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IFRSポイント講座

第9部 引当金

2010.05.14
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第9部 引当金(1)

「引当金」の部では、4回にわたり、以下の項目について想定される主な実務上の論点に触れていきます。

  • IAS第37号「引当金、偶発債務及び偶発資産」における引当金の定義・適用範囲
  • 引当金の認識要件及び測定
  • リストラクチャリング引当金及び不利な契約
  • 資産除去債務

はじめに

IAS第37号において、引当金は時期又は金額が不確実な負債と定義されています。ここで、負債とは、過去の事象から発生した現在の債務であり、これを決済するために経済的便益を有する資源が流出する結果が予想されるものをいいます。引当金は将来の支出の時期または金額が不確実であるという点が、買掛金や未払費用のような他の債務との相違点です。このように、IAS第37号は負債性の引当金のみを取り扱っており、貸倒引当金等の資産の帳簿価額の修正となるものは対象としていません。

また、IAS第37号は未履行の契約に起因するものは対象としていません。未履行の契約とは、いずれの当事者もその債務をまったく履行していないか、あるいは、双方ともそれらの債務を部分的に同じ程度に履行している状態の契約をいいます。ただし、未履行の契約が不利な契約に該当する場合にはIAS第37号の適用対象になります。不利な契約については、第3回において説明します。

なお、IAS第37号以外により詳細な基準書が存在する場合には、当該基準書が適用されます。その具体例は以下の通りです。

  • 企業結合により引き受けられた偶発債務(IFRS第3号を参照)
  • 工事契約(IAS第11号「工事契約」を参照)
  • 法人所得税(IAS第12号「法人所得税」を参照)
  • リース(IAS第17号「リース」を参照)。しかし、IAS第17号は不利な契約となったオペレーティング・リースの取扱いについては特に定めていないため、その場合には、IAS第37号が適用される。
  • 従業員給付(IAS第19号「従業員給付」を参照)
  • 保険契約(IFRS第4号「保険契約」を参照)
  • 金融商品(IAS第39号「金融商品:認識及び測定」を参照)

また、商慣行として返品の可能性がある取引形態の場合、販売当初時点で予想される返品を含んだ全ての売上を計上し、将来の返品に対応する売上総利益相当額を返品調整引当金として計上することが日本の実務において見受けられますが、IFRSの適用にあたっては、IAS第18号「収益」に照らして販売当初時点で収益を認識することが適切かという検討が、返品調整引当金を認識するかどうかの検討に先立って必要になります。

引当金の認識要件

IAS第37号では、以下のすべてを満たす場合には引当金が認識されます。

  • 企業が過去の事象の結果として現在の債務(法的又は推定的)を有している
  • 当該債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高い
  • 当該債務の金額について信頼できる見積りが可能である

これらの条件が満たされない場合には、引当金を認識することはできませんが、一定の要件を満たすものは偶発債務としてその種類ごとに内容についての簡潔な説明を開示しなければならないとされています。

引当金の認識及び偶発債務の開示の検討過程をフローチャートで示すと以下のようになります。

引当金の認識及び偶発債務の開示の検討過程

次回は引き続き、引当金の認識要件について説明するとともに、引当金の測定についても触れます。

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