アシュアランス
IFRSポイント講座

第8部 連結

2010.04.02
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第8部 連結(1)

「連結」の部では、3回にわたり、以下の説明、及び想定される実務上の論点に触れていきます。

はじめに

IFRSでは、企業が自己の事業を展開するために他の企業に対して行う戦略的な投資を、子会社に対する投資、関連会社に対する投資及びジョイント・ベンチャーに対する持分の3種類に分類し、それぞれIAS第27号、IAS第28号、IAS第31号でその会計処理及び開示等が定められています。

以下、連結の範囲について説明します。

連結の範囲

(1) 基本的な考え方

IAS第27号では、原則として特別目的事業体(SPE)を含むすべての子会社を連結する必要があるとされています。この点、日本基準では、財務及び営業又は事業の方針を決定する機関に対する支配が一時的であると認められる子会社や、連結の範囲に含めることにより連結財務諸表提出会社の利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる子会社は連結の範囲に含めないことが認められており、このような連結除外規定を定めていないIFRSとの間に差異が生じています。

重要性を有しない子会社に関しては、IFRSのフレームワークにも重要性の原則は存在するので、財務諸表利用者の意思決定に影響を及ぼすか否かという目的適合性の観点から、重要性を有しない子会社に関する判断が必要になると考えられます。

(2) 支配の概念

IFRSでは、子会社とは親会社により支配されている企業であるとされ、支配とは企業活動から便益を得るために、その企業の財務及び経営方針を左右する力であるとされています。親会社が議決権の過半数を直接又は子会社を通じて間接的に保有している場合は、例外的に明らかに支配が存在しないと反証されない限り、支配が存在すると推定されます。また、親会社が議決権の過半数を保有していなくても、以下のいずれかに該当する場合には支配が存在すると考えられます。

  • 他の投資企業との契約により議決権の過半数を支配する力を有する。
  • 法令及び契約書により財務及び経営方針を左右しうる力を有する。
  • 取締役会又はそれと同等の経営機関の過半数の構成員を選任又は解任する力を有しており、当該取締役会又はそれと同等の経営機関により会社が支配されている。
  • 取締役会又はそれと同等の経営機関で過半数以上の投票権を集める力を有しており、当該取締役会又はそれと同等の経営機関により会社が支配されている。

他の企業の意思決定機関を実質的に支配しているか否かを判断するにあたり、日本基準では自己の計算において他の企業の議決権の40%以上50%以下を所有していることや、自己の計算において所有している議決権と緊密な者及び同意している者が所有している議決権とを合わせて他の企業の議決権の過半数を占めていることという数値基準が示されています。従って、40%未満の議決権しか所有しておらず、自己の議決権と緊密な者及び同意している者の議決権合計が過半数を下回っている場合、日本基準では支配が存在しないと判断されますが、IFRSでは上記要件を満たせば支配が存在すると判断される可能性がある点で両者に差異があります。

(3) 潜在的議決権

企業が他の企業の財務及び経営方針を支配できる力を有しているか否かを判断するにあたり、自己が保有する被投資企業に対する新株予約権や普通株式に転換可能な負債性金融商品(いわゆる転換社債)などの潜在的議決権だけでなく、他の当事者が所有する潜在的議決権についても、現時点で行使可能又は転換可能なものが存在するか、及びその影響について検討する必要があります。その際、経営者の意図及び潜在的議決権を行使又は転換するための財務能力を考慮する必要はありませんが、潜在的議決権の行使に関する条件及びその他の契約上の条項などを考慮する必要があります。

日本基準では、企業結合の際の議決権比率判定にあたっては、潜在株式の議決権行使の可能性を考慮することが必要であるとされていますが、他の企業を支配しているか否かを判定する際に潜在的な議決権を考慮するような定めはありません。

他の当事者が保有する潜在的議決権に関しては、実務上、関連情報の入手が困難であることが予想されますので、必要に応じ、早期に調査を開始すべき分野であると考えられます。

(4) 公開草案第10号

IAS第27号及びSIC第12号を統合し、連結に関する単一の基準を作成することを目的として、2008年12月に公開草案第10号「連結財務諸表」が公表されています。

本公開草案では、連結の要否の判断基準である他の企業に対する支配の定義を「報告企業のためのリターンを生み出すために、他の企業の活動を左右する力」と改めることを提案しています。ここでIAS第27号の支配の定義である、「その企業の財務及び経営方針を左右する力」は「他の企業の活動を左右する力」の一形態に過ぎないとされているため、現在より多くの企業が連結の対象となる可能性があります。また、IAS第27号において用いられていた便益という用語をリターンという用語に変更し、利益と損益のいずれも含まれていることをより明確にしました。他の企業からの最大のリターンを得る企業が、当該他の企業の活動を左右する力を最も有しているであろうという前提を置いています。

本公開草案では、これ以外にも他の企業を支配しているか否かを判断する際に考慮する必要がある現在行使可能なオプション及び転換権について、そのようなオプションを保有する企業は当該他の企業との取引や契約関係などを考慮した上で、当該他の企業の活動を左右する力があるか否かを判断することを提案しています。

また、他の企業の過半数未満しか議決権を保有していなくても当該他の企業の活動を左右する力を有するか否かを判断する際の追加的なガイダンスとして、報告企業が筆頭株主であり、かつ他の企業の戦略的な経営計画及び財務計画を決定するのに十分な議決権を有している場合には、他の企業の活動を左右する力を有しているとしています。

次回は、特別目的事業体(SPE)、決算日の異なる子会社、会計方針の統一、子会社の欠損、支配の喪失を伴わない子会社に対する親会社持分の変動について説明します。

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