アシュアランス
保険IFRSアラート

IASB及びFASBは、保険契約基準について討議を継続

2012.11.28
重要ポイント
  1. 両審議会は、保険料配分アプローチによって保険契約を測定する際には、契約開始時の割引率を使用して増額又は割引を行うべきであると決定した。
  2. 保険者の包括利益計算書に表示する保険料及び保険金は、既経過保険料表示アプローチを適用して決定すべきである。
  3. IASBは、保険契約の最終基準書の公表日から強制発効日までの間に、約3年間の期間を見込んでいる。

割引率の変動による影響 - 保険料配分アプローチ

両審議会は、割引率の変動に起因する保険契約負債の変動をその他の包括利益(以下、OCI)に表示することを認めるという決定を受けて、保険料配分アプローチ(以下、PAA)に関する再検討を行った。両審議会は、はじめに残余のカバレッジに係る負債を割り引く又は利息を計上する際に用いる利率について討議し、現在の利率ではなく、契約開始時の割引率を使用するべきであるというスタッフの提案に同意した。

FASB及びIASBのスタッフは、支払備金に係る割引の影響を表示する方法について、それぞれ異なる手法を提案した。FASBのスタッフは、純損益に表示する保険金及び金利費用の金額を決定するにあたり、契約開始時の割引率を使うことを支持したが、IASBのスタッフは、当該保険金が発生した時点の割引率を使用することを支持した。FASBのスタッフは、保険金が発生した時点の割引率を使用すると必要以上に複雑になると考えたが、IASBは、保険金発生時の割引率を使うことが概念上は正しいと考えていた。FASB及びIASBは、はじめは各々のスタッフによる提案を支持していたものの、最終的にはIASBがFASBの提案に歩み寄ることで同意した。

EYの見解

両審議会は、それぞれが最終的に提案するモデルについて、いくつかの点で相違するであろうことを認識しているものの、可能な限りこれ以上新たな差異が生じることは避けたいと考えていると思われる。両審議会は、基本的な考え方に関しては合意しているものの、契約開始日が、個々の契約の開始日を意味するのか、あるいはポートフォリオの開始日(たとえば、契約引受年度)を意味するのかについて、さらに明確にする必要があるだろう。

割引率の変動による影響 - 有配当契約

これまでの討議を通じて、両審議会は、一定の有配当契約に対するミラーリング・アプローチの適用を決定している。当該アプローチによれば、原資産に関連する保険契約負債の一部は、当該原資産と同じ基準で測定及び表示されることになる。IASBは、当該アプローチを、すべての種類の有配当契約に適用するが、FASBは、一定の認識のタイミングのズレによる会計上のミスマッチが生じた場合にのみ、当該アプローチを適用することになるだろう。

10月の会議を通じて、両審議会は、これまでの暫定的な決定、とりわけOCI に関する決定が、ミラーリング・アプローチが適用される有配当契約に対してどのように影響するかについて検討した。両審議会は、ミラーリング・アプローチの決定が、保険者は割引率の変動による影響をOCI に表示すべきであるとする暫定決定よりも優先することを明確にした。スタッフ・ペーパーで例示されているとおり、当該決定により、割引率の変動による影響は以下の方法で表示することになるだろう。

  • 原資産のパフォーマンスに依拠する保険契約負債のキャッシュ・フローに係る影響は、原資産の取扱いに従う。たとえば、原資産が純損益を通じて公正価値で測定される場合は、割引率による影響も純損益に表示する。
  • 原資産に依拠しない保険契約負債のキャッシュ・フロー(「固定」キャッシュ・フロー)に係る影響は、OCIに表示する。
  • オプションと保証に係る影響は、純損益に表示する。

FASBのミラーリング・アプローチは、ユニット・リンク型保険契約及び変額保険契約といった、保険契約者に対する契約上の債務が原資産の公正価値に基づいて決まる特定の種類の契約ついては適用されないだろう。US GAAPによる現行の会計処理と整合させるために、FASBは、これらの種類の契約について、原資産が純損益を通じて公正価値で測定される場合には、保険契約負債の変動についても純損益に表示されるべきであると暫定的に決定した。

EYの見解

両審議会は、有配当性に基づく保険契約負債と、当該負債に対応する投資資産との間の会計上のミスマッチの影響を低減するために、ミラーリング・アプローチの適用を決定した。ただし、両審議会の見解は、ミラーリング・アプローチは、原資産に依拠するキャッシュ・フローに係る割引率の影響に対してのみ適用されるというものである。したがって、当該アプローチを適用することにより、保険契約に係るキャッシュ・フローを、原資産に依拠するキャッシュ・フローと、原資産に依拠しないキャッシュ・フローとに分割することが求められる。このような分割の必要が生じることは、当該アプローチの適用に際しての実務上の問題となる可能性があるだろう。

包括利益計算書における表示

公開草案(以下、ED)では、包括利益計算書における表示に要約マージン・アプローチを利用することが提案されていたものの、これまでの討議を通じて、両審議会は、保険者は取引量の情報を表示すべきであると暫定的に決定した。両審議会は、包括利益計算書における保険料、保険金及び給付金の表示に具体的に言及した。

取引量に係る表示については、3種類の代替的な表示方法(引受保険料、未収保険料及び既経過保険料)が、スタッフにより提案されている。両審議会は、ビルディング・ブロック・アプローチにおける取引量の情報については、既経過保険料アプローチによる表示を利用すべきであると暫定的に決定した。当該表示アプローチによれば、既経過保険料は一定のドライバーに基づいて保険期間にわたって配分し、保険金は発生した時点で認識すべきとされている。スタッフ・ペーパーの例では、保険料収益は発生保険金に比例して配分しているが、その他のドライバーとして、保険カバレッジの価値に比例した配分及び保険者が保険期間中に提供したその他のサービスに比例した配分についても言及されている。

当該方法を採用する理由として、 (i) 当該方法が収益認識の基準と整合していること、(ii) 当該方法によれば他の業界の指標とも比較ができること (iii) 既経過保険料アプローチによる表示の構成要素の一部は、貸借対照表に関して開示されるロールフォワード項目に自動的にリンクするという点が挙げられる。審議会メンバーの中には、提案されている遡及的移行アプローチにおいて、当該アプローチがどのように機能するかということに加え、既経過保険料の情報が、取引量の情報を求めるコメント提出者の要望に応えたものであるかどうかについて懸念を表明したものもいた。また、両審議会は、新基準が過度に規範的にならないよう、その他の適切なドライバーに関する適用ガイダンスを含めることを検討するよう、スタッフに依頼した。

さらに、両審議会は、包括利益計算書において保険金以外の履行コストをどのように表示すべきかについても討議した。保険金以外の履行コストは、保険者が保険契約債務の履行に際して、保険金及び給付金費用に加えて発生すると見込むものであり、ビルディング・ブロック負債の測定に含まれるものである。これらの費用には、保険契約管理・維持費用及び保険金処理費用が含まれる。

これに関して、両審議会は、以下について暫定的に決定した。

  1. (i)保険料の一部は、保険金以外の履行コストをカバーするためにも配分されるべきであり、配分される金額は、当初見込んだ保険金以外の履行コストと等しくなる。
  2. (ii)配分する保険料は、当該コストが残余のカバレッジに係る負債から解放されると見込まれる期間の保険契約収益に含めるべきである。
  3. (iii)費用として表示する金額は、当期に実際に発生した費用とするべきである(すなわち、当期に支払った費用に、支払備金に含まれる当該費用の増減について調整を加えたもの)。

EYの見解

既経過保険料を表示するアプローチは、ビルディング・ブロック・アプローチで測定される保険契約について、包括利益計算書における収益の概念を導入するものである。当該アプローチは、共同の収益認識プロジェクトの提案と整合している一方で、多くの長期生命保険契約に適用されるアプローチとしては新しい概念となる。そのため、我々は、当該情報が包括利益計算書に付加価値を与えると考える利用者もいれば、そうとは考えない利用者もいるだろうと予想している。

したがって、保険者は、自社の財務諸表の利用者が表示情報を理解し、当該情報を適切に解釈できるような措置が必要となる可能性があるだろう。

新契約費の表示

保険モデルに含まれる一定の要素について包括利益計算書の中でどのように償却するかに関する暫定決定が下されており、IASB及びFASBのスタッフは、包括利益計算書上の新契約費の表示に関して異なる代替案を提示した。

IASBのスタッフは、新契約費に関連したキャッシュ・フローを(費用の発生時点ではなく)当該契約保険期間を通じて包括利益計算書上で認識するべきであり、残余マージンの配分に関する提案と整合する方法で認識されるべきであると提案し、IASBも暫定的にこれに同意した。

FASBのスタッフは、新契約費を保険契約負債の一部として扱い、マージンの構成要素の一部として別建てで表示すべきであり、単一マージンの配分に関する提案と整合するように包括利益計算書で認識すべきと提案した。FASBメンバーの大半はFASBのスタッフの提案に賛成した。またFASBは、財政状態計算書において、保険者は、保険契約負債を保険債務の履行のための期待キャッシュ・フローとマージンに区分すべきであると決定した。

この決定は、新契約費の保険負債への含め方に関しては類似しているものの、開示に関しては両審議会の見解が異なることを意味している。つまり、IASBは契約開始後には新契約費を別建てで開示しないとしているが、FASBは、新契約費の増減(ロールフォワード)を、契約期間にわたって開示することを望んでいる。

裁量権のある有配当性を含む金融商品(IASBのみ)

IASBのEDでは、保険リスクの概念に基づく認識と契約の境界に関する原則を提案している。裁量権のある有配当性を含む金融商品には重要な保険リスクは含まれないため、EDでは、この固有の特徴を反映し、認識と契約の境界の原則に調整が加えられている。

IASBのスタッフはIASBに対し、保険契約のEDの公表後に行われた保険契約に適用される一般的な原則への変更と平仄を合わせるため、裁量権のある有配当性を含む金融商品の認識と契約の境界に関するガイダンスへの変更を提案した。(注:FASBは、裁量権のある有配当性を含む金融商品を保険契約の会計基準の対象には含めないと決定している。)IASBは、過去に保険期間の開始時に保険負債を認識しなければならないと決定しており、これは、保険者が当該契約の当事者となった時点で認識を求めるEDの提案とは異なっている。そこでIASBは、下記のスタッフによる提案に同意した。

  • 企業が当該金融商品の約款の当事者となった場合のみ、裁量権のある有配当性を含む金融商品に係る資産又は負債を認識しなければならない。
  • 裁量権のある有配当性を含む金融商品の契約上の境界は、当該契約が保有者に実質的な権利を与えなくなる時点である。すなわち、裁量権のある有配当性から生ずる給付を受ける契約上の権利を失う時点、又は賦課される保険料を前提に、潜在的な契約者と同一条件の給付が契約者に付与される場合が該当する。

EDでは、運用資産の公正価値に基づいて裁量権のある有配当性を含む金融商品の残余マージンを償却することが提案されている。IASBのメンバーは、この原則は現時点においても適切であることに同意している。

発効日及びその他の経過措置に係る問題

両審議会は、保険負債及び金融商品の測定の間で生ずる可能性のある短期的な会計上のミスマッチを含め、9月の審議会での決定に即して経過措置に関する問題を討議するため、単独のセッションを開催した。また、IASBは、経過措置と発効日に関する他の問題についても討議を行った。

金融商品の再指定

両審議会の討議では、金融商品及び保険契約の会計基準の発効日が相違することから生ずる複雑性にどう対応すべきかについて焦点が当てられた。IASBは保険者に関し、以下のとおり決定した。

  • 保険契約の基準を最初に適用することで、新たに会計上のミスマッチが生じる場合には、公正価値オプション(以下、FVO)の行使に適格な金融資産を指定することが認められる。
  • 新基準の適用により会計上のミスマッチが存在しなくなる場合には、FVOの従前の指定を取り消すことが求められる。
  • トレーディング目的の保有ではない資本性商品のすべて又はその一部について、公正価値の変動の表示にOCIを利用すること、もしくは従前の指定を取り消すことが認められる。

FASBは、保険契約の基準を適用する際に、リーガル・エンティティごと又は内部指定かつ保険契約への資金供給との関連付けにより保険事業に指定されている金融資産を、保険者が再指定できると決定した。 IASBは経過措置に関するいくつかの決定を行ったものの、経過措置に関するこれらの決定は有配当契約には適用されない可能性があるとし、今後の会議において有配当契約に関する経過措置について具体的に討議する必要があるとした。

他の経過措置に係る問題(IASBのみ)

発効日及び他の経過措置に係る問題に関して、IASBが下した決定は以下のとおりである。

  • IFRSの初度適用者は、保険契約の会計基準の経過措置の対象となる。
  • ガイダンスには、有形固定資産及び投資不動産の移行時の再指定に関する具体的なガイダンスを含めない。
  • 基準書の発効日は、現時点では具体的な移行時期を決定せず、最終基準書の公表からおおよそ3年後とする。
  • 事業体は、比較財務諸表の修正再表示が求められる。
  • 強制適用日よりも前に最終基準書を早期適用することが認められる。

IASBの次のステップは、再公開草案を公表することである。IASBは、正確な移行時期や具体的な強制適用日に関しては、この段階で最終決定する必要はないと考えている。その代わり、IASBは、再公開草案の再審議を行っている間に、強制適用開始日を決定することが可能であろうという結論に至っている。

EYの見解

両審議会は、保険契約の基準と金融商品の基準の発効日は一致しないであろうと考えている。(保険者に対する金融商品の再指定など)解決策を探る方向に向かうことから、保険者を対象とする金融商品の基準の発効日が別途設定される見込みは低いだろう。

次のステップ

両審議会は、11月にも継続して討議を行う予定である。

IASBは、2013年の上半期に再公開草案を公表する予定であり、最終基準書の公表日程についてもいずれ決定する予定である。FASBもIASBと同時期に公開草案を公表する予定である。






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