって遡及適用することによる累積的影響の算定が実務上不可能な場合には、保険者は、遡及適用が実務上可能な最も古い期間の期首以降に発行されたすべての契約に新たな会計方針を適用することが要求される。(すなわち、実務上可能な限り古い期間まで遡及適用)
  3. (客観的な情報のみでは難しい重大な見積りが必要となることから)遡及適用が実務上不可能と通常考えられる期間以前に発行された契約に関しては、保険者は、新たな会計基準を遡及適用できた場合のマージンの額を見積らなければならない。この場合、保険者は、客観的な情報を得るために過度に労力を払う必要はないものの、合理的に入手可能なすべての客観的情報を考慮するべきである。
  4. その他の理由によって新たな会計方針を遡及適用することが実務上不可能な場合に、保険者は、遡及適用についての制限が存在する状況を対象とするIAS第8号/ASC Topic 250-10の一般的な要求事項を適用すべきである(すなわち、移行日以前の帳簿価額を参照してマージンを測定する)。

単一又は残余マージンに関する経過措置について決定した後、両審議会は、保険契約負債の特性を反映する割引率の決定方法について討議した。契約開始時に、包括利益計算書における影響額を決定するための割引率をロックインするという従前の決定に基づけば、財務諸表の作成者は、過去の契約開始時の割引率を決定する必要がある。そこで、スタッフは、少なくとも過去3年間の割引率を調査することにより、保険者は、契約開始時の割引率を算定してもよいという提案を行った。これら過去における割引率が観察可能な利率と整合する場合には、作成者は、過去の観察可能な利率を直接利用できるだろう。観察可能な利率が過去の割引率の調査結果と完全に一致しない場合には、保険者は、算定した割引率と観察可能な利率の過去のスプレッドの近似値を計算することで、契約開始時の割引率を算定できるだろう。たとえば、ある契約ポートフォリオに係る割引率が、ダブルA格の社債利率より平均で50ベーシスポイント低い利率であった場合、当該利率が過去に遡って利用されることになるだろう。近時における金利スプレッドの縮小のため、算定された割引率が実態経済を反映しないものとなる可能性がある点を指摘する審議会メンバーもいた。しかし、彼らは、この様な手法が最も実行可能性が高い解決策であることを最終的に認めた。保険者は、遡及適用される最も古い期間の期首に適用される参照イールド・カーブと、移行日における割引率との差異による累積影響額を、その他の包括利益で認識することになるだろう。

比較可能性を高めるための取組みとして、スタッフは、移行時に求められる一連の開示要件を提案した。両審議会は、移行に係る以下の情報を保険者が開示すべきであると決定した。

  • 完全な遡及適用が実現不可能な場合
    • 遡及適用が実務上可能な最も古い日
    • 遡及適用が実務上可能な最も古い日以前の契約ポートフォリオに係る残余マージン又は単一マージンの見積りの方法
    • マージンの見積りに使用した客観的な情報の内容及び客観的ではない情報の範囲
  • 遡及期間中の割引率の決定に用いた手法及び前提

また、両審議会は、作成者は、新たなガイダンスを適用する事業年度の末日より5年以上前に生じたクレーム・ディベロップメントに係る従前未公表の情報を開示する必要はないと決定した。

EYの見解

システム上の制約、企業の買収や売却が行われてきたことなどさまざまな理由から、数十年も前に引き受けた有効契約の場合、保険者にはマージンの信頼性ある見積りを行うためのデータがない可能性がある。遡及適用が現実的ではないポートフォリオに対して簡便法を容認することで、保険者の財務諸表間及びポートフォリオ間の比較は容易になるだろう。簡便法を適用するにあたり、保険者がビルディング・ブロック・アプローチで会計処理される契約に関して行うべき取組みは、かなりの負担となるだろうと我々は考えている。一方で、保険料配分アプローチを適用する契約に関しては、負担は限定的なものとなるだろう。

残余マージンに係る利息の計上(IASBのみ)

IASBは個別に、残余マージンに係る利息の計上について討議を行った。EDでは、保険者は、契約開始時の利得はすべて消去し、残余マージンの帳簿価額に対して利息を計上すべきであると提案した。スタッフは、保険者に残余マージンに係る利息の計上を要求するEDにおける提案を、IASBが確認すべきであると提案した。その理由は以下のとおりである。

  1. 残余マージンに係る利息を計上することは、保険契約負債の他の構成要素に対する取扱いと整合していること
  2. 残余マージンは黙示的に割り引かれていること - 残余マージンは割引キャッシュ・インフロー及びアウトフローの差額として計算される
  3. 残余マージンに係る利息を計上しない場合には、利益認識パターンをゆがめることになること

IASBの中には、残余マージンに係る利息を計上することは、必要以上に複雑な処理になるだけであると論じたメンバーがいたが、他方で、理論的な正確性と簡潔性のバランスをとることの必要性を指摘したメンバーもいた。理論的な正確性に重きを置く審議会メンバーは、保険者の財務諸表の読者は報告数値を理解することができる専門家である点を指摘した。

実務の観点から、スタッフは、現状でもUSGAAPなどの他の会計モデルにおいて利息の計上が行われていることを説明した。さらに、提案されているモデルによれば、さまざまなポートフォリオの残余マージンに対して詳細な追跡が必要であり、利息の計上が追加の負担を生じさせることにはならないであろう。

IASBは、残余マージンの帳簿価額に対して利息を計上すると決定し、さらに、どの利率を使うべきかを審議した。スタッフは、報告期間ごとに更新される利率(現在の利率)または契約開始時に決定された利率(ロックインされた利率)による利息の計上についての論拠を提示した。スタッフは次の2点を提案した。すなわち、(i)契約が当初に認識された際に決定した負債の割引率(ロックインされた利率)を用いて、保険者は残余マージンに係る利息を計上すべきであるというEDにおける提案をIASBが確認すること、(ii)残余マージンへの利息を計上する場合に利用する利率の決定に関して追加のガイダンスを提供しないことの2点である。

ロックインされた利率と現在の利率のどちらを使うべきかを巡っては、IASBのメンバーの中でも意見が分かれた。ロックインされた利率を支持するメンバーは、これによりアプローチが簡素化され、さらなる表示上の問題の発生を避けることができるだろうと主張した。一部のIASBメンバーは、ロックインされた利率を使用すること(生じた変動はすべて純損益を通じて認識)によりミスマッチが生じ、現在の割引率を使うモデルとの間に差異が生じることに懸念を表明した。

最終的にIASBは、保険者は、当初認識時に決定した保険契約負債の割引率(すなわち、ロックインされた利率)を用いて残余マージンに係る利息を計上すべきであり、追加のガイダンスを設ける必要はないと暫定的に決定した。

EYの見解

ロックインされた利率で利息を計上するということは、残余マージンが計上された後、ポートフォリオ全体のレベルよりもさらに細かい、相当に細かいレベルでラン・オフされることをIASBが想定していることを示唆しているとも考えられる。割引率の変動をその他の包括利益を通じて計上するために過去の利率を把握しなければならないため、ロックインされた利率を使うことは、保険者にとって運用上の便宜性がある。ただし、残余マージンを過去の情報をもとに測定することは、保険契約の基準において提案されている残余マージン以外の要素に関する現在の情報による測定とは整合していないと受け取られる可能性がある。

開示(IASBのみ)

スタッフは、開示に関する提案を提示し、審議会に対し開示の提案全体について検討するよう依頼した。開示要件の目的は、保険契約から生ずる将来キャッシュ・フローの内容、金額、発生時期及び不確実性を財務諸表の利用者が把握できるようにすることにある。EDにおける一部の要件については修正があってもごくわずかであったものの、下記の箇所については、開示要件が大幅に変更された。

  1. 契約の修正、コミュテーション及び認識中止から生ずる利得及び損失の開示
  2. 保険契約負債、保険契約資産及び保有する再保険契約から生ずる再保険資産のそれぞれの帳簿価額の合計額の構成要素ごとの期首残高から期末残高への調整表
  3. 保険契約負債、保険契約資産及び再保険資産のそれぞれの帳簿価額の合計額の構成要素
  4. 保険期間前に認識された、不利な契約に係る負債の帳簿価額の調整表
  5. 調整表の細分化の水準
  6. 既発生保険金に関する、EDにおける開示要件の廃止
  7. 保険者に適用される規制の影響に関する情報の開示要件の廃止

EYの見解

審議会が、2010年に公表されたEDにおける開示要件の多くを含める決定をしたため、保険者が開示すべき情報は多数にのぼることになるだろう。一部の保険者は、(最低でも)すべての報告セグメントごとにすべての項目の開示義務があることについて懸念していたが、異なるセグメント間での合算による開示の禁止が廃止されたことで、負担の一部は軽減される可能性があるだろう。また、規制資本に関する開示義務が撤廃されたことで、保険契約の基準とIAS第1号の要件の解釈に生じていた可能性がある不整合も解消に向かうだろう。

レビュードラフト又は改訂公開草案(IASBのみ)

IASBは、当初のEDと比較して大幅に変更があった重要個所に論点を絞ることを前提に、EDを再公開することを決定した。これらには、以下に関する提案が含まれる。

  1. 1)有配当契約の取扱い
  2. 2)包括利益計算書における保険料の表示
  3. 3)将来キャッシュ・フローの見積りの変動を相殺するための残余マージンのアンロック
  4. 4)保険契約負債の測定に用いられる割引率の変動による影響の、その他の包括利益による表示
  5. 5)移行に関するアプローチ

審議会は、予定する再公開及びその論点を絞り込むことの目的は、すでに再審議が行われ、決定がなされた論点について、議論を蒸し返さないようにすることにある点に同意した。

EYの見解

再公開の決定により、IASBが以下の2つの重要な要素のバランスを図る意向であることは明白である。

  1. (a)モデルの重要な部分、特に2010年のEDから変更された重要な部分について、意見を求める必要性
  2. (b)十分に議論が尽くされたと思われている論点につき、再度審議することによる不要な遅延の回避

改訂公開草案に続く審議は限定的なものとなるものの、再公開の決定は、最終基準の完成時期へ影響をもたらすことになるだろう。また、再公開の決定により、IFRS第9号「金融商品」のような他の基準との適用時期との整合に関するプレッシャーが大きくなるだろう。

FASBは、最初の公開草案を公表する予定であり、網羅的にコメントを募集する予定である。両審議会は、それぞれの公開草案に対し寄せられるコメントが、今後のお互いの審議の連携にどのような影響を与えるかを考慮しなければならないだろう。

次のステップ

10月及び11月の討議では、有配当契約及び包括利益計算書における保険料の表示に関する論点を扱うことになるだろう。2

IASBは、2013年の上半期に改訂公開草案を公表する予定であり、最終基準書の公表日程についてもいずれ決定する予定である。現時点でFASBは、IASBの改訂公開草案と同時期に公開草案を公表する予定である。


  1. この方法によれば、ある期間に費用処理したものを後の期間に戻し入れ、結果的に新契約費の償却を通じて将来の期間に再び費用処理することになる場合がある。
  2. 本アラート(日本語版)の公表時点において、10月及び11月の審議会はすでに開催されている。




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