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IFRSポイント講座

第11部 従業員給付

2010.08.06
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第11部 従業員給付(1)

「従業員給付」の部では、3回にわたってIFRS導入に際して想定される主な実務上の論点を中心に解説していきます。

はじめに

IFRSでは、IFRS第2号「株式報酬」が適用されるものを除き、IAS第19号「従業員給付」が企業の全ての従業員給付に関する会計処理を規定しています。IAS第19号では従業員給付を以下の4つに分類しています。

  • 退職後給付:年金、その他の退職給付、退職後生命保険及び退職後医療給付等
  • 短期従業員給付:賃金、給料及び社会保障のための掛金、年次有給休暇等
  • その他の長期従業員給付:長期勤続休暇又は研究休暇、その他の長期勤続給付等
  • 解雇給付

今回の従業員給付では、第1回及び第2回において退職後給付について日本基準との差異を中心に説明し、第3回で退職後給付以外の従業員給付についての説明を行います。

退職後給付

退職後給付とは、雇用関係の終了後に支払われる従業員給付(解雇給付を除く)であり、その主要な契約条件に由来する当該制度の経済的実質により、確定拠出制度又は、確定給付制度のいずれかに分類されます。

確定拠出制度

確定拠出制度は、企業が一定の掛金額を基金等の別個の事業体に支払い、たとえ基金等が従業員の当期及び前期以前の勤務に関連する全ての従業員給付を支払うために十分な資産を保有しない場合でも、企業がさらに掛金額を支払うべき債務を有しないもの、すなわち数理計算上のリスク等を従業員側が負担するものをいいます。確定拠出制度においては、企業の各期の債務が当該期間にかかる掛金額によって決定することになります。

確定拠出制度においては日本基準とIAS第19号のいずれも、掛金額を毎期費用処理するため、大きな相違はないと考えられています。

確定給付制度

確定給付制度では、確定拠出制度と異なり、契約等により合意した給付を従業員に支給し、数理計算上のリスクや投資リスクを実質的に企業が負担するという特徴があります。確定給付制度の会計処理は、当該債務及び費用を測定するための数理計算上の仮定が必要になり、債務は割引現在価値で測定されます。確定給付制度については、日本基準とIFRSでいくつかの重要な点で相違があり、この相違について説明をしていきます。

確定給付制度債務の計算

IAS第19号では、確定給付制度債務の現在価値の決定は予測単位積増方式によって行われます。予測単位積増方式では、勤務を提供する各期間で給付を受ける権利の追加的な1単位を生じさせるものとし、最終的な債務額を積み上げるための各単位を別個に測定します。確定給付制度債務の現在価値及び現在勤務費用を算定する場合は、制度の給付算定式に基づいて勤務期間に給付額を帰属させなければならないとされています。

ただし、勤続年数の後半に、前半より著しく高水準の給付を生じさせるような場合には、給付額について、給付を最初に生じさせた日から従業員によるそれ以上の勤務が重要な給付額を生じさせなくなる日までの期間にわたり定額法により帰属させることが必要とされています。

日本基準では、退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額を計算するのに、期間定額基準を原則としています。これは退職給付見込額を全勤務期間に配分する方法であり、IAS第19号の定額法とは帰属させる期間が異なっています。

このためIFRSの導入にあたっては、定額法を採用する場合には自社の制度が勤続年数の後半に著しく高水準の給付を生じさせる制度に該当するか検討し、給付額を帰属させる期間についての検討が必要になります。

次回も退職後給付について日本基準との相違を中心に説明を行っていきます。

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