アシュアランス
IFRS outlook 増刊

リース会計に関する公開草案の公表

2010.08.23
リース会計に関する公開草案の公表

要点

  • 国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が公表したリース会計に関する公開草案により、大部分のリースに対して単一の会計処理が行われることになる。
  • 適用対象となるリース契約から生じるすべての資産と負債を財政状態計算書(貸借対照表)で認識する。
  • 現行のIFRSに基づくリース会計からの抜本的な変更が提案されている。
  • 以下の基準書及び解釈指針書が公開草案と置き換わることになる。
    • IAS第17号「リース」
    • IFRIC第4号「契約にリースが含まれているか否かの判断」
    • SIC第15号「オペレーティング・リース――インセンティブ」
    • SIC第27号「法的形態はリースであるものを含む取引の実態の評価」
  • 公開草案に対するコメントは2010年12月15日まで受け付けている。

ハイライト

リース会計に関する抜本的な変更が、2010年8月17日にIASB及びFASB(以下、両審議会)が公表した公開草案において提案されている。これはリースに係る両審議会によるジョイント・プロジェクトの成果である。公開草案では大部分のリースに対して単一のモデルを適用することが提案されており、これにより実質的にリースをオフ・バランスすることはできなくなる。提案されているモデルにより、企業はリースの会計処理に対し数多くの見積りを行い、それを定期的に再評価することが求められる。公開草案が提案どおりに最終基準化された場合、既存のリースも移行時に影響を受け、いかなるリースもその適用が免除されることはない。

提案されているモデルはその開発に数年を要しており、以下のような現行モデルに対して頻繁になされる批判に対処するものである。

  • 経済的に類似するリース取引に異なる会計処理がなされることがある。
  • オペレーティング・リースから生じる重要な資産及び負債が計上されない。
  • リース開始時に行った見積りが再評価されることがない。

適用対象

提案されているモデルでは、契約がリースであるか、もしくは契約にリースが含まれているか否かを評価する現行規定1の大部分が引き継がれている。その結果、現行の会計基準においてリースとみなされている契約は、通常、提案されている基準のもとでもリースとみなされることになると思われる。公開草案では、IAS第40号「投資不動産」に従い公正価値で測定される投資不動産のリースは適用対象から除外されている。

  1. IFRIC第4号 契約にリースが含まれているか否かの判断
弊社のコメント

リースに該当するか否かを判断する際の基準に変更はないものの、多くの契約に関するそのような判断はより重要なものになると考えられる。オペレーティング・リース及びサービス契約に関する現行の会計処理は類似していることが多いため、オペレーティング・リースに分類されるリースがサービス契約に含まれているか否かの判断によって、通常、その契約の会計処理が大きく異なることにはならない。公開草案では、すべてのリースがオン・バランスされ、サービス契約に関する会計処理と異なることになるため、この点に変化が生じうる。

借手の会計処理

借手は、リース料支払債務の現在価値を負債として、またリース期間に渡ってリースされる資産を使用する権利を資産(使用権資産)として計上することが求められる。リースごとに計上すべきリース資産及びリース負債は、リース期間に渡って支払うと予想されるリース料に基づくことになる。
予想支払リース料は不確実な事象や条件に関する見積りや判断に基づいて測定される。この場合の見積もりや判断には、更新オプションやリース期間に渡って支払われる変動リース料を検討することが含まれる。これらの見積もりはリース開始時に行われることになるが、現行の会計基準とは大幅に異なるものである。

事後測定
使用権資産はリース期間又は原資産の耐用年数のいずれか短い期間で償却される。借手はIAS第16号「有形固定資産」に従い、使用権資産を公正価値で評価することも認められる。加えて、使用権資産はIAS第36号「資産の減損」の減損検討対象ともなる。実効金利法によりリース料支払債務に係る支払利息が認識される一方で、リース料支払債務はリース料を支払うことで減少する。大抵のリースでは、(リース料支払債務が減少することにより支払利息が減少するため)認識される総費用(すなわち、償却費及び支払利息)はリース期間の早い段階のほうが、その後の段階よりも大きくなる。

借手は毎期、リース料支払債務の算定の際に用いた見積りや判断の再評価を行い、見積りや判断の変更が必要と判断された場合には、リース料支払債務に対し必要な調整を行う。

弊社のコメント

企業はすべてのリース契約を毎期、詳細に分析する必要はないと思われる。しかし、リース債務を算定する際に用いた見積りや判断に影響を与えうる事実や状況の変化を識別するためのプロセスを確立する必要があるだろう。

移行規定
提案されている基準の当初適用日に、借手は当該日時点に存在するリースに関し、基準を簡便的な方法で遡及適用することで、リース料支払債務及び使用権資産を認識する必要がある。当初適用日は、企業がこの公開草案(新基準)を適用した最初の財務諸表に表示される比較対象期間の期首となる。

貸手の会計処理

公開草案では、貸手が使用権モデルを適用するに際して、2つのアプローチを用いることが提案されている。リースごとに、貸手は履行義務アプローチ又は認識中止アプローチのいずれかを適用することになり、いずれのアプローチを適用するかは貸手が原資産に関する重要なリスク、または便益を留保しているかどうかを判断して決定される。いずれのアプローチによった場合でも、貸手は借手からリース料の支払いを受ける権利を表象する資産を財政状態計算書(貸借対照表)に計上する。リース債権は、リース期間に渡って受領することが予想されるリース料を、貸手が借手に課している利率で割り引いた現在価値で測定される。貸手が原資産に関する重要なリスクに晒され、または便益を享受していると判断される場合、貸手は履行義務アプローチを適用する。他方、貸手が原資産に関する重要なリスクに晒されておらず、または便益も享受していないと判断される場合には、貸手は認識中止アプローチを適用する。

弊社のコメント

貸手が原資産に関する重要なリスク、または便益を留保しているかどうかを判断し、いずれのアプローチ(履行義務アプローチ又は認識中止アプローチ)を適用するかの決定が重要となる。

履行義務アプローチ
履行義務アプローチでは、リースされる原資産は貸手の経済資源であるとみなされ、リース期間に渡って原資産を借手が使用することを、貸手は約束しているものとされる。貸手はリースされる資産の財政状態計算書(貸借対照表)への計上を継続し、リースされる資産を借手に使用させる義務をリース負債(履行義務)として計上する。リース負債は当初、リース債権(貸手に発生した初期直接費用を控除)と同額となり、リース期間に渡って履行義務を充足していくに従い、貸手は収益を認識していく。借手による原資産の使用パターン(たとえば、時の経過や使用時間)に基づく規則的かつ合理的な方法でリース負債は償却され、リース負債の償却に応じ、貸手は収益を認識する。当該アプローチでは、貸手はリース開始時(すなわち、リースされる資産の引渡し時)にいかなる収益も認識しない。履行義務アプローチでは、貸手は通常、定額法でリース収益を認識することになると思われ、これは現行のオペレーティング・リースに係る会計処理に類似している。実効金利法によりリース債権に係る利息収益がリース期間に渡って認識される。貸手はリースされる資産の償却を継続し、当該資産は減損の検討対象ともなる。

認識中止アプローチ
認識中止アプローチでは、リースされる原資産に関する経済的便益はリース開始時に借手に移転しているとみなされる。貸手はリースされる資産の帳簿価額のうち、リース期間に渡って原資産を使用する借手の権利を表象する部分について認識を中止する。帳簿価額のうち認識を中止しない部分は残余資産に配分される。原資産の帳簿価額は、リース開始時の(認識中止部分と残余資産の)相対的公正価値に基づき、認識中止部分と残余資産とに配分される。残余資産は、減損もしくは使用権資産を再評価した結果、残余資産に変動が生じる場合を除き、事後的に再測定されることはない。認識中止アプローチでは、貸手がリース開始時に利益(もしくは損失)を認識することがある。実効金利法によりリース債権に係る利息収益がリース期間に渡って認識される。

移行規定
基準の当初適用日に、貸手は当該日時点に存在するすべてのリースに関し、基準を簡便的な方法で遡及適用することで、リース債権を認識する必要がある。すなわち、残存受取リース料を、借手に課している利率(リース開始日に算定)で割り引いた現在価値でリース債権を測定する(減損考慮後)。
履行義務アプローチを適用するリースに関し、貸手はリース負債を認識し、以前に認識を中止した原資産を再度計上する。貸手はリース負債については、当初適用日にリース債権と同様に測定し、以前に認識を中止した資産については、償却原価(減損及び再評価考慮後)で測定する。

認識中止アプローチを適用するリースに関し、貸手は残余資産を当初適用日の公正価値で認識する。

提案されているその他の改訂

セール・アンド・リースバック
提案されているモデルでは、すべてのリースが財政状態計算書(貸借対照表)に計上されることになるため、セール・アンド・リースバック取引を行った場合でも、もはやオフ・バランスでの資金調達はできなくなる。加えて、公開草案には、セール・アンド・リースバック取引の両当事者がセール・アンド・リースバック会計(すなわち、資産の売却/購入とリースを個別に会計処理すること)を適用するために、充足すべき基準が定められている。提案されているモデルのもと、セール・アンド・リースバック会計を適用するためには、原資産は売却されたとみなされる必要がある。売却されたか否かは、契約終了時に資産の支配及び資産に関するリスクと便益のすべて(僅少な部分は除く)が買手かつ貸手である当事者に移転しているかを評価することで判断する。

弊社のコメント

取引がセール・アンド・リースバック会計を適用するための基準を充足しない場合、売手かつ借手である当事者及び買手かつ貸手である当事者は当該取引を金融取引として会計処理する。公開草案中の適用ガイダンスには、現行のIFRSには存在しない条件が定められており、この条件に従って判断した場合、移転された資産の売却もしくは購入として会計処理することは通常不可能となろう。これにより、取引をセール・アンド・リースバックと判断するのは困難となる可能性がある。

サブリース
サブリース契約では、ある当事者(中間の貸手)が同一資産の貸手及び借手となる。すなわち、当該当事者は原リースのもと原資産を使用する権利を取得する一方で、サブリースでは貸手となり、原資産の使用権を、原リースと同じ期間、もしくはそれより短い期間に渡り、異なる当事者に移転する。公開草案には、サブリースから生じる資産及び負債に関して、異なる測定規定は設けられていない。よって、原リースから生じる資産及び負債に対しては借手の会計モデルが適用され、サブリースから生じる資産及び負債に対しては貸手の会計モデルが適用される。

今後の動向

公開草案では、その適用日は定められていない。適用日は、現在進行中の多くの重要なジョイント・プロジェクトに係る他のプロジェクトの一環として検討される予定である。両審議会は2010年12月15日までに公開草案に対するコメントを提出することを求めており、現在、2011年に最終基準の公表を予定している。提案されているモデルにより現行の実務が大幅に変更されることになり、この変更が資産をリースしている企業に与える影響を判断するには相当の労力が必要となることもありうる。弊社は、提案されているモデルの内容を確認し、各企業に与えうる影響を分析することを推奨している。加えて、弊社は提案されているモデルに関する見解や当該モデルの事業への影響を評価した際に識別した懸念や提言について、両審議会にコメント・レターを提出することを推奨している。弊社は、企業が提案されているモデルをより深く理解することができるように、2010年9月により詳細な文書を提供する予定である。




情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?