アシュアランス
保険IFRSアラート

両審議会は保険契約収益の配分に関して協議、その他の論点も検討

2013.05.16
重要ポイント
  • 両審議会は、期待将来保険金の最新の見積りを反映させるために、保険契約収益を将来に向かって再配分すべきであると決定した。
  • IASBは、移行時に必要となる契約開始時のリスク調整の金額を、表示されている最も古い期間の開始時点のリスク調整の金額に等しいとみなすと決定した。
  • また、IASBは、企業結合を通じて従前に取得した保険契約に対して保険契約の基準を適用することで生じた利得及び損失については、移行時の利益剰余金を調整すべきである点に同意した。
  • IASBの公開草案に対しては、120日間のコメント期間が設けられる。

概 要

2013年1月に行われた合同会議を通じて、国際会計基準審議会(以下、IASB)及び米国財務会計基準審議会(以下、FASB)(以下、両審議会)は、IASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)における決定について再審議を行った。その主な議題は以下のとおりである。

  • 期待保険金の発生パターンが変化した場合の保険契約収益の配分、及び保険契約収益に関する経過措置
  • 将来の期間に認識される保険契約収益の金額に関する移行時における見積り

さらに、IASBは単独で、EDに対して回答者から挙げられた論点、また、これまでの暫定決定により予期せぬ結果が生じることとなった論点についても討議した。

また、2013年2月に行われた会議において、IASBは、企業結合に関する経過措置、及びこの夏に公表が予定されている改訂公開草案のコメント期間について討議した。

期待保険金のパターンの変化に伴う、保険契約収益の配分

両審議会はこれまでに、ビルディング・ブロック・アプローチ(BBA)については、保険契約収益を既経過保険料の考え方に基づき、包括利益計算書に計上すると暫定的に決定している。提案されたモデルでは、既経過保険料を、保険カバレッジ又はその他のサービス提供の義務を履行した結果として の、残存カバレッジに対応する負債の減少額により測定する。この金額は下記の合計額となる。

  • 会計期間における期待保険金(確率加重)及び関連費用
  • 当該期間におけるリスク調整の解放(IASBのみ)
  • 繰延新契約費の償却
  • 当該期間における単一マージン又は残余マージンの解放

スタッフは、複数の期間への収益の配分方法について、2つの選択肢を示した。

  • 各保険期間について、別々の履行義務が存在するものとして扱い、期待保険金の当初の見積り、及び当該期間のマージンの解放に基づいて、収益を各期間に配分する
  • 契約を単一の履行義務として扱い、期待保険金の最新の見積りを参考に、残存する収益を将来に向かって配分する

両審議会は、期待保険金の発生パターンの最新の見積りだけをよりどころとして、保険契約収益を配分することが果たして妥当か討議した。両審議会は、契約に係る収益の決定に3つの異なる判定基準が利用可能な、IAS第11号「工事契約」における進行基準も引き合いに出して検討した。結局のとこ ろ、両審議会は、保険契約の会計モデルの他の領域でも現在のインプットを利用していることから、既経過保険料の決定にあたり、最新の見積りを利用することに違和感はなかった。

また両審議会は、将来保険金の発生パターンが変化した場合に、残存する保険契約収益を将来保険金の発生パターンの最新の見積りを反映させるように将来に向かって配分し直すというスタッフの提案に同意した。また両審議会は、この取扱いは収益認識の基準書の公開草案における収益認識の原則 とも整合すると指摘した。

EYの見解

保険金の発生パターンに係る最新の見積りを反映させるため、残存する収益を将来に向けて配分し直すことは、IASBが将来の保険カバレッジに関す るキャッシュ・フローの見積りの変動について、残余マージンをアンロックすることと整合している。FASBについても、キャッシュ・フローの変動可能性の予想される減少パターンに変更があった場合には、単一マージンの解放を通じて、将来に向けて収益として認識される。保険金の発生パターンの変動は、BBAの構成要素の変動そのものであるため、将来に向けた再配分の導入もそれほど困難なものとはならないであろう。

移行時のリスク調整の決定

BBAで既経過保険料を認識するという最近の決定を受けて、スタッフは、移行日時点での保有契約に関して、その後において稼得される残余の将来保険料の金額をどのように決定するかを討議した。両審議会は、残余のカバレッジに係る負債を決定するために使用する仮定に基づいて、稼得された保険 料を決定するべきであるという意見に同意した。残余の保険料は、IASBにとっては、期待保険金、リスク調整及び残余マージンの総額となり、FASBにとっては、期待保険金に単一マージンを加えた金額となる。

IASBのスタッフは、保険者が、表示されている最も古い期間の開始時点のリスク調整の金額が、契約開始時点のリスク調整と同じ金額であるとみなせるように、遡及適用に関するガイダンスを修正することに賛成した。審議会メンバーの一人は、これに対して、移行時の残余マージンを過大表示する結果になりかねないという理由で反対した。審議会は、この様な後知恵の利用に対して懸念を表明しつつも、20年以上も前の契約開始時点に遡った見積りよりも、後知恵に基づいた移行時での見積りの方が、信頼性が高いと考えた。また、IASBは、遡及適用が現実的でない場合であっても、従前のIFRSの基準による保険契約の測定値との差額により、残余マージンを決定すべきではないという意見に同意した。その代わりに、客観的なデータを最大限に利用して、最も古い表示期間における残余マージンを見積るべきであるとした。

FASBは、FASBのモデルとIASBのモデルとの差異(つまり、リスク調整及び残余マージンではなく、単一マージンを採用)を考慮して修正した類似の提案を採択した。

EYの見解

この決定は、両審議会が、比較可能性と複雑さの回避についてどう折合いをつけようとしているかを示す一例である。両審議会は、移行時に保有している契約と、その後に引き受けた契約との比較可能性を犠牲にしても、リスク調整の金額の決定(FASBの場合には移行時の単一マージンの決定)が複雑になることを最小限にとどめようとした。通常、リスク調整は時間の経過とともに減少するため、契約開始時の残余マージン(キャッシュ・インフローの金額と、キャッシュ・アウトフローにリスク調整を加えた金額の差額)は、改訂後の経過措置に従った方が大きくなる可能性が高い。

移行時のリスク調整は契約開始時の当初認識額に等しいとみなして、契約開始時の残余マージンを決定することで、契約の期間にわたる利益の出現パターンが相違する可能性がある。したがって、将来獲得する契約の利益の出現パターンと、移行時に保有している契約のものとの間の比較可能性は完 全には確保されないだろう。さらに、ほとんどの場合に、契約開始時のリスク調整の金額が小さくなると想定されるため、移行期間前に不利な契約に係る負債が計上される可能性は低くなるだろう。

その他の論点

IASBのスタッフは、IASBがスタッフの提案に合意するかどうかという質問だけを提示するという通常とは異なる形で、検討すべきその他の論点を提示した。IASBは、以下の論点について、近時に改訂される公開草案の中で明示的なガイダンスを定める必要はないことに暫定的に合意した。

  1. 保険契約者の会計処理
  2. 保険契約の従来の定義の継続適用
  3. タカフル契約(イスラムの考え方を遵守しつつ、伝統的な保険に類似する保障を加入者に提供する契約)
  4. 繰延税金の割引(保険契約プロジェクトでは繰延税金の割引には対応しない)
  5. 自動更新又はキャッシュ・ボーナス
  6. 現行のIFRS第4号「保険契約」における適用指針(すなわち、現行のIFRS第4号「保険契約」における適用指針は引き継がない)

IASBは、2010年の公開草案で示された、以下の2点についても確認した。

  1. 保険者は、出再手数料について、再保険者に支払う再保険料から控除する処理を行う。
  2. 企業結合及びポートフォリオ移転には、別個の要件を適用する。そして、当初認識時の受取保険料として扱われる対価が、履行キャッシュ・フローの現在価値よりも小さい場合には、保険者は、下記のいずれかの処理を行う。
    • a)ポートフォリオの移転時に、即時に費用処理
    • b)企業結合で認識されるのれんの増額

これらの事項の討議に割いた時間はわずかであったが、その中でも、IASBは出再手数料の取扱い及び保険契約の定義に多くの時間を費やした。IASBメンバーの一部は、出再手数料を保険料の減額として表示することは、出再者にとっての重要な指標を歪めることになりかねないと懸念した。これは、特に比例再保険について、出再及び受再における手数料の処理の一貫性が確保されないことを根拠としている。スタッフは、再保険契約には純額ベースで引き受けられているものと、そうでないものがあることから、このような不整合を解消することは難しいと説明した。また審議会は、据置年金の認識時を、保険期間の開始時と初回保険料の支払期限とのいずれか早い時期とすることを明確化した。契約上、保険料の支払期限がない場合には、受取りの時点が保険料の支払期限であるとみなされる。

IASBは、保険契約の定義に対する変更案が、現行のIFRSの実務に変更をもたらすことはないとみている。したがってIASBは、現行のIFRSの保険契約の定義に該当する契約が新たな基準書の保険契約の定義に該当するかどうかについて、ほとんどの場合、再評価する必要はないだろうと考えている。 このため、IASBは、現行IFRSの定義が継続適用されることを示す明示的な記述をガイダンスに含める必要はないと結論付けた。

会議に先立つ審議会メンバーからの意見に応じて、スタッフは、企業結合に関する論点について、次月における討議のための資料を別途作成することを決定した(次のセクションを参照のこと)。

EYの見解

その他の論点に含まれている項目の一部に関して、明示的なガイダンスを定めないことにより、IASBは、原則主義に基づいたモデル・ケースの提示と、一部の領域で過度に規範的になることの回避の間の折合いをつけようとしている。改訂公開草案の公表とその後のコメント受付期間を通じて、利用者はこれまでのすべての暫定決定を踏まえ、モデルの全体像がどのようなものか把握することができるだろう。

企業結合に係る経過措置

IASBは、先の審議会で、保険者が新しい保険契約の基準を最初に適用する際に、修正遡及アプローチを用いて組成した保険契約を測定すべきであると決定した。2月の会議でIASBのスタッフは、この修正遡及アプローチを、企業結合を通じて取得し、移行日現在保有している保険契約にどのように適用すべきかについて、以下の2点について確認した。第一に、IASBのスタッフは、保険者は、企業結合日を契約開始時とし、当該契約の公正価値を履行キャッシュ・フローの保険料の要素として扱うべきであると提案した。

第二に、IASBのスタッフは、従前に取得した保険契約に新たな保険契約の基準を適用することから生ずる利得又は損失は、のれんではなく利益剰余金への調整として処理すべきであると提案した。これは、IFRSの新しい基準において、移行時の資産及び負債を測定するための遡及適用が求められる場合でも、移行時点でののれんの調整を認めていないことをスタッフが考慮したためである。IASBのメンバーは、全会一致でスタッフのこの提案に同意した。

EYの見解

新たな基準への移行の段階で、保険者は、従前の企業結合を通じて取得した保険契約の公正価値を決定する必要がある。企業結合当時の公正価値の算定には、移行時点で保有している契約よりも多くの契約が母集団に含まれるため、移行時点で残存している契約に、当初の公正価値のうち、どの程度の割合を配分すべきか、判断に基づいて決定する必要があるだろう。

公開草案

IASBは、この夏に改訂公開草案を公表する際に、下記の論点に関してのみコメントを募集する意向であることを再確認した。

  • 有配当契約の取扱い
  • 包括利益計算書における、保険料及び保険金の表示
  • 保険契約に含まれる未経過利益の取扱い
  • 保険契約負債の測定に利用された割引率の変動による影響のその他包括利益による表示
  • 移行措置に関するアプローチ

IASBはスタッフに対し、改訂公開草案に対する投票プロセスを開始することを承認し、公開草案に対し120日間のコメント期間を設けることも暫定的に決定した。IASBのメンバーの一人はこの公開草案に反対票を投じる意向を示している。


次のステップ

FASBは4月に最終の会議を開催したうえで、ほぼ審議を終了させる予定である。IASBはすでに審議を終了させており、両審議会は2013年の上半期中に公開草案を公表する見込みである。






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