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IFRS outlook 増刊

リースの共同プロジェクト - 改訂迫る

2010.07.15
リースの共同プロジェクト - 改訂迫る

要点

  • リース会計の大幅な変更が提案されており、これにより借手と貸手両方の財務諸表、プロセス、内部統制及び営業活動に多大な影響が及ぶ可能性がある。
  • オペレーティング・リースを利用したオフバランスでの資金調達はできなくなり、すべてのリースは貸借対照表(財政状態計算書)で認識されることになる。
  • 多くの見積りが必要となり、またその見積りを定期的に見直すことが求められる。
  • 既存のすべてのリース契約が影響を受ける。すなわち、遡及適用が求められる。

リース会計に大幅な変更をもたらす公開草案がまもなく公表されます。提案されているモデルでは、大部分のリースが同じように会計処理されることになり、ファイナンス・リース又はオペレーティング・リースのどちらに分類するのかという議論は過去のものとなります。提案モデルは、米国財務会計基準審議会(FASB)と国際会計基準審議会(IASB)(総称して以下、両審議会)による共同プロジェクトにおいて開発されたものであり、とりわけ現行のオペレーティング・リース会計では借手が負う債務に関して財務諸表の利用者に十分な情報が提供されていないといった、現行のリース会計への批判に対応したものです。公開草案がこの夏に公表予定であることを鑑みると、企業は、提案されているリースに関するガイダンスが、自社の財務諸表及び営業活動に与える潜在的な影響を今から検討しておく必要があると考えられます。

リース・プロジェクトにより現在のリース契約は影響を受けるか

借手又は貸手のどちらであっても、この共同プロジェクトにより影響を受ける可能性が高いといえます。しかし、最も影響を受ける企業は、重要な資産をリースしている企業、又は多くの資産をリースしている企業となるでしょう。提案モデルは、最終基準適用時に存在するリース契約に対して適用され、提案モデルを適用するため要する時間と労力は、適用対象となるリースの数及びその複雑性によって異なります。

一般的に、現行の会計基準の下でリースとみなされている契約は、新しいリース基準の適用対象となります。提案されているガイダンスは有形固定資産のリースにのみ適用され、次の種類の契約には適用されません。

  • 無形資産のリース
  • 天然資源(たとえば鉱物、石油及び天然ガス)の探査又は利用を目的としたリース
  • 生物資産のリース
  • 原資産の購入又は売却とされる契約(後述の「提案モデルは借手にどのような影響を及ぼすか」の項の割安購入オプションの箇所を参照)

提案モデルでは、サービス要素とリース要素の両方を含む契約の会計処理についても言及しています。貸手及び借手ともに、そのような契約の個別要素を識別し、支払額をサービス要素とリース要素に配分するために収益認識に関する原則を適用することになります。現行のオペレーティング・リースに係る会計処理とサービス契約の会計処理は類似しており、オペレーティング・リースとサービス契約のどちらについても、通常、資産及び負債は認識されません。提案モデルでは、リースを貸借対照表(財政状態計算書)に計上することが求められるため、今後はリース契約とサービス契約の会計処理は異なったものとなります。そのため、契約にリースが含まれているか否かの判断と、リース要素及びサービス要素の両方を含む契約の各要素への(収益認識に関する原則に基づく)支払額の配分は、会計上重要な影響を及ぼすことになります。

短期リース(考えられる最長のリース期間が12ヵ月未満であるリース)も提案ガイダンスの適用対象ですが、このような種類の契約に関しては簡便的な方法が認められます。また、提案ガイダンスでは、企業の営業活動に付随的なリース資産と企業の営業活動に必要不可欠なリース資産とが区別されていません。言い換えれば、提案モデルは、建物や設備のリースと同じように、航空機やコピー機のリースにも適用されるということです。提案モデルは、ほとんどのリース契約に影響を及ぼし、既に実行されているリースに対していかなる適用除外も存在しないことから、企業は提案モデルの影響を理解するにあたり、現行のリース契約の分析を遅滞なく行うことが望まれます。

また、この新しいモデルが事業に及ぼす潜在的な影響を検討しなければならず、その影響には次のようなものが含まれます。

  • 財務制限条項及び財務比率への影響
  • 資産を購入するか、それともリースするかの意思決定への影響
  • リース契約の変更
  • プロセス、内部統制の変更及びITによるサポート(必要であれば)

提案モデルは借手にどのような影響を及ぼすか

提案モデルでは、すべてのリースを貸借対照表(財政状態計算書)に計上することが求められます。借手は、リース期間にわたってリース対象資産を使用する権利を表す資産(使用権資産)及びリース料支払債務を表わす負債を計上することが求められます。提案モデルでは、資産及び負債は、リースにより生じる権利(更新オプションを含む)及び義務(変動リース料を含む)を包含しており、それらはリース期間にわたって支払うと借手が予想した額に基づき、計上されます。計上金額を算定するには、不確実な将来事象や状況に関する見積りや判断が必要になります。リースが複雑であればあるほど(たとえばリース期間やリース料が変動する場合)、その会計処理も複雑になります。

リース期間にわたる予想支払額に基づいて使用権資産と関連する負債を計上するため、借手はリース期間を判断する必要があります。提案モデルでは、リース期間を算定する際に、リースを更新又は終了するオプションを考慮する必要があり、リース期間はその可能性が50%超(more likely than not)である最長の期間となります。この判断にあたり、借手の意図や過去の実務、他にも契約に記載されている要因、契約には記載されていないものの考慮すべき要因やビジネス上の要因など、すべての要因を考慮する必要があります。

潜在的なリース期間を識別するのは、比較的容易です。たとえば、解約不能の5年間のリース期間と2年間の更新オプションを有するリースであれば、リース期間は5年又は7年であると考えられます。5年経過後にリースを終了できるオプションが付された7年間のリースも、リース期間は5年又は7年と考えられます。借手は、将来の事業活動への期待や残価保証、解約違約金、リース資産に対する著しい改良、税務上の影響及び借手の意向や過去の実務などのさまざまな要因が存在する中、借手が行う評価としてリース期間の判断に影響を及ぼす要因を検討することはより困難であるかもしれません。

原資産を購入するオプションは、その行使時にのみ計上され、リース期間を決定する際には考慮されません。なお、購入オプションが割安購入オプションとみなされる場合には、当該契約は実質的に原資産の購入であるとみなされ、よって提案されているガイダンスの適用範囲から除外されることに注意が必要です。

借手はリース開始時に、リース期間にわたる予想支払額を借手の追加借入利子率で割引いた現在価値でリース負債を当初測定します。追加借入利子率とは、リース期間と類似の期間にわたって資金を借り入れた場合に負担する利子率をいいます。

借手は、予想支払リース料の金額を算定するにあたり、以下の要因により支払額が変動する場合には、その支払額を見積る必要があり、またその他さまざまな見積りを行わなければなりません。

  • 借手による原資産の使用(たとえば、飛行マイル又は使用時間)
  • 借手の業績(たとえば、リース店舗における売上金額)
  • その他の要因(たとえば、インフレ指数)

また予想支払額を算定する際は、残価保証も考慮する必要があります。

これらの変動支払額は、期待値の手法(たとえば、確率加重された予測値による方法)を用いるなどして測定します。借手が通常の計画又は予算サイクルを超えた期間についても予測しなければならない場合もあるため、そのような変動支払額を見積ることは、提案モデルにおける最も難しい側面の1つであるといえます。

使用権資産は、当初取得原価で測定され、取得原価には負債の金額及び借手に発生した初期直接費用が含まれます。

リース料支払債務と使用権資産はともに、償却原価で事後測定されます。支払リース料は、リース債務の減少及び利息費用に配分されます。使用権資産は、リース期間とリース資産の経済的耐用年数のどちらか短い方の期間にわたり償却されます。下記の例は、単純なリースへ提案モデルを適用した場合の影響を説明したものであり、現行の会計基準と提案モデルとを比較しています。

単純なリースへの適用例

ある借手は、オフィスを年間1,000ドルで5年間賃貸するリース契約を締結します。リース料の支払は毎年期首に行われます。借手の追加借入利子率は8.5%です。

当該リースが、現行の会計基準の下でオペレーティング・リースに分類されると仮定すると、借手は当該リースを貸借対照表(財政状態計算書)には計上せず、賃料を定額法で費用計上(年間1,000ドル)することになります。一方、提案モデルの下では、借手は、リース期間にわたる予想支払リース料の現在価値(この例では約4,250ドル)で資産及び負債を計上します。借手は償却費(おそらく定額法)及び利息費用をその後、計上します。下で示すように、提案モデルは、現行の会計基準と比べて、早期に多くの費用が計上されます。すなわち、提案モデルの下では、費用(償却費と利息の合計)はリース期間の初期段階で多く計上され、時の経過に応じて少なくなっていきます。これは、利息費用は負債残高を基に計算されますが、負債残高はリース期間にわたり逓減していくためです。

グラフ

上記の例では、提案モデルに依った場合、単純なリースであっても会計処理が従前と大きく異なることを説明しました。次の例では、より複雑なリースに提案モデルを適用した場合について説明しています。

複雑なリースへの適用例

小売企業である借手Aは、解約不能な5年間のリース期間に、リース期間を5年間更新することが2回できるオプションが付されている、新規店舗のリース契約を締結します。賃料は、以下のように、年間固定リース料と当該店舗における売上に基づく変動リース料とで構成されています。

基本期間(1~5年):1,000ドル+売上の1%
最初の更新期間(6~10年):1,200ドル+売上の1%
2回目の更新期間(11~15年):1,400ドル+売上の1%

関連するすべての要因を評価した結果、リースの開始時に借手Aは、可能性が50%超である最長のリース期間は10年である(すなわち、1個目のオプションの行使のみが見込まれる)と判断します。借手Aは、当該店舗の今後10年間にわたる売上予想に基づく変動リース料を確率で加重して決定します。借手Aは、初年度の変動リース料は100ドルで、当該店舗の売上げが増加するにつれて緩やかに変動リース料も増加すると見積っています。リース開始時の借手Aの追加借入利子率は8.5%です。

借手Aはリース開始時に、予想支払額(すなわち、1年目から10年目までの基本リース料と変動リース料の合計)の現在価値を8,000ドルと算定しました。よって、次のような会計仕訳が必要となります。

リースにより生じる資産及び負債の当初計上(リース期間にわたる予想支払額の現在価値)

使用権資産8,000 
リース料支払債務 8,000

1年目

リース契約の1年目に、当該リース店舗の業績は借手Aの当初予想と合致しており、将来における更新オプションの行使や変動リース料に関する借手Aの予想に影響を及ぼすような事実又は状況の変化はありません。よって、次のような会計仕訳が必要となります。

使用権資産の償却費を計上

償却費800(=8,000÷10年) 
使用権資産 800

実効金利法を用い、リース料支払債務に係る利息費用を計上

利息費用680(=8,000×8.5%) 
リース料支払債務 680

現金の支払(賃料)(1,000ドルの基本リース料と100ドルの変動リース料)を計上

リース料支払債務1,100 
現金 1,100

提案モデルでは、借手は、リース料支払債務を算定するにあたって使用した見積り及び判断を報告期間ごとに再評価し、必要であれば事実及び状況の変化による支払債務の変動を反映するために修正が求められます。企業は、すべてのリース契約について報告期間ごとに詳細な分析を行う必要はありませんが、リース債務を算定するにあたって使用した見積り及び判断に影響を及ぼす可能性のある事実及び状況の変化を識別するためのプロセスを構築する必要があります。

リース債務を変動させる可能性のあるリース特性には、リースを更新又は終了するオプション、変動リース料、残価保証などがあります。変動リース料の変動に起因して発生したリース債務の変動で、かつ当期以前の期に関連する部分は損益として認識します(すなわち、負債を修正し、その差額を収益又は費用として認識します。下の適用例中のリース料支払債務40を計上している仕訳を参照ください)。それ以外の変更によるリース債務の変動(リース期間の変更による変動など)は、使用権資産の修正として認識します(すなわち、負債を修正し、その差額を資産の増加又は減少として計上します。下の適用例中のリース料支払債務4,300を計上している仕訳を参照ください)。なお、リース債務の変動が生じた場合、使用権資産の帳簿価額及び費用認識のタイミングは、当初見積りにおいてそのような変動が初めから考慮されていた場合とは同様なものにはならないことに留意が必要です。

債務を再評価するにあたり、通常、割引率は変動させません。つまり、当初使用した割引率(すなわち、リース開始時の借手の追加借入利子率)は変更しません。変動リース料が変動参照金利に連動し、その結果として債務額が変動する場合を除き、割引率を修正することはできません。

以下の例では、複雑なリースへの上記適用例の続きとして、リース債務の再評価について説明します。

複雑なリースへの適用例(続き)

2年目

リース契約の2年目に、当該リース店舗の売上が当初の見積りを大きく上回りました。その結果、2年目の実際の変動リース料は当初の予測よりも高くなりました(見積変動リース料は110ドルであるのに対し、実際の変動リース料は150ドルでした)。2年目の終了時点で、借手Aは、従前の売上予想よりも実際の売上の方が大きいという事実を反映するため、当該リース店舗における将来の予想売上を修正します。さらに、当該店舗での売上は好調を持続するとの予想に基づき、借手Aは2個目の更新オプションを行使する可能性が高まり、可能性が50%超である最長のリース期間は15年である(すなわち、両方の更新オプションの行使が見込まれる)と判断します。

借手Aは、使用権資産を償却し、利息費用を計上する、以下の仕訳を行います。

償却費800(=8,000÷10年)
使用権資産 800
利息費用644 {=(8,000+680-1,100)×8.5%}
リース料支払債務 644

借手は、2年目に発生した超過変動リース料(実際の変動リース料と従前の見積変動リース料との差額)を費用として計上します。

変動リース料の変動(当期に関連)に起因して発生した、リース料支払債務の変動を計上

変動リース料40 
リース料支払債務 40

次に現金を支払うことで債務を減額します。

現金の支払(賃料)(1,000ドルの基本リース料と150ドルの変動リース料)を計上

リース料支払債務1,150 
現金 1,150

借手Aは、見直し後のリース期間にわたる予想支払額(基本リース料と変動リース料の合計)を再検討し、(当初割引率、すなわちリース開始時の追加借入利子率を使用して)リース料支払債務を修正します。よって、次の仕訳が必要となります。

リース期間の変更及び変動リース料の変動(将来の期間に関連)に起因して発生した、リース料支払債務の変動を計上

使用権資産4,300 
リース料支払債務 4,300

3年目

リース契約の3年目に、当該リース店舗の業績は借手Aの修正後の予想と合致しており、将来における更新オプションの行使や変動リース料に関する借手Aの予想に影響を及ぼすような事実又は状況の変化はありません。よって、次のような会計仕訳が必要となります。

(修正後の使用権資産の帳簿価格及び見直し後の残存リース期間に基づき)使用権資産の償却費を計上

償却費823 {=(8,000-800×2+4,300)÷13年}
使用権資産 823

(修正後の債務額及び当初割引率に基づき)リース料支払債務に係る利息費用を計上

利息費用970 {=(8,000+680-1,100+644+40-1,150+4,300)×8.5%}
リース料支払債務 970

現金の支払(賃料)(1,000ドルの基本リース料と170ドルの変動リース料-修正後の見積りと合致)を計上

リース料支払債務1,170
現金 1,170

下表は、リース開始後3年間の各年について、支払われた現金及び認識された費用をまとめたもので、リース期間の延長及び変動リース料の増加が、提案モデルにおいて計上される期間費用に及ぼしうる影響を示しています。

  1年目 2年目 3年目
現金支払      
 基本リース料 1,000 1,000 1,000
 変動リース料   100   150   170
  1,100 1,150 1,170
費用      
 償却費 800 800 823
 利息費用 680 644 970
 追加変動リース料     -   40     -
  1,480 1,484 1,793

現行のリース基準では、3年間の各年の期間費用は現金支払額と同額になる可能性が高いことに留意が必要です。

減損

リース契約に関連して計上された資産も減損する場合があり、提案モデルにより計上される使用権資産には、償却が行われる(耐用年数が確定できる)無形資産に関する減損の指針が適用されます。したがって、(米国基準)ASC 420「撤退又は処分コスト債務(Exit or Disposal Cost Obligations)」に基づいて現在認識されているオペレーティング・リースの撤退費用と比較して、提案モデルでは、使用権資産の減損損失が異なるタイミング及び金額で認識される場合があります。

経過措置

既に述べたように、提案モデルは、最終基準適用後に開始する新しいリース契約はもちろんのこと、既存のリース契約にも適用されます。借手は、当初適用日時点で存在するリースについて、リース料支払債務及び使用権資産を認識します。リース料支払債務は、残存支払リース料を適用日時点の借手の追加借入利子率で割引いた現在価値で測定します。使用権資産は、負債と同様に測定し、減損している場合には必要な調整を行います。支払リース料がリース期間にわたって均等ではない場合には、前払又は未払リース料についても調整が必要となります。単純なファイナンス・リース(すなわち、オプション、変動リース料又は残価保証に係る取決めがないリース)を保有する借手は、当該リースを引き続き現行モデルに基づいて会計処理します(すなわち、単純なファイナンス・リースの会計処理は新基準適用時に変更されません)。

提案モデルは貸手にどのような影響を及ぼすか

貸手も貸借対照表(財政状態計算書)においてリースを認識することが求められます。提案モデルの大原則は、貸手と借手の会計処理の対称性です。すなわち、両審議会は、貸手の会計処理は、借手について提案されている会計処理と概ね合致したものでなければならないと決定しています。たとえば、借手がリース料支払債務を負債として計上する必要があるのであれば、貸手はリース料を受け取る権利を資産として計上することが求められます。認識すべき債権額を算定する際に使用する見積り及び判断もまた、借手が負債の金額を算定する際に必要となる見積り及び判断と概ね同じものになります。両審議会は、借手が債務を計上する際に用いる方法と整合した方法で、貸手は債権を認識・測定しなければならないという点で合意しましたが、貸手に関する多くの会計上の論点について審議を継続しています。両審議会はプロジェクトの初期段階において、「履行義務アプローチ」を貸手の会計処理として採用することを暫定的に決定しました。当アプローチではリース対象資産を貸手の貸借対照表(財政状態計算書)で引き続き認識し、貸手の履行義務を別途負債として認識することになります。両審議会はまた、代替アプローチとして、「認識中止アプローチ」についても検討しています。当アプローチでは、リース対象資産の一部の認識を中止することで、その売却された部分(すなわち、リース期間中に資産を使用する権利)を反映させるアプローチです。両審議会は、最近になって、貸手が状況に応じて履行義務アプローチか認識中止アプローチのどちらかを使う、混合モデルの使用についても審議しています。公表予定の公開草案において、両アプローチに関する見解やいずれを選好するか、また混合モデルの適用について、関係者にコメントを求めることになると考えられます。

どちらのアプローチに基づいた場合も、貸手は借手からリース料の支払を受ける権利について資産(リース債権)を認識することになり、当該資産は借手のリース料支払債務と同じような方法で測定することになります。すなわち、当該債権は、リース期間にわたり受領すると予想するリース料に基づき認識しなければなりません。リース期間は、可能性が50%超である最長のリース期間となります。信頼性をもって測定できる範囲で、変動リース料及び残価保証として受領すると予想される金額(確率で加重)をリース料に含めます。貸手は、リース期間にわたる見積リース料を、リース上の計算利子率(すなわち、貸手が借手に要求する利子率)を使って割引きます。貸手の債権は、実効金利法を使用して、償却原価で事後測定します。

第三者による残価保証の会計処理は、現行の会計実務とは異なったものになります。現行の会計基準では、第三者による残価保証を、第三者が保証による債務を履行できる範囲で、リース債権に含めることになります。提案モデルでは、独立の第三者による残価保証は、貸手の債権には含まれないことになり、その他の保証に係る会計処理に関するガイダンスに基づき、個別に会計処理されることになります。

貸手の債権は、借手のリース料支払債務と同様に算定されますが、貸手の債権額が借手の負債額と異なる場合もありえます。その要因には次のようなものを挙げることができます。

  • リース期間の決定
  • 変動リース料及び残価保証の算定
  • 予想リース料の現在価値の算定に使用する割引率

そのため、貸手の資産は借手の債務と必ずしもミラーの関係になるとは限りません。リース資産及びリース債務を算定する際に使用する見積り及び判断は貸手及び借手それぞれの将来の見通しに基づいているため、貸手と借手で別々の結論に至る可能性があります。たとえば、リースを更新するオプションを有する借手はオプションを行使するか否かを決定することができ、また自身の計画について貸手よりも適切に理解しています。よって、借手は更新オプションを行使する可能性が50%超であると判断したにもかかわらず、貸手は借手について借手ほどに十分な知識を有していないため、同じ結論に至らないといった状況もありえます。

借手と同様に、貸手はリース債権を報告期間ごとに再評価し、必要であれば事実及び状況の変化を反映するための修正を行います。たとえば、新しい事実又は状況により、変動リース料又は残価保証に関する見積り及び判断に重要な変更が起きた場合、もしくはリース期間が修正された場合に、貸手の債権は再評価されます。

履行義務アプローチ

履行義務アプローチでは、リース対象資産は貸手の貸借対照表(財政状態計算書)で引き続き認識し、貸手は、借手にリース対象資産を使用させる義務について負債を計上します。履行義務は、当初、(貸手に発生した初期直接費用控除後の)リース債権と同額になり、貸手は、リース期間にわたって債務が減少するにつれて、収益を認識します。履行義務は、借手による原資産の使用パターン(たとえば、使用時間などの期間)に基づき、規則的かつ合理的な方法で償却します。貸手は、リース開始時(すなわち、リース資産の引渡時)にはいかなる収益も認識しません。加えて、利息収益が、実効金利法により、リース期間にわたって認識されます。

リース期間の変更によるリース債権の修正は、履行義務の帳簿価額の修正として処理します。一方、変動リース料又は残価保証に関する予測の変更によるリース債権の修正は、当初取引価格及び履行義務の修正として処理します。すなわち、既に充足している履行義務に配分される分は、当該変動額を収益として認識し、未だ充足していない履行義務に配分される分は、履行義務の帳簿価額の修正として処理します。

貸手は引き続きリース対象資産の減価償却を実施し、必要な場合には減損の検討対象となります。履行義務アプローチのもと、貸手がどのように減損テストを行うかについてのガイダンスは、公開草案に含められる予定です。

認識中止アプローチ

両審議会はまた、貸手の会計処理について、リース対象資産の一部の認識を中止するという認識中止アプローチも検討しています。残存資産(すなわち、リース対象資産のうち、認識を中止しなかった部分)には、リース対象資産の従前の帳簿価額のうちの一定額が配分されます。残存資産は、減損を除いて、事後的に再測定されることはありません。更新オプションが含まれるリース契約については、貸手は見積もられたリース期間(すなわち、可能性が50%超である最長のリース期間)を基礎として、残存資産を認識することになります。すなわち、リース期間は上記で説明したように決定され、残存資産はリース期間の終了時点での資産に関係したものとなります。現行の販売型のリース会計(リース資産の公正価値又は最低リース料総額を市場金利で割り引いた金額のいずれか低い金額での収益計上)と同様、認識中止アプローチでは、貸手はリース開始時に収益(又は損失)を認識し、その後、リース期間にわたって利息収益のみを認識することになります。

認識中止アプローチでは、リース期間の再評価は、新たな認識中止/再認識事象として会計処理されます。すなわち、貸手は、残存資産の一部の認識を中止するか、もしくは残存資産として再認識します。変動リース及び残価保証に起因して、受領する金額が変動した場合には、損益として認識します。

その他の変更点

セール・アンド・リースバック

セール・アンド・リースバック取引は、多くの企業にとって重要な資金調達源となっています。現行のリース基準では、セール・アンド・リースバックにおけるリースがオペレーティング・リースに分類される場合、オフバランスでの資金調達が可能となっていますが、これらの取引から利得を認識することは制限されています。提案されているガイダンスでは、上述のとおり、すべてのリースが貸借対照表(財政状態計算書)に計上されることになるため、セール・アンド・リースバック取引によりオフバランスでの資金調達を行うことはできなくなります。

提案モデルでは、セール・アンド・リースバック会計(すなわち、資産の貸借対照表(財政状態計算書)からの除去、売却に係る利得又は損失の計上、及び使用権資産及びリース料支払債務の認識)としての要件を満たすには、原資産が売却されているとみなされなければなりません。ここで、「原資産が売却されている」とは契約終了時点で資産に対する支配が移転し、資産に係るリスク及び便益のすべて(僅少な金額を除く)が買手である貸手に移転しているということを意味します。セール・アンド・リースバック会計の適用要件を満たさない取引は、金融取引として会計処理されます。提案モデルでは、セール・アンド・リースバック取引において、売却に係る利得又は損失が認識されます。

サブリース

サブリース契約では、同一の資産について、ある当事者が貸手であり、また借手となります。すなわち、ある当事者は、原リースにより原資産を使用する権利を獲得し、一方でサブリースでは貸手となり、原リースと同じ期間もしくはそれより短い期間にわたって原資産を使用する権利を他の当事者に移転します。提案モデルでは、サブリースにより生じる資産及び負債について、異なる測定ガイダンスは定められていません。よって、原リースにより生じる資産及び負債には借手の会計モデルが適用され、サブリースにより生じる資産及び負債には貸手の会計モデルが適用されます。

今後の動向

両審議会は、今後開催される会議において、リース会計に関する論点、特に貸手の会計モデルについての審議を引き続き行います。両審議会は、2010年の第3四半期に公開草案、2011年に最終基準書を公表する予定にしています。企業は、リース会計の改訂によりどのような影響を受けるかについて評価を遅滞なく行う必要があります。提案モデルにより、現行の実務は大きく変更されるため、そのような変更により資産をリースしている企業がどのような影響を受けるかを判断するには相当の労力が必要となるかもしれません。EYは、公開草案を慎重に検討し、提案されているモデルに関する見解や当該モデルの事業への影響を評価した際に識別した懸念や提言について、両審議会にコメント・レターを提出することを推奨しています。




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