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IFRSポイント講座

第10部 企業結合及びのれん

2010.07.09
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第10部 企業結合及びのれん(1)

「企業結合及びのれん」の部では、2回にわたり、以下の項目について想定される主な実務上の論点に触れていきます。

  • IFRS第3号の定める企業結合
  • 初度適用(IFRS第1号)

はじめに

企業結合とは、取得企業が1つ又は複数の事業に対する支配を獲得する取引又はその他の事象をいいます。事業とは、投資家もしくはその他の所有者、メンバーもしくは参加者に対し、配当や費用の低減又はその他の経済的な便益による見返りを直接提供することを目的とし、運営及び管理能力を有する有機的に統合された複数の活動及び資産の組合せをいいます。IFRSでは、企業結合の会計処理や開示について、IFRS第3号で定められています。

なお、IFRS第3号は、2008年1月に改訂版が公表され、取得日が2009年7月1日以降に開始する会計年度に含まれる企業結合から適用されます。本稿では、この改訂後の基準書について触れていきます。

適用範囲

以下のケースを除き、企業はあらゆる企業結合の会計処理についてIFRS第3号を適用する必要があります。

  • ジョイント・ベンチャーを形成するために行われる企業結合
  • 事業を構成しない資産もしくは資産グループを取得する取引
  • 共通支配下の企業又は企業の事業間の結合

IFRS第3号を適用する上で、支配を獲得する対象となる取引やその他の事象が、事業の定義に該当するか否かの判断は重要です。なぜなら、事業に該当しない取得取引は、企業結合ではないため、単なる資産の取得として会計処理する必要があるためです。

会計処理

IFRSでは、すべての企業結合は、取得法(従前の呼称は「パーチェス法」)により会計処理する必要があります。取得法による会計処理の流れは、以下の通りです。

  • 取得企業の識別
  • 取得日の決定
  • 識別可能取得資産及び引受負債ならびに被取得企業に対する非支配持分の認識及び測定
  • のれん又は廉価取得(バーゲン・パーチェス)による利得の認識及び測定

日本においても企業結合会計が2008年12月に改正され、2010年4月以降の企業結合は原則としてパーチェス法を用いて会計処理するという点においてはIFRSと類似しています。しかし、以下の点で両者に重要な相違が生じていると考えられます。

  • のれんの償却
  • 企業結合に直接起因する費用
  • 非支配持分(少数株主持分)の測定

これらの相違事項について、今回と次回にわたり説明していきます。

のれんの償却

IFRSでは、のれんの償却は行わず、IAS第36号「資産の減損」に従い、毎期、もしくは減損の兆候がある場合はその都度、減損テストの対象になります。なお、のれんについては、減損損失の戻入れはできません。

日本の基準では、原則として、のれんの計上後20年以内に、定額法その他合理的な方法により償却する必要があります。ただし、金額に重要性が乏しい場合には、当該勘定が生じた期の損益として処理することができます。

企業結合に直接起因する費用

IFRSでは、企業結合に直接起因する費用は、移転した対価に含めずに、発生した時点又はサービスの提供を受けた時点で費用処理します。これらの支出を費用処理することとしたのは、これらは企業結合にあたり取得企業と被取得企業との間で直接交換対象となる項目には該当しないためです。

日本の基準では、取得に直接要した支出のうち、対価性が認められるものは取得原価に含めて会計処理します。したがって、IFRSを適用した場合の方が、企業結合によっては多額の費用が発生する場合があり、企業結合時の損益に重要な影響を与えることも考えられます。

次回も引き続き、非支配持分の測定について説明し、さらに企業結合の初度適用についても解説します。

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