アシュアランス
IFRSポイント講座

第7部 法人所得税

2010.03.19

第7部 法人所得税

「法人所得税」の部では、IAS第12号の定める法人所得税と日本基準との差異、及び想定される主な実務上の論点に触れていきます。

はじめに

IAS第12号「法人所得税」は、当期税金及び繰延税金の会計処理及び表示を定めている法人所得税全般の会計基準です。

IFRSの法人所得税と日本基準の法人税等で、含められる税金の範囲に実質的な差異はないと考えらます。また、IFRS及び日本基準ともに、会計上と税務上の帳簿価額の差額(一時差異)に関する将来の税務上の影響額を繰延税金資産又は繰延税金負債として計上する資産負債法を採用しており、税効果会計に関する基本的な考え方も共通しています。

ここでは、以下の項目について説明していきます。

  • 繰延税金資産の回収可能性
  • 連結上の未実現損益の消去に係る税効果
  • のれんに対する税効果
  • 財務諸表における表示

繰延税金資産の回収可能性

IFRSでは、繰延税金資産は、将来減算一時差異を利用できる課税所得が生ずる可能性が高い(probable)範囲内で、一部の例外を除き、すべての将来減算一時差異について、繰延税金資産を認識しなければなりません。課税所得が生ずる「可能性が高い(probable)」とは、将来加算一時差異の存在、十分な課税所得、タックス・プランニングの存在を考慮し、「事象が発生しない可能性よりも発生する可能性が高い」場合、すなわち50%超の回収可能性と解釈されます。

繰延税金資産の回収可能性を検討する点では、日本基準と同じですが、IFRSには「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号)のような詳細な数値基準はなく、日本基準における分類をIFRSにおいてもそのまま使用して、たとえば、将来5年以内の回収可能性のみを検討するといった方法は適切ではないと考えられます。

また、日本基準では、一旦将来減算一時差異に対する繰延税金資産を計上し、その後回収可能性の判定結果に応じて評価性引当金を計上する2段階アプローチを採用していますが、IFRSではこのような2段階アプローチは採用されておらず、繰延税金資産を回収可能性があると認められる金額で直接計上します。

連結上の未実現損益の消去に係る税効果

IFRSでは、繰延税金資産及び負債の測定については、期末日に施行され又は実質的に施行されている税法及び税率を前提に、資産が実現する又は負債が決済される期に適用されると予想される税率を使用します。この点については、日本基準と違いはありません。しかし、日本基準ではグループ内の未実現損益の消去に関する繰延税金資産又は負債の計上額については、売却元において当該未実現損益に対して売却年度の課税所得に適用された法定実効税率を使用して計算する、という例外規定があります。一方IFRSでは、このような例外規定はないことから、原則どおり一時差異が発生している資産を有する企業である売却先の税率を使用する点で違いがあります。

また、連結上の未実現利益の消去に係る繰延税金資産の回収可能性について、日本基準では例外として回収可能性の検討は不要とされていますが、IFRSでは原則どおり回収可能性の検討が必要となります。

のれんに対する税効果

日本基準では、のれんについては税効果を認識しないと規定されています。IFRSでは、のれんの当初認識時は、繰延税金負債を認識しない点では日本基準と同じですが、のれんが税務上損金算入される場合においては、税務上の償却等によって当初認識以後に生じたのれんに関する将来加算一時差異について、繰延税金負債を認識します。

また、のれんの当初認識時に会計上の帳簿価額よりも税務基準額が上回る場合には、回収可能性があると判断される場合に限り、企業結合の処理として当該将来減算一時差異に関して、繰延税金資産を認識する点にも留意が必要です。

財務諸表における表示

財務諸表における表示に関する日本基準との差異は以下のとおりです。

  • 財政状態計算書(貸借対照表)における表示
    IFRSにおいて、繰延税金資産・負債は、すべて非流動項目に分類しなければならず、日本基準のような流動・固定分類は行いません。ただし、2009年3月に公表されたIAS第12号の改訂に関する公開草案では、流動・非流動に分類することが提案されています。
  • 包括利益計算書(損益計算書)における表示
    IFRSでは、当期税金と繰延税金は合算して税金費用(収益)として一括して包括利益計算書に表示し、日本基準のように法人税等と法人税等調整額を財務諸表本体では区分しません。ただし、IFRSでは当期税金と繰延税金は、注記上で区分して開示することが必要です。
  • 繰延税金資産・負債の相殺
    IFRSでは、繰延税金資産・負債については、次のいずれも満たす場合のみ、繰延税金資産と繰延税金負債を相殺しなければなりません。
  1. 企業が当期税金資産と当期税金負債を相殺する法律上強制力のある権利を有し、かつ
  2. 繰延税金資産と繰延税金負債が、同一の税務当局によって次のいずれかに対して課された法人所得税に関するものである。
    ①同じ納税企業体
    ②重要な金額の繰延税金負債、もしくは資産が決済、もしくは回収されると予想される将来の各期に、当期税金負債と資産とを純額で決済すること、又は資産を実現させると同時に負債を決済することを意図している異なった納税企業体

日本基準では、繰延税金資産・負債は流動・固定分類を行い、同一納税主体ごとに、それぞれの範囲内でのみ相殺しますが、IFRSでは上述のとおり、繰延税金資産・負債はすべて非流動項目に分類されるため、日本基準のような相殺の範囲に制約がないことから、相殺結果が異なることになります。

また、IFRSでは、非常に稀なケースではありますが、上記b)②の要件を満たした場合には、異なる納税主体の繰延税金資産・負債であっても相殺する点でも、日本基準と異なります。

今回で「法人所得税」は終了です。次回は「連結」を解説します。




情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?