アシュアランス
IFRSポイント講座

第6部 金融商品

2009.11.06
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第6部 金融商品(1)

IFRSにおける金融商品会計に関する論点について、全9回にわたり、以下の内容を解説します。

  1. 金融商品の定義、金融商品会計の適用範囲
  2. 金融商品の分類・測定
  3. 金融商品の当初認識時の処理、当初認識後の測定
  4. 金融商品の公正価値測定
  5. 金融資産の減損
  6. デリバティブ
  7. 金融商品の認識の中止及び相殺
  8. 金融負債と資本の区分
  9. 金融商品の開示

個別論点の解説の前に、ここで金融商品会計を鳥瞰していきます。

IFRSにおける金融商品会計に関連する主な基準書

IFRSの体系の中で金融商品を取り扱う主な基準書ならびにその主な内容は次のとおりです。

  • IAS第32号「金融商品:表示」
    IAS第32号の目的は、主に金融商品の定義、金融負債と資本の区分と、金融資産と金融負債の相殺に関する原則を設けることにあります。詳細は、第1回の後半、第7回~8回で解説します。
  • IAS第39号「金融商品:認識及び測定」
    IAS第39号の目的は、主に金融資産、金融負債及び非金融項目の売買契約に関する認識と測定に関する原則を定めることにあります。詳細は、第2回~第7回で解説します。
  • IFRS第7号「金融商品:開示」
    IFRS第7号の目的は、財務諸表利用者が企業について以下を評価できるように開示を行うことを求めることにあります。詳細は第9回で解説します。
    • 企業の財政状態、経営成績に対する金融商品の重要性
    • 会計期間中及び報告時点で企業がさらされている金融商品から生じるリスクの性質及び範囲ならびにこれらのリスクを企業がどのように管理しているか。

その他、関連する主な解釈指針書として以下のものが公表されています。

  • IFRIC第9号「組込デリバティブの再査定」
    組込デリバティブの区分処理の要否の評価結果をいつ再評価すべきかについての指針を提供しています。
  • IFRIC第10号「中間財務報告と減損」
    期中財務報告で認識された減損損失がその後に回復した場合の戻入れに関する指針を提供しています。

IFRSの金融商品会計基準の特徴

IFRSの金融商品に係る基準書、とりわけ金融商品の認識及び測定を取り扱うIAS第39号は、原則主義を標榜するIFRSの体系の中において、適用指針、例示、適用ガイダンスを含め、特定の会計処理に関する具体的な規定が異例とも思えるほど多数かつ詳細に定められている点で異彩を放っています。

金融商品会計は、それ自体又は関連取引がしばしば複雑な形態をとるため、一般に詳細になりがちで、この点は日本基準と共通しています。

しかし、一方、日本基準では、しばしば簡便法が認められるのに対し、IFRSではその適用を認めていない点に相違が生じています(たとえば、償却原価法において実効金利法のみが認められる点など)。また、日本基準のように業種別の会計基準は存在せず(たとえば、「銀行業における金融商品会計基準適用に関する会計上及び監査上の取扱い(業種別監査委員会報告第24号)」など)、すべての業種におしなべて適用されるものとなっているのも特徴です。

IAS39の改訂プロジェクト

国際会計基準委員会(IASB)は、金融商品の会計処理を簡素化する議論の流れの中で、2009年5月の会議においてIAS第39号の改訂を(1)分類及び測定、(2)金融資産の減損、(3)ヘッジ会計の3段階(以下、「IAS第39号改訂スケジュール」参照)で実施することを決定しました。

(1)分類及び測定について2009年7月に公表された公開草案では、分類及び測定のモデルを償却原価と公正価値の2つまで削減することが盛り込まれております。公正価値に分類された場合には、公正価値の変動は損益かその他の包括利益のいずれかに計上されますが、その他包括利益に計上された場合には損益へのリサイクルが禁止されることが提案されております。したがって、公正価値に分類された場合には減損に関する議論が不要になる見込みです。

(2)金融資産の減損については、2009年11月に公開草案が公表されました。

(IAS第39号改訂スケジュール)

プロジェクトフェーズ 公開草案 最終決定
(1)分類及び測定 2009年7月 2009年度財務諸表から適用可能とするように提案(任意早期適用)
(2)減損 2009年11月 2010年中にIAS第39号の刷新とともに導入
(3)ヘッジ会計 2009年12月

以下、金融商品の定義と金融商品会計の適用範囲に関して解説します。

金融商品会計における「金融商品」の定義

金融商品はIAS第32号で定義されており、そこでは、「金融商品とは、一方の企業に金融資産を、またもう一方の企業に金融負債又は持分金融商品を生じさせることになる契約をいう」、とされています。また、金融資産、金融負債、持分金融商品の定義は以下のとおりとされています。

  • 金融資産
  1. 現金
  2. 他の企業の持分金融商品
  3. 以下のいずれかの契約上の権利
    ①他の企業から現金その他の金融資産を受領する
    ②企業にとって潜在的に有利になる条件で他の企業と金融資産又は金融負債を交換する
  4. 企業の自己の持分金融商品で決済される、又は決済される可能性のある契約で、以下のいずれかに該当するもの
    ①デリバティブ以外
    企業が可変数の自己の持分金融商品の受領を義務付けられるか、その可能性があるもの
    ②デリバティブ
    固定額の現金又は他の金融資産と固定数の自己の持分金融商品を交換する以外の方法で決済されるか、その可能性があるもの。この場合、企業の自己の持分金融商品には、以下のものは含まれない。
    • それ自体が将来、企業の自己の持分金融商品を将来、受領する又は引き渡す契約となる金融商品
    • 清算時にのみ企業が第三者に対して純資産の比例的持ち分を引き渡す義務を負う金融商品
    • 一定のプット可能な金融商品
  • 金融負債
  1. 以下のいずれかの契約上の義務
    ①現金その他の金融資産を他の企業に引き渡す
    ②企業にとって潜在的に不利になる条件で他の企業と金融資産又は金融負債を交換する
  2. 企業の自己の持分金融商品で決済される、又は決済される可能性のある契約で、以下のいずれかに該当するもの
    ①デリバティブ以外
    企業が可変数の自己の持分金融商品を引き渡すことが求められる義務があるか、その可能性があるもの
    ②デリバティブ
    固定額の現金又は他の金融資産と、固定量の自己の持分金融商品との交換以外の方法で決済されるか、その可能性があるもの。この場合、企業の自己の持分金融商品には、以下のものは含まれない。
    • それ自体が将来、企業の自己の持分金融商品を将来、受領する又は引き渡す契約となる金融商品
    • 清算時にのみ企業が第三者に対して純資産の比例的持ち分を引き渡す義務を負う金融商品
    • 一定のプット可能な金融商品
  • 持分金融商品
    企業のすべての負債を控除した後の企業の資産に対する残余持分を証する契約

金融商品会計の適用範囲

最初に述べた金融商品に関する各基準書には、それぞれ適用範囲が定められています。このため、金融商品の定義に該当するものであっても、これらの基準書の全部又は一部(あるいは一部の規定)が適用されないものがあり、また一方で、直接には金融商品の定義に該当しないものでも、あたかも金融商品であるかのように、各基準書の全部又は一部が適用されるものがあります。

例えば、子会社・関連会社やジョイント・ベンチャーに対する投資、リース、保険契約などは、原則として他のIFRSの規定が適用されることなどから、金融商品会計基準の全部又は一部の適用がありません。一方、ローン・コミットメントなどは、金融商品の定義に該当しないものでも金融商品会計の全部又は一部が適用されます。

次回は、金融商品の分類と測定について解説します。

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